「グランプリ・ムーブメント」
先代にあたるMBXの後継として登場したのがHURRICANE系デザインのNS50F/AC08型。
前後17インチのアルミ製キャストホイールや小物入れ内蔵のシートカウル、そして明るいハロゲンヘッドライトなどを装備。
50ccスポーツにおける一つの集大成の様なモデルで、ストリート・サーキット問わず非常に高い評価でした。
1988年にはエンジンのマウントと給排気が見直され中低速での使い勝手を向上。更に翌1989年にはレンズ一体型のデュアルヘッドライトで光量アップ。
ディスクローターも現代的な多孔タイプに変更されました。
NS50Fは『ゴエフ』と呼ばれ親しまれていたんですが、いかんせん需要低迷期だった事と後継の人気が爆発したことで影に埋もれがちというか何というか。
ただ実はこのNS50Fは生産終了後も別の形でバイク文化に多大な貢献をした偉大なバイクでもあります。
それが何かというと『レースベース』です。
市販状態からレースなどに不要な保安部品を最初から付けないことで少し安くなっているモデル。
スーパースポーツなどでご存知の方も多いと思いますが、そのレースベースという車両を一番最初に始めたのは実はこのNS50F/NS50R。
企画したのは二輪事業の小澤さんという偉いお方。
キッカケはレーサーレプリカブームの終焉により人気が落ち込んでいくレース事情と同時に
「前後17インチの原付レーサーを」
という声がショップから上がってきた事から。
どうして17インチなのかというと大型クラスと同じサイズだからステップアップに打って付けなんですね。
という事でNS50Fが生産終了となった1996年に混合給油に変更したNS50RをHRCから発売。
これがRSなど高価な市販レーサーとも、余計なものや制約が付いている量販車とも違う
『レースベース車』
と呼ばれる文化の始まりなんです。
今でこそ規格化され当たり前の様に販売されていますがそんな文化が無かった当時
『完成した量販車から保安部品を取って安価に販売』
なんていうのは到底理解されるものではないんだけど
「未来のレーサーやメカニックを育てるため」
という大義の為に何とかよ用意されたのが実情。
当然ながら宣伝の予算もなく個々のショップでコピー出来る諸元表だけでカタログも無しの完全予約制の受注生産。
だから最初は存在を知らずに逃してしまう人が多かったものの、ベースとなっているNS50Fが元々レース界で評判が良かった事やその存在が口コミで広まり雪だるま式に注文が入った事から何度も追加生産が行われました。
これはNS50Fにも言えることだけど、この17インチのNS50F/Rで腕を磨いた人は間違いなく多い。
もしかしたら一番レーサーを育てたバイクと言えるかもしれない。
主要諸元
全長/幅/高 | 1855/630/1065mm |
シート高 | 760mm |
車軸距離 | 1260mm |
車体重量 | 92kg(装) |
燃料消費率 | 68.4km/L [61.5km/L] ※定地走行テスト値 |
燃料容量 | 10L |
エンジン | 空冷2サイクル単気筒 |
総排気量 | 49cc |
最高出力 | 7.2ps/8000rpm [7.2ps/10000rpm] |
最高トルク | 0.65kg-m/7500rpm |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前2.75-17-4PR 後3.00-17-4PR |
バッテリー | FB3L-A |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
BR8ES |
推奨オイル | Honda純正ウルトラ2スーパー |
オイル容量 | 1.1L |
推奨トランスミッションオイル | ウルトラU(10W-30) |
オイル容量 | 全容量0.9L 交換時0.8L |
スプロケ | 前14|後41 |
チェーン | サイズ420|リンク116 |
車体価格 | 209,000円(税別) [225,000円(税別)] ※[]内は89以降モデル |
レーサーのタマゴを育てたとともにサンデーメカニックのタマゴも育て、
そして皮を剥いていった素の形のタンクとフレームの形状に
「あれ? これほぼMBXのデザイン変更版じゃね?」
というメーカーへの疑いのタネも播いていったバイク
ああ、あなたも見てしまったのですね・・・。
それが分かってしまうとアッという間に情熱が冷めてしまいがちなのはバイク乗りあるあるでしょうか(笑)。