「2stピュアスポーツの集大成」
唐突に、本当に唐突に登場した2stスーパースポーツRZ250/4L3型。
その時流に歯向かう造りに誰もが度肝を抜かれた人は多いかと思います。
当時を知らない人のためにも補足すると、この頃(1970年代後半)というのは排ガスによる環境汚染が北米を中心に世界的な問題となり
「オイルを一緒に燃やす2stは煩くて汚い時代遅れなエンジン」
という世評となっていました。
だからどのメーカーもまるで悪いことを隠すかのように2stである事を主張しない見た目と性能のバイクばかりだった。
しかしヤマハは今でこそFZ750から続くGENESIS思想を始めとした4stのイメージがあるものの、元々は2stスポーツで一世を築いたメーカー。
『2stのヤマハ』というイメージをユーザーのみならずメーカーも持っていた。
だから2stはもう終いという世の中に対し
「せめて最後に究極の2stスポーツを造りたい」
という思いを持つ人がヤマハの中に多く居た。
そしてそんな考えを持った人達が多かったから、自然とそのコンセプトに賛同する人が集まり自主製作という形で”最後の2st”製作が開始。
これがRZ250プロジェクトの始まりです。
そしてマーケティングを調査したところ、北米や日本では需要が無い一方で、欧州では2stに対する根強い人気がある事が分かった。
そこで欧州向け350、国内向け250の掛け持ちとしてプロジェクトが本格始動する事に。
そうして出来上がった最後の2stスポーツがRZ350(RD350)と、その半年後に登場した国内向けRZ250。
本当に最後という思いで造っただけあり、35馬力という圧倒的なパワーを持つ水冷エンジンだけでなく、空飛ぶサスペンションと称されるほど画期的だったモノクロスサスペンションをオンロードで初採用。
更には不動明王の火焔をイメージしたとされるキャストホイールを始めとした曲線の機能美まであった。
とんでもないバイクが出たと話題となり、ヤマハの予想を大きく超える大ヒットとなりました。
あまりの人気っぷりに国内でも追加販売される事となった350版が
「ナナハンキラー」
という異名を取ったのは有名な話かと思います。
衝撃的な性能とルックスだった事がよく取り上げられるRZ250/350ですが、衝撃的だったのはそれだけじゃないんです。
もう一つRZ250/350が凄かった事として
『2stである事を誇示したこと』
があります。
先に言ったように時代はもう2stを求めていませんでした。
にも関わらずRZは2stである事を主張するような宣伝、膨らんでカチ上がっているチャンバー等の見た目、下はグズグズで上で弾け飛ぶピーキーさ。
「これぞまさに2st」
と。2stである事を悪びれないどころか誇示したんです。
だからこそ衝撃的だったわけであり、その大ヒットによって2stスポーツ熱が再燃する事にも繋がったというわけ。
これはフロントのダブルディスクとビキニカウルが特徴的な二代目のRZ250R/29L型。
サスペンションも現代的なリンク式モノサスになり、エンジンにも全面的に改良。
レース直系のYPVS(排気制御)が入り43馬力にまで向上しました。
更に翌年にはエンジンポート、キャブ、チャンバーが見直され、カウル付き(アンダー別売り)のRZ250RRが登場。
遅れて丸目のRZ250R/1ARも追加されました。
そして晩年1986年にはタンクやカウルなど外装を変更し7kg軽量化された1XGになり、最終モデルにあたる1988年のRZ250R/3HMでは前後17インチに。
「最後の2stスポーツ」
という思いで誕生したら大ヒットし、”2stは終わり”という世評を覆す事となったRZ250とRZ350。
何とも痛快な話ですね。
全長/幅/高 | 2080/740/1085mm [2095/670/1190mm] |
シート高 | 790mm |
車軸距離 | 1355mm [1985mm] |
車体重量 | 139kg(乾) [147kg(乾)] |
燃料消費率 | 37.0km/L [42.0km/L] ※定地走行テスト値 |
燃料容量 | 16.0L [20.0L] |
エンジン | 水冷2サイクル二気筒 |
総排気量 | 247cc |
最高出力 | 35ps/8500rpm [45ps/9000rpm] |
最高トルク | 3.0kg-m/8000rpm [3.5kg-m/9000rpm] |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前3.00S18-4PR 後3.50S18-4PR [前90/90-18(51H) 後110/80-18(58H)] |
バッテリー | 12N5.5-3B |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
B-8ES [BR8ES/BR9ES] |
推奨オイル | オートルーブ |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
1.6L [1.7L] |
スプロケ | 前16|後41 |
チェーン | サイズ530|リンク102 [サイズ520|リンク108] |
車体価格 | 354,000円(税別) [439,000円(税別)] ※[]内はRZ250RR(51L) |
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1959年 YDS/DSシリーズ |
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1973年 DX250 RD250 シリーズ |
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1980年 RZ250/R/RR (4L3/29L/1AR/1XG/3HM/51L) |
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1985年 TZR250 (1KT/2XT) |
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1989年 TZR250/SP (3MA) |
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1990年 R1-Z (3XC) |
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1991年 TZR250R /SP/RS/SPR (3XV) |