「Next Stage Total Control」
再び5年ぶりのモデルチェンジとなったCBR1000RRのSC77型。
「やっと」と言うべきか「遂に」と言うべきかCBR1000RRも完全な電子制御化が行われました。
慣性測定ユニット(縦横垂直の加速度とヨーとローの5軸IMU)を搭載し
・9段階トラクションコントロールシステム
・ウィリーコントロール
・IMUと連動したコーナリングABS
・走行特性を変更できるパワーセレクター
・セレクタブルエンジンブレーキ
などなどを完備。
セレクタブルエンジンブレーキというのはスロットルバルブを少し開いてエンブレを緩和する機能。
エンブレについては
をどうぞ。
ところでCBR1000RRは
「モデルチェンジは2017年だろう」
と2015年頃から既に言われていました。
それはEURO4(2016年度規制)も要因の一つですが、市販車レースSBKのレギュレーション(ルール)が理由。
もともとSBKは電子制御スロットルじゃないといけなかったんだけど、CBR1000RRはホンダがSBKに消極的な事もあって後付の電子スロットルでなんとかしていた。
しかしそれが
”2017年からは後付も禁止”
となったわけです。
これは改造範囲を狭くして予算の多いチーム(ワークスなど)が圧倒的に有利になる状況を防ぎたいという運営の狙い。
だから2017年にモデルチェンジだろうと言われていた。
ワークス参戦していないとはいえ、欧州の現地法人やパートナー企業は参戦していて、切り捨てるわけには行きませんからね。
このスロットル・バイ・ワイヤ(電子制御スロットル)にはそんな背景があるわけです。
しかしコレはモデルチェンジのごく一部。
10年ぶりのフルモデルチェンジという事でフルLEDになったことも目につきますが、一番はエンジン。
カムシャフトの見直しによるバルブタイミングとリフト量の見直しで750rpm高回転化、更に圧縮比を大きく上げた事で13馬力アップ。
ちなみに足回りはバランスフリーユニットがLiteという簡易式だったものから正式なバランスフリーユニットになり、ホイールデ ザインも改められ100gの軽量化。
そして先代からあった一人乗り仕様のSPモデルも継続して登場。
・前後OHLINSの電子制御サスペンション
・Bremboキャリパー(フロントのみ)
・チタンフューエルタンク
・アルマイト加工フレーム
・リチウム電池バッテリー(※)
・シフトアップ/ダウン両対応クイックシフター(※)
※ノーマルにもOPで容易
と、なっている豪華装備版で2,462,400円(税込)。
そして恐らく一番人気であろうトリコロールカラーもSPのみという、トリコ好きにとっては地団駄を踏みたくなるような展開。
限定500台だったもう一つのSP2グレードは更に専用ピストンにバルブ径を拡大した専用エンジンヘッド、マルケジーニホイール等を採用し3,024,000円(税込)。
これがこの代のホモロゲーショングレードで、レースキットもこのSP2とレースベース車両のみ。
・・・少し小話をさせてもらうと、RRに限らず最近は電子制御サスが当たり前になってきたわけですが、実はこれ肝心のSBKでは使用禁止となっているもの。
だからワークスだろうとレースでは取っ払って従来のアナログ式(といっても専用の高級品)を付けて走る。
これは2018年参戦予定のCBR1000RRW(ワークスのW)鈴鹿八耐仕様。
少し話を脱線すると10年ぶりにワークス参戦する事となりました。
自分の庭(鈴鹿サーキット)で圧倒的な速さで連勝し、今年も勝てば史上初の同一チーム四連覇となるヤマハワークスYZF-R1を阻止すべく立ち上がったわけです。
HRCとヤマハファクトリー、そしてCBR1000RRとYZF-R1。
「永遠のライバル社が永遠のライバル車でガチンコ対決」
これは見るしかないですね。※7/26(木)~7/29(日)
話を戻すとSC77はレースベースもエンジンこそSP2仕様なんだけどサスペンションは電子制御ではなく無印と同じもの。
「じゃあなんで電子制御サスなんて入れるのよ」
って話なんですが・・・コレについて正確な答えを見つける事は出来ませんでした。すいません。
プレミアム化してお金持ちに売る為なのか。
もしかしたらOHLINSとの取引(電子制御のデータを集めたい)かもしれません。
というのも、いま普及しているOHLINSの電子制御サスというのは、正直言ってまだまだ途上な感じを否めないから。
電子制御サスペンションというと一見トラックで真価を発揮する様に思いますよね・・・でも実際はまだそうでもないんです。
このOHLINSの電子制御サスペンションというのは、IMU(慣性センサー)の情報をメインにSCU(サスペンションコントロールユニット)がダンパー(サスの伸縮)を制御するタイプ。
要するに電子制御と言ってもサスペンションの動き自体を見て制御しているわけではなく、横滑り防止などで活用されているIMU(慣性センサー)の情報をメインに制御している。
そして制御もサーボモーターな事もあり、トラックなどの激しい緩急を繰り返す用途では主にエキスパート層から
「思ったように動いてくれない」
という声がチラホラ聞かれ、自動制御を切っている人が意外と多い。
もちろんコレでタイムが縮まったという人も居ます。
SC77型に付いているのはホンダと共同開発した最新型なので性能は向上していますし、ソフトウェアアップデートもあるので年を追うごとに進化してるんですけどね。
「じゃあ電子制御サスのSPじゃなくていいか」
と思うのはちょっと早計です。
「俺に電子制御サスなんて豚に真珠だ」
と言ってる人をよく見ますが、実はそういう人の方が恩恵を受けるんです。
公道はトラックほど緩急が大きくないものの、場所や環境で路面状況は刻一刻と変わる。そして何より一般人が一般用途でサスペンションのセッティングを出し、状況によって変えるなんてまず無理な話。
でも電子制御サスペンションならプリロード(初期荷重)だけ合わせておけば、後はモードやゲージを選ぶだけでダンパー(サスの伸縮)は自動調節でやってくれて、最高の乗り心地と操る喜びを味わえる。
タイムアタックとは無縁な人、セッティングが面倒くさいと感じるズボラな人。
そういう人こそ電子制御サスペンションのSPを買ったほうが幸せになれる・・・かもしれない。
まあ高いですし、クラッチ要らずのクイックシフターも相まって
「人を下手糞にする装備」
とも言われていますけどね。
主要諸元
全長/幅/高 | 2065/720/1125mm |
シート高 | 820mm |
車軸距離 | 1405mm |
車体重量 | 196kg(装) [195kg(装)] {194kg(装)} |
燃料消費率 | 24.5km/L ※定地走行テスト値 |
燃料容量 | 17L |
エンジン | 水冷4サイクルDOHC4気筒 |
総排気量 | 999cc |
最高出力 | 192ps/13000rpm |
最高トルク | 11.6kg-m/11000rpm |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前120/70ZR17(58W) 後190/50ZR17(73W) |
バッテリー | YTZ7S HY93(SP/SP2) |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
IMR9E-9HES または VUH27ES {SILMAR10C9S} |
推奨オイル | Honda純正ウルトラG1(10W-30) |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量3.4L 交換時2.7L フィルター交換時2.7L |
スプロケ | 前16|後43 |
チェーン | サイズ525|リンク116 |
車体価格 | 2,014,200円(税込) [2,046,600円(税込)] {2,462,400円(税込)} ※[]内はSP1モデル ※{}内はSP2モデル ※18年モデルから180km/hリミッター無しとの事 |