「A Cut Above」
19年の時を経て復活し話題独り占め状態のKATANA/GT79B型。
カタナブランド恐るべしと言えるわけですが、型式からも分かる通り基本的にパワーユニットに関してはGSX-S1000とほぼ同じ。
「ストリートだろうがトップパフォーマーは譲らない」
というGSX-R1000譲りの148馬力エンジンで
・ブレンボキャリパー
・ABS&3モードトラコン
・ローRPMアシスト
など最新装備も変わらず。
ついでにいうと排気系も変わっていない様なのでGSX-S1000同様に社外マフラーが不要なほど良い音を出すかと。
じゃあ何処が違うのかというと説明するまでも無いけど外装ですね。
ストリートファイター感を出しつつもKATANAに見えるデザインなんですが、コレはスズキが一からデザインしたものではなくイタリアの企画がキッカケ。
『イタリアスズキ』
『モトチクリスモ(伊バイク誌)』
『フラスコーリ(伊デザイナー)』
『エンジンズEng(伊ビルダー)』
が協力して製作し2017年のミラノモーターショーに出品したKATANA3.0とよばれるモデルがベースです。
もともとスズキ(というか開発陣)は新しいカタナをメディアに問われる度に
「ベース車や技術進歩との兼ね合いで立ち上がっては満足のいくものが出来ず経ち消えになる事を繰り返している」
と話されていました。
そんな中で出てきたこの3.0がスズキの目に止まりプロジェクトが正式に本格始動。
恐らくトップダウンでの決定でしょうね。
とはいえKATANA3.0はあくまでもユーザビリティを考慮していないショーモデルなので製品化するとなるとそりゃもう大変な話なんですが、それを量販車としてここまで纏め上げたのはスズキ技術者の妙技というほかないです。
中でも苦労が見て取れるのがカタナのアイデンティティでもある鋭い切れ込みが入ったコンパクトなタンク。
これほどの造形をプレスで大量生産するのは不可能なので燃料タンクの上からプラカバーを被せる形になってるんですが、問題はそれだけではなく吸気にあります。
先代にあたるGSX1100Sのエアクリーナーはボックスはここにあります。
それに対してKATANAはここ。
これはもともとの設計がスーパースポーツでパワーを稼ぐためダウンドラフト吸気にされているから。
こうやって見ると如何に燃料タンクの余裕が無いかが分かるかと思います。
だから実はこのKATANAは股下の部分まで燃料タンク。そこまでやって何とか12Lの容量を稼いでる。
つまり燃料容量が少ないのもKATANAデザインを最優先にした結果なんですね。
これは細く短いシートカウル部にも言えることで、極限まで薄くするためシート下はもう本当にSSよりぎゅうぎゅう詰め。
車載工具も最小限だし、このためにバッテリーもS1000からワンサイズ小さい(背の低い)ものにわざわざ変更している。
※スズキ公式ショップブログより
経緯が経緯なだけあって正直ここまでデザイン優先で思い切りというか、割り切りの良い造りをしているのはスズキ車としてはもちろん日本車全体で見ても相当珍しい。
この超ローマウントかつターンシグナル付きのフェンダーも凄い。
そんな割り切った造りをしているKATANAなんですが、もちろん見た目だけではなくファンライディングの為の配慮もあります。
スロットルグリップに備え付けられているワイヤーガイドを楕円形状にすることで開け始めは穏やかながら更に開けていくと気持ちよく吹け上がるようにした事。
そしてもう一つは唯一KATANA3.0から大きく変わった部分でもあるハンドルをアルミ製のバーハンドルした事です。
コンセプトがローハンドルだったのに対しKATANAは比較的アップライトになっています。
これは超ショートな車体に合わせる為やタンクとの干渉や容量の兼ね合いもあるんですが、一番はあくまでもストリートバイクとして前輪荷重を増して
「乗りやすさと楽しさを追求した結果」
との事。
要するに自由なポジショニングで色んなシーンでファンライディングをして欲しいという話で、合わせてサスペンションのセッティングもフロントを少し硬めに変更されています。
このハンドルを見ると中にはGSX750Sの耕運機ハンドルを思い出す人も多いかと。
ちなみに奇遇な事に今回のKATANAハンドルに携わった三池さんは学生時代にこのGSX750Sに乗って感動したんだとか。
そう考えるともしかしてこれはGSX1100SではなくてGSX750Sの系譜なのではと思ったり・・・という冗談はさておき、このモデルが”カタナ”であることは疑いようがない事実。
その根拠は車名がそうだからという単純な話ではありません。
「生い立ちが完全にカタナだから」
です。
先代にあたるGSX1100Sは
・ドイツ誌のコンペデザインが始まり
・特異な形状のタンクに苦戦し製造方法変更
・出してみたら評価が真っ二つ
という経緯でした。
じゃあこのKATANAはどうかというと
・イタリア誌のコンペデザインが始まり
・特異な形状のタンクに苦戦しレイアウトを大幅変更
・出してみたら評価が真っ二つ
そう、面白いくらい先代と全く同じなんです。もはや後継や新生というより輪廻と言った方がいいほど同じ。
違いがあるとすれば一つだけ。
このKATANAのハンドルはGSX750Sの様に法規制に対応するためのハンドルではなく15種類も試行錯誤した末に選ばれた渾身のハンドルなんですが、それでもどうしても気に入らないなら今後出るであろう社外に変える事が出来る。
当時との唯一の違いはセパハンが許されなかった
『カタナ狩り』
がもう存在しないという事です。
主要諸元
全長/幅/高 | 2130/835/1110mm |
シート高 | 825mm |
車軸距離 | 1460mm |
車体重量 | 215kg(装) |
燃料消費率 | 19.1km/L ※WMTCモード値 |
燃料容量 | 12.0L |
エンジン | 水冷4サイクルDOHC四気筒 |
総排気量 | 998cc |
最高出力 | 148ps/10000rpm |
最高トルク | 10.9kg-m/9500rpm |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前120/70ZR17(58W) 後190/50ZR17(73W) |
バッテリー | YTZ10S |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
CR9EIA-9 または IU27D |
推奨オイル | スズキ純正エクスター R9000 MA2/10W-40 R7000 MA2/10W-40 R5000 MA2/10W-40 |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量3.4L 交換時2.8L フィルター交換時3.2L |
スプロケ | 前17|後44 |
チェーン | サイズ525|リンク116 |
車体価格 | 1,512,000円(税込) |