CBR1000RRの系譜

CBR900RR
(SC28前期)
-since 1992-

初代CBR900RR

「TOTAL CONTROL」

今もホンダのスーパースポーツとしてあり続けるCBR1000RRの始祖となるCBR900RRのSC28型。

先に言ったように

「誰でも本当に楽しめる大型スポーツを造れないだろうか」

という所から始まったプロジェクトでナナハンという規格を捨てる事から再スタート。

そして誰でも楽しめるマシンコントロールに仕上げるには何よりも軽さだという事で

「185kgを切る1クラス下の乾燥重量」

という具体的な目標を立てて開発。

1992CBR900RR

そして完成したのは600かと思うほどコンパクトな車体に、寸足らずな893ccで馬力も140馬力超えが当たり前だった時代に124馬力しかないバイクでした。

この排気量と馬力になったのは

・コントロールして楽しめる馬力

・軽量ボディで耐えられる上限

がここだったから。

 

このCBR900RRの開発は営業との格闘が多くあったバイクです。

というのも、この頃は日本のみならず世界中で

「デカくてナンボ、ハイパワーでナンボ」

という声が溢れていたから。

だから営業も

「1200ccで150馬力」

という要求を行なっていた。

それなのに

”900ccで124馬力の小さなバイクを造る”

なんて言われたら反対するのも当然な話。

SC28

「せめてリッターにしてくれ」

と言われるも、上記で書いた通りこれ以上のスケールアップは重量増に繋がるとして拒否。

SC28フレーム

他にも例えばフロントフォーク。

CBR900RRのフロントフォークはカウルを剥かないと倒立に見える正立フォークを採用しています。

これは2ピース構造だからそう見えるわけですが、当時はちょうど倒立サスが流行っていた時期でもあった。

2ピースフロントフォーク

だから

「倒立の様に見せかけたナンチャッテ倒立サス」

と揶揄されたりしたけど、本当はそうでなく一番軽く良好なハンドリングに出来るのが正立2ピースだったから採用しているんです。

なんでもモトクロッサーCRの倒立フォークをわざわざ逆さまに加工して付けた事からヒントを得たんだとか。

もちろんこれも営業から倒立にしてくれと懇願されたものの

「倒立は重くて操舵慣性が増えるから駄目」

と理屈で拒否。

 

何故こんな勝手が通ったのかというと、この企画は研究所から提案されたものである事、そしてプロジェクトリーダーが市販車評価をする偉い人だったから。

馬場忠雄さん

馬場忠雄(ばば ただお)さんです。馬場Bladeなど名前を聞いたことがある人も多いと思います。

少し馬場さんの話をすると、馬場さんは工業高校を出てホンダに入社し生産部門へ配属されるわけですが

「研究所(開発部門)で仕事がしたい」

と猛勉強&猛アピールした事で研究所勤務への道を獲得した人。ブラバの山中さんと同じ流れですね。

ただ『馬場技師』という敬称が広まっている事からエンジニアとして認知されていますが、実は馬場さんは開発部門のエンジニアというよりも実験部門のいわゆる”テストライダー”の方で大いに活躍された方。

あまり知られていませんが

『全日本125ccクラスチャンピオン』

『鈴鹿10間耐久レース125cc部門チャンピオン』

といったタイトルを獲得しているほどのレース大好き凄腕ライダーなんですよ。

だから上で言った”市販車評価”というのも、要するにハンドリングや乗り味など”味見”の事。

CBR900RRと馬場さん

80年頃からその最終評価を任されるようになったわけですが、これは

「ホンダのバイクはよく出来ているけど面白くない」

という市場からの声が大きくなっていたから。

この事からテストライダー&レーサーであり開発者でもあった馬場さんが適任だと抜擢され、そのイメージを払拭する事に尽力していたわけです。

そして長いこと市販車の最終評価をしていた中で芽生えたのが

「安定志向なビッグバイクではなく、運転が楽しいビッグスポーツを造りたい」

という考え。

1992年CBR900RR

これがFireBladeプロジェクトの始まり。

最終的には営業にも実際に乗ってもらう事で自分たちのコンセプトを理解してもらったそう。

 

そんな市場が求めるスペックを完全に無視する形で登場したCBR900RRでしたが

「NSRの900cc版だ」

とハンドリングが大絶賛され、販売台数2万台を超える大ヒットとなりました。

馬場さんの考えを世界が認めた瞬間であるわけですが、馬場さんも正直ここまで売れるとは思っていなかったそう。

 

最後に纏めると

このCBR900RRというハンドリングが素晴らしいバイクが生まれたのは、営業側ではなく開発側の提案により生まれたプロジェクトだったから。

SC28

そして馬場さんという実験畑のテストライダー出身者が開発リーダーを務めるという前代未聞プロジェクトだったから・・・というわけです。

主要諸元

全長/幅/高 2030/685/1115mm
シート高 800mm
車軸距離 1405mm
車体重量 185kg(乾)
燃料消費率 -
燃料容量 18L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 893cc
最高出力 124ps/10500rpm
最高トルク 9.0kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前130/70ZR16(61W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー FTX9-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EH-9
推奨オイル -
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
-
スプロケ 前16|後42
チェーン サイズ530|リンク108
車体価格 不明
※国内正規販売なし

系譜図

cbr750rr 1990年
CBR750RR
(Prototype)
SC28 1992年
CBR900RR
(SC28前期)
sc28-2 1994年
CBR900RR
(SC28後期)
sc33 1996年
CBR900RR
(SC33前期)
sc33-2 1998年
CBR900RR
(SC33後期)
sc44 2000年
CBR929RR
(SC44)
sc50 2002年
CBR954RR
(SC50)
sc57 2004年
CBR1000RR
(SC57前期)
SC57後期 2006年
CBR1000RR
(SC57後期)
sc59 2008年
CBR1000RR
(SC59前期)
sc59後期 2012年
CBR1000RR/SP
(SC59後期)
SC77 2017年
CBR1000RR/SP1/SP2
(SC77)
SC82 2020年
CBR1000RR/SP
(SC82)