Wの系譜

W650
(EJ650A/C/D/E)
-since 1999-

W650

「美しいオートバイの創出」

W3の生産終了から四半世紀経った頃に突如として登場したW1のようで・・・何処かW1とは違うW650。

これは

「直四とは違う新しいスポーツバイクを」

と企画の谷さんの考え始めたのが始まり。

かといってカワサキにV型やシングルスポーツのイメージはない、カワサキらしさを出すなら二気筒という声が多く

「二気筒ならバーチカルツインだろう」

という結論に。

バーチカルツイン

ちなみにバーチカルツインというのはシリンダーが前傾しておらずそびえ立つように直立したエンジンのこと。

 

そして見た目がクラシックになったのは先に出ていたエストレヤの影響。

思わぬヒットとなったエストレヤのステップアップ先となるバイクにしようとなったんです。

W650スケッチ

このバーチカルツインクラシックというのは実はマーケティングの要望ではなく、造り手たちが勝手に決めた事だったりします。

 

そして口うるさい人達が寄って集って造ったエストレヤのステップアップ先というだけあり、このW650も非常に拘って造られたというか拘りしかないと言ったほうがいいか・・・

カワサキEJ650

W650の設計にあたり再優先事項だったのは

『機能美』

です。

W650のデザイン担当はW1を所有した事もある猪野さんという方なんですが

「機能美とは何か」

を追求するため欧州の博物館で車や戦闘機などを見て回り、昔のエンジン造形に感銘を受けた。

それを参考にまずバーチカルツインのスケッチからスタート。

エンジンスケッチ

正式採用される事となるベベルギアを始め、コグドベルト、カムチェーン、カムギアなどなど様々なタイプのカム駆動をスケッチ。

案を見てもらうと分かる通り最初はDOHCで行く予定でした。

しかし

「DOHCは頭でっかちで美しくない」

と擦った揉んだあったものの”一番美しい”という理由でSOHCのベベルギアで行くことに。

エンジンモック

これは紙で作ったモック。

 

ベベルギアというのは要するに傘歯車のことで、厳密に言うと

「ベベル・ドリブン・カム・シャフト方式」

と言います。

エンジン

エンジンの横から垂直に伸びているシャフトがそう。

シャフトドライブとしては今でも使われてますが、カム駆動ではまず採用されることのない方式。

それが何故かといえば凄くコストが掛かるからです。昔はドカティもやっていたんですが、そんなドカティですらコストを理由に止めています。

 

しかもカワサキの場合は更に問題がありました・・・ベベルギアを造る設備を持っていなかったんです。

だからベベルギアにするには製造する設備を導入する必要があった。

W650壁紙

たった一車種の為だけに新しい設備を導入するなんてまずありえない話。

しかし猪野さんを始めとした開発チームが

「ベベルギアじゃないと意味がない。ベベルギアなら絶対ヒットする。」

と頑なに折れず、説き伏せる事で設備の導入が決定。

 

W650がW1と違うバイクである事はここに現れています。

もしもW1の復刻なら簡易で安価なOHVを採用すればいいだけ。

W650当時のHP

でもそうしなかったのはW650がW1の復刻ではなく

「先代より美しいW」

という考えで開発されたバイクだったから。

Wシリーズが採用していたOHVは最初から考えていなかったそうです。

 

ベベルギアをピックアップして書きましたが、他の部分もたくさんこだわりがあります。

カワサキW650

例えばその下部になるクランクケースやオイルパン形状に至るまで何度もやり直し。

フレームに至ってはスケッチから入るのではなく原寸大のフレームモックを用意させ、そこからデザインを煮詰めていくという異例なワークフロー。

W650デザインスケッチ

当然あーだこーだと討論される度に作り直し。

車体担当だった真野さんは泣きながら作業をしたそうです。

 

そんな労を惜しまず造られたW650ですが、実は発売前に一悶着ありました。

一般公開に先駆け一部のカワサキファンクラブ(KAZE)会員に先行公開したところ大不評だったんです。

「こんな古臭いバイク出す暇があったら新しいNINJAを出せ」

という怒号のような声が多く返ってきた。※当時RRやR1が世間を賑わせていた

EJ650

更に会社が実施していた

「バーチカルツインのクラシックが出たら欲しいか」

というWという名を敢えて伏せた形で取ったアンケートで欲しいと答えた人は・・・僅か3%。

 

この事実に開発チームは頭を抱えたらしいのですが、この拘りの詰まったW650には絶対の自信があった。

そしてそれを上司もよく理解しており、腹をくくってくれたから発売することが出来たんです。

W650 THE BOOS写真

発売時にはテコ入れとしてここに書かれている事が載っているスペシャル本まで発行しました。

 

そしていざ発売されると・・・そんな下馬評が嘘のような歓迎ムード。それまでカワサキに興味がなかった人が振り向いてくれたんです。

カタログ写真

そしてデビュー時だけの人気ではなく、生産終了を迎える2008年までコンスタントに売れ続けるという理想的な人気。

終わってみれば累計生産台数は一万台弱も生産される事となりました。

エンジン:空冷4サイクルOHC2気筒
排気量:675cc
最高出力:
50ps/7500rpm
48ps/6500rpm
最大トルク:
5.7kg-m/5500rpm
5.5kg-m/5000rpm
車両重量:194kg(乾)
※[]内は排ガス対応の04~モデル
※A型:アップライトハンドル
※C型:ローハンドル
※D型:A型+クロムメッキ
※E型:C型+クロムメッキ

系譜図

メグロ 1960年
メグロKシリーズ
W1 1966年
650-W1
(W1/S/SA)
650RS 1973年
650-RS
(W3)
EJ650 1999年
W650
(EJ650A/C/D/E)
EJ400 2006年
W400
(EJ400A)
EJ800 2011年
W800
(EJ800A)

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