HAYABUSA(EJ11A)-since 2021-

HAYABUSA/EJ11A

「Ultimate Sport」

実に13年ぶりのフルモデルチェンジとなった三代目HAYABUSAことEJ11A型。

最初に変更点を上げると
・デザインの刷新
・設計の全面的な見直し
・6軸IMUを搭載
・電子制御スロットル(43mmへ小径化)
・スロープディベンデントコントロール(学習型ABS連動ブレーキ)
・ヒルホールドコントロール(上り坂停車時にリアブレーキを自動作動)
・スズキイージースタートシステム
・Brembo Stylema
・ディスクローターを310mmから320mmへ
・アナログ&デジタル五連メーター
・灯火系をフルLED化しDRLを装備
・ハンドルポジションを12mm手前に

SDMS-α・SDMS-α(下記電制のメーカープリセット3つとユーザープリセット3枠)
→トラクションコントロールシステム(10段階+OFF)
→アンチリフトコントロールシステム(10段階+OFF)
→出力モード切り替え(3段階)
→エンジンブレーキコントロールシステム(3段階+OFF)
→上下対応クイックシフター(2段階+OFF)

などなど書ききれないというかほぼ全てが変わっています。

正直なにから書けば良いのか分からなくなるレベルですが、まず見た目でも分かる通りデザインが新しくなりました。

HAYABUSA/EJ11A サイドHAYABUSAの象徴であるエアロダイナミクスを具現化したローロング&ワイドを守りつつ新世代を感じさせるものになっており、その中でもデザインの肝というか面白いところは二つあって、一つはフローの可視化。

フローの可視化メッキ加工がされたサイドスポイラーとマフラーでパワーフローを、塗り分けたダクトでエアフローを表現。そしてもう一つはアッパーカウル(ロゴの上辺り)を凹ませることでハイライトを作り、エアロダイナミクスを可視化する表現をしている。

ちなみに合わせてロゴも変更されています。

三代目のロゴ先代よりも少し斜体が抑えられ初代との間くらいになりました。そしてもう一つHAYABUSAのデザインで忘れてはならないのがコブ・・・も、ですが五連メーター。

三代目のロゴこちらも健在で中央にマルチインフォメーションカラーディスプレイ(モード、バンク角、ブレーキ圧、加速度、スロットル開度、オドメーター、燃費計、電圧計、航続可能距離など)を備えつつも、スピードメーターやタコメーターなどの計器はアナログ針。

中央のカラーディスプレイでバンク角やブレーキ圧といったメモリがグリグリ表示される両脇で、メーターの針がビュンビュン回るという非常にニクいハイブリッド構造になっています。

電子制御デバイスお次は中身の方ですが、最初にも話した通りボッシュ製6軸IMUと電子スロットルでフル電脳化されているんですが、単純なカタログスペックを先代と比べると

・最大出力が-9馬力で188馬力
・タンク容量が-1L減って20.0L
・車重が-2kgで264kg(装)

と大きく変わっていないどころか正直これだけ見ると少し首を傾げてしまうかもしれない内容。しかし実際は実にHAYABUSAらしいというか凄い事をやっている。

2021ハヤブサのディメンションここに映る部品の全てを見直し、再設計しているんです。

その最たる部分がエンジンで、燃焼室の変更やクランクの製造方法変更だけでなくボルトの一本、リング一枚まで全てが見直されている。これは先代のエンジンを壊れるまで何度も負荷テストを繰り返し設計し直した結果。

2021ハヤブサのエンジン四輪など様々な乗り物へ無茶積みされたりした実績からも分かる通り、HAYABUSAのエンジンは先代の時点ですでに耐久性には非常に定評があったんですが、それを更に上げてきた形。

HAYABUSAと言えばここに至るまで色んな噂が流れましたよね。

「次は排気量を上げる」
「ターボになるらしい」
「六気筒を計画している」

などなど様々な特許申請に基づく憶測が出た(というか実際に開発した)ものの、完成して出てきたモデルは先代から大きく変わりませんでした。

ハヤブサの素案これが何故かといえば開発の方々が口を揃えて言われているよう、開発で最も大事にされたポイントが

「HAYABUSAらしさを磨くことだったから」

というのが理由。

じゃあHAYABUSAらしさとは何かというとこれが難しい所というか人それぞれあるでしょうが、明らかに向上したと言えるのが名前にもなっている猛禽類の隼らしさ。

2021ハヤブサのカタログ普段はゆっくり悠々と飛びつつ、狩りになると一気に300km/hオーバーで急降下し仕留めるんですが、今回のモデルチェンジでこの特性をさらに向上させている。

もう少し分かりやすく説明するとHAYABUSAは

『0km/hから300km/hまでオールレンジなスポーツバイク』

と言う表現がピッタリかと思います。

2021ハヤブサのリア周り世界最速バイクとして有名なため、おっかなびっくり乗る必要がある怪物的なイメージを持たれる事が多いんですが、実はとっても優しく100km/h未満の日常域などでも普通に使える。

優しいというのは出力もそうだし、ポジションや足つきもそう。シートもスポーツタイプにしては厚めでハンドリングも非常に素直だから見た目に反してすごくジェントル。

しかし一方でグイっと捻ればいま例え回転数や速度が何処にあろうとあっという間に200km/hオーバーの世界に突入する性能を発揮しつつ、エアロダイナミクスに物を言わせたビシッと安定した走りを魅せる。

2021ハヤブサのスタイリングちなみに0km/hは言うまでもなくこの圧倒的な存在感と鷹狩(鷹匠)とも言える所有感。

HAYABUSAの性能でありアルティメットスポーツと銘打たれている理由は単純に世界最速だからというのではなく、このいわば

『正気と狂気』

が絶妙なバランスで共存しているからで、今回のモデルチェンジはそこを崩すことなく更に向上させる形になっている。

2021ハヤブサのポジションそれがよく現れているのが少し優しくなったポジション。そして高速域ではなく中速付近出力のさらなる厚み。

2021ハヤブサのパワーカーブこれこそがいま話したように何時如何なる速度でも使えるオールレンジ性能であり、何時如何なる時でもグッと捻ればあっという間にワープ出来る

『HAYABUSAらしさ』

をさらに磨いた証。この改良は地味といえば地味なんですが、先代や先々代を知っているほど驚かれると思います。

2021年式HAYABUSAただこれだけだと磨かれた”HAYABUSAらしさ”の説明にしては不足しているのが否めないかと。

少し話がそれますがご存知の方も多いようにリッターオーバースポーツというのは冬の時代と言っていいジャンルで、ハヤブサですら近年は当たり前のようにランク圏外(年間販売台数400台未満)でした。

レース規格にも絡んでおらずプラットフォーム展開も出来ていないモデルなら年間400台も売れない時点で辞めるか、せいぜい数年先の規制を通す対策だけのお茶を濁すようなマイナーチェンジに留めておくのが一般的。

HAYABUSAと鈴木社長そんな状況にも関わらず鈴木社長まで引っ張り出し一丸となって”ハヤブサらしさ”を追求する開発をしフルモデルチェンジ。

どうしてそこまでするのかと言えばスズキにとってHAYABUSAがリッターオーバースポーツモデルだからとか、自社の看板車種だからとか、世界最速バイクだからとか以前に

「HAYABUSAというバイクだから」

というのがあるから。

バイクを知らない人でもHAYABUSAは知っていることからも分かる通り、既にスズキの一製品という枠を超えた大きな存在と言っても過言ではなく、極端にいえばスズキは自分達だけでどうこうしていいモデルではないと考えている・・・これちゃんと根拠があるんです。

有名なのが毎年恒例の鳥取町八頭町の隼駅祭り。

HAYABUSA祭全国から1000台以上のHAYABUSAオーナーが駆けつける町おこしでスズキも協賛しチャリティイベントを催しているんですが、スズキのしかもバイクの規模でこれをやるのは相当な負担。

じゃあなんでスズキは続けるのかと言えばこれでオーナーとの繋がりを持てる(実態を知れる)からで、実際にこのイベントでHAYABUSAに関するアンケートを何度も何度も取っている。

もう一つあげると2015年の第44回東京モーターショーで出品した『CONCEPT GSX』という発泡スチロールの塊のようなコンセプトオブジェ。

コンセプトGSXこれ、一般の方に”HAYABUSAらしさ”とは何かを問いかける為にわざわざ用意した物なんです。

この代で標準色3色に加え、組み合わせを15通り用意されたカラーオーダープランが用意されたのもその影響。

HAYABUSAカラーオーダーこれは間違いなくカラーリングに関するアンケートを何度も取った故に設けられたことで、定番の人気カラーを基軸としながらも一人ひとりが思い描くHAYABUSAらしいカラーに可能な限り応えるために他ならない。

どうしてそこまでユーザーの声を聞くのか・・・それはメディアで度々口にしていますが

「HAYABUSAは世界中にいるオーナーやファンクラブに支えられたからこそここまで続ける事が出来た」

とスズキは考えているから。

ずっと変わらずHAYABUSAを支持してくれるオーナーが多く居たからこそ初代9年、二代目13年と非常に長いモデルライフと継続的な生産を続ける事が出来た。

歴代HAYABUSAではなぜ多くの人に支えられたのかといえばそれは

「HAYABUSAが長く愛してもらえる魅力を持つバイクだったから」

としか言いようがない事で、同時にこれこそがHAYABUSAの魅力であり

『HAYABUSAらしさ』

と言えるもの。

だからこそ支えてくれている人たちが抱いているHAYABUSAの魅力を更に研ぎ澄ませ共に歩むことを止めない。そしてその為に必要だと考え導き出した答えが全ての部品を見直すことによる耐久性の向上だったわけですね。

耐久テストエンジン設計の溝口さんも公式インタビューで

「長いこと乗ってください。10万km、20万km、なんなら50万km。」

と仰っていました。

普通ならそこまで考慮しないし、そんな造りをしていたらコスト増に加えて買い替え需要が無くなるからビジネス的には有り得ない話。でもHAYABUSAにはそれが許されている。なぜなら長く愛し支えてもらうことを前提としているHAYABUSAにとって故障や寿命というのは裏切りだから。

一過性のブームで造っているわけでも売っているわけでもない。

スズキ HAYABUSA「長く大事に飼ってもらう事を大前提とした正気と狂気のアルティメットスポーツ」

それがHAYABUSAなんですね。

主要諸元
全長/幅/高 2180/735/1165mm
シート高 800mm
車軸距離 1480mm
車体重量 264kg(装)
燃料消費率 15.4km/L
※WMTCモード値
燃料容量 20.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1339cc
最高出力 188ps/9700rpm
最高トルク 15.2kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー FTZ14S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR8EIA-9
または
IU24D
推奨オイル スズキ純正 エクスターMA2
または
10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.1L
交換時3.2L
フィルター交換時3.4L
スプロケ 前18|後43
チェーン サイズ530|リンク114
車体価格 1,960,000円(税別)
[2,010,000円(税別)~]
※[]内はカラーオーダープラン
系譜図
GSX-R1100G1986年
GSX-R1100(GU74A)
GSX-R1100K1989年
GSX-R1100(GV73A前期)
GSX-R1100M/N1991年
GSX-R1100(GV73A後期)
GSX-R1100P/R1993年
GSX-R1100W(GU75A)
99GSX1300R 1999年
GSX1300R
(GW71A)
081300R2008年
HAYABUSA1300(GX72A前期)
2013HAYBUSA1300R2013年
HAYABUSA(GX72A後期)
2014HAYBUSA1300R2014年
隼 (GX72B)
2014HAYBUSA1300R2021年
HAYABUSA(EJ11A)

【関連車種】
CBR1100XXの系譜FJR1300の系譜ZX-14R/GTRの系譜

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