TDM850(5GG/4TX)-since 1996-

TDM850後期

「オーガニックバランス」

欧州における年間販売台数8000台超というはや欧州ヤマハの顔にまでなったTDM850の後期モデルとなる欧州仕様4TXと国内仕様5GG。

最初に変更点を上げると

・ライトを始め外見が一新

・ラジアルタイヤの採用

・フロントディメンションの変更

・80馬力にアップ

・タンク20Lアップ

などなど中身も外見も更にキリッとパワーアップしました。

4xtカタログ写真

ただ特筆すべき変更点はエンジンで、一年前に登場したTRX850譲りの270度位相クランクに変更。

これによって『キング・オブ・ザ・ワインディングロード』と言われていた評価に加え不等間隔燃焼によるパルス感がプラス。

オールラウンドスポーツとしてもう非の打ち所がないバイクになったんですが・・・少し野暮な話をします。

実はこのエンジンの変更にTDM850のエンジンを造ったチームはエンジン開発リーダーの小栗さんを筆頭に難色を示していました。

TDM850はもともと360度クランク(単気筒を2つ並べた形)で安定したトルクを出すうえに吹け上がりも軽くしておりビュンビュン回せる元気の良さを持ったパラツインだった。

TDM850黒

360度クランクの二気筒は最初に誕生した二気筒という事もありWやボンネビルなどレトロ系のエンジンというのが当たり前だった中でビュンビュン回るタイプ。

「ありそうで無い面白い自信作のエンジン」

という背景があったので難色を示したんです・・・では何故変わったのとかというと残念な事に欧州と同じくらい大型バイクが売れる日本での評価が良くなかったんです。

TDM850後期サイド

欧州で高い評価を獲得した一方で日本でTDM850の発売前評価試験を行ったところ

「なんでこんなビュンビュン回るエンジンなの」

と疑問視する声が社内から多く聞かれた、というかそういう声しか上がってこなかった。

この大きな原因は先に話した通り豊かなトルクを生む360度クランクつまり等間隔燃焼が原因。

TDM850クランクアングル

安定したトルクを生む360度クランクというのは等間隔で燃焼する。

等間隔で軽やかに吹け上がる・・・・そう、フィーリングが直四に近いんです。

この結果TDM850は社内評価で

「直四みたい」

という”酷評”をされた。

「直四みたいなんて良いじゃん」

と思う方もいるかも知れない。

でもそう思うのは”直四好き”だから。メインターゲットである二気筒が好きな層の多くは違う。

「今までに無い面白いツインだね」

とは捉えてくれない。ドコドコと言わせて走る

「スポーツツインらしさ(味)が無い」

と捉えられてしまうです。実際ヤマハの社内評価でもそうだった。

この事に自信作だったエンジン設計の小栗さんは衝撃を受けたそう。※別モNo.319より

TDM850リア

360度からパルス感が分かりやすい270度へ変更という本来ならばフルモデルチェンジ級の変更をマイナーチェンジで行ったのはこの

「スポーツツインらしいツインしか認めてもらえない」

という市場背景が少なからずあったから。

この一件でヤマハは

『ツインに対する市場の固定観念』

を思い知る事となり、その後のツインスポーツの方向性に多大な影響を残す事になりました。

もちろん決してTRX850(270度クランク)のエンジンになった事が悪いと言いたいのではありません。

TRX850のエンジンが好評で一本化する意味合いもあったとは思います。実際このエンジンも同じ小栗さんが納得して開発したモノです。

ただ、直列のクランク角やV型のシリンダー角など一見すると多様な形があり認められている二気筒も、スポーツやクルーザーなど乗せるエンジンの形がセオリー化しているカテゴリという枠に収めた時に

TDM850後期カタログ写真

「枠を越える多様性を認めてもらえるか」

というと話が変わってくるという話。

そしてこの問題にヤマハが直面し葛藤したがTDM850・・・という話でした。

主要諸元
全長/幅/高 2165/790/1285mm
シート高 805mm
車軸距離 1475mm
車体重量 232kg(装)
燃料消費率 30.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 20.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 849cc
最高出力 80ps/7500rpm
最高トルク 8.2kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前110/80-ZR18
後150/70-ZR17
バッテリー GT12B-4
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR8EA-9
または
X24EPR-U9
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.2L
交換時3.8L
フィルター交換時3.9L
スプロケ

前17|リア42
[前16|リア43※99年以降の4TX]

チェーン サイズ525|リンク114
車体価格 798,000円(税別)
※スペックは国内仕様(5GG)
系譜図
XTZ750 1989年
XTZ750SUPER TÉNÉRÉ
(3LD/3TD/3VA)
TDM850前期 1991年
TDM850
(4EP/3VD)
XTZ850R 1995年
XTZ850R/TRX
RDM850後期 1996年
TDM850
(5GG/4XT)
TDM900 2002年
TDM900/A
(5PS/2B0)
XT1200z 2010年
XT1200Z
SUPER TÉNÉRÉ
(23P)
XT1200ze 2014年
XT1200ZE
SUPER TÉNÉRÉ
(2BS/2KB)

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