「SUPER CHAMPION」
レーサーレプリカブームの火付け役として今も語り継がれる『栄光のΓ(ガンマ)』ことRG250Γ/GJ21A型。
そもそも何故ガンマが栄光なのかと言うと
一つは”栄光や勝利”という意味の古代ギリシャ語
『ゲライロウ:ΓεραIρω』
の頭文字から。
そしてもう一つはWGP500(今で言うMotoGP)チャンピオンマシンがRG-Γだから『栄光のΓ』なんです。
このカタログ裏にズラッと並んでいるのがRG-Γが勝ったレース。
1976~1977年、1981~1982年と世界チャンピオンを獲得。恐らくスズキがレースで一番輝いていた時期。
では何故RG250Γが誕生することになったのかというと、二年ほど時代をさかのぼります。
当時スズキの二輪部門はHY戦争の巻き添えにより100億円近い赤字を出していました。
そのため活躍していたWGPからの撤退を余儀なくされるだけでなく、二輪事業そのものの撤退まで検討されるように。
そんな折に耳に入ったのが
「国土交通省がフェアリング(カウル)を認めるようになった」
という情報。
これを二輪事業挽回のチャンスだと捉えた横内さんは、今までにないフェアリング付きのスポーツバイクを造る企画を始動。
その企画会議である若手が放った一言
「ガンマという名にしよう」
この一言で企画の方向性が決定的なものになりました。
いま説明したようにガンマという名前はスズキのGPレーサーを意味する名前。つまりガンマという名前のバイクにするということは公道を走れるGPレーサーにするという事。
しかしこれに反対する人は一人も居なかったそうです。それどころかチームはやる気に満ち溢れ
「ガンマと名乗る以上は絶対にその名を汚してはいけない」
として速さはもちろん絶対条件として採用されたのが有名な
『市販車初のアルミフレーム』
であるAL-BOXフレームです。
当時はフレームといえば鉄が当たり前。アルミフレームなんてワンオフのレーサーくらい。
コストも10倍ほど違う事から当然ながら上から大反対に合い
「絶対にダメだ、クビにするぞ」
と常務から釘を差されるほどだったんですが横内さんが
「このままでは二輪事業が撤退になる。まだ何処も挑戦していないアルミフレームで勝負すれば成功するだけでなくスズキのブランドと技術力のアピールにもなる。」
と譲らず何度も説得する事でなんとか了承を得ることに成功し、溶接技師を掻き集め教育する事からスタート。
※当時はアルミ溶接機械が無かった時代
この市販車初のアルミフレームにはそんなドラマが詰まっているんです。
もちろんアルミフレームやフェアリングだけでなく
・クラストップの45馬力
・アルミバックステップ
・多段テーパーチャンバー
・フロント16インチホイール
・セパレートハンドル
など絢爛豪華な造りで圧倒的なマシンになりました。
しかし同時に車体価格も46万円(400クラス並)という圧倒的な高さになってしまった・・・絶対に成功させないといけない車種でこの高値。
横内さんも迷ったそうですが
「これだけの性能なんだからみんな分かってくれる。」
とユーザーを信じコストカットすることなく発売。
結果はこうして歴史に大きく名を刻んでいる通り
「公道を走れるGPレーサーだ」
として大きく話題となり大ヒット。レース界隈ではこのバイクじゃないと勝負ならないほどでした。
そしてその勢いは留まる事を知らず翌84年には通常2型にマイナーチェンジ。
カウルデザインが全体的にスラント化され、アルミフレームも剛性が上がったAL-BOXからMR-ALBOXへ進化。
更には対向4POTキャリパーとリア2POTのDECA(10の意味)PISTONを採用。
これらの改良で、既にクラスナンバー1だったパワーウェイトレシオから更に4kgも軽量化。
窮地に陥っていたスズキ二輪を救うと共に、スズキの技術力とブランド力を大いに示す結果となりました。
主要諸元
全長/幅/高 | 2050/685/1195mm |
シート高 | 785mm |
車軸距離 | 1385mm |
車体重量 | 131kg(乾) |
燃料消費率 | 45.3km/L ※定地走行テスト値 |
燃料容量 | 17.0L |
エンジン | 水冷2サイクル2気筒 |
総排気量 | 247cc |
最高出力 | 45ps/8500rpm |
最高トルク | 3.8kg-m/8000rpm |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前100/90-16(54S) 後100/90-18(56S) |
バッテリー | FB5L-BS |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
B9ES |
推奨オイル | – |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量1.2L |
スプロケ | 前14|後37 |
チェーン | サイズ520|リンク110 |
車体価格 | 460,000円(税別) |