タクト/ベーシック(AF75/AF79)-since 2015-

AF75

「賢い選択『みんなの原付』」

13年ぶりに復活を遂げた八代目タクトことAF75型。最大の特徴はそれまでとは違い、アイビー以来の4stエンジンを積んだ事にあります。

一足先に出ていたDUNKと同じく新開発の50cc版espエンジンを搭載しておりフレームもベースは同じなんですが、ホンダの50ccスクーターを代表するモデルな事もあり

「遂にタクトも水冷4stエンジンの時代か」

と思われた方も多いのではないかと。水冷による温度管理をしないともはや原付すら排ガスを通せない時代になりましたからね。

しかし面白い事にこの50cc版espエンジン、実は一般的な水冷ではなく『部分水冷』という冷却方式だったりします。

部分水冷

エンジンをよく見てみると水冷なのにシリンダーブロック(シリンダーの壁面)にウォータージャケット(水路)が無いのが分かるかと。

何故こんな事をしているのか説明すると、水冷というのは水が張り巡らされている形になるので冷却が得意だけど同時に暖気が空冷よりも苦手。そうすると、ガソリンが上手く気化しなかったりして燃費や排ガスが悪化する。ピストンの隙間から漏れてエンジンオイルと混じりオイルを悪くする事にも繋がります。

暖気無しでの短期走行が当たり前という非常にシビアな使われ方をする50ccでは、空冷ですらこの問題が付きまとっているわけで、そのまま水冷にしてしまうと更に酷い事になる・・・しかし空冷だと燃焼が安定しないので排ガス規制やパワーを出すのが難しい。

AF75

そこで考えられたのがこの形で、一番熱くなるヘッドは水冷でしっかり冷やしつつ、シリンダー壁面は早く温まるように水路も放熱フィンも設けない無冷のような形で暖気問題をクリアしている。

ちなみにシリンダー壁面の冷却はしない事で

・壁面のウォータージャケット(水路)が不要
・水温低下によるラジエーター負荷の低減

などから空冷並みのコンパクトさを実現するという非常に考えられたエンジンになっているんです。

新旧水冷50cc

タクトがクラストップの燃費なのに加え、非常にコンパクトに見えるのはデザインだけでなく、こういうポイントがあるからなんですね。

話を戻すと今回もノーマルグレードとは別に『ベーシック』というグレードがあるのですが、ローシート仕様&アイドリングストップシステムをオミットしたグレードになります。

AF75

残念ながら自動スタンドアップは機能そのものが廃止。

ちなみにこのタクトは2016年に施行された新排ガス規制に2017年モデルで対応し生産を国内に移した関係でAF75からAF79へと形式が変わったのですが、最大トルク発生回転数が上がった以外は基本的にスペックに変更はありません。

最後に・・・ここに来てホンダがタクトという名前を復活させた理由について。

ホンダは2015年にタクトを復活させるまでにもトゥデイやディオ、ジョルノやズーマーなど数々の原付をラインナップし、好評を得ていました。

しかしそれは若年層や新規ユーザーなどがメインで、従来から原付に慣れ親しんでいる原付ユーザーにとってはあまりにもファッショナブル、またはセンセーショナルで抵抗がある事が分かった。

そこで

「安心感をもって使える原付を造ろう」

となり開発がスタート。

AF75コンセプト

「取っつきやすいようコンパクトな車体にしよう」
「押し引きしやすいよう高めのハンドルにしよう」
「前かごを使いやすくするためフロントカウルを立てよう」
「前輪の操舵角が分かりやすいようフロントフェンダーは別体式にしよう」

など、とにかく安心感そして高い利便性を実現するためのスタイリングを造り上げていった所・・・

AF75コンセプトデザイン

「あれ、これってタクトだよね」

となり、結果的にタクトという名前が復活したのが経緯。※Technical Review Vol1より

なんとも感慨深いというか何というか・・・

ご存知の方も多いと思いますが、排ガス規制の強化(OBD義務化)と市場の急縮で既に限界が来ている原付一種市場。タクトが生まれた1980年には年間250万台生産されていた市場が、今や年間生産台数は12万台と1/20以下で保有台数も右肩下がり。

原付一種は現在の排ガス規制を猶予する特例を受けており、ホンダも踏ん張っていますが、恐らくそれも猶予期限の2025年までで、それ移行はEVになる。

ホンダEV原付の計画

つまり

「ホンダが最後に造った50ccスクーターがこのタクトになる可能性が非常に高い」

ということ。

ホンダが庶民の足として最初に造った50ccの内燃機関スクーターが、45年後の最後まで造り続けた50ccの内燃機関スクーターになる・・・一見するとただの偶然のように思えるけど、そうとも言えない。

AF79タクト

何故ならいま話したようにタクトというモデルは、どれだけ市場が小さくなろうと絶対にゼロにはならない、バイクでもクルマでも自転車でもなく原付一種という乗り物が欠かせない人達の為にあるモデルだから。

そう考えるとタクトは

「技術で人を豊かにする」

というホンダのフィロソフィーを一番体現し、かつ一番多くの人へ届けた非常に偉大なモデルと言えるかと。

【関連車種】
DIOの系譜JOGの系譜Addressの系譜原付一種が30km/hの理由|バイク豆知識

主要諸元
全長/幅/高 1675/670/1035mm
シート高 720mm
[705mm]
車軸距離 1180mm
車体重量

79kg(装)
[78kg(装)]

燃料消費率 56.4km/L
※WMTCモード値
燃料容量 4.5L
エンジン 水冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 49cc
最高出力 4.5ps/8000rpm
最高トルク 0.42g-m/7500rpm
変速機 無段階変速機(Vマチック)
タイヤサイズ 前後80/100-10(46J)
バッテリー YTR4A-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BR4HSA
推奨オイル 10W-30
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量0.7L
交換時0.65L
Vベルト 23100-GZ5-013
車体価格 160,000円(税別)
[148,000円(税別)
※[]内はベーシック
系譜図
AB071980年
タクトDX/フルマーク
(AB07)
AB07後期1982年
タクトDX/フルマーク/フルマークカスタム
(AB07後期)
af091984年
タクト/フルマーク/フルマークS
(AF09)
af161987年
タクトフルマーク
(AF16)
af241989年
タクト/ベーシック
(AF24)
af30-af311993年
タクト/スタンドアップ/S
(AF30/AF31)
AF511998年
タクト/スタンドアップ
(AF51)
af75-af792015年
タクト/ベーシック
(AF75/AF79)

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