
カタナの初代にあたるSZ型。
本当の型式はGS110X~GU76AでSZというのはモデルイヤーコードなんですがこちらの方が普及していてシックリ来るのでそちらで通していきます。
プロトタイプの系譜でも話した様にモーターショーで鮮烈なデビューを飾ったカタナは約束されたように大ヒットを飛ばしました・・・ただし日本以外で。
というのも当時まだ日本では
『バイクは750ccまで』
というナナハン規制があったから。
だから買うなら一度海外に持っていかれたカタナを日本に再輸入して外車にして買うしかなかった。

今でいう逆輸入車ですが、実は逆輸入車という文化が広く知れ渡ったのはこのKATANAの影響が大きい。
しかし逆輸入車という手段が広く知れ渡ったとはいえ当時はまだモトマップもなく逆輸入を大々的にやっている企業なんてなかったから車体価格は200万以上もした。今で言えば400万円くらい。
もちろんスズキも国内向けにちゃんとナナハン版となるGSX750Sを造ったんですが、日本独自の規制の関係でスタイリングが変わってしまった事でGSX1100Sへの憧れは更に強まる結果に。
そんな羨望の眼差しを独り占めしていた初期型にあたるSZの特徴としては
・星型ホイール
・ANDF(アンチノーズダイブフォーク)
・各部をシルバーで統一
などがあります。

斬新な外装だけでなくそれに負けないシルバー塗装が美しいエンジンやツルツルなパイプフレームなど初代にして完成形ですね。
さすがさすがハンスムート・・・と思うんですが、実はこの車体の意匠はハンスムートによるものじゃない。
これ開発責任者を務められた横内さんを始めとしたスズキの意匠なんです。

というのも横内さんがCLUBMAN/241で暴露していたんですが、デザインに負けない性能をもたせる為にハンスムートと開発について詰めているとカウル造形には拘るものの車体側には何の関心も無いことがわかった。
しかし車体設計のプロフェッショナルである横内さんは

「GSX1100Eに外装被せるだけでは駄目だ」
と考えノーマークだった車体を自分たちで改良。
具体的に何処を手がけたのかと言うといま話したシルバー塗装が美しいエンジンやツルツルなパイプフレーム。

中でも力を入れたのがフレームです。
タンデムステップを始めとした各部を溶接痕を出さないようロストワックス法などで可能な限り鋳造に変更。
溶接が必須な箇所もスパッタ(溶接によって出来るカス)がなるべく出ない溶接方法を選び、どうしてもの場合はバフで削るという手段まで取った。
このため車体価格が当初の予定より1割ほど高くなってしまったんだそう。
どうしてそこまでしたのかというともちろん

「スズキの新時代を築くバイクになる」
と横内さんを始めスズキのメンバーが確信していたから。だから正にカタナを研ぐような意匠を施したわけです。
つまりカタナはハンスムートデザインと言われるけど実はそれは上半分の外装だけで、下半分は横内さんを始めとしたスズキによるもの。

だから正直に言うとデザインを形にし磨き上げたスズキの功績が一番大きいんじゃないかと。
もはや意匠というより『刀匠』ですね。
主要諸元
全長/幅/高 | 2260/715/1205mm |
シート高 | 775mm |
車軸距離 | 1520mm |
車体重量 | 232kg(乾) |
燃料消費率 | – |
燃料容量 | 22.0L |
エンジン | 空冷4サイクルDOHC四気筒 |
総排気量 | 1075cc |
最高出力 | 111ps/8500rpm |
最高トルク | 9.8kg-m/6500rpm |
変速機 | 常時噛合式5速リターン |
タイヤサイズ | 前3.50-19(57V) 後4.50-17(67V) |
バッテリー | YB14L-A2 |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
DR8EA |
推奨オイル | スズキ純正 エクスター |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量4.2L 交換時3.2L フィルター交換時3.6L |
スプロケ | 前15|後42 |
チェーン | サイズ630|リンク96 |
車体価格 | – |