ZRX1200DAEG(ZR1200D) -since 2009-

ZRX1200DAEG

「Japanese Standard Naked」

排ガス規制に伴いフルモデルチェンジされたZRX1200DAEG/ZR1200D型。

FI化に伴いヘッド周りを始めとしたエンジンの見直しで自主規制突破の110馬力となり、ミッションもスムーズさに定評があったZZR1200ベースの6速に変更されスポーツ性を更に向上。

ダエグメカニズム

ホイールも五本スポークタイプとなり、外装もシェイプアップされスリムさが更に増しました。

他にもフレームはもちろん足回りに至るまで改良が入っています。

ZRX1200DAEGで行われた改良の狙いというか目指したものというのは

『国内ベスト』

というのもこのZRX1200DAEGから国内のみの販売なんですね。何故そうなったのか少し説明します。

ローソンレプリカ

プロジェクトリーダーの山本さんいわく、ZRXは本当は先代で終わる予定だった。

これは欧州を中心に

「ネイキッドといえばストリートファイター」

という認識そして人気が広まっていたから。

だからカワサキも水冷Zに大きく舵を切る事となり、いわゆるスタンダードネイキッドはストリートファイターベースで行こうという話に。そのためZZR1400をベースにしたネイキッドや、Z1000ベースにしたネイキッドなどの案で進んでいました。今にして思えばZ900RSが正にソレですね。

しかしそれでは旧来のZRXオーナーを始めとした日本のビッグネイキッド層を満足させるものは造れない。

「日本のビッグネイキッドユーザーを満足させるビッグネイキッドを別に造ろう」

となったのがプロジェクトの始まり。

そして様々な車種を身をもってテストした結果

「日本の道を走って最も楽しいのはやはりZRX1200Rだ」

という結論になった。

操。爽。装。創。

ZRX1200DAEGが国内仕様のみだった事や、大変貌する事がなかった理由はここにあります。

開発リーダーの山本さんが無類のZRX好きというのもあるんでしょうけどね。ZRX1100に十年乗っているそうです。

ちなみに名前が”R”から

『DAEG(ダエグ)』

というルーン文字になった事にも胸を熱くさせる話があります。

japanese standard naked

「着実な成長」

「進歩」

「終わりと始まり」

「突破」

「新しい展開」

という前進的な意味なんですが、この名前を入れたのは開発チームじゃない。

「完成の域にあったZRX1200Rを少しでも良くしようと血眼になって開発に取り組んでいた開発チームの思いを車名に刻みたい」

と営業側からの申し出で付けられた名なんです。

GPZ900Rからずっと磨き続けてきた集大成、大好きなZRXの総仕上げという熱意が伝わったんでしょうね。

最後に開発リーダーを務められた山本さんが、生産終了となった際にRIDEのインタビューで仰っていた言葉を引用して締めたいと思います。

ZRX1200DAEGファイナルエディション

「GPZ900Rの伝統を汲む最後のモデルになりました。分かる人に大事に乗り続けていただきたいです。」

※2017年モデルをもって生産終了

主要諸元
全長/幅/高 2150/770/1155mm
シート高 795mm
[790mm]
車軸距離 1470mm
車体重量 246kg(装)
燃料消費率 25.8km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1164cc
最高出力 110ps/8000rpm
最高トルク 10.9kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTX12-BS
プラグ CR9EK
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.5L
交換時2.7L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前18|後44
チェーン サイズ525|リンク112
車体価格 1,120,000円(税別)
※[]内はLIMITED
系譜図
GPz11001995年
GPZ1100
(ZX1100E/F)
ZRX11001996年
ZRX1100/II
(ZR1100C/D)
ZRX1200R前期2001年
ZRX1200R/S
(ZR1200A/B)
ZRX1000DAEG2009年
ZRX1200DAEG
(ZR1200D)

【関連車種】
CB1300の系譜XJR1300の系譜Bandit1250の系譜

ZRX1200R/S(ZR1200A/B) -since 2001-

ZRX1200R

「ワインディング エリート」

二代目となるZRX1200R/SのZR1200A/B型。

このモデル何が恐ろしいって一見すると排気量しか変わっていないように見えて実は大きく変わっている事。

ZR1200

ナンバリングにもなっている通りボアを3mm、ストローク1.4mm拡大され1164ccとなっているわけですが、これほぼ作り直したエンジン。

元々GPZ900Rにルーツがあるエンジンだったため、1100までは想定していたものの流石に1200まで上げるのは無理だった。

ZRX1200Rカタログ写真

そこでスリーブ(シリンダーの内張りみたいなもの)を取っ払ってメッキシリンダー化。それに伴いクランクケースに至るまで色々と手を加えたので実は先代とあまり互換性が無い。

フレームの方もヘッド周りの剛性を上げ、スイングアームも剛性を大幅に上げつつホイールベースを13mm延長すると共にピボット位置も5mm下げ。

ZRX1200Rカタログ写真

足回りもリアショックの受け側を下げ180/55にワイド化し、フロントフォークのオフセットやセッティングを見直しなどなど。

「まさかそこまで変更されていたとは・・・」

と思った人が多いと思います。そう思うのも当たり前な話。見た目はほとんど変えていないんですから。

ZRX1200Rカタログ写真

この二代目を託された企画の真田さんいわく

「先代を踏襲し正常進化」

というのがコンセプト。ザックリ言うとより懐の広いモデルにするためのモデルチェンジ。

そんな中でもパッと見で大きく変わったのが、丸目のIIに変わって登場したZRX1200S/ZR1200B型。

ZRX1200S

丸目同様に国内では1000台弱しか売れなかった様なので知らない人も多いかと。

まあこれは日本向けというより当たり前の様に何泊もするツーリングをする欧州向けに造られた意味合いが強いモデルですしね。

ZR1200B

その際にビキニカウルのRはどうしても不向きな所があり、もっと長距離ツーリングに使えるようにしてほしいという強い要望があったから造られたモデルなのがこのS型。サスペンションのセッティングも変えてあります。

更にマイナーなのがZRX1200/ZR1200C型というモデル。

ZR1200C

1200にも丸目モデルあったんですね。欧州のみで販売されていたようです。

一方でこのモデルからアメリカにも輸出されるようになったんですが向こうはRモデルだけ。

北米版ZRX1200R

元ネタである伝説のローソンはアメリカだから当然か。

ちなみにローソンレプリカも古い歴史なので少しだけ解説すると1981年に北米カワサキの要望によりAMAで勝つためにベースマシンとしてZ1000Jを造ったのが始まり。

Z1000J

それをベースにカスタマイズしたのが初のライムグリーンZことKZ1000J改で、このモデルでAMAチャンピオンに輝いたのがエディー・ローソンという方。

初代ローソンレプリカ

この快挙を記念して出されたのがローソンのJ改レプリカであるR型ことKZ1000RとKZ1100Rになります。

これがローソンレプリカの始まりなんですが、意外なことに当時の車体設計を担当していた山崎さんいわく社内でローソンレプリカといえばR型ではなくS型の方だったそう。

ローソンレプリカS1

S型というのはこのKZ1000SというモデルでAMA連覇を狙って補強を始めとしたフルチューニングが予め施された今で言うホモロゲーションモデル。製造はレギュレーションで定められた規約の最低台数である30台のみ。

つまりホモロゲ(S型)の方をローソンレプリカと呼んでいて、ローソンレプリカ(R型)をローソンレプリカと呼んでいたわけじゃなかった・・・頭がこんがらがる。

ただZRXも正確に言うとR1のレプリカというよりこのS1のレプリカと言ったほうが正しいかと思います。

ZR1200A

写真では分かりにくいんですが採用前提で開発されたトラス構造パイプスイングアームやエキセントリック式チェーンアジャスターはS型のものですしね。

社内の人間にとってはSの方がローソンレプリカだったという驚愕の事実だったんですが、もう一つ驚きなのが

「ローソンレプリカがこれほどの人気ブランドになるとは誰も思っていなかった」

という事。

当時はZ人気に陰りが見え始めていた頃だったのに加え、少し経つとGPZ(第二世代Z)への世代交代に成功していたから。

GPZの時代

更にその後もZZRやZX-9Rなどカワサキのフラッグシップがどんどん出た。

・・・にも関わらずローソンレプリカの人気はカワサキの意向に反するように一向に衰えなかったんです。

でもだからこそこうやって再び日の目を見る事が出来た。元祖ローソンモデルに携わられてた山崎さんもこう仰られていました。

ZRX1200Rローソンレプリカ

「ローソンレプリカはZやGPZとは全く違う。ユーザーの皆さんが育ててくれた幸運なブランドですね。」

※2004年:給排気の見直しとピボット位置の調整

主要諸元
全長/幅/高 2120/780/1150mm
[2120/780/1230mm]
シート高 790mm
車軸距離 1465mm
車体重量 223kg(乾)
[227kg(乾)]
燃料消費率 25.5km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1164cc
最高出力 100ps/8000rpm
最高トルク 10.4kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー FTZ14-BS
{TYX14-BS1※04以降}
プラグ CR9EK
または
U27ETR
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.5L
交換時2.7L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前17|後42
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格 960,000円(税別)
[990,000円(税別)]
※[]内はZRX1200S(ZR1200B)
系譜図
GPz11001995年
GPZ1100
(ZX1100E/F)
ZRX11001996年
ZRX1100/II
(ZR1100C/D)
ZRX1200R前期2001年
ZRX1200R/S
(ZR1200A/B)
ZRX1000DAEG2009年
ZRX1200DAEG
(ZR1200D)

ZRX1100/II(ZR1100C/D) -since 1996-

ZRX1100

「The Finest Footwork」

アメリカの市販車レースで二連覇を果たしたマシンのレプリカであるKZ1000Rに通ずる佇まいで登場したZRX1100/ZR1100C型と丸目ネイキッドタイプのZRX1100-II/ZR1100D型。

ZRX1100とKZ1000R

少し前下がり気味にしてスポーティさをアップさせる現代風アレンジが加えられているのが特徴的ですね。

ZRX1100が登場した背景には

・ネイキッドブーム&レース(NK-4)
・1990年750cc自主規制撤廃
・1995年限定解除から大型自動二輪へ

があります。

そもそもこのブームに火を付けたのは他ならぬカワサキのゼファー400/750/1100なんですが、それから暫くしてゼファーとは別にスポーツモデルとして開発されたのがZRX1100というわけ。

ZRX1100海外パンフ

Z=四気筒
R=ネイキッド
X=究極

で究極の四気筒ネイキッドという意味。

ちなみにいまの若い人は信じられないかもしれませんが『ネイキッド』という言葉が国内で明確に定まったのもこの頃だったりします。

ZRX1100/ZR1100C

そんなZRX1100はエンジンは先に紹介したGPZ1100の物をベースにフライホイールマスを上げて安定性を向上させているんですが、凄かったのはどちらかというと車体の方。

まず何より車体が非常に軽量コンパクトに纏められているという事。

ZR1100C

例えばホイールベースは1450mmと400クラス並の短さ。

加えて重要なのがハンドリングが非常にクイックでグリングリン寝かせて走る味付けになっていること。

これはフロントフォークを思い切り立ててフォークオフセット(ステムホールと)は30mmと非常に短めにしているから。要するにスーパースポーツ系に近いレイアウトになっているというわけ・・・つまり

カワサキZRX1100

「ビッグネイキッドのセオリーを無視したビッグネイキッド」

というのがZRX1100だったんで・・・がこれがウケた。しかも海外でも。

ZRX1100はもともと日本国内のみの販売を計画していたモデルだったものの、試しにケルンモーターショー(ドイツ)に出展してみたところ非常に高い反響があったため急遽ドイツとイタリアにはビキニカウル付きのC型が、フランスとオランダには丸目のD型が輸出される事になりました。

ZR1100-2

だから国によってはカウルレスであるコッチ、ZRX1100-IIのほうが有名だったりします。日本ではRが八割、IIが二割で圧倒的にRモデルが人気だったようですが。

最後に小ネタを話すとZRX1100はそのビッグネイキッドらしいアップライトなポジションとトルクフルなエンジンを持つ一方で、ビッグネイキッドらしからぬ軽快さも持っていた事から一般ユーザーだけでなくジムカーナなどから非常に人気というかランカー御用達マシンでした。

でも実はそうなったのはある意味では必然だったとも言えるんです。というのもこのZRX1100の車体を担当していたのは古橋さんというモノコックフレームの方でも有名な方なんですが、企画の谷さんいわく

ZRX1100カタログ写真

「ZRXがこうなったのは古橋が当時ジムカーナにハマっていたから※KBM/Vol.49より」

との事。

主要諸元
全長/幅/高 2120/780/1150mm
[2120/780/1085mm]
シート高 790mm
車軸距離 1450mm
車体重量 222kg(乾)
[221kg(乾)]
燃料消費率 26.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 20.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1052cc
最高出力 100ps/8500rpm
最高トルク 9.8kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後170/60ZR17(72W)
バッテリー YTX14-BS
プラグ CR9EK
または
U27ETR
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.5L
交換時2.7L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前17|後45
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格 940,000円(税別)
[920,000円(税別)]
※[]内はZRX1100-II(ZR1100D)
系譜図
GPz11001995年
GPZ1100
(ZX1100E/F)
ZRX11001996年
ZRX1100/II
(ZR1100C/D)
ZRX1200R前期2001年
ZRX1200R/S
(ZR1200A/B)
ZRX1000DAEG2009年
ZRX1200DAEG
(ZR1200D)

GPZ1100(ZX1100E) -since 1995-

GPZ1100

「BIG SPORT TOURER」

ただでさえ過去に空冷で出た1100(GPz1100/ZX1100Aの系譜)の影に隠れてしまう上に、同じく知名度が無かった鳩サブレと呼ばれたGPZ250Rが漫画などの影響で有名になった事でもはや最も知られていないGPZになってしまったGPZ1100/ZX1100E型。

エンジンは誰もが知るカワサキの名車ZZR1100から受け継いだ物で、その名に恥じぬ性能を持っています。つまりこの系譜ももっと辿るとGPZ900に辿り着くんですが、ZZRの系譜と被るのでZRXの元となったこのモデルから。

1995ZX1100E

肝心のコンセプトが何なのかというと文字通り

「気軽に楽しめるZZR1100」

というもの。

カタログ写真

時速290km/Lまで想定してたZZR1100エンジンを中低速重視にチューニングし、ポジションも少し易しめに変更。

「ツーリングにもってこいなZZR1100」

という存在になり車体価格も869,000円とかなり抑え気味で晩年にはABSとパニアケースを装着したモデルも登場しました。

ZX1100F

こうやって見るとZX-12RとZZR1200の関係に似てますね。というかこれEX-4ならぬEX-11では。

主要諸元
全長/幅/高 2180/720/1210mm
シート高 790mm
車軸距離 1520mm
車体重量 242kg(乾)
[252kg(乾)]
燃料消費率 28.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 22.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1052cc
最高出力 97ps/8500rpm
最高トルク 9.0kg-m/4500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後170/60ZR17(72W)
バッテリー YTX14-BS
プラグ CR9EK
または
U27ETR
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.5L
交換時3.2L
フィルター交換時3.5L
スプロケ 前17|後43
チェーン サイズ530|リンク112
車体価格 869,000円(税別)
[1,050,000円(税別)]
※[]内はABSモデル(ZX1100F)
系譜図
GPz11001995年
GPZ1100
(ZX1100E/F)
ZRX11001996年
ZRX1100/II
(ZR1100C/D)
ZRX1200R前期2001年
ZRX1200R/S
(ZR1200A/B)
ZRX1000DAEG2009年
ZRX1200DAEG
(ZR1200D)