バイクで事故は大まかに分けて
・自爆による自損/単独事故
・相手がいる対物/相互事故
の二種類があり、今回は相手がいる対物/相互事故について。
※参照:警察庁事故統計|交通事故総合分析センター
『バイク事故の原因~自損・単独事故編~』について先に書いたんですが、バイク乗りで気をつけなければいけないのはどちらかといえばこっち。何故ならバイク乗りが亡くなってしまう原因の大部分を占めるのはこっちの事故だから。
世間ではよくバイク事故が報道されると
「バイクは危ないなー」
なんて言われますよね。じゃあなんでバイクは危ない乗物なんでしょう。
「身体が剥き出しだから」
「自立せず転倒するから」
それはちょっと間違い。バイクが危ないと言われる理由は混走だから・・・もっとストレートにいうと
「クルマに挟まれたり轢かれたりするから」
です。
ライダーが亡くなってしまう二輪車事故のうち車両相互(相手がいる)事故の割合は約68%もあり、そして車両の内訳は約85%が四輪車。
だから少し文句のような事を言わせてもらうと
「バイクは危ない乗物だ」
と言う資格があるのはバイク乗りだけでクルマにしか乗らない人にはない。何故ならバイクから見ると本当に危ない乗物は自分を轢いてくるクルマであり、クルマは事故のリスクをバイクに一方的に押し付けてる形だから。
何故そう言い切れるのかっていうとバイクとクルマによる死傷事故においてバイク側の人間は実に70%が第二当事者だから。
第二当事者というのは事故の過失が小さい方。つまりバイク乗りは貰い事故ばかりで亡くなっているという事。
こう言うと
「バイクの方が交通弱者だから過失が小さいのでは」
と思うかも知れませんがそうじゃない。確かにバイク乗りが事故の際に検査だけだろうと病院に行くと対物事故から対人事故に切り替わるため過失が1ほどクルマの方に行くわけですが、そもそもバイクとクルマの事故においてバイクは
「ただ直進していただけ」
という場合が大半なんです。
具体的にどういう事故があるのかというとバイクとクルマの事故で最も多いのは
『出会い頭事故』
駐車場や脇道などから合流する際に本線を走っていたバイクとぶつかってしまう事故で二輪事故に占める割合は全体の約30%、死者割合は約32%。
その次に多いのが
『右折事故』
右折車が間に合っておらず直進してくるバイクとぶつかってしまう右直事故とも呼ばれるもので二輪事故に占める割合は全体の約19%、死者割合は約24%。
バイクとクルマの事故はこの二つが大部分を占めています。
どうしてこれが危ないのかといえば単純にバイク乗りからするとこれらは
「壁に激突するようなものだから」
です。
目の前にいきなり1トン越えの壁が現れるようなものだから大惨事となる。事故時の衝突部位もバイクは正面衝突が最多です。
ちなみにクルマ同士の場合は追突が最多で約58%ですが、相手がバイクだと追突は約8%しかない・・・どれだけバイクとの出会い頭や右折事故が多いか分かるかと思います。
じゃあなんでバイクになるとそうなるのかって話ですがこれは
「四輪ドライバーの安全確認が不十分だったから」
というのが理由。
「ドラレコ付けて被害者前提の運転する前に安全確認しろ」
と声を荒げたい所ですが、そう言ったところで痛い目を見るのはバイクの方。だから自己防衛をしなきゃいけないのが現実。
じゃあクルマとの事故を防ぐためにどうすればいいか。
「なぜドライバーはそうしてしまうのか」
という事を理解するのが最も効果的ですよね。
恐らくバイク乗りなら誰しもが無理やり割り込んだり横切ったりするクルマにヒヤリとした経験があると思います。
なんかクルマよりバイクに乗ってる時の方がそういうの多い気がしませんか・・・実はそれ気のせいじゃないんです。
『直進二輪車に対向する右折車運転者の認知判断及びギャップ利用特性|土木計画学研究』
によると右折待ちのクルマが
A.対向車がクルマ
B.対向車がバイク
で右折を決断するタイミングを検証したところ
「対向車がバイクの場合、右折の決断する許容間隔が50%短い」
という結果が出たんです。
簡単に言うと対向車がクルマだったら右折してこない距離でも対向車がバイクだったら右折を決断するドライバーが多いという事。
しかも最悪な事に間一髪な右折だったとしてもドライバーは
「余裕を持った右折だった」
と勘違いしているっていうオマケ付き。
この強引な割り込みについて教習所などで
「バイクは小さいから遠くに見えるんだよ」
って習った人も多いかと思いますが・・・そう単純な話じゃない。どうしてバイクが割り込まれやすいのかというと途中であげたように
『発見の遅れ』
が第一にある。
発見の遅れというと優しい感じがしますが、要するにバイクを見落としていたという事。これも上記の検証論文で分かった事なんですが右折待ちのドライバーは
「2/3以上が50m先のバイクを認識出来ていない」
という事が分かった。
驚愕の事実ですよね。
僅か50mですよ、50mといえば白線5本分、時速60kmで走っていたら僅か3秒の距離。しかも検証では中央分離帯に敷居や木々などの死角が無い対向二車線でやってこの結果だった。
この原因はドライバーが対向車よりも曲がる先の方を注視するから。
だからクルマよりも小さいバイクを見落としてしまうというわけ。
ただし事故の要因はまだある。
事故ニュースで当事者が稀に
「間に合うと思った」
などと供述していたりしますよね、認知していたにも関わらず何故か強引な割り込みをして事故を起こしてしまう。
この原因はクルマのドライバーが相手との間隔を『距離』で測るから。対してバイク乗りは相手との間隔を『速度』で測っている。
つまり認識していた1/3以下の人ですら
クルマ「まだ遠いから行けるな」
と判断しバイクが何キロ出ているか考えず侵入してしまう。そしてバイク乗りも
バイク「60km/h出してるし来ないだろう」
と考えてしまうからミスマッチによって事故となってしまう。
これが二番目に多い『判断の誤り』の正体なんです。
長々と話してきましたが以上の事を踏まえて要点をまとめると
・事故の大多数は交差点の出会い頭か右折
・50m先に居るドライバーはコチラを認識していない
・来るか来ないかを速度で判断してはいけない
これを頭に叩き込んでおけば対車両・相互事故(対四輪事故)のリスクを間違いなく減らせるかと。
もっと極端で単純に言うならば、右折や合流をしたがっているクルマを見かけたらコチラが見えていない前提で運転する事。
最後におさらいを兼ねて一つ問題。
「どんな運転をすると四輪との事故を起こしやすいでしょうか」
簡単ですかね・・・そう、信号ダッシュを始めとした先頭を突っ走る行為です。
すり抜けや信号の変わり目で前が空くとバイクは加速性能が良いので加速したくなりますが、それは事故を誘発する非常に危険な運転。
何故なら合流したがっているドライバーや右折待ちのドライバーは突っ走って来るバイクが見えていないし、見えていたとしても速度ではなく距離で間隔を測っていて読み間違えているからです。