MT-09/SP(B7N/BAM)-since 2021-

2021MT-09

「The Roadeo Master」

公式では初のフルモデルチェンジとなったMT-09のB7N型とSPのBAM型。

まず最初に変更点を上げると

・デザインの大幅な刷新
・ストロークを伸ばし890cc(+43cc/+4ps)になった新設計エンジン
・サウンドデザインされた給排気系
・2.3kg軽量化された新設計アルミフレーム
・フロントラジアルマスターシリンダー
・スピンフォージドホイール
・軽量フロントサスペンション
・YCC-T(電子制御スロットル)
・6軸IMUとそれに伴う電子制御(トラクション、リフト、スライド、ブレーキ制御)
・フルカラーTFTメーター
・LEDウインカー
・可変式フットレスト
・アップダウン対応クイックシフター

2021MT-09SP

※以下SPの変更点
・塗り分けされた専用カラー
・スモーク処理されたブレーキリザーブタンク
・黒塗装ドリブンスプロケット
・KTB左右独立減衰力調整構造フォークにDLCを追加
・バフ&クリア塗装のスイングアーム
・クルーズコントロール(4速50km/h以上)

などなどフルモデルチェンジと謳うだけあり、ほぼすべてに手が加えれた形となりました。変わっていないのはブレーキキャリパーくらいですね。

MT-09フューチャーマップ

その中でも何が一番大きく変わったかといえば6軸IMU(慣性計測装置)とAPSG(電子制御スロットル)による制御の完全電脳化なんですが、見た目もマスの集中化とそれを視覚化させる事が狙いというだけありギュッと詰まったデザインになりました。

具体的にはメインフレームのヘッド(ステム)パイプを30mm下げると同時にヘッドライトユニットを極限までコンパクトにしつつステムに近づけるなどの改良が加えられています。

サイドビュー

小型に出来るLEDのメリットを存分に活かした形ですね。ちなみにホイールベースも10mm短縮。

ただ中身の方も結構変わっていて、要であるエンジンの方はFIからピストンやコンロッドさらにはクランクシャフトまで新設計すると同時に排気量を43cc上げて888ccに。

もう少し厳密に言うとストローク量を6.1mm上げ、低中速トルクを底上げした形でエンジンブロックには新色のガンメタに近い明るい塗装が採用されています。

しかしそれよりもこの代で最も紹介すべき新アイテムは間違いなく量販車初となるコレ。

ヤマハスピンフォージドホイール

『SPINFORGED WHEEL』

直訳すると回転鍛造ホイールなんですが、これの凄さを100%共感してもらうために鋳造ホイールと鍛造ホイールの違いについてからおさらいを兼ねて説明。

鋳造ホイールはデロデロに溶かしたアルミを型に流し込んで成形する製法。極端な話ですが型に流し込めば良いのでコストは安く複雑な構造も得意。

鋳造ホイール

ただし溶かして冷やすという製法の問題から鋳巣という強度を損なう空洞が出来やすく、また溶かしたアルミを隅々までキレイに流れるような型にしないと行けないので薄く(軽く)出来ない。

純正ホイールは一部を除きほぼ鋳造ホイールです。

対して鍛造ホイールというのはアルミをプレス機でバチーンと打って造られている製法。圧力で成形するので組織が密になるので強度が出る。

鍛造と鋳造

しかし肝心のプレス機が非常に高価なため大量生産には向かず、また複雑な形状を造るのも難しい問題もある。削り出しという工程を加えることでデザイン性を上げることが出来ますが、ただでさえ高いコストがなおのこと高くなる。

鍛造ホイール

鍛造ホイールといえばマルケジーニなどが有名ですね。

ホイールというのはいわゆるバネ下で一番重いものなので軽量化において最も効果的な箇所といえるものの、コストや量産の問題があるから鍛造ホイールは一部の超高級車にしか採用されない。

そこでヤマハが取り組んだのがこのスピンフォージドホイール。

スピンフォージドホイール

これはまず基本となるホイール(ディスク)部分を鋳造で精製した後に、回転する台に載せて金属のローラーで陶芸の”ろくろ”のようにリム端の部分に圧力をかけて成形する。

正式には

『フローフォーミング加工』

と言って、要するに鋳造で造ってからリムの部分を鍛造化する技術。これによりリムの厚みが従来の半分になり重量も前後で700gの軽量化に成功。

フローフォーミング加工

これ四輪の方でも一部のスポーツモデルなどに採用が進んでるんですが二輪の場合

・触れてはいけないリム中央部と端の幅が非常に狭く加工がシビア

・左右どちらのリムも外装を担っていることから跡などが見えてはいけない

・前後でホイールの形状が違う(量産効果が得られない)

など四輪とは比べ物にならないほどハードルが高かったために今まで実現されなかった。

では何故ヤマハがこれを実現出来たのかといえばそれはCFダイキャストなどからも分かる通りヤマハがアルミのプロフェッショナルであると同時に

「ホイールまで内製しているメーカーだから」

という話。

だからこそ実現出来たことですが、そんなヤマハですら企画の始まりを含めると実に5年がかりで、原材料の添加物配合率をコンマ%単位でオリジナルブレンドしてやっと実現出来たもの。

そして完成した第一弾となるのがこのMT-09に採用されたホイール。

鍛造と鋳造の良いところ取り

費用対効果を考えると量販ホイールはこれがもう完成形じゃないかと思います。

最後にまとめというか何というか。

2021年からのMT-09/SP(B7N/BAM)は、6軸IMUとそれに伴う電子制御の高度化、さらにアップ/ダウン対応クイックシフターに今お話した新時代ホイールことスピンフォージドホイール。

どう考えてもフラッグシップといえるフル装備なんですが、さらに驚きなのがこれで税別1,150,000円と破格な事。

2021MT-09カタログ

これは相当戦略的な価格というか・・・以下ちょっと主観なんですが、MT-09はこの代で少し立ち位置が変わった印象があります。

というのも元々MT-09は

「ネイキッドとモタードを掛け合わせた形」

というのは皆さんご存知かと思いますが、先代まで(特に初代)は明らかにモタード要素が強いモデルでした。まさにコンセプトにもあるロデオそのもので車体が水平をキープする事が殆どないようなハッチャ系。

それを今回は少し抑えた・・・というのもちょっと語弊がある。ここが絶妙なところで例えるなら今まで1から10までロデオ(モタード)だったのに対し、フル電脳化に伴って1から5まではライトウェイトなネイキッドで6から10まではモタードという感じ。

ロングストローク化でトルクを底上げしたエンジンからも分かる通り、トルクを楽しむ『マスターオブトルク』というコンセプトにさらに忠実に習った形にしたとも言えるわけですが、さらにその狙いを現しているのが純正オプションの拡充。

オプション

このモデルからスクリーンはもちろんトップケースまでボルトオンで簡単に脱着出来るよう考慮されて開発されています。

車体設計の段階から考えられている事の何が強みかといえば

「容易に脱着出来る」

という事。これがこの代のMT-09をよく現している要素と言えるかと。

ロデオマスターMT-09

「その日の気分でモタードにもネイキッドにもなれるヤマハ流ビッグスタンダード」

という感じですね。

主要諸元
全長/幅/高 2090/795/1190mm
シート高 825mm
車軸距離 1430mm
車体重量 189kg(装)
[190kg(装)]
燃料消費率 20.4m/L
※WMTCモード値
燃料容量 14.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC三気筒
総排気量 888cc
最高出力 120ps/10000rpm
最高トルク 9.5kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR9A-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.5L
交換時2.8L
フィルター交換時3.2L
スプロケ 前16|リア45
チェーン サイズ525|リンク110
車体価格 1,100,000円(税別)
[1,150,000円(税別)]
※[]内はMT-09SP/BAM
系譜図
MT-09 2014年
MT-09/A
(1RC/2DR)
mt-09トレーサー 2015年
MT-09TRACER
(2SC)
XSR900 2016年
XSR900
(B09)
2017MT-09 2017年
MT-09/SP
(BS2/B6C)
TRACER900 2018年
TRACER/GT
(B5C/B1J)
2021mt-09 2021年
MT-09/SP
(B7N/BAM)
TRACER9GT 2021年
TRACER9GT
(BAP)

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