![2003R6](https://bike-lineage.org/wp-content/uploads/2023/11/2003YZF-R6-1.jpg)
「エキサイティングなベスト600ccスーパースポーツ」
大きく生まれ変わった三代目YZF-R6の5SL型。
開発目標は更なるコーナリング性能の向上とエキサイティングなエンジン性能の具現化。
そのためにまずエンジンを
・ダイレクトメッキシリンダー
・シリンダーの剛性アップ
・クランク圧のポンピングロスを減らすバイパス
・狭角ハイカム化
・負圧ピストン付きのFI
・二重管構造のチタンパイプ
・発電システムの薄型化
など約9割の部品を新設計というもはや完全新設計と言っていいほどの変更。
![5SLのエンジン](https://bike-lineage.org/wp-content/uploads/2023/11/5sl_engine.jpg)
いま改めて振り返ってみるとメッキシリンダーや二重管チタンなど現代でこそハイエンドモデルでは当たり前となっている技術の数々をミドルにも関わらずいち早く採用している本当に意欲的でバブリーなエンジン。
そのおかげか10年以上もベースエンジンとして第一線を張り続けただけでなく、突き抜けるような超高回転という官能性も非常に評価されていますね。
![5SL](https://bike-lineage.org/wp-content/uploads/2023/11/yzf_r6_5sl.jpg)
ちなみにそんなR6の官能的なエンジンに酔いしれている人は現行を含め多くおられると思いますが、最初に酔いしれたのは実は他ならぬ開発陣。
実験担当だった伊藤さんいわく、この新設計エンジンの試作機が完成し実験を開始したところ、どこまでも軽やかに突き抜けるどころか回せば回しただけ性能が出るもんだから興奮してアクセルを緩める事ができず、結局クランクを突き破るまで(コンロッドが折損するまで)回してしまい1基ダメにしてしまうというオチ。
![2003R6](https://bike-lineage.org/wp-content/uploads/2023/11/yzf-r6_5sl.jpg)
そんな事をやらかすほどだったからメーターには19000rpmまでしか刻まれていないんだけど
「本当はこんなもんじゃない」
とまで言う始末※CLUBMAN/No216より
それほどまでに凄いエンジンが出来たとチーム内では手応えを感じていたというわけです。
![5SLカタログ写真](https://bike-lineage.org/wp-content/uploads/2023/11/5sl_catalog.jpg)
ただ5SLの凄い部分はまだあります。
それは
『CFアルミダイキャスト』
です。
ダイキャストというのは簡単にいうとドロドロの合金をコンマ何秒という速さで型に注入することで精密かつ複雑な成形を可能にする大量生産向きの鋳造の事。
しかしアルミは凄い速さで固まってしまう事と潤滑剤が発生させるガスや空気などの巻き込みで中に空洞(鋳巣)が出来てしまい強度が落ちてしまう問題があったため、薄かったり細かったりするものは造れないのが一般的だった。
そこでヤマハはこの問題を解決するためになんと自社でダイキャスト設備について研究開発し編み出したのがCFダイキャスト技術。
![CFアルミダイキャスト](https://bike-lineage.org/wp-content/uploads/2023/11/cf_aluminum_diecasting.jpg)
特殊なシールで真空度を上げると同時に注入速度を5倍に速め、ヒーターでアルミが途中で固まるのを防ぐ事でガスの混入率を1/5にまで低減することに成功。
それにより安定した強度を出せる様になった事で、これまで無理だった細い形状や薄い形状のダイキャストを可能にした・・・というのがヤマハのCFアルミダイキャスト。
![5SLのフレーム](https://bike-lineage.org/wp-content/uploads/2023/11/5sl_frame.jpg)
そして大事なのがその技術で初めて造られたのが他ならぬこのYZF-R6/5SL型のメインフレームとスイングアームという話。
つまり5SLというのはエンジンもシャーシも何もかも最先端の技術の塊のようなバイクだったんです。だからデザインも当初は変える予定はなかったものの大きく進化した事をアピールするために変更された背景がある。
![カタログ](https://bike-lineage.org/wp-content/uploads/2023/11/yamaha_r6_5sl.jpg)
ちなみにこのモデルのイメージは空気を食らう怪物。虎をイメージされたとの事。
残念ながらこの頃のR6は日本ではあまり有名ではありませんが、レースがより身近にある欧州ではメディアなどを見る限り非常に高い評価で当時向こうではミドル一番人気だった模様。
だから欧州仕様にはイモビライザーが付いていました、これは欧州で盗難事故が増えてきてR6も人気があって狙われやすかったから。
![R6盗難保険](https://bike-lineage.org/wp-content/uploads/2023/11/yamaha_r6.jpg)
この事で欧州の盗難保険会社はその後イモビ有りとイモビ無しで分け実質的な値上げ。フランスやオランダなどではイモビがついてないと盗難保険に入ること自体が不可になるほどの事態になりました。
そんな5SLですが最終年となる3年目の2005年にはマイナーチェンジがされています。
![2005R6](https://bike-lineage.org/wp-content/uploads/2023/11/2005YZF-R6.jpg)
・スロットルボディ(38mm→40mm)
・ エアファンネル(39.4mm→41.6mm)
・フレームの剛性バランスを見直し
・ホイールベースを5mm延長
・フロントタイヤ120/70ZR17に変更
・倒立フォークとラジアルマスターとキャリパー
などの変更点が加わりスペックは+3馬力と更に向上。
![5SLの壁紙](https://bike-lineage.org/wp-content/uploads/2023/11/5sl_wallpaper.jpg)
ただこれは大人気だっていたからこそ可能だった欧州仕様のみの欧州スペシャルモデルみたいなもの。
更に向こうでは
・右半分が太陽をイメージした黄色
・左半分が月をイメージした黒色
というセンターで色分けされた独創的なカラーリングとテルミニョーニのスリップオンが付いたモデルも販売。
![YZF-R46](https://bike-lineage.org/wp-content/uploads/2023/11/yzf-r46.jpg)
ご存知ロッシのスペシャルカラーで本人のサインとシリアル付きで限定300台。
![ロッシカラー](https://bike-lineage.org/wp-content/uploads/2023/11/r6_rossi_color.jpg)
その名も『YZF-R46』
10年以上前なだけあってロッシが若い。
主要諸元
全長/幅/高 | 2025/690/1090mm [2045/690/1105mm] |
シート高 | 820mm |
車軸距離 | 1380mm [1385mm] |
車体重量 | 182kg(装) [183kg(装) ] |
燃料消費率 | – |
燃料容量 | 17.0L [17.5L] |
エンジン | 水冷4サイクルDOHC4気筒 |
総排気量 | 599cc |
最高出力 | 117ps/13000rpm [120ps/13000rpm] |
最高トルク | 6.78kg-m/12000rpm |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前120/60ZR17(55W) 後180/55ZR17(73W) [前120/70ZR17(58W) 後180/55ZR17(73W)] |
バッテリー | GT9B-4 |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
CR9EK/CR10EK |
推奨オイル | ヤマルーブ プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量3.4L 交換時2.4L フィルター交換時2.6L |
スプロケ | 前16|後48 |
チェーン | サイズ532|リンク116 |
車体価格 | 980,000円(税別) [990,000円(税別)] ※プレスト価格 ※[]内は5SL後期(05年モデル) |
系譜図
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1985年 FZ600 (2AX/2AY) |
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1989年 FZR600 (3HE/4HJ) |
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1994年 YZF600R (4WE) |
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1999年 YZF-R6 (5EB) |
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2001年 YZF-R6 (5MT) |
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2003年 YZF-R6 (5SL) |
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2006年 YZF-R6 (2C0) |
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2008年 YZF-R6 (13S/1JS/2CX) |
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2017年 YZF-R6 (BN6) |