MT-10/SP(B67/BW8) -since 2016-

MT-10

「The king of MT.」

そのコンセプト通りMT-01以降不在となっていたMTシリーズの長男坊として登場したMT-10(B67)とMT-10SP(BW8)。

元がR1なだけあってトラクションコントロールシステムやクイックシフター、スリッパークラッチや出力モード切り替えといった電子制御の成せる装備はそのまま標準装備し、更にはR1になかったクルーズコントロールシステムまで採用。ポジションや足付きも改善されています。

MT-10SP

2017年に追加されたSPモデルはR1Mと同様に電子制御サスペンションやフルカラー液晶などを搭載してるんだけど面白いのがYZF-R1Mと同様に積まれたYRC(ヤマハ・ライド・コントロール)という装備。

「PWR(出力モード)」「TCS(トラコン)」「QSS(クイックシフター)」「ERS(前後サスのセッティング)」を自分なりにセッティング出来る。しかもハンドルスイッチだけでなくスマホ(専用アプリ)でも。

MT-10

スマホ世代を狙い撃ちとは・・・まあSPは200万円しますけどね。YZF-R1Mより100万円も安い事を考えると結構お買い得な気がしないでもないですが。

なんて冗談はさておき

「MT-10はYZF-R1をネイキッドスタイルにしたバイク」

と簡単に片付けてはつまらないので少し掘り下げてみます。

MT-10UK仕様

MT-10のエンジンのベースとなっているYZF-R1のCP4エンジンというのはご存知の通りクロスプレーンの不等間隔燃焼エンジンです。

クロスプレーン直四のメリットは一般的な直四が起こす慣性トルク(トルクの波)と二次振動(微振動)を起こさないこと。

※クロスプレーンについては「クロスプレーン(不等間隔燃焼)だと何が良いのか」をどうぞ

クロスプレーン

当然ながら微振動やトルクの波は無い方が扱いやすいし疲れないから、性能的に言えばクロスプレーンの方が優れていると言えるんだけど・・・官能的かといえば意見が別れるのが現実。

一般的な直四好きが思う直四(フラットプレーン)の魅力は

「アクセルを捻れば何処までも突き抜ける疾走感」

でしょう。

これは回転数に応じて等間隔な点火タイミングから来るモーターのような排気サウンドと微振動が起こるから。よく漫画で跨ってエンジン捻った途端に鳥肌が立ったように描画されたりするアレです。

MT-10ヘッドライト

それがMT-10(クロスプレーン直四)は無い。だからエンジンサウンドに違和感があるとか、気付いたら凄いスピードが出ていたとか言われますね。

何よりも速さが大事なYZF-R1という半レーサーにおいてそんなタイムを縮める事に一切関係のない要素は必要ないのは当然だけど、これがストリートユースまして猛々しさが必要なストリートファイターとなると話が変わってくる。

MT-10欧州壁紙

そこでヤマハは吸排気系を絞ってギア比を落とすという低速寄りチューニングのメジャーな方法だけでなく、MTシリーズ共通のコンセプトである”トルク&アジャイル”を実現するためクランク周りの動力部分の重量(慣性モーメント)も上げました。

「トルク&アジャイル」とか「慣性モーメント」とか言われてもナンノコッチャですよね。ヤマハの開発者の人には申し訳ないけどザックリ言って、一つ一つの動きが重くなるので体感トルク(トルクフィーリング)が増します。実トルクも増しますが。

ちなみにフレームもスピードレンジが変わることから剛性を最適化するため60%も作り変えられたとのこと。何だかんだで結構大掛かりな変更が加わってますね。

MT-10カウルレス

何となく分かると思いますが低回転寄りにするということは即ち高回転を捨てるということになるわけですが、クロスプレーンでソレをした事で面白い変化を生んでいます。

YZF-R1は低回転域では”デロデロ”または”ドコドコ”という二気筒のようなフィーリングな一方で、美味しい回転数である10000rpm以上になると一般的な直四と大差ないフィーリングになる。

ところがMT-10の場合はレッドも11500rpmとR1よりも低速寄りにしているので、結果として美味しい部分がデロデロのまま。怖い顔でデロデロいわせながらグイグイ引っ張って行くわけです。

つまりMT-10というのは悪く言うと

「四気筒らしさがほとんど無いバイク」

MT-10カタログ

と言えるんだけど、反対に良く言うと

「物凄く回る二気筒っぽいバイク」

欧州仕様

と言えるわけです。四気筒は四気筒なんだけど四気筒×1じゃなくて二気筒×2みたいなバイク。

一般的な四気筒が好きな人はこれに乗っても今ひとつピンと来ないかもしれないけど、反対に直四が好きじゃない人はコレに乗ったらビンビン来るかもね。

主要諸元
全長/幅/高 2095/800/1110mm
シート高 825mm
車軸距離 1400mm
車体重量 210kg(装)
[212kg(装)]
燃料消費率 14.0km/L
※WMTCモード値
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 997cc
最高出力 160ps/11500rpm
最高トルク 11.3kg-m/9000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70-17(58W)
後190/55-17(75W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR9E-J
推奨オイル ヤマルーブ プレミアムシンセティック
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.9L
交換時3.9L
フィルター交換時4.1L
スプロケ 前16|リア43
チェーン サイズ525|リンク114
車体価格 1,550,000円(税別)
[1,850,000円(税別)]
※[]内はSPモデル
系譜図
MT-01 2005年
MT-01/S
(5YU)
MT-03 2006年
MT-03
(5YK/29D)
MT-10 2017年
MT-10/SP
(B67/BW8)

MT-03(5YK/29D) -since 2006-

MT-03

日本ではほとんど馴染みのないMT-03(型式は海外のもの)
出た時は紹介されたから「あーこんなのあったネ」と思い出す人も居るかな。

といってもこのバイクはイタリアヤマハの発案で生産もイタリア。車名もMT-“03″なんだけど排気量は660ccと大型クラス。

エンジンのベースとなっているのはXT660の物。
近年では珍しいデュアル排気ポートでシングルエンジンながら二本出しマフラーでMT-01の流れを汲んでる。

MT-03コンセプト

でもこれまた残念ながら01に続き思うように販売台数が伸びず、2009年をもって欧州での生産は終了となりました。日本はハナから相手にせず未発売という見切りっぷり。

ブラジル向け(29D)は2013年まで売られていたとの事です。

MT-03カタログ写真

そんなこんなで01、03と二代続けてセールス失敗に終わったMTシリーズだったけどヤマハは何故か諦めなかった。

主要諸元
全長/幅/高 2070/860/1115mm
シート高 805mm
車軸距離 1420mm
車体重量 192kg(装)
燃料消費率
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC単気筒
総排気量 660cc
最高出力 45ps/6000rpm
最高トルク 5.73kg-m/5250rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70-17(58W/58H)
後160/50-17(69W/69H)
バッテリー GT9B-4
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR7E
推奨オイル 10W30から20W50まで
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時3.0L
フィルター交換時3.1L
スプロケ 前15|リア47
チェーン サイズ520|リンク112
車体価格
※国内取扱いなしのため
系譜図
MT-01 2005年
MT-01/S
(5YU)
MT-03 2006年
MT-03
(5YK/29D)
MT-10 2017年
MT-10/SP
(B67/BW8)

MT-01(5YU)-since 2005-

MT-01

「ソウルビートVツインスポーツ」

MTシリーズは車名以外繋がりはほぼ無いんだけど、基本コンセプトは一緒だし紹介したかったので載せました。

新型発表で動画などのCMをバンバン打ってるからご存じの方も居るかと思いますが、車名のMTは元々これが始まりでMax Torque(マックストルク)という意味・・・と言われており信じていたんですが、いざ調べてみると実はそんな情報が見当たらない。

そこで調べてみたら少し前の特設サイトMTワールドに答えがあった

MT-01

『MEGA TORQUE』

こっちが正しい由来みたいですね。

さてそんな初代MTであり初代ダークサイドでもあるMT-01に積まれたVツイン1670ccエンジンはXV1700のエンジンをベースにしたもの。

XV1600

つまりアメリカンのエンジンを積んだスポーツネイキッド。

恐らくMT-01に興味のない人はヤマハの一代限りのマイナー車種という認識かもしれないけど、MT-01に対するヤマハの思いや作り込みは眼を見張るものがあります。

MT-01エンジン

エンジンはXV1600ベースとは言ったけど、メッキシリンダーや鍛造ピストン、FIやクランクなど90%近い部品が変更されていて、もはや別物エンジンとも言えるほどの改良。

さらにボルト締占式バックボーンフレーム、ハブが絞られている逆トラス式スイングアーム共にR1やR6と言ったフラグシップスポーツで採用されている溶接痕が無い綺麗なアルミダイキャスト製。

MT-01カットモデル

そしてブレーキもR1と同じ物(2007年R1と同時に6POT化)を装備しスポーツ性能を高め、更にリアショックの位置やエキゾーストパイプやチタンマフラー等の見た目までにもこだわっています。

鼓

ちなみにイメージテーマは鼓(つづみ)だそうです。

言われてみれば確かに。

でもやっぱり何と言っても一番は01のコンセプトである「鼓動(KODO)」

MT-01壁紙

Vツインエンジンのコレでもかというソウルビートというかパルス感を味わえる様にチューニングされている。

ピークが4750rpmなのを見ると分かる通り、走りだした瞬間からそりゃもう嫌ってほど。

鼓動

「SSでスポーツ走行するのはとても楽しい。でも現実は家を出た瞬間、前を走る車にブロックされストレスが溜まる。それは面白くない。だからそんな状況でも楽しめるスポーツバイクを作りたかった。」

その答えがこのMT-01・・・ただ実はこのMT-01を立案したのはヤマハの人ではありません。

このバイクの立案はヤマハ車のデザインを創業時からほぼ一手に担っているGKデザインによるもの。それをヤマハが承諾し形にしたというプロセスが逆のようなバイク。個性的なのも納得ですね。

ヤマハMT-01

社外デザイナーが企画を立てて実際に形にするなんて普通あり得ない話ですが、ヤマハとGKという腐れ縁のような関係だからできたんでしょう。

ただそんなGKにヤマハが乗る形で作り上げたMT-01ですが、ご存知の通り受注生産ながらあまり売れず2009年をもって受注終了となってしまいました。

こだわる余り車体価格が150万円と高くなってしまった事とあまり認知されていないニッチなカテゴリだった事が理由かと・・・意欲的&威圧的過ぎて腰が引ける人が多かったのもあると思いますが。

ちなみにオーナーさん達の話によるとVMAXと間違われるそうです。それほど認知されてない。そりゃビューエルも捨てられるよって話ですよ。

ビーキングとMT-01

ちなみにネットでよく変態バイクとしてスズキのB-KINGがネタ扱いされていますが、海外ではそんなB-KINGと双璧を成すもうひとつの変態バイクとしてはMT-01は扱われています。

喜ばしいんだか何だか・・・

主要諸元
全長/幅/高 2185/790/1160mm
シート高 825mm
車軸距離 1525mm
車体重量 240kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 15.0L
エンジン 空冷4サイクルOHV2気筒
総排気量 1670cc
最高出力 90ps/4750rpm
最高トルク 15.3kg-m/3750rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17
後190/50ZR17
バッテリー GT14B-4B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR7EA-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.1L
交換時3.7L
フィルター交換時4.1L
スプロケ 前16|リア43
チェーン サイズ530|リンク114
車体価格 1,399,000円(税別)
※プレスト価格
系譜図
MT-01 2005年
MT-01/S
(5YU)
MT-03 2006年
MT-03
(5YK/29D)
MT-10 2017年
MT-10/SP
(B67/BW8)

MT-07(B4C)-since 2018-

MT-07

「Dark Attraction」

2018年モデルにあたるMT-07のB4C型。

遂にヘッドライトレンズまでMT-09から拝借かという顔になり、サイドのタンクカバーやテールライトも合わせてスラント系に変更。

新旧MT-07

中身の方はサスペンションやタンク前まで伸びたシート形状などの小変更のみとなっています。

新旧MT-07リア

要するに化粧直しに近いから正直これと言って書くことが無いのでMT-07のコンセプトについて少しお話を。

MT-07は大型MTシリーズで唯一のスチールフレームバイク。XJR1300が生産終了になり今ではヤマハの大型スポーツバイクで唯一に。

これが何故かと言うとヤマハはアルミにとっても力を入れてるから。

CFアルミダイキャスト

ヤマハは大きい物も作れる大規模なアルミダイキャスト設備を自前で持っており、自動車のエンジンヘッドやサージタンクなど他業種にも供給している。

つまりヤマハにとってアルミというのは内製の強みを活かせる得意分野。だからスポーツバイクがアルミだらけなのは当たり前なわけ。

にも関わらずMT-07がスチールフレームなのはプロジェクトリーダーの白石さんが”絶対にスチールフレームで行く”と決めていたから。

MT-07プロジェクトリーダー

この白石さんは元々サンダーキャットやYZF-R6などガチガチアルミフレームなミドルSSを好んで乗っていたんですが、峠やサーキットなどでは最高のファンライドを味わった一方で、日常でファンライドを体感出来ないことに悩みを抱いていた。

それはモード切り替えや姿勢制御などが当たり前になりだした近年になると更に強く考えるように。

そんな時に任されたのがこのMT-07プロジェクト。

モヤモヤしていた思いを具現化させるチャンスだとして導き出した答えが

MT-07ブラック

「普通の人が普通に楽しめるバイク」

そうして誕生したのが、フロント荷重を重視していない車体バランスに、ハイテンスチールにも関わらずアルミの足元にも及ばないヘロヘロなフレームを持ったMT-07です。

MT-07メインフレーム

そんなヘロヘロフレームに対して

「剛性が低すぎる」

という声を聞いたりします・・・が、それこそMT-07が狙ったこと。当たり前ですがヘロヘロなのはわざとです。

2018MT-07ヘッドライト

そもそもフレームというのはアルミにしろスチールにしろ、適切なスポーツ走行をすると撓るもの。

つまりMT-07でフレームの撓りを感じるのは、慣れないレベルですら無意識の内に適切なスポーツ走行をしていた証。

そんな撓りに不安や不信を持つのは、簡単には撓らず、また弾くように戻る高剛性アルミフレームに慣れすぎて麻痺しているだけ。

2018FZ-07

大型バイクでフレームの撓りを感じ取れるほどスポーツ出来るバイクが、乗り手主導でスポーツ出来るバイクが今どれだけあるかって話。

その狙いは日本のみならず海外でも見事に当たり、MCNという英語圏最大のバイク情報誌の2014年最優秀バイクを筆頭に様々な賞を獲得しました。

国際サーキットで膝擦りながら

「MT-07は最高だ」

と評価されたわけじゃないですよ。

そんな高負荷に耐えられるフレームは持ち合わせていない。

山を幾つも越える旅をして

「MT-07は最高だ」

と評価されたわけでもない。

長距離を走れるほど落ち着いたハンドリングではありません。

2018MT07

そこらへんをテキトーに走って

「MT-07は最高だ」

と評価されたんです。

何が言いたいかというと、百戦錬磨のプロをも唸らせたMT-07のスイートスポットは

「普通の人が使う普通の中にある」

ということ。

そんな普通の人が普通に乗って最高に楽しめるMT-07ですが、高く評価された事はもう一つあります。

2018MT-07壁紙

「普通の人が買える値段で売っている」

という事です。

主要諸元
全長/幅/高 2085/745/1090mm
シート高 805mm
車軸距離 1400mm
車体重量 183kg(装)
燃料消費率 23.9m/L
※WMTCモード値
燃料容量 13.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 689cc
最高出力 73ps/9000rpm
最高トルク 6.9kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR8A-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.0L
交換時2.3L
フィルター交換時2.6L
スプロケ 前16|リア43
チェーン サイズ525|リンク108
車体価格 720,000円(税別)
※国内モデルは18年から
系譜図
MT-07 2014年
MT-07/A
(1WS/1XB/BU2)
XSR700 2016年
XSR700
(B34)
2018MT-07 2018年
MT-07
(B4C)

XSR700(B2G)-since 2016-

XSR700

「Urban Casual Retro-ster」

MT-07のスポーツヘリテイジ(伝承)版となるXSR700。

基本的にはMT-07そのままで、アルミのワイドテーパーハンドル採用でハンドルを手前の高い位置に設定。

シートも質感とボリュームのあるレーザーダブルシートとなりシート高が3cmアップ。

MT-07とXSR700

ハンドリングに落ち着きを持たせる為にキャスター角を若干寝かせてあるのでホイールベースも5mmですが伸びています。

見た目の方も各部ステーやカバーをアルミ製、タンクカバーに至っては職人手作業によるバフ仕上げの物を付ける等など

XSR700カタログ写真

「金が無いぶん知恵を出そう」

というMT-07の裏テーマは何だったのかと思うのような造りに・・・まあその分89万9,640円と20万円近く値段も上がってるわけですが。

ところでXSRもMTと同じように兄貴分のXSR900が居るんだけど、これまた似て非なるヘリテイジに仕上げています。

XSR900がカフェスタイルなのに対し、XSR700はスクランブラースタイル。

XSR700

というのが公式の説明なんだけど、正直それほど違いが・・・でも似て非なるのは確かです。似て非なるのは見た目ではなく中身のほう。

これはベースのMTに依存している事が由来なんだけど、XSR900は見た目に反してアルミフレームにトラコンやモード切り替え等の最先端技術が散りばめられた俗にいうネオレトロ。

イギリス版XSR700

対してXSR700はMT-07を見ても分かる通り、特に変わった物は付いておらず何の変哲も無いスチールフレームというオーソドックスな作り。

これが何を意味するのかというと

「カスタムベースにもってこい」

ということ。

だからメーカーも色々と考えて造っているんですね。その最もたる部分がシートフレーム。

XSR700のフレーム

メインフレームが中途半端な所で終わっており、シートフレームを被せるようにボルトオンする形になっている。これはMT-07にも付いていないXSR700だけの構造。

何でわざわざこんな事をしているのかというと、カスタムの定番ながら後には引けなくなるシートフレームのぶった斬りをしなくてもいいように。

XSR700シートフレーム

つまりシートフレームが脱着式になってるんです。

XSR700は見た目だけでなく中身までもヘリテイジであり、カスタム事情に最大限配慮した最新カスタムベースというわけ。

主要諸元
全長/幅/高 2075/820/1130mm
シート高 835mm
車軸距離 1405mm
車体重量 186kg(装)
燃料消費率 23.9m/L
※WMTCモード値
燃料容量 13.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 689cc
最高出力 73ps/9000rpm
最高トルク 6.9kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58V)
後180/55ZR17(73V)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR8A-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.0L
交換時2.3L
フィルター交換時2.6L
スプロケ 前16|リア43
チェーン サイズ525|リンク108
車体価格 833,000円(税別)
※国内モデルは18年から
系譜図
2014年
MT-07/A
(1WS/1XB/BU2)
XSR7002016年
XSR700
(B34)
20182018年

MT-07(B4C)

MT-07(1WS/1XB/BU2) -since 2014-

MT-07

「COOL URBAN SPORT」

兄貴分であるMT-09から少し遅れて登場したMT-07。

ABS無しが1WSで、ABS有りが1XBとカラーコード枯渇から2017年のみBU2。

ちなみに09と07は統括する人こそ同じだったものの、開発チームは別々だったから

「”今までにない面白い物(※MTのテーマ)”を具現化させるのはウチだ」

と互いに火花を散らしながら開発していたんだとか。

MT-07

MT-09の方が先に出た上に珍しい三気筒だった事から話題を持っていかれた感がありますが、このMT-07も負けず劣らずな物を持っている。

何よりまず挙げられるのが新開発のクランク角270度並列二気筒エンジンですね。

CP2エンジン

ヤマハ自身もCP2(クロスプレーン二気筒)と言っている通り、YZF-R1のCP4(クロスプレーン四気筒)を真っ二つにしたようなエンジンで点火タイミングはVツインと同じ。

まあクランクとか点火タイミングについては「二気筒エンジンが七変化した理由|バイク豆知識」で書いたので割愛しますが

270度クランクのトルク

”二気筒=ガサツに回る”という先入観を持って乗ると、点火タイミングはもちろんクロスプレーンによる慣性トルク(回転ムラ)の無いスムーズなトルクに肩透かしを喰らいます。

昔を知っている人は市販車初の270度クランクパラレルツインのTRX850やTDMを思い出す人も多いかと。

TRX850

「現代パラツインスポーツのパイオニアTRX850|系譜の外側」

ただこれらのバイクとMT-07は点火タイミングが同じだけで全く違うエンジンです。

シリンダーのB/S比や前傾や材質も勿論そうなんだけど一番分かりやすいのが振動を打ち消すバランサーで、TRXやTDMが二本だったのに対しMT-07は一本になっています。

MT-07エンジン

簡単に言うと二本だと振動を完全に消せるけど、一本にすると少し残る。

なんでわざわざ一本減らしたのかというと、MT-07の開発においての最重要項目が

”徹底的に軽く作ること”

だったから。

MT-07サイド

つまり軽さを取るためにバランサーを一本抜いたわけ。

当たり前ですが抜いた事によって消せなかった振動もそのままではなく、クランクとのバランスを計算し心地よく残すよう調整。

こうするためにヤマハが定めたクランクの最低重量より軽くすることになり猛反対にあったそう。結局は押し通したみたいですけどね。

2014YAMAHAMT-07

だからMT-07は予想を遥かに超えるほどタコメーターがビュンビュン動きます。

バランサーを抜いた理由は軽量化のためと開発者(小林さん)も言っているんですが、当然これはコスト面もあると思います。

実際MT-07は装備重量で179kgという圧倒的な軽さだけでなく

「税込69万9840円(※初年度)」

という破格のような安さも持っていた。このおかげで2015年の大型部門で販売台数一位を記録しています。

1WS

なんでMT-07がコレほど安いのかというと、トラクションコントロールや電子スロットルや走行モード切り替え等の最先端デバイスを付けなかった事。

そしてもう一つはアルミやチタンなどの高価な素材を極力使っていない事です。

2016年カラー

・・・しかしここで疑問に思う人も多いと思います。

何故アルミやチタンを使うかというと

「軽くする事が出来るから」

ですよね。

にも関わらずMT-07は装備重量で179kgとかなり軽い。これには”今までに無いもの”というテーマとは別の裏テーマが関係しています。

ヘッドライトとテールライト

それは車体価格を抑えないといけない事から生まれた

「金が使えないぶん知恵を使おう」

という要するに創意工夫でコストを抑えようというテーマ。

マウントプレート

それが見て取れるのが例えば公式でも説明されているサス、マフラー、ピボット部のマウントプレートの一体化。

MT-07ハンドル周り

他にもスイッチボックスなど流用できるものはMT-09から拝借し、デコンプ(圧縮を少し逃がすことで始動性を上げる)機能を設けることでバッテリーとセルモーターをダウンサイジングなどなど。

単に安物にグレードダウンするのではなく知恵と工夫を用いることで、軽く且つ安く造ることが出来たわけ。もちろんグローバル展開によるスケールメリットも大きいですけどね。

2015年カラー

車体価格の割に安っぽく見えないのが何よりの証拠なんですが、実はこれにもちゃんと配慮があるです。

その配慮が特に現れている部分が、アルミ素材の凝った形をしたピボットカバーやクランクケースカバー。

MT-07リアビュー

そして明らかに不相応なスイングアームと180/55というワイドタイヤ。

これらはハッキリ言ってデザイン有りきの物。

これらを採用しなければ車体価格はもっと抑えられたし知恵を絞り出す苦労も緩和されるのに譲らなかった。

MT07

「眺める楽しさも絶対に必要だ」

とプロジェクトリーダーの白石さんが考えていたからです・・・が、少し別の効果も持ったと思うんですよ。

MT-07がなんで売れたかって言うとやっぱり乗って楽しかったから。

長くなったので2018年型で話しますがMT-07が誰のために作られたバイクかというと

「何処にでも居る普通のライダー」

です。

MT07のターゲット

でもだからといって見るからに安っぽいと”普通のライダー”は乗る前から安物バイクという結論を出し選択肢から外してしまう。

MT-07は価格を少し上げてでもデザインを取ったから門前払いされることなく、実際に乗ってくれて感動する普通のライダーが多かった。

だからこれだけ売れたんではないかと。

主要諸元
全長/幅/高 2085/745/1090mm
シート高 805mm
車軸距離 1400mm
車体重量 179kg(装)
[182kg(装)]
燃料消費率 24.1m/L
※WMTCモード値
燃料容量 13.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 689cc
最高出力 73.4ps/9000rpm
最高トルク 6.9kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR8A-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.0L
交換時2.3L
フィルター交換時2.6L
スプロケ 前16|リア43
チェーン サイズ525|リンク108
車体価格 648,000円(税別)
[694,000円(税別)]
※[]内はABSモデル(1XB/BU2)
系譜図
2014年
MT-07/A
(1WS/1XB/BU2)
XSR7002016年
XSR700
(B34)
20182018年

MT-07(B4C)

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