「Synchronized Performance Bike」
2014年にヤマハの新時代ロードスポーツとして登場したMT-09/1RCとMT-09ABS/2DR~B87型。
特徴は何と言ってもCP3(CrossPlane3cylinder)の名を持つ完全新設計の並列三気筒エンジン。1976年に出したGX750以来ですね。
実際にGX750の開発者からもアドバイスを頂いたりして開発されたとの話なんですが、当時モーターショーでエンジンだけ先に発表されるなどヤマハの肝煎り感がありました。
実際このエンジンはお世辞でも何でもなく非常に良く出来た(面白い)エンジンだという声が四方八方から現在進行形で聞かれているんですが理由は最後に話すとして、これに合わせられる車体も特徴的。
・アルミダイキャストフレーム
・テーパーハンドル
・立ってて近いステム
・装備重量で181kg
というモタードのような形をしているのが特徴。
実際これはモタードというかヤマハ的にいうとトレール要素を強く意識して取り入れており、その狙いについて開発責任者の山本さん曰く
「ライダーとバイクの動きが一対一になるようにするため」
という話。
具体的に話すと時速300km近く出る大型バイクが分かりやすいステータスとして当たり前な世の中になった一方で、じゃあそのパワーを発揮出来る環境があるかというと無い。
それでも最初は町中をダラダラ走るだけでも楽しい。自分にとって最高だと思うバイクに乗るという所有感補正があるから。しかし見慣れてきて所有感が薄れると、今度はそのバイク本来の扱い方で楽しさを得ようとする。
しかし時速300km出るバイクの本領を発揮させるなんて一般人には到底出来ない・・・そしてどんどん乗らなくなり車庫の肥やしになる。
という大型バイクあるあるなんですが、こうならない大型バイクを造ろうとして開発されたのがこれ。
「毎日乗って楽しめる大型バイク」
というコンセプトのMT-09なんです。
そしてそのコンセプトを実現させる際にヒントになったのがヤマハ社内の駐輪場。駐輪場を覗くとトレール車で通勤している人が多いことに気づいたわけです。
どうしてトレールが人気なのかといえば
・軽くて細い
・低速からパンチがある
・キビキビなハンドリング
・振り回しやすい
などの要素を兼ね備えているから。
ならばこれを兼ね備えた大型バイクを造れば町中を走るだけでも楽しい毎日乗れるんじゃないか、という発想の元に開発されこの形になった。
スリムさを優先した為に14Lしか入らない燃料タンクにお世辞にも優しいとはいえないシート。キャスター角が立ってる上にライダーに近い事から節操のないハンドリング。
一見するとネガティブにしか思えないトレール譲りのこれら要素は全てそれを実現するためにあり、またそれに最も合致したエンジンが三気筒という結論に至ったから既存の二気筒や四気筒を流用するのではなくわざわざ造った。
そうして完成したのがMT-09というネイキッドとトレールの異種混合バイクという話。
ただ正直こう言ってもMT-09の魅力はまだ伝えられていないかと思います。
「あーはいはい乗りやすい大型バイクね」
くらいにしか思ってない人も居るかと・・・でもMT-09はそれだけじゃないから大ヒットした。
MT-09がヒットした理由にはもちろん80万円を切る車体価格の安さもあった。リーマンショックで不況に陥った事で高額バイクの時代じゃないといめておこうとなった背景があります。
でもそれ以上に評価さたのが説明してきたコンセプトで、MT-09が発売された時にヤマハの開発陣たちが
「いつもの道でご堪能下さい」
と自信満々に言った理由もここ。
わかりやすく言うと
「最高速を捨てた846ccの三気筒を積んでいる」
という事。
気軽に振り回せますよという雰囲気を車体の方で醸し出しつつも、大排気量らしいブンブン回るパンチが効きすぎてるエンジンが載ってる。
つまり語弊を恐れずに言うならば
「大型バイクのスリルが日常で味わえる」
という感じで、これは走行モード切替機能が大いに貢献してる。
・STDモード(標準モード)
・Aモード(元気モード)
・Bモード(穏やかモード)
の3つのモードが付いているんですが、恐らくモード切替が無かったから実現していなかったんじゃないかと思います。なぜならAモードをナメてかかると間違いなく吹っ飛ぶから。
MT-09はエキスパート層までを満足させる狙いがありAモードはそのためにあるものなんですが、本当に凄いというか凄いを通り越して
「よくこれで出したな」
と思うレベルで、モード切替が無かったら間違いなく実現していない。
このバイクはそんなAモードを怖いと思うか、それとも”楽しいと思ってしまうか”が全て。
両者を分けるのは・・・頭のネジの本数ですかね。
主要諸元
全長/幅/高 | 2075/815/1135mm |
シート高 | 815mm |
車軸距離 | 1440mm |
車体重量 | 188kg(装) [191kg(装)] |
燃料消費率 | 19.4m/L ※WMTCモード値 |
燃料容量 | 14.0L |
エンジン | 水冷4サイクルDOHC三気筒 |
総排気量 | 846cc |
最高出力 | 110ps/9000rpm |
最高トルク | 8.9kg-m/8500rpm |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前120/70ZR17(58W) 後180/55ZR17(73W) |
バッテリー | YTZ10S |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
CPR9EA9 |
推奨オイル | ヤマルーブ プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量3.4L 交換時2.4L フィルター交換時2.7L |
スプロケ | 前16|リア45 |
チェーン | サイズ525|リンク110 |
車体価格 | 787,000円(税別) [833,000円(税別)] |
年次改良
2016年:ABSと3段階のトラクションコントロールを標準装備