「瞬間、近未来。」
世界初の水冷V4エンジンを積んだバイクでありホンダの市販V4の始まりでもあるVF750SABREとMAGNA。
V4エンジンの源流になっているのは楕円ピストンでお馴染みNRの元となっているファクトリーレーサーNR500(1978年)。NRについては「無冠のレーシングスピリット NR(RC40)」をどうぞ。
あと地味だけど油圧クラッチも世界初採用。更にキャストホイールもホンダとしては初と初尽くめ。他にもプロリンクやシャフトドライブ、ウインカーキャンセラーなどここでは書ききれないほどハイテク装備が既にこの頃から満載です。
しかしそんな初尽くしVF750において市販化において一番重要なのが同じく世界初だったスラント型VDキャブレター。何故かと言うとV4はスロットルボディを置くスペースが狭いから。
今では当たり前のようにVバンク(前後シリンダー)の間にスロットルボディが置かれていますが、フロート室とよばれるガソリンを一時的に溜めておくプールを傾いている角度で付け、かつ横でも下でも同じ負圧で同じようにガソリンを高効率で吸わせるコンパクトなキャブというのは簡単な事じゃなかったわけですね。
それを何とか限られたスペースの中で可能にするために生まれたのが両方(前後)のキャブが折り重なるようになっているユニークなキャブ。このこれが無かったらV4は無理だったとホンダも言っています。
というかこのV750SABRE以降ホンダV型はほぼこのキャブレーター方式を採用してるから、これが作れなかったら後のV型もどうなっていたか分かりません。
その努力が垣間見えるのがラジエーターの下から突き出てるシリンダーですね。これは間違いなくキャブレーターの都合でしょう。
ちなみにVF750SABREはアメリカではV45とも呼ばれていました。何故V45なのかというと、このV型エンジンの総排気量がおよそ45立方”インチ”だから。
ただアメリカ向けはこのVF750の系譜とは別の形で進行します。というのも好評だったアメリカでレーガンが83年に700cc以上の輸入車の関税を4.4%から45%にまで引き上げたから。つまりVF750SABREは売れなくなってしまったんです。
そこでVF750をベースに排気量を698ccにまで落としたVF700Sというバイクを新たに用意し売り出すことになり、このシリーズでアメリカはしばらく行くことになったわけです。
VF750MAGNA
(RC09)
-since 1982-
合わせて紹介するのが同時デビューのVF750MAGNA。
マグナというと250や50が大ヒットした事からソッチのほうが有名だけど初代マグナはこのV4です。スポーツのSに対し、ラグジュアリーなカスタムモデルとして出たのが始まり。
そもそも何故V4を発売したかというと各社から直四が出揃いマンネリ化していた事からの差別化。最初に言ったNR500というレースフィードバックという意味合いも強いけどね。
だからホンダはこのV4に本当に社運を掛けていました。
その事が伺えるのが開発者でCBR1100XXまで第一線で活躍された山中勲氏のコメント
「世界ではじめてのV4開発はあらゆることが難しかった。一開発者の我々までが『本田宗一郎が築いた世界一の座を守りとおしてみせる』との思いで開発に取り組んでいたのだから、当時の危機感は相当なものだったといえよう」
主要諸元
全長/幅/高 | 2245/830/1165mm [2235/815/1195mm] |
シート高 | 770mm [725mm] |
車軸距離 | 1560mm [1540mm] |
車体重量 | 224kg(乾) [219kg(乾) ] |
燃料消費率 | 38.0km/L ※定地走行テスト値 |
燃料容量 | 20.0L |
エンジン | 水冷4サイクルDOHC4気筒 |
総排気量 | 748cc |
最高出力 | 72ps/9500rpm |
最高トルク | 6.1kg-m/7500rpm |
変速機 | 常時噛合式5速リターン |
タイヤサイズ | 前110/90-18(61H) 後130/90-17(68H) [後130/90-16(67H)] |
バッテリー | FB14-A2 |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
DP8EA-9 |
推奨オイル | – |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量3.2L 交換時2.5L |
スプロケ | 前17|後44 |
チェーン | サイズ530|リンク110 |
車体価格 | 695,000円(税別) [670,000円(税別)] ※[]内はマグナ |
VF750SABRE。
どうしたってサブレって読みがち。
サブレじゃないよ、セイバーだよ。
っていうのが昔のネタでした。