端的に表すとオンロードのタイヤを履いたオフロードバイクのこと。
【特徴】
車体はトレール車と同じくなので細く、軽く、ハンドル切れ角がとても大きいので小回りがきく。
同時に多少の未舗装なら走れるが長距離や高速巡航の苦手さも比較的トレール車と同じ。
簡単な見分け方としては車体はオフ車なのにオンロードと同じ17インチの小径ホイールとタイヤを履いているバイクという感じです。
【歴史】
実はモタードの歴史や定義は他のカテゴリよりも明確。ことの始まりは1979年のアメリカ/カリフォルニアにあります。
当時アメリカでは
・ロードレース(いわゆるサーキット)
・フラットトラック(フラットなオーバルダート)
・モトクロス(山あり谷ありジャンプありのオフロード)
が三大レースとして人気だったんですが、そんな中でアメリカのレースプロモーターだったガヴィン・トリップが
「オーケーじゃあこの中で一番速いやつを決めよう」
という事でABCテレビのワイドワールドオブスポーツというスポーツ番組とタッグを組みレースを企画。
『Superbikers』
舗装路とダートと障害物全てを組み込んだ混合コースを作り、それぞれのクラスのトップライダーを集って競わせるというアメリカらしい破茶滅茶なレースを開催しました。
車種はダートやジャンプがある以上オンロードは無理なのでビッグモトクロッサー(レース用オフロード車)にダートタイヤを履かせるスタイルや、ダートトラッカー(写真下)などが定番でした。
でもモトクロッサーやダートトラッカーってモタードじゃないですよね。実際このアメリカで行われたスーパーバイカーズはモタードの発祥ではありません。
スーパーバイカーズはテレビ企画ということもありすぐに打ち切られてしまいます・・・が、ここで終わらなかった。スーパーバイカーズに参加していた欧州出身のレーサーたちがその文化を持ち帰り自国で開催するようになったんです。
その中でもハマったのが泥遊びが大好きなフランスで、スーパーバイカーズをフランス語に直した
『Supermotard(スーパーモタード)』
というレースを1981年から開催し人気レースに。
そうこれがモタードの語源。
モタードはフランス語でバイカーという意味・・・凄く単純ですね。だから国によっては
『Supermoto(スーパーモト)』
とか言う、というかこっちの方がメジャー。ちなみに日本は昔は
『SuperMotors(スーパーモータース)』
とか言ってました。
じゃあなんでフランス(スーパーモタード)の影響でモタードと言われるようになったのかというと、名前こそ同じなもののアメリカ(スーパーバイカーズ)とは違う独自の発展をしたから。
アメリカでは
『ロード/ダート/モトクロス』
が人気レース三強だったのに対してフランスを始めとした欧州では
『ロード/モトクロス』
の二強でダートトラッカーはメジャーではなかった事に加え、コースもカートコースで舗装路が8割と多めに設定されていました。
これらによりスーパーモタード(フランス版スーパーバイカーズ)は
『モトクロッサー+17インチとオンロードタイヤ』
という組み合わせが最適解となり独自のスタイル、俗に言うモタードスタイルが確立したんです。
このスーパーモタードは年を追うごとに人気が高まったのですが、その要因の一つとして上げられるのが人気レーサーがこぞって参加した事。
例えば1990年の決勝リザルトを見てみるとこんな感じ。
・ウェンレイニー(現ロードレース世界選手権王者)
・ステファンペテランセル(パリダカ王者)
・エディローソン(ロードレース世界選手権王者)
・ブロックグローバー(全米モトクロス王者)
・ギルスサルバドール(全仏スーパーモタード王者)
・ワインガードナー(ロードレース世界選手権王者)
・エリックゲボス(モトクロス世界選手権王者)※ランク外
などなど。
今で言えばマルケスやロレンソやケーシーやカイローリが競い合うようなもの。正にドリームマッチですがコレが実現したのはモタードレースはオフシーズンに開催されていたから。
この豪華絢爛さでモタードレースは更に注目を浴びて人気は爆発し、発祥であるアメリカでも再び競技として復活。2002年には世界選手権にまで格上げされました。
それで肝心の国内ではどうだったのかというと1980年頃には入ってきており
『ターミネーター』
というレースが有志達によって開催されていました。
ただ自主的な面が強かったのでオフロード部はコースに砂を撒くなどで舗装路がメイン。そのためレーサーレプリカベースで挑む人も居たりしてこれまた独自の進化を遂げつつあったんですが、残念ながら長続きしませんでした。
ちなみに現在はMFJ公認となり正式なレースが開催されています。興味がある方は【全日本スーパーモト公式サイト】をどうぞ。
話がそれてきたので戻すと、KTMやハスクバーナなど欧州メーカーが強烈なモタードを出す理由もこの欧州人気があるからなんですが、日本メーカーも当然ながら追従しました。
しかしスーパーモタードはモトクロッサーベースで特に日本メーカーは公道走行不可なモデルしかない。そこでモトクロッサーを公道走行可能にしたモデルであるトレールをベースにすることで取っつきやすいモタードを展開。
始まりは1998年のカワサキD-TRACKERだったと思いますが、これがそれまでそういうレースすら知らなかった層にまでヒットした事で一気に普及。
その際にオンロードタイヤを履いたオフロード車という見慣れない珍妙さを表す言葉として
「これはモタード(というフランスが火を付けたレースのマシン)だよ」
という形で認識が広まったものと思われます。
【最後に】
モタードはオンとオフという本来ならば反比例する2つを合わせたレースによって生まれたジャンル。そのためオンなのかオフなのかよく分からない形をしている印象を受けると思いますが実はそれライダーも一緒。
モタードの正装は
『ヘルメットとブーツはオフ系、スーツとグローブはオン系』
という面白い組み合わせになっているんです。理由はもちろんオンもオフも走るから。
コース、バイク、ライダー、その全てが同じ様に混ざり合っているのがモタードの特徴でありカッコよさ。
「全部楽しみたい」
って欲張りたい人にうってつけなバイクと言えるかと。
該当車種
などなど
1990年代のターミネーターを見ていた自分としては、日本のメーカーが出す公道走行可能なモタードが総じて250ccなのがもどかしかったです。
最近まで乗っていたCRF250Mはパワーを効率良く使う難しさや楽しさがあるので面白かったのですが、やっぱりハジけるような刺激が乏しくイマイチ(日光の手前じゃないよ)な感じでした。
以前はホンダとスズキが400ccのモデルを出してくれましたが、あっという間に販売が終了。
海外メーカーは現在もやる気満々のモデルを出し続けているのに。
最近はドゥカティも新型を出してくれたので、日本のメーカーも頑張って欲しい!
今更ですが当時鈴鹿でスーパーバイカーズに参戦してました私としてはスーパーバイカーズとターミネーターは別物でターミネーターにオフ部分は無くオフロードバイクベースの車両でロードレースを行うという競技であったとだけ指摘させていただきます