GL1500 GOLDWING/SE(SC22) -since 1988-

GL1500SE

「追随を許さない最高級ツアラー」

六気筒化し1520ccまでスケールアップされた四代目GL1500GOLDWING。

このモデルからネイキッドは完全廃止となりメガクルーザーとなりました。グレードはInterstate/Apencade/SEの三種類。

SC22パンフレット

このモデルの開発はVFR750系やCBR1100XXといったホンダのスーパースポーツを手がけていた山中さんが担当。

当時ゴールドウィングの開発を命じられた時

「スポーツバイクが作りたいから嫌です」

と最初は断ったそう。

しかし北米の稼ぎ頭である最重要バイクを任せられるのはお前しか居ないと言われ、好きにやらせて貰うことを条件に承諾。

GL1500デザイン

サルーンを目指し、内部や繋ぎ目を見せない事を徹底したわけですが、そんな中で一つだけ避けられない絶対条件がありました。

「六気筒は特別、だから絶対六気筒にしろ」

というアメリカからの要望です。

アメリカ人というのは日本人以上に六気筒に並々ならぬこだわりを持っています。

SC22

主要市場であるアメリカの要望を聞かないわけにも行かずスペースとの格闘の末に試作車が完成。

そしてそれをアメリカサイドに乗らせたところ・・・

「低速トルクが足りない。ヒュンヒュン回りすぎ。」

というダメ出しをされてしまう。

水平対向6気筒エンジン

「オデッセイにポルシェのエンジンを積んでファミリーカーを作れと言ってるようなものだ」

と山中さんは頭を抱えたそうですが、ソコはグッとこらえてエンジンのロングストローク化とフライホイールマスの増加、変速比の見直しで何とか対応。

SC22カタログ

結局GL1500の試作機は10台以上にも及んだんだとか。

そんな苦労に苦労を重ねただけあり、GL1500はゴールドウィングの地位を確固たるものにした名車です。

オハイオ工場

それは六気筒もそうなんだけどもう一つ大事なのがリバースギアを採用したこと。

これは幅も重量もある事から手押しが難しいゴールドウイングでバックしようとしたら、奥さんに前から押してもらったりする必要があった。

貴族にそんな情けない事はさせたくないという配慮から、セルモーターにバックギアを仕込む事で時速2km/hでのバックを可能に。

GL1500パンフレット

アメリカの新車発表会でこのバック機能を実際に披露した所

「新しいツーリング時代のはじまりだ!」

と拍手喝采が鳴り止まなかった。

そして何よりこのモデルから見覚えもある人が居るように日本での取り扱いも始まりました。

ゴールドウイングSE

実は日本市場で750cc自主規制を初めて突破したホンダ車は何とこのゴールドウイング。

750cc以上は危険というイメージに対しゴールドウィングは掛け離れているとして発売に踏み切り。

和名は「ゴールドウイングSE」で北米のフルオプション仕様であるSEと基本的に同じ。

もちろん日本でも暖かく迎え入れられ、 結果的にそれまでのモデルサイクルの三倍の13年も売れ続けるロングセラーモデルになりました。

金翼

コチラは北米生産10周年を記念してまた作られた金色のGOLDWING。
モンキーといいホンダは金が好きだなー。いやアメリカ人が好きなのか。

最後にもう一つGL1500に纏わるエピソードを。

社内でこのGL1500のエンジン開発をしていた所、たまたま視察に来ていた三代目社長である久米さんがGL1500のエンジンを見て

久米社長

「このエンジンを作ったやつを呼べ」

と言って呼び出し。

ホンダの社長は技術畑出身という慣例は有名だと思います。

そして久米社長はフォーミュラーエンジンを担当し、本田宗一郎と空油冷問題で激突し出社拒否までし、CVCCエンジンの開発でシビックの名を世界に知らしめた豪腕エンジニア。

だからGL1500のギアとシャフトの異常な多さを一目で見抜いたんです。

SC22エンジン

これは「GL1000(GL1)の系譜」で言った通り前後長を縮めるために二階建てになっている事に加え、このモデルからリバースギア専用のシャフトとギアが入ったから・・・が、そこは流石エンジニアというべきか

「技術的な問題は凡人が集まり創意工夫することで解決する」

というホンダの考えを地で行く社長だったので、多い理由を説明されたところで

「なるほど分かった」

と簡単に引き下がるわけもなく

「まだまだ工夫出来る余地があるはずだ」

と、もはや社長というより社長権限を持ったエンジニア状態で、納得できるまで痛いところを指摘し続け、開発チームは完成間近だったエンジンを正月返上で再設計するハメに。

ゴールドウイングSE国内仕様

結局小変更を加えつつも現状では今のエンジンレイアウトがベストだという答えに辿り着き一段落。

現場は大変だったでしょうが、こうやってトップまでもがエンジニア魂を持ち続けている事こそがホンダがホンダとしてあり続けられる理由なんでしょうね。

主要諸元
全長/幅/高 2630/955/1525mm
シート高 770mm
車軸距離 1700mm
車体重量 391kg(装)
燃料消費率 27.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 23L
エンジン 水冷4サイクルOHC2バルブ水平対向6気筒
総排気量 1520cc
最高出力 97ps/5000rpm
最高トルク 15.2kg-m/4000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前130/70-18(63H)
後160/80-16(75H)
バッテリー Y50-N18L-A3
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR6EA-9/DPR7EA-9/DPR8EA-9
または
X20EPR-U9/X22EPR-U9/X24EPR-U9
推奨オイル Honda純正ウルトラU(SAE10W-30)
または
HondaウルトラGP(SEA10W-40/20W-50)
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.3L
交換時3.5L
フィルター交換時3.7L
スプロケ
チェーン
車体価格 1,750,000円(税別)
系譜図
M11972年
M1
(A0K)
GL1000GW1974年
GL1000
GOLDWING
(GL1)
GOLDWING12001980年
GL1100
GOLDWING
(SC02)
GL1200

1984年
GL1200
GOLDWING
(SC14)

GOLDWING-SE1988年
GL1500
GOLDWING
(SC22)
GOLDWING-SE1996年
VALKYRIE/TOURER
(SC34)
SC472001年
GL1800
GOLDWING
(SC47)
SC472004年
VALKYRIE RUNE
/NRX1800
(SC53)
SC682011年
GL1800
GOLDWING
(SC68)
F6C2014年
GOLDWING
F6B/F6C
(SC68)
20182018年
GOLDWING/TOUR
(SC79)

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