「THE HEART OF WILDERNESS」
1985年に登場した初代セローことXT225SEROW/1KH型。
当時はレーサーレプリカブーム真っ只中だったんですが、その一方でオフロードもヤマハの見立てで4万人ほどとそれなり人気ありました。
しかしこの頃のオフ人気というのはそんなレーサーレプリカに負けずとも劣らないほどスペック(コンペティション)路線が基本。
セローの生みの親である近藤さんも2stオフ部門で、DT200Rなどバリバリなモデルを造っていた人でした。
何故そんな環境の人がセローを思いついたのかというと、アメリカのゴーマンというコースに開発中だったDT125を持っていった事がすべての始まり。
自慢のマシンだったもののテストではあまり評価が良くなかったんです。これは日本が想定するオフロードがモトクロスコースが基本なのに対し、ゴーマンではガレ場・川・獣道などあらゆる道がコースだったから。
そしてそんな難コースを、自身が憧れヤマハに入社するキッカケともなったDT1が絶対的な速度こそ無いものの軽快に走ってた。
それを見た近藤さんは
「速さじゃない、どんな道でも対応できてる多様性こそオフの本質だ」
と気付かされたわけです。
戻ってきた近藤さんは早速ゴーマンのように様々な道があるコースを新たに造ることに。
ちなみにこの際に造られたITコース(トレールランド浜北)は今も開発コースとして使われています。
そしてオフの本質について悩んでいたある日、たまたまXT200に乗る機会が。
XT200は元々アメリカの女性向け小型4stトレールというコンセプトも開発チームも畑違いなトレールだったんですが、軽くて足つきも良くて取り回しが優れていた事から
「これこそ次世代のDT1と成りうる素質だ」
と明確な答えを見つけるわけです。
そうしてXT200の後継という形でセローのプロジェクトはスタート・・・したんですが、最初に言ったように当時はスペック至上主義時代。
「山をトコトコ気軽に楽しめるバイク」
なんて企画が通るはずも無く、何度出しても突き返される日々。
そこで近藤さんは奇策に出ます。
企画&商品化に関わるキーマンを集め
「次世代のXTを考える会」
として大小さまざまなオフ車を集め、山の頂上までバイクで走る検討会を開催。
そしてその中にシレッと勝手に造ったセローのプロトタイプを忍び込ませたわけです。
キーマン達はオフに慣れていない人が多く悪戦苦闘の連続・・・そして近藤さんの策略が見事にハマります。
みながセローのプロトタイプを取り合う様になったんです。理由はもちろん足つきや取り回しが良いから、気軽だからです。
この一件で
「速く登る事ではなく、登ることを楽しむ」
というコンセプトが理解され企画が通りました。
セローの基本コンセプトは
『走る・曲がる・止まる・登る・下る』
それに加えて
『転ぶ』
です。
具体的には”低く・細く・軽く”を目標に掲げ、開発チームは試作機を持って山籠り開発の日々。
転倒しても大丈夫なようにガードやグリップを付けよう。
Uターンしやすいようにハンドルのキレ角を大きくしよう。
足を付きながらでも登れる様に足着きを良くしよう。
そうして造られたのが今も続くマウンテントレールSEROWです。
特に足をつきながら登るという当時では考えられないそのライディングは後に『二輪二足』と呼ばれセローの代名詞にもなりました。
ちなみにカタログ写真のモデルはトライアル選手権2位の方を用意していたんですが、当時に高熱を出してしまったため急遽広告デザイナーだった米澤さんがモデルを担当する事になったんだそう。
あと言い忘れていましたがSEROWというのはヒマラヤカモシカの事です。
そしてセローのロゴがこれ。
角の形をヒマラヤカモシカではなくただの鹿の形にしてしまうという痛恨のミス。某大学の人から指摘され判明しました。
オーナー達の間では奈良の鹿から取って”奈良セロー”とか呼ばれています。
ちなみに翌年には直され歴代の展示でも無かった事にされたりしている様なので、セロー関係者にはあまり話を振らない方が良いかと思います・・・。
さて、そんなドラマとこだわりが込められたセローは華々しくデビューし大ヒットした・・・かというと実はそうでもなく、初年度は2051台と思ったほどのセールスではありませんでした。
初動でコケるっていう絶対にあってはいけない売れ行き。
そんなバイクがまさか30年以上続くなんてこの時は誰も予想できなかったでしょうね。
1986年にはアルミブリッジハンドルや減衰力調整機構追加を追加したYSPリミテッドバージョンとなる1RF型が追加。
1987年には更にレスポンスをマイルドにするためにキャブをSU型に変更した2LN型にモデルチェンジされています。
主要諸元
全長/幅/高 | 2055/825/1160mm |
シート高 | 810mm |
車軸距離 | 1350mm |
車体重量 | 102kg(乾) |
燃料消費率 | 60km/L ※定地走行テスト値 |
燃料容量 | 7.6L |
エンジン | 空冷4サイクルSOHC単気筒 |
総排気量 | 223cc |
最高出力 | 20ps/8000rpm |
最高トルク | 1.9kg-m/7000rpm |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前2.75-21-4PR 後120/80-18(62P) |
バッテリー | GM3-3B |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
D8EA |
推奨オイル | ヤマハ純正エフェロ SJ/SG/SF (10W-30から10W-40) |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量1.3L 交換時1.0L フィルター交換時1.1L |
スプロケ | 前15|リア45 |
チェーン | サイズ428|リンク120 |
車体価格 | 329,000円(税別) ※スペックは1KH |
昔セル無し最終モデルの2LN乗っていました。
セル付きモデルを試乗した時に感じた1速と2速の差がセル無しモデルの方がとても乗り易かった。
20年くらい前にクソボロ1KHをタバコ1カートンで購入笑
サービスマニュアル片手にフルレストアしたけど弄りやすいし乗りやすい。
もうすぐレシプロエンジンが新車販売されなくなるらしいんで、程度が良い225w衝動買いしてしまった。
まだ乗れるでしょ!