RVF(NC35) -since 1994-

NC35

「美しい、フォース。」

ミドルV4の最後を飾るRVF/NC35型。

エンジンこそ先代VFR400R(NC30)をベースにしているものの、ファクトリーレーサーであるRVFの名を冠するだけあり倒立フォークやそれに合わせた新設計フレーム、そして前後17インチ化によるハンドリングの向上など余念のない改良が施されています。

カタログ写真

ヘッドライトもそれまでの丸目からツインフォーカスヘッドライトに変更。

先代NC30が兄貴分のRC30のレプリカだったのに対し、NC35とRC45は共同開発(RVF DIRECT BROTHER)だったからそこまで似せなくてもいいという判断だったんでしょうね。アッチはRC30をそのまま大きくしたような丸目二眼です。

RVFレプリカの流れ

他にもブレーキやら何やら書ききれないほどの変更が入っていますが、それよりも書くべきことがあります。

このRVF/NC35はワークス直系でヘッドライトが暗いことを除けば文句なしのV4レーサーレプリカで78万円(当時)でした。これは決して高すぎる値段とは言えないどころか兄貴分のRVF750/RC45が200万円という事を考えれば破格の値段・・・でも売れなかった。

RVFジャケット写真

これが出た1994年にはレーサーレプリカブームがとっくに去っていたから。53馬力という自主規制もそれに拍車をかけたのもあると思います。

そしてTT-F3という400レプリカ競争を加熱させた400レースも人気低迷から91年に廃止。つまり世界選手権を睨んで作られたRVF750/RC45と違ってこのNC35は出れるレースが既に無かった状況だったんです。

RVFレプリカ

レースでも市場でも需要のないバイクを一体どういう意図でホンダが出したのか正確な回答はありませんが、恐らくTT-F3で培ったレース技術の市販車へのフィードバックというNR750から続くV4のコンセプトを忠実に遂行したんだと思われます。

そしてコレが最後のミドルV4レーサーになることも分かっていたから”RVF”というワークスの冠も付けたんじゃないかと。

RVF NC35

「RVF、この名がすべてだ。」

もう誰も見ていなかった4st400ccレーサーレプリカという舞台において、最後のウイニング・ランを飾ったのは間違いなくこのRVF/NC35。

主要諸元
全長/幅/高 1985/685/1065mm
シート高 765mm
車軸距離 1335mm
車体重量 183kg(装)
燃料消費率 30.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 399cc
最高出力 53ps/12500rpm
最高トルク 3.7kgf-m/10000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/60-17(55H)
後150/60-17(66H)
バッテリー FTX7A-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
ER9EH/ER10EH
または
Y27FER/Y31FER
推奨オイル ウルトラU(SAE10W-30)
または
ウルトラGP(SAE20W-50)
オイル容量 全容量3.0L
交換時2.4L
フィルター交換時2.5L
スプロケ 前15|後38
チェーン サイズ525|リンク102
車体価格 780,000円(税別)
系譜図
NC131982年
VF400F/INTEGRA
(NC13)
NC211986年
VFR400R/Z
(NC21)
NC241987年
VFR400R
(NC24)
NC301989年
VFR400R
(NC30)
RVF4001994年
RVF
(NC35)

VFR400R(NC30) -since 1989-

NC30

「Vの本領」

VFR400Rとしては最後のモデルであり、歴代で最も息が長く最も売れたモデルでもあります。

あのVFR750R(RC30)にかなり近いデザインという事も人気を呼んだ理由の一つ。

NC30とRC30

実際NC30は”レーサーRVF400″ではなく”RC30″のレプリカ。

奇遇なことに型式まで同じ30なサンマル兄弟・・・いや、あんまりそんな呼ばれ方してませんけどね。

先代からの変更点としてはホイールベースの短縮やフロントホイールの17インチ化。リアはこの時まだ18インチでこれがマフラーが左出しに纏められた事と並んでNC30の特徴です。

NC30リア

もちろん他にもバックトルクリミッター付きクラッチや、どうしても後ろ二気筒が熱で苦しくなってしまうV4の課題を解決するためデュアルラジエーターなど、ポジションも含め完全にレーサー路線。

翌年にはリアサスペンションがリザーバータンク別体式の物に変更されています。

ただNC30で語るべきはやはりエンジン。

VFR400

ホンダは先々代NC21でクランク角を180度(90度、270度ともいう)に変更したんですが、NC30で再び360度に変更しています。

これがまあ難しい問題でして・・・

一般的にV4(90度バンクV型四気筒)には180度クランク角と360度クランクの二種類があります。

V4は開いたシリンダーの角度を表すバンク角と、クランクピンの角度を表すクランク角という2つの角度を表す表記があるから分かりにくいですね。

※もしクランク角がよくわからないという人は「バイク豆知識:二気筒エンジンが七変化した理由」を先に読んでもらえると助かります。

NC30エンジン

一応このページでは混乱しないようにバンク角の話は置いといてクランクの角度を

“180/360度クランク”

という形で説明していきます。

で、どう違うのかというと360度クランクの場合の燃焼間隔は0-270-360-630-720(0)。

180度クランクの場合は0-270-450-540-720(0)となります。

V4クランクアングル

360度クランクだと一つが点火したらすぐに(90度)次の気筒が点火してしばらく(270度)おやすみ。でまたボンボンと立て続けに点火してまたおやすみ。

ボボン・・・ボボン・・・ボボンといわゆるVツインを2つ並べた点火時期。

対して180度クランクはちょっと長め(270度)に空く時間が一つ出来るのでボボン・・・ボン・ボンという感じ。YZF-R1のクロスプレーンもこうです。

そしてNC30が360度クランクにしたのは

“速く走らせるなら360度クランクの方が有利”

だからです。

これは「バイク豆知識:クロスプレーンだと何が良いのか」のメリットで書いたとおり、タイヤを落ち着かせる270度という間隔が360度クランクの場合は2回転する間に2度もあるから。

V4クランク270度

対して180度クランクの場合は2回転に1度しかない。

だからトラクション性は360度の方が上回っている。速く走るなら360度なのはこれが主な理由。

じゃあなんで先々代NC21が180度クランクにしたのかというと、初代のVF400F(360度クランク)があまりにも極端な点火タイミング故に、排気音が濁っていると不評だったから。

これは本当に好みが別れるところなんですけどね。

透き通った音が好評な180度クランク直列4気筒も並べてもう一度燃焼間隔を見てみましょう。

V4クランクアングル

V型四気筒の180度クランクと360度クランクのどちらが直列4気筒に近いかと言えば180度クランクの方ですよね。

つまり180度クランクV4は(YZF-R1のクロスプレーンでも言われていますが)高回転まで回すと直列4気筒(180度クランク)とほぼ変わらないサウンドになります。

先代NC21が180度クランクを取ったのはこういった理由が大きいんです。

でもだからといって180度クランクのメリットは音だけなのかというとそうではないですよ。

現存している大型のV4(VFR800)のクランク角は180度クランクです。※VFR1200は位相で全く違う

NC30カタログジャケット

これはサウンド云々の問題ではなく180度クランクV4は360度に比べ二次振動(微振動)を限りなく0に出来るというメリットがあるから採用してるんです。

トラクション性が(あくまでも360度V4に比べ)劣るぶん振動を限りなく0に出来る最もスムーズな四気筒なのが180度クランクV4。だからNC21-24はエンジンに合わせてポジションなどが少し優しかったわけ。

VFR400Rカタログ写真

反対に同じV4でもレース色の強いVFR750R/RVF750(RC30/RC45)やRC213V-Sは360度クランクになっています。これはサーキット走行がメイン、つまりトラクション性が何よりも大事だから。

同じV4でもクランク角によって一長一短あるという事です。

VFR400Rスペシャルカラー

そしてVFR400R/NC30はピュアレーサーのようなVFR750R/RC30のレプリカである事、そしてTT-F3を始めとしたレースに勝つ事に重きを置いたマシンだったから360度を取ったという話。

主要諸元
全長/幅/高 1985/705/1075mm
シート高 755mm
車軸距離 1345mm
車体重量 182kg(装)
[185]kg(装)
燃料消費率 37.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 399cc
最高出力 59ps/12500rpm
最高トルク 4.0kg-m/10000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/60-17(55H)
後150/60-18(67H)
バッテリー FTX7A-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
ER8EH/ER9EH(標準)/ER10EH
または
Y24FER/Y27FER(標準)/Y31FER
推奨オイル ウルトラU(SAE10W-30)
または
ウルトラGP(SAE20W-50)
オイル容量 全容量3.0L
交換時2.4L
フィルター交換時2.5L
スプロケ 前15|後40
チェーン サイズ525|リンク104
車体価格 749,000円(税別)
※[]内は90年以降モデル
系譜図
NC131982年
VF400F/INTEGRA
(NC13)
NC211986年
VFR400R/Z
(NC21)
NC241987年
VFR400R
(NC24)
NC301989年
VFR400R
(NC30)
RVF4001994年
RVF
(NC35)

VFR400R(NC24) -since 1987-

NC24

「新・戦力」

わずか一年ちょっとでモデルチェンジされたVFR400R(NC24)。

大きな変更点としてスイングアームが片持ち(プロアーム)になったこと。ホンダのV4といえばプロアームという人も居るでしょう。

エルフモト

このプロアームはもともとNS500で戦っていたフランスの企業でオイルなどでお馴染みELFというメーカーのレースチームELF MOTOが開発した物でホンダはどちらかというと協力者。

そしてELF MOTOが撤退となったことを機にホンダが特許を買い取りホンダの物になったというわけ。

ホンダのレーサーレプリカといえばプロアームという考える人は多いと思いますが、プロアームのメリットを答える人はどれくらい居るでしょう。

プロアーム

ホンダの当時の謳い文句をそのまま書くと

・タイヤ交換時間の短縮

・剛性値を両持ちより稼げる

・それによってバネ下荷重の軽減

・ブレーキという重量物をセンターに出来る

などなど。

NC24壁紙

でも現代のホンダのレーサーマシンを見ると分かる通り両持ちですよね。

あくまでもレースでの話ですが、これは結局両持ちのほうが軽く出来る(剛性値)を稼げる事が分かった事と、片持ち故に左右でコーナリングの挙動が違うというネガな部分があったから。タイヤ交換も技術の進歩であんまり変わらない。

じゃあプロアームの良いところは無いのかというとそんな事はありません。今でもVFRなどに採用されているのを見れば分かるようにプロアームの良いところはちゃんとあります。

NC24カタログ写真

カッコいい事です。

主要諸元
全長/幅/高 2010/690/1125mm
シート高 770mm
車軸距離 1375mm
車体重量 183kg(装)
燃料消費率 44.2km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 16L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 399cc
最高出力 59ps/12500rpm
最高トルク 4.0kg-m/10000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-16(54H)
後130/70-18(63H)
バッテリー FB9L-B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
ER8EH
または
Y24FER
推奨オイル ウルトラGP(SAE10W-40/20W-50)
オイル容量 全容量3.0L
交換時2.4L
フィルター交換時2.5L
スプロケ 前16|後40
チェーン サイズ525|リンク106
車体価格 679,000円(税別)
系譜図
NC131982年
VF400F/INTEGRA
(NC13)
NC211986年
VFR400R/Z
(NC21)
NC241987年
VFR400R
(NC24)
NC301989年
VFR400R
(NC30)
RVF4001994年
RVF
(NC35)

VFR400R(NC21) -since 1986-

NC21

「ウイニング・テクノロジー」

待ってましたと言わんばかりの登場となったレーサーレプリカ、RモデルのVFR400R。

TT-F3

キャッチコピーにもあるようにこのバイクはTT-F3(400cc国内レース)で1985~86年の優勝マシンRVF400のレプリカモデル。

そのマシンに習い、高剛性のアルミツインチューブフレーム、カムギアトレイン、クランク角を360度から180度へ変更などなどHRC(HONDA RACING CORPORATION)テクノロジー満載のバイク。

NC21線図

ただダブルシートなのを見ても分かる通りこの頃はまだカリカリというわけではなく、速さは持っていたけどポジションは優しかったから改めて見ると、とっても速いV4レプリカツアラーという感じ。

そして合わせて登場したのが一部の人しか知らないけど、知ってる人は絶対に忘れないVFR400Z。

VFR400Z
(NC21)
-since 1986-

VFR400Z

VFR400Rのカウルレスネイキッドモデルで丸目二眼が特徴的。

知らないのも無理もない話でV4の400としては最初で最後のネイキッドモデル。Rモデルが一年後にモデルチェンジするんだけどコッチはコッチでマイナーチェンジをし、しばらくは併売していました。

じゃあ知ってる人は絶対に忘れない理由が何かというと、これは教習車としても広く採用されたから。

VFR400Z教習車

80年代後半から90年代にかけてCB400SFに置き換えられてるまで教習車といえばコレ(もしくはCBR400K)が多かったんです。

デチューンされているとはいえV4カムギアトレーンの教習車・・・HRCテクノロジーのありがたみが薄れますね。

NC21佐藤浩市

ちなみに佐藤浩市さんが起用されていた事はあまり知られていない。

主要諸元
全長/幅/高 2010/705/1125mm
[2010/705/1010mm]
シート高 765mm
車軸距離 1375mm
車体重量 182kg(装)
[178kg(装)]
燃料消費率 44.2km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 16L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 399cc
最高出力 59ps/12500rpm
最高トルク 3.7kg-m/11000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-16(54H)
後130/70-18(63H)
バッテリー FB9L-B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
C8EH-9
推奨オイル ウルトラGP(SAE10W-40/20W-50)
オイル容量 全容量3.1L
交換時2.4L
フィルター交換時2.6L
スプロケ 前16|後40
チェーン サイズ525|リンク106
車体価格 659,000円(税別)
[629,000円(税別)]
系譜図
NC131982年
VF400F/INTEGRA
(NC13)
NC211986年
VFR400R/Z
(NC21)
NC241987年
VFR400R
(NC24)
NC301989年
VFR400R
(NC30)
RVF4001994年
RVF
(NC35)

VF400F/INTEGRA(NC13) -since 1982-

NC13

「ハイテック・スーパー・ミドル」

同年デビューの打倒2stことVT250Fと瓜二つな見た目で登場した400ccのV4バイクの始まりとなるVF400F(NC14)。

NC13カタログ写真

遂に400でもV4が登場したと(まだ大型二輪が限定解除で難しかった事もあって)話題になり、また裏切らない速さを持っていたことから14000台以上を売るヒットを飛ばし翌1983年にはCBX400Fを抑え年間販売台数トップを獲得。

NC13E

後継モデルの影響か現代ではCBX400Fほど話題にはなりませんが、当時は非常に人気でした。

当時を知らない人の為に補足するとホンダはこの頃からストリートはCB/CBR系、レースはVF/VFR系とツートップ戦略に近いラインナップをしていたんです。

NC13インテグラ

そして1984年からはフルカバータイプのINTEGRAも登場。

これはカウルに対する国土交通省の規制が緩和された事が大きな理由。ノーマルのFの方もどう見てもビキニカウルなんだけど、それじゃ国土交通省の認可が下りない(型式を取れない)事から

VF400F

「これはカウルじゃなくてメーターバイザー」

っていう屁理屈みたいな言い訳で押し通した歴史があるんです。

主要諸元
全長/幅/高 2060/750/1160mm
[2055/730/1195mm]
シート高 780mm
車軸距離 1415mm
[1405mm]
車体重量 191kg(装)
[195kg(装)]
燃料消費率 43.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 17L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 399cc
最高出力 53ps/11500rpm
最高トルク 3.5kg-m/9500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-16(54H)
後110/90-18(61H)
バッテリー FB12A-A
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DP7EA-9/DP8EA-9/DP9EA-9
または
X22EP-U9/X24EP-U9/X27EP-U9
推奨オイル ウルトラGP(SAE10W-40/20W-50)
オイル容量 全容量3.0L
交換時2.2L
フィルター交換時2.6L
スプロケ 前15|後45
チェーン サイズ525|リンク108
車体価格 528,000円(税別)
[589,000円(税別)]
系譜図
NC131982年
VF400F/INTEGRA
(NC13)
NC211986年
VFR400R/Z
(NC21)
NC241987年
VFR400R
(NC24)
NC301989年
VFR400R
(NC30)
RVF4001994年
RVF
(NC35)
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