
MOTO GUZZIといえばコレといえる縦置きV2エンジンを最初に搭載したV7。
先に述べた通り経営危機による経営権の譲渡、経費削減の一環としてモデル整理などが行われていた状況で、エンジンの新造なんて論外だったモトグッツィ。
そんな中で何故このような新設計のビッグバイクを出せたのかというと、イタリアの防衛省から三輪車用エンジンの開発という競争入札、そして警察からも白バイの競争入札があったから。
ビッグバイクの市販モデルが無かったモトグッツィにとってはレースや農耕用トラックなどで培った技術力を発揮し大型車を作れる千載一遇のチャンス。

Benelli、Gilera、Laverda、Ducatiといった同じイタリアのライバルたちとの選定争いになったわけですが、唯一のドライブシャフトモデルだった事や、耐久性&整備性、更にはコスト面でもライバルたちを大きく引き離すトップの評価を獲得し、見事選定されました。
嬉しい誤算だったのは、この高く評価されたエンジンの話がアメリカにも飛び火し、カリフォルニア州の白バイとしてもデビューすることになったこと。

今でも売られているモトグッツィのクルーザー”カリフォルニア(1972年~)”はこのカリフォルニア州の白バイが原点です。
ハーレーから勝ち取ったと話題になったものの、実は最初はこんな形では有りませんでした。しかしカリフォルニア州の方から
「今までハーレーだったから混乱しないようにハーレーみたいにして」
と言われこの形になったんだとか。
そうしてでも獲得したいほどアメリカの市場というのは大きいものだったわけですね。その狙い通りアメリカが採用した事でますます大きな話題となり世界中の官公車としてV7エンジンはヒットしました。
そしてここでやっと出てくるのがV7。

官公用に作ったエンジンやオートバイを元に自社製品(民生品)として作られたのがV7というわけです。
他にもルパン三世でお馴染みFIAT500もMOTO GUZZIのエンジンを載せる方向で話が進んでいたんですが頓挫したという話もあります。惜しかったですね。
さて話をV7に戻しますが、元々が官公車という事でそのタフさからイタリア本土のみならずアメリカでも高い評価を得て大ヒットしました。コレが無かったからMOTO GUZZIは間違いなく消え去っていたでしょうね。

更に69年には753ccにまでボアアップしたSPECIALなども登場。
そんなV7シリーズの中でも一番成功したモデルと言われるのが1973年に登場したV7スポルトというモデル。

スポルトという名前からも分かる通り748ccのエンジンを高剛性な新設計のトンティーフレームに積んだスポーツモデル。
トンティーフレームっていうのはダブルクレードルフレームみたいなものなんだけど、剛性を増すために可能な限り直線でエンジンを包み込むように作られてる。

V7は見て分かる通りエンジンが少し異質で横に張り出してるからフレームも少し変わってるんですね。V型シリンダーの間をフレームが突き抜けるようになっているのが特徴です。
この後もチェーン駆動となった750S、そしてリアがディスクブレーキになったS3と続くことになり経営再建に成功。今ではピアジオグループ一員になるまでに成長することになりました。