TZR250/SP(3MA)-since 1989-

二代目TZR250

「走りの純血統」

ある意味歴代TZR250の中じゃコレが一番有名かもしれないサンマことTZR250/3MA型。

プロジェクトリーダーはTZ250後方排気モデルの生みの親と同じく宮地さんというお方で『YZR感覚の体験』というTZRのコンセプトを引き継ぎ、マン・マシンの一体感を最優先。

・後方排気エンジン
・テールから飛びてたチャンバー
・新設計アルミデルタボックスフレーム
・アンダーブレースタイプのスイングアーム
・フロントWディスクブレーキ
・スラントノーズフェアリング

などTZ250の流れを大きく取り入れポテンシャルが更に向上しました。

長々と話す前によくある誤解を解いておくと、3MAが採用した後方排気というのはエンジンの前方から混合器を吸って後方から排気する事で、簡単に言うとエンジンを前後逆に積んでいる形であり、センターアップマフラーの事ではありませんのでご注意を。

後方排気

そんな今でこそ有名なTZR250/3MAですが、当時は一日千秋の思いで出るのを待っていたものの、一向に出ず待ち疲れた人も多かったかと。

というのも、先代でも話した通りTZR250は共同開発されていた一卵性双生児ともいえる市販レーサーTZ250がいたのですが、そのTZ250は1987年の7月に後方排気エンジンを積んで全日本選手権にて鮮烈デビューを飾りました。

TZ250

これが出たという事はつまりTZR250も同じようになる。鬼神の如き速さによりアマチュアレースでも公道でも猛威を振るっていたTZR250がこれになる・・・と思っていたら出ない。年が明けても出ない。ライバル勢がどんどん出てきているのに出ない。

結局出たのはTZ250後方排気モデル登場から一年半後となる1989年の3月で、正直に言うと

「やっとか」

という声が多かった。

3MAカタログ

ここまで遅くなった理由について公式では何も情報が無いため不明ですが、巷では

「公道向けの調整に手こずったからではないか」

と噂されたりしました。

これは、3MAは後方排気つまり吸気側であるキャブが前方にある事からオーバークールを起こしやすく、セッティングがやや気難しい面があったから。

3MAカタログ写真

走る環境が決まっているレースならまだしも、環境が刻一刻と変わる公道でセッティングをバッチリ合わせるのはプロでも至難の業。そんなことを一般人ライダーが最適化出来るはずもなく・・・という事からそういう説が囁かれたんだと思います。

また、すぐに改良された後期モデルが出たこともその説を補強する形になっています。

TZR250(3MA後期) -Since1990-

3MA後期

翌年の2月に登場した3MAの後期モデル3MA4型。

・中低速を補強する新設計TMキャブレター
・同じく補強向けな2ウェイ式YPVS
・倒立フロントフォーク
・トラス補強となったスイングアーム

などなど中低速の扱いさすさと操舵性を向上させる年次改良が行われました。また、この後期モデルからはTZR250でレースを戦ってくれる人達用のSPモデルも1000台限定で用意。

TZR250SP

・専用シリンダーとクランク
・ハイコンプ化(高圧縮化)
・Φ34の大径TMキャブレター
・乾式クラッチ
・大型ラジエーター
・伸縮調整機能付きFフォーク
・圧減衰調整機能付きRショック
・専用6速クロスミッション
・リア4.5×18リムの採用

などなどコレでもかというほどの奢りっぷり。

しかし結局1年後には全く別の形へフルモデルチェンジとなり、3MA型はわずか二年で販売終了を迎える事となりました。

確かに3MA(特に前期モデル)は粗削りな部分があり、速く走るのが難しいモデルでした。しかし今もなお熱狂的なファンがおり、場合によっては歴代TZR250で一番有名な事からも分かる通り非常に人気があるのは、そういった粗削りな中にとてつもなく輝くものを持っていたから。

ヤマハTZR250/3MA

その一つがパワーバンドに入った時の

「聞き間違う事のない唯一無二の甲高い排気音」

これに魅了され脳裏に焼き付いてしまった人たちが多かった。テールカウルから出ているチャンバーも相まって、ワークスライダーの平さんになれたような気がする人たちが多かったから、今もなお語り継がれるレーサーレプリカになったんだと思います。

3MAのチャンバー

個人的には剥いた時の妖艶さも凄い。

気難しいけど弾けたら凄い、そして剥いても凄い。記録には残らなかったけど記憶には残った小悪魔レーサーレプリカだったと言えるのではないかと。

主要諸元
全長/幅/高

前期:2040/655/1100mm
後期:2040/695/1100mm

シート高 760mm
車軸距離 1380mm
車体重量 前期:136kg(乾)
後期:138kg(乾)
燃料消費率 前期:41.0km/L
後期:40.0km/L
SP:41.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 16.0L
エンジン 水冷2サイクル二気筒
総排気量 249cc
最高出力 45ps/9500rpm
最高トルク 3.8kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70R17(54H)
後140/60R18(64H)
SP:後150/60R18(67H)
バッテリー GT4L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BR8ES/BR9ES/BR10EV
推奨オイル オートルーブ
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
1.4L
スプロケ 前14|後41
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格 619,000円
SP:719,000円
系譜図
YD1 1957年
YDシリーズ
YDS-1 1959年
250S/YDSシリーズ
dx250 1970年
DX250/PRO
(280/352)
RD250 1973年
RD250
(361~3N4)
4L3 1980年
RZ250/R/RR
(4L3/29L/1AR/1XG/3HM/51L)
1KT 1985年
TZR250
(1KT/2XT)
3MA 1989年
TZR250/SP
(3MA)
R1-Z 1990年
R1-Z
(3XC)
3XV 1991年
TZR250R/SP/RS/SPR
(3XV)

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