第一回目はフレームの種類について。
フレームというのは人間で言えば骨格のようなものでエンジンを始めとした主要部品を載せる土台であり、同時にエンジンからタイヤまで様々な部分から来る力を吸収する役目も持っています。
まあ今回はそんな小難しい話は置いといて
「フレームの形や名称が多すぎて分からない」
という事。確かにフレームは形はもちろん名称までメーカーによってバラバラだったりしますからね。これは「バイク豆知識:デルタボックスのデルタな部分」とちょっと内容が被ってしまうのですが、リクエストもあったのでもう一度分かりやすく書いていきます。
見分け方としてはザックリ言うとエンジンをどういう形で囲っているのかで見分ける事が出来ます。
シングルクレードルフレーム
文字通りシングル(一本)、でエンジンの周りのクルッと一本のフレームで囲っているシンプルイズベストなフレーム。
なんですがシングルクレードルフレームを採用しているバイクは剛性や強度の問題でほとんど無い。
※ここで補足
”剛性”って何となく聞いたことがあると思います。これは簡単に言うとフレームの変形しにくさ事。
ややこしいんですが”強度”とはまた別。強度というのは壊れにくさの事です。
フレームというのは曲がる際に適度に撓る必要があるのですが、剛性が低いとスピードを出した時(フレームに大きなストレスがかかった時)にいわゆる
『フレーム負け』
とよばれる問題が出てしまい、思ったように曲がれなかったり直線でまっすぐ走れなかったりしてしまう。人間でいうと腰砕け状態みたいな感じ。
極端ですが例えばママチャリで100km/h出したら曲ると間違いなく転けそうで怖いですよね。それはママチャリがそんな高負荷を想定したフレームではないからという部分が大きい。
じゃあ高ければ良いのかって言うとそうでもなく、最初に言ったようにフレームというのは曲がる際には適度に捩れる必要性がある。
再び極端な例えとして300km/h出る超高性能な大型スポーツバイクが、40km/hくらいのなんてこと無い速度で曲がろうとして”ステーン”と転んでしまう場面や動画を見たことあるかと思いますが、あれは剛性が高すぎてフレームが全く撓らないから。
“撓り”というのは”粘り”ともいえる要素で、ちゃんと走行に合った適度な剛性が必要というわけです。
話を戻します。
次に紹介するのはそんな剛性をもうちょっと上げたくて生まれたシングルクレードルフレームの進化系。
ダブルクレードルフレーム
文字通りクレードルをダブルにしたフレーム。ヘッドパイプ(ハンドルを付ける部分)からグルッとパイプが左右それぞれエンジンの四隅を囲うように伸びているのが特徴的。
CBシリーズやXJRシリーズ、Bandit1250やDAEGなどいわゆるジャパニーズネイキッドスタイルのバイクに多く採用されています。赤フレームのCBが分かりやすいですね。
グルッとエンジンを囲っているのがわかると思います。反対側も同じような形。
ちなみにこの形を更にギューっと下に押しやったのがスクーターによく使われるアンダーボーンフレーム。
これはスカイウェイブ400のフレームです。
ただしダブルクレードルフレームというのはシングルに比べてパイプが二本になるのでそれだけ重くなってしまうデメリットがある。
そこで次に紹介するのが
・軽いけど剛性が低いシングルクレードル
・剛性が高いけど重いダブルクレードル
この2つを掛け合わせたようなフレーム。
セミダブルクレードルフレーム
シングルクレードルフレームをベースにダウンチューブ(下側のフレーム)を途中から二本にしているフレームの事。
シングルの軽さや細さとダブルの高剛性その両メリットを取り入れた形のフレーム。
これを採用している車種は多いです。一般的なクラシック系はもちろん、オフロードバイクやハーレー等など、ハイスピード時の剛性よりも軽さの方が大事なバイクはだいたいこのフレーム。
バイクではこのフレームが基本形といえるほど普及しているので、これをシングルクレードルフレームと言ってるところもあります。
ここでクレードルフレームのおさらいを兼ねて少し問題。上の写真はWR250Xでよく見てもらうと分かるのですがメインチューブ(上側のフレーム)も二本ありますよね。フレームだけで見るとこんな形。
これはYZ450Fのフレームなのですが形は上のWR250Xと近いです。
さて、これはダブルクレードルフレームでしょうか?
それともセミダブルクレードルフレームでしょうか?
正解は
『セミダブルクレードルフレーム』
です。
理由はダウンチューブ(下側のフレーム)が”途中で別れてるから”ですね。トップチューブ(上側のフレーム)は一本でも二本でも関係ありません。
少し意地悪な問題だったかもしれませんが、フレームというのは多種多様で
「限りなくダブルクレードルに近いセミダブルクレードル」
と結構曖昧な部分もあったりするわけです。
クレードル系のフレームはこれで全部になります。
クレードル系の特徴は
『ゆりかご(Cradle)』
という文字からも分かる通りエンジンを乗せる受け皿のような形になっているのが特徴で恐らくここまでは何となくわかってる人も多いかと。
分からなくなりがちなのはエンジンとの関係も大事ないわゆるダイヤモンド系でしょう。
ダイヤモンド/バックボーンフレーム
アンダーチューブの無いダブルクレードルフレームみたいなカタチをしているのが特徴。上の写真はGPZ900Rのフレームです。
「剛性が全然足りずにヘロヘロになるんじゃないの」
と思いそうですが、GPZ900Rはこのフレームで世界最速を取りました。
それはフレームだけで剛性を何とかするのではなく、フレームに搭載されるエンジンも直付し纏めてフレームの一部にすることで剛性を稼ぎつつフレームの幅と重量を抑える事が出来たから。
昔はエンジンを積極的に剛性メンバーとして使うフレームをダイヤモンド、あまり使わない吊り下げるだけのフレームをバックボーンと言っていましたが、今では両者の厳密な区別方法は無く基本的に一緒でメーカー次第。ちなみに上の写真はホンダホーネット(MC31)の”バックボーンフレーム”です。
もっと分かりやすいのがスーパーカブを始めとしたホンダの横型エンジン搭載車。
これはDAXというバイクなのですが、もう何処からどう見てもエンジンを吊り下げてるだけのバックボーンフレームですね。
話を戻すとエンジンをフレームの一部として使うダイヤモンド/バックボーンフレームですがガッチガチの高剛性レイアウトかというとそうもでもない場合が多く、中排気量や人気の250ccクラスなどのスポーツバイクに多用されているカタチです。
これは2017年から発売されたCBR250RR(MC51)のフレーム。アンダーチューブが無いのが一目瞭然ですね。
で、これまたちょっと注目してもらいたいのがメインチューブ(上のフレーム)の形。なんだかいっぱい棒が付いてるのが分かるかと思いますが、これは単純に補強です。
いくらエンジンをフレームの一部に使うとはいえ速度域(フレームへのストレス)が上がると耐えきれないのでこうやって補強をしているわけですが・・・この形どっかで見たことありませんか。それを次にご紹介。
トラス(トレリス)フレーム
トラスフレームまたはトレリスフレームと呼ばれるフレーム。
ドゥカティを始めとした海外メーカーが好んで使うフレーム形式ですね。上の写真はKTMのDUKEの物。
フレームで三角形(トラス)を作る事からトラスフレームと呼ばれていますが、簡単に言うと補強だけで構成されたダイヤモンドフレームみたいなもの。
ただフレームをよく見てもらうとわかるのですが、ただパイプを張り巡らせているだけでなく太さが箇所により太かったり細かったりします。
無闇矢鱈に補強しているわけではなく、こうやって適材適所な補強をすることで剛性のバランスを取っているわけですね。
次に紹介するのはトラスフレームと同じくダイヤモンドフレームから派生したものの別の形となったフレーム。
ツインスパー/ツインチューブフレーム
メインチューブ(上のフレーム)を太らせ、限りなく真っ直ぐな形でエンジンの横を通るように繋いでいる最も剛性を稼ぎ易い日本メーカーのハイパフォーマンス車に多いフレームレート。
ツインスパーもツインチューブも意味は同じです。
エンジンを両脇から挟み込み積極的に剛性メンバーとして活用しているガッチガチフレーム。
ツインスパーについてはデルタボックスフレームで解説しているのでそちらをどうぞ。
お次は四輪車に広く採用されているタイプのもの。
モノコックフレーム
このフレームもダイヤモンド系なのですが、これはフレームに部品(外装など)の役目も持たせようとして生まれたフレーム。
ZX-14Rやパニガーレなどに採用されていますがバイクではあまりメジャーなフレームではありません。理由はおそらく汎用性が乏しいから。
ZX-14Rの場合フレームの中にバッテリーボックスやエアクリーナーボックスを兼ねたスペースを確保しています。
形としてはバックボーン&モノコックという感じですが一応カワサキとしてはモノコックフレームが公式見解。
こちらはちょっと分かりにくいパニガーレのフレーム。
こちらもエアクリーナーボックスを兼ねたフレームがチョコンと付いてるだけ。剛性メンバーとして活用するエンジン自体の剛性を上げることでフレームを減らし減量しているわけです。
最後は近未来感溢れるフレーム。
フレームレス
読んで字のごとくフレームが無いタイプ。フレームと呼べる部分は各部のパーツを繋ぎ止めているサブフレームのようなものしか無い。
BMWが積極的に取り入れている方法でエンジンとドライブトレイン(シャフトドライブ)がフレームの役割を担っています。
これもどちらかというと四輪の方に近いですね。