「ワイルドダイナミックパフォーマンス」
ヤマハのビッグネイキッドとして登場したXJR1200/4KG型。
欧州向けFJ1200のエンジンをベースに給排気を見直し、カムカバーやシリンダーブロックなどを魅せる部分を新設計。
そのエンジンを王道のダブルクレードルフレームに積み、リアサスには贅沢にもオーリンズを標準採用。
ところでXJR1200が誕生した背景には90年頃から始まっていたネイキッドブームが大型二輪免許の規制緩和を機に大型にも波及した事が大きな要因。
その波に乗ったのがZEPHYR1100やCB1000SFなどですね。
だからヤマハも対抗馬としてXJR1200を出したんですが、出たのは1994年と最後発の類でした。
何故これほど遅れたのかというと
「どう造ればいいのか分からなかった」
というのが大きな理由だったよう。
これまでヤマハと言えばスポーツ性や快適性など比較的数値や言葉で表すことが出来る性能を高めたビッグバイクを造り好評だった。
それに対しビッグネイキッドに求められるものは何かと言えば
『ビッグネイキッドらしい味』
という非常に難しい性能。
そこでヤマハ、宮地開発責任者が何をしたのかというと『ビッグネイキッドらしい味』を明確にする事でした。
そのために用いられたのが
『ヒューマノニクス』
と銘打たれた手法。
多くのライダーからサンプリングを取り
・トルクに厚みがある
・加速に安心感がある
・ハンドリングが鋭い
・低速なバンク中も安定している
といった
『良い要素だけど数値化が難しい要素』
を明確に数値化し曖昧さを排除する事にしたんです。これに凄く時間がかかった。
ちなみにこれはXJR400とこのXJR1200で初めて取り入れられた手法。
何故これが大事なのかというと、ユーザーに満足してもらう為という単純な事ではなく、開発チームの目標を明確にするためでもあったんです。
そうして各々が思い描くビッグネイキッド像を擦り合わせて造るのではなく、明確にビジュアル化されたビッグネイキッド像を立て目指すことでチームが一丸となれた。
後はもうチームみんなで走り込んでは調整の繰り返し。
そうして誕生したのが迷いも曖昧さもないヤマハのビッグネイキッドXJR1200というわけです。
ちなみにこれは余談ですが、皆で走って調整してまた皆で走って調整して目標を繰り返し・・・というチーム全員がテストライダーという事もあって開発がとっても楽しいバイクだったそう。
楽しすぎて悪ノリしたのかこんなコンセプトまで造っています。
なぜ楽しかったのかと言えば
「アウトバーンを考慮しなくてよかったから」
です。
欧州で売る場合は平均時速180kmで路面もボコボコなアウトバーンをキッチリ真っ直ぐ走れる様にフレームやパワーを補強する必要がある。
そうするとどうしてもそれ以下の速度域でのフィーリングが犠牲になる。
しかしビッグネイキッドのXJR1200は開発段階から日本専用と決まっていた。だからアウトバーンを考慮せず、時速50~100km域でのフィーリングを主体に考える事が出来た。
そしてその域というのはチーム全員が使える、チーム全員が感じ取れる域だったから開発が楽しかったというわけ。
その狙いが伝わったのかXJR1200はデビューと同時にビッグネイキッドの話題を独り占めするほどの人気となりました。
デビュー後も1995年にBremboキャリパーを採用、1996年にはリアサスのスプリングを黄色にするマイナーチェンジが入っています。
ちなみに上の写真は同年に出たフレームマウントの大型カウル付きのちょっとレアなXJR1200R。
主要諸元
全長/幅/高 | 2175/765/1120mm [2175/765/1255mm] |
シート高 | 780mm |
車軸距離 | 1500mm |
車体重量 | 232kg(乾) [233kg(乾)] |
燃料消費率 | 25.0km/L ※定地走行テスト値 |
燃料容量 | 21.0L |
エンジン | 空冷4サイクルDOHC四気筒 |
総排気量 | 1188cc |
最高出力 | 97ps/8000rpm |
最高トルク | 9.3kg-m/6000rpm |
変速機 | 常時噛合式5速リターン |
タイヤサイズ | 前130/70ZR17 後170/60ZR17 |
バッテリー | YTX14-BS |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
DPR8EA-9 |
推奨オイル | ヤマルーブ プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量4.2L 交換時3.0L フィルター交換時3.35L |
スプロケ | 前17|後38 |
チェーン | サイズ532|リンク110 |
車体価格 | 930,000円(税別) [950,000円(税別)] ※[]内はXJR1200R |