メグロ Kシリーズ-since 1960-

メグロ K2 スタミナ

「日本最古の大型スポーツバイク」

Wシリーズを紹介するにあたって欠かせないのがメグロというバイクですが、メグロと言われてもピンと来ない人は多いと思うので歴史を中心に紹介します。

メグロというのは戦後まで日本を代表するバイクメーカーだった目黒製作所、そして目黒製作所のバイクのこと。

目黒製作所

ホンダやスズキが生まれるずっと前の1926年に村田と鈴木という二人が設立した会社で、1939年に株式会社になりました。

もともと二人は村田鉄工所という勝海舟の孫である勝精の出資で設立された会社においてエンジンなどを造っていたのですが、思うように仕事が出来ず独立。

新たに目黒製作所を設立し輸入車の補修部品やギアボックスなどを手がける様になったのですが

『品質が良く壊れない』

と評判を呼び、メキメキと頭角を現しました。

そんな世間からの高い評価に自信を持ち

「今こそ部品屋から脱する時」

として、バイクを造りを始めます。

ベルセットKTT

その際に参考にしたとされるのが、マン島レース優勝を果たしたベロセという英メーカーのベロセットKTTというレーサー。

これをベースに完成させたのが目黒製作所の第一号であるZ97。

メグロZ97

単気筒OHV498ccで当時クラストップとなる11馬力。

ちなみにZ97という車名の由来は海軍のZ旗と皇紀2597年(1937年)から取っています。

こうした理由は当時、大型バイクというのは貴族や国が買って乗るものだったから。そしてその狙い通り、国や軍を中心に約850台生産されました。

ただ不運なことにすぐに第二次世界大戦が始まってしまい目黒製作所もオートバイの生産を中断。

目黒製作所のロゴ

終戦から暫くしてオートバイ事業を再開したんですが、今度はホンダやスズキといった後発メーカーが

「速い、安い、オシャレ」

と三拍子揃ったバイクで攻勢をかけてくるように。

目黒製作所

それらに対抗するため目黒製作所もミドルクラスなどバリエーションを展開。

その中でも250ccモデルとして登場したジュニアシリーズは非常に人気で、目黒製作所最大のヒット作となります。

ちなみにこのジュニアは遠い未来に出てくるエストレヤの始祖。

何となく面影がありますね。

更には上で紹介したZ97から始まったZシリーズの上位モデルとして並列二気筒650ccのTシリーズ”セニア号”を1955年に発売。

セニアT1

これはOHV二気筒の始まりであるトライアンフのモデル6/1、それを元に作られたBSAのA7 Shooting Starというバイクを参考に作られたバイク。

トライアンフ6/1

約30馬力で圧倒的な速さを誇っていたものの、相変わらず高かったので生産台数は三桁で半数近くが警察などの官公庁向けでした。

そして1960年、500cc単気筒のZシリーズと650cc二気筒のTシリーズを一本化する形で誕生したのが497cc並列二気筒エンジンのスタミナK1というモデル。

メグロスタミナ

これがWシリーズの始まりであり・・・目黒製作所の最後の大型スポーツバイクとなります。

というのも先に話した通り、この頃になるとホンダやスズキの快進撃が凄まじく、メグロはどんどん苦しくなっていったから。

ここで登場するのがカワサキ・・・正確に言うと重工や車輌と合併する前の川崎航空機工業。

川崎航空機工業

当時の川崎航空機工業はバイクを含め様々なエンジンを造って供給する事業もやっていました。

しかしバイク需要の拡大からエンジン供給だけでなく

「自分たちで全部造って販売しよう」

となり”川崎明発工業”を設立。

メイハツ

”メイハツ(明発)”ってメーカー名を聞いたことないでしょうか。

これが皆が思うカワサキ(カワサキモータース)の始まりです。名前の由来はもちろん明石の発動機だから。

しかしメイハツには2つほど弱点がありました。

一つは

『大型バイクのノウハウを持っていない』

という事です。

カワサキ明発

メイハツが造っていたのは125cc以下の小排気量エンジンのみで大型は未知の世界だったんです。

そしてもう一つは

『販売網を持っていない』

という事。

カワサキはBtoB(企業から企業へ)が基本だったため全国の小売との繋がりを持っていなかった。

そこで

・販売網は全国に持っているものの小排気量が苦手な目黒製作所

・小排気量は得意なものの大排気量技術と販売網を持っていないメイハツ

互いが互いの弱点を補えるとして業務提携し、メイハツはカワサキ自動車販売になりました・・・が、目黒製作所の経営が上手く行かず倒産。

カワサキメグロ

カワサキが救う形で目黒製作所はカワサキメグロ製作所になりました。

しかしそのカワサキメグロも業績不振により1963年に敢えなく倒産し、カワサキ自動車販売に吸収。

カワサキ500K2

ここで目黒製作所はカワサキの一部となり、メグロという名前だけが残る形になりました。

これは当時の移り変わりを象徴するメグロのタンクエンブレム。

メグロ カワサキ エンブレム

左が目黒製作所時代のK1(メグロスタミナ)で、右がカワサキに吸収された後に改良されたK2(カワサキ500メグロK2)のもの。

駆け足でだいぶ割愛した紹介ですが、これがカワサキとメグロの関係。そしてWシリーズの土台です。

ちなみに話が逸れますが、カワサキは目黒製作所と提携する前年までは四輪メーカーを目指していました。

KZ360

これはその試作機であるKZ360という軽自動車。

もし目黒製作所と提携していなかったらカワサキは二輪に舵を切らず、四輪メーカーになっていたかもしれませんね。

三菱、富士、そして川崎という重工の三つ巴を見てみたかった気がしないでもない。

主要諸元
全長/幅/高 2150/900/1070mm
シート高
車軸距離
車体重量 190kg(乾)
燃料消費率 35.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 空冷4サイクルOHV2気筒
総排気量 497cc
最高出力 33ps/6000rpm
最高トルク 4.1kg-m/4000rpm
変速機 常時噛合式4速ロータリー
タイヤサイズ 前3.25-18-4PR
後3.50-18-4PR
バッテリー
プラグ
推奨オイル
オイル容量 全容量2.2L
スプロケ
チェーン
車体価格 295,000円(税別)
※スペックはメグロ500スタミナK1
系譜図
メグロ1960年
メグロシリーズ
W11966年
650-W1
(W1/S/SA)
650RS1973年
650-RS
(W3)
EJ6501999年
W650
(EJ650A/C/D/E)
EJ4002006年
W400
(EJ400A)
EJ8002011年
W800
(EJ800A)
EJ800A2019年
W800
STREET/CAFE
(EJ800B/C)

「メグロ Kシリーズ-since 1960-」への1件のフィードバック

  1. トーハツからランペットと云ふ名の50㏄バイクがあり当時此のバイクが唯一此のクラスで時速百キロを超えていた。そしてメグロは当時の白バイでした。右足でギヤチェンジ左でブレーキそして此のクラスではリコーて云ふ大型バイク等も存在してました。

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