ZEPHYR χ(ZR400G) -since 1996-

ZEPHYRχ

「The pride of JAPAN」

ネイキッドブームを巻き起こしたZEPHYRの後継モデルとなるZEPHYR χ(カイ)。

大ヒットにより予算を大きく取れた事で、2→4バルブ化に加えピストンもクランクも新設計というエンジンの大改造を行い7馬力アップの53馬力になり、外見もブラックアウト化。

更には給排気系やサスペンション、更にはハンドルなどまで変更と、ほぼ新型と言っていいほどの改良が加わっています。

ZEPHYRχ緑

先にマイナーチェンジ歴を紹介すると

翌93年にはフロントフォークの大径化に加え、フロントキャリパーの対抗4POT化。更にホイールの三本スポーク化と前後17インチ化(旧型はリアが18)&ラジアルタイヤ化など、二年目にしてビッグマイナーチェンジ。

98年には盗難防止キー、03年にはフロントキャリパーが異型4POT化と騒音規制に対応するためマフラーの内部構造を変更。

ZEPHYRχ火の玉カラー

上のZEPHYRχは2005年のイエローボールカラー。

そして排ガス規制の関係でイボ無しシートレザーと特別色を纏ったファイナルエディションを2009年に発売し生産終了となりました。

ZEPHYRχファイナルエディション

さて・・・このゼファーχはいわゆるカワサキの空冷Z界にとって非常に異端な存在となっています。

それは

「空冷DOHC2バルブ」

というZの原則を破った唯一の4バルブ車だから。

だからこのZEPHYRχはアチコチで、それこそ先代ゼファーや兄弟車の750/1100(これらは2バルブ)との間ですら波紋を”今でも”巻き起こしています。

ZEPHYRχカタログ写真

テールカウルが切れ上がっている事も物議を醸していますね。

「何故χなんて出したのか、何をもってこうしたのか」

という話なんですが、色々と調べてみると明確な答えこそ無いもののヒントがありました。

ZEPHYRχ火の玉カラー

まず一つ、それは初代ゼファー登場時に開発の方が仰っていた事。

「やり残したのは4バルブくらい」

という発言です。

思わぬヒットで予算を大きく取れたから、やり残していた4バルブ化をする事が出来たんだろうと思います。

ちなみに開発チームはGPZ400Rにも携わった人達が大半。

そしてもう一つのデザインについてですが、これについてはゼファーが生まれるずっと前の開発最初期モック(試作機)に隠されていました。

ゼファー最初期のモック

三本スポークに切れ上がったシートカウル・・・明らかにゼファーよりもゼファーχに近い。

初代ゼファーがこの切り上がったシートカウルを止めた理由はチーム内で意見が二分化したから。

デザイナーはこの切り上がったシートカウルに拘ったんだけど、結局お流れとなってしまった。

つまりこれらの事を纏めると、ゼファーχというのは、やり残した事をやった

「もう一つの形のゼファー」

トラディショナルなゼファー、イノベーションのχと言えるのではないかと。

ZEPHYRχファイナルエディションカタログ写真

まあ、そもそもですね・・・ZEPHYR1100の系譜(系譜の外側)でも口を酸っぱくして言っていますが

「ZEPHYRはZEPHYRであってZではない」

という事を覚えておかなくてはいけません。

これは名前がそうだからでも、商用的な意味でも、系譜的な意味でもなく、ZEPHYRを造った開発チームの考えがそうだから。

ゼファー最初期のモック

「Z2でもFXでもない、ZEPHYRという新しいバイクを提案したかった」

これがZEPHYRを造った開発チームの考え。

売れるか分からないにも関わらず、肩身が狭かったにも関わらず、ZEPHYRという名前に強く拘った理由。

それはこのZEPHYRに込めた思いにピッタリな言葉だったからというワケですね。

【関連車種】

CB400の系譜XJR400Rの系譜GSR400の系譜ZRX/ZZR400の系譜

主要諸元
全長/幅/高 2085/745/1110mm
シート高 775mm
車軸距離 1450mm
車体重量 185kg(乾)
燃料消費率 40.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 399cc
最高出力 53ps/11000rpm
最高トルク 3.6kg-m/9500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後150/70ZR17(69W)
[前110/80-17(54H)
後140/70-18(67H)]
バッテリー YTX12-BS
プラグ CR9E
または
U27ESR-N
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.0L
交換時2.5L
フィルター交換時2.7L
スプロケ 前16|後42
[前16|後43]
チェーン サイズ520|リンク108
[サイズ520|リンク110]
車体価格 580,000円(税別)
※[]内は96年初期型
系譜図
Z400FX

1979年
Z400FX
(KZ400E)

Z400GP

1982年
Z400GP
(KZ400M)

GPz400

1983年
GPz400
(ZX400A1)

GPZ400F

1983年
GPz400F/F2
(ZX400A2~/C)

ZR400C

1989年
ZEPHYR(ZR400C)

ZR400G

1996年
ZEPHYR χ
(ZR400G)

ZEPHYR(ZR400C)-since 1989-

初期型ゼファー

「Scene of Wind」

昭和生まれなら知らぬ人は居ないであろうZEPHYR/ZR400C型。

カウルを装着したレーサールックで59馬力なのが当たり前だったレーサーレプリカ全盛期に登場したGPz400Fベースの

『空冷2バルブエンジン46馬力ネイキッド』

という時代に逆行したバイク。

ゼファー

カウル文化が広まり廃れていった70年代の様なバイクで血迷ったとしか思えない事態だったのですが、そもそも何故こんなバイクが造られたのかというと

『Z1復刻(リメイクではなく再販)』

というカワサキ社内で上がっていたプロジェクトがマーケティングの関係で立ち消えになった事がキッカケ。

そこで企画部の吉田さんが

「Z1の魅力を持ったリーズナブルな400なら若者にも売れるのでは」

と考え、空冷好きが自主的に集まったのが始まりにあります。

コンセプトイメージ

最初はイタリアン路線もあったものの空冷を活かす形を考えた結果、エンジンを美しさを最大限惹き立てるためにフレームワークからも分かる通りオーソドックスなジャパニーズスタイルに決定。

ちなみにこれが最終案。

ゼファーモック

最初の頃とマフラーが大きく変わっているわけですがこれにも事情というかドラマがある。

ゼファーは最初Z1に倣ってショート管の4本出しマフラーになる予定でした。

しかしゼファーのメインターゲットが若者という事で社内の若手デザイナーや従業員に聞いたところ

「4本出しはダサい」

という猛反対にあってしまい

・4本出しが良い旧来の社員

・集合管のメガホンが良い若手社員

という対立が起こってしまったのですが、若手の反対は凄まじいものがあり

『4本出しマフラーを止めさせる署名活動』

にまで発展。

その事もあってゼファーは集合管に変更された経緯があります。

ゼファー赤

でもそのおかげでZとはまた違う独自のスタイルが身についたので正解でしたね。

ところで『ZEPHYR(西風)』という名前の由来について

「業界に吹き込む新風」

「明石からの西風」

などとWikipediaにも書かれていますが企画責任者の吉田さん曰く、これは後から付け加えられたモノで本来は素直に『風』という意味になります。

ゼファーのカタログ写真

・Zから始まる車名

・空冷を示す車名

という2つの要素を満たす車名がなかなか決まらない。そんな状況を見たアメリカの社員がギリシャ神話に登場する西風を司る風神ゼピュロス(Zephyrosだが英語ではZEPHYR)を思いつき

「ゼファーという名前はどうだろう」

と提案したのが由来。※カワサキマガジンVol53より

ではどうしてそんな意味が込められているという話が広まったのかというと恐らくZEPHYRによって市場が引っくり返ったから。

川崎重工明石工場

意外なことにもゼファーの開発プロジェクトは肝いりというわけでもありませんでした。

エンジン設計の安近さん曰く開発中はレーサーレプリカ全盛という事もあり

「どうして今さらそんなモノを造っているんだ」

と、非常に冷ややかな目や声に晒されていたんだそう。だから開発もフロアの隅の方でコソコソと肩身を狭くしてやっていたんだとか。

そんなもんだから開発チーム内ですら完成を前にしても

「やっぱり売れないのかな・・・」

と弱気になる始末だったそうで。

ちなみにその姿勢は発売時にも如実に現れています。

ZR400Cカタログ写真

ゼファー発売時の雑誌メディアなどを見てもらうと分かるのですが、当時はZXRかGPZが大半でゼファーはインプレも広告も本当に少なかった。

存在そのものを知らない人が居てもおかしくないと言えるほど宣伝されていなかったんです。

ところがいざ発売となると

「こういう大人なバイクを待っていた」

と下馬評を覆す大ヒットとなり、年間販売数13,466台で販売台数首位まで獲得。

C3型

これにはノーマークだった他社や大して取り上げていなかったメディアはもちろんカワサキ自身もビックリ。

このゼファーの登場によって最高潮に達していたレーサーレプリカブームは嘘のように終息し、時代は一気にネイキッドブームが到来。

ゼファーの意味が西風や新風と言われるようになったのはこの事からでしょう。

「時代に抗い、時代を変えた」

この大どんでん返しを起こしたからこそ

ジャパンスタンダード

「ZEPHYR(明石からの新風)」

という栄誉ある風の名として広まっていったんでしょうね。

※年次改良点

90年C2型:メタルエンブレム

91年C3型:砲弾メーターとライトの常時点灯

93年C5型:サス、リアキャリパー1POT化、フロントディスクローターの変更、ハザード採用

主要諸元
全長/幅/高 2100/755/1095mm
[2100/755/1100mm]
シート高 770mm
車軸距離 1440mm
車体重量 177kg(乾)
燃料消費率 38.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 399cc
最高出力 46ps/11000rpm
最高トルク 3.1kg-m/10500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/80-17(54H)
後140/70-18(66H)
[前110/80-17(54H)
後140/70-18(67H)]
バッテリー YB12A-AK
[YTX12-BS]
プラグ DPR9EA-9
または
X27EPR-U9
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.0L
交換時2.5L
フィルター交換時2.7L
スプロケ 前16|後41
チェーン サイズ520|リンク108
車体価格 529,000円(税別)
※[]内は93年以降モデル
系譜図
Z400FX

1979年
Z400FX
(KZ400E)

Z400GP

1982年
Z400GP
(KZ400M)

GPz400

1983年
GPz400
(ZX400A1)

GPZ400F

1983年
GPz400F/F2
(ZX400A2~/C)

ZR400C

1989年
ZEPHYR(ZR400C)

ZR400G

1996年
ZEPHYR χ
(ZR400G)

GPz400F/F-II(ZX400A2~/C) -since 1983-

GPz400F

「エアロフォルムに走りの主張」

僅か8ヶ月でマイナーチェンジとなり末尾にFがついたGPz400F。

ZX400A2

吸排気の見直しで馬力が更に3馬力アップして空冷2バルブエンジンにも関わらず54馬力に。

更に数ヶ月遅れてGP以来となるネイキッド版のF-IIも登場。

カワサキの空冷400としてはこのGPz400F/F-IIが最もスポーツなモデルになります。

GPz400F2

というのも、一向に冷めないスペック競争で水冷化の波が押し寄せ、空冷では厳しくなったから。

フルカウルにするのもそうだし、馬力も空冷では難しい。

そのためカワサキも1985年に水冷400フルカウルのGPZ400Rを開発し、400フラッグシップの座を渡しました。

ちなみに間違えがちなんですが

「GPz(小文字)」は空冷

「GPZ(大文字)」は水冷

という表記の分け方になっています。最初期はゴチャゴチャだったんですけどね。

GPz400Fカタログ写真

結局このGPZ400F/F-IIも約二年間のみの販売。

戦国時代が如何に熾烈な争いをしていたかが分かります。

が・・・コレがKAWASAKIの400を代表するほどのバイクに化けるなんて誰が予想したでしょう。

主要諸元
全長/幅/高 2165/720/1255mm
シート高 770mm
車軸距離 1445mm
車体重量 178kg(乾)
燃料消費率 40.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 18.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 399cc
最高出力 54ps/11500rpm
最高トルク 3.5kg-m/9500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-18(56H)
後110/90-18(61H)
バッテリー YB12A-AK
プラグ DP9EA-9
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前16|後42
チェーン サイズ520|リンク106
車体価格 525,000円(税別)
系譜図
Z400FX

1979年
Z400FX
(KZ400E)

Z400GP

1982年
Z400GP
(KZ400M)

GPz400

1983年
GPz400
(ZX400A1)

GPZ400F

1983年
GPz400F/F2
(ZX400A2~/C)

ZR400C

1989年
ZEPHYR(ZR400C)

ZR400G

1996年
ZEPHYR χ
(ZR400G)

GPz400(ZX400A) -since 1983-

GPz400

「パフォーマンスがフォルムになった」

Z400GPからわずか一年ほどで出てきた後継のGPz400。

一見するとZ400GPにハーフフェアリングを付けただけの様に見えますが、フロントを18インチにインチダウンしアンチノーズダイブフロントフォークを装備。

ほかにもビッグボアショートストローク化やカムシャフトの変更で馬力が更に上がり51馬力と走り磨きが掛かったモデル。

GPz400カタログ写真

なんですが・・・恐らく先に紹介したZ400GPよりも知名度は低いのではないかと。

というのもこのGPz400は先代より更に短い僅か8ヶ月で後継が発売されたから。まあ後継というよりマイナーチェンジですが。

GPZ400諸元

ここで少し話を脱線と言うか戻すと、何故Z400GP~GPz400と小刻みだったのかというと、これは恐らくカウルに原因があります。

1982年当時、カウル(フェアリング)付バイクは認可されない時代でした。

そんな中で一番始めにカウル付きとして出たのが1982年5月発売のVT250F(MC08)です。

中森明菜さん

これは申請こそカウルではなくメーターバイザーと銘打つ事で回避したわけですが、この一見から同年の夏にはカウルが解禁となり一気にカウルブームが巻き起こりました。

ちなみに写真の女性は若かりし頃の中森明菜さんです。

ではZ400GPがどうかというと、発売は1982年の2月・・・カウルが認可される寸前の時期だったんです。

カワサキGPZ400

Z400GPに後からビキニカウルを追加したのを誰も覚えていない事を見ても、加熱するカテゴリでカウルブームへ対抗する為に(750Turboと同じ)カウルバイクであるGPz400を前倒しする形で登場させたものと思われます。

主要諸元
全長/幅/高 2165/720/1255mm
シート高 770mm
車軸距離 1445mm
車体重量 178kg(乾)
燃料消費率 38.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 18.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 399cc
最高出力 51ps/11500rpm
最高トルク 3.5kg-m/9500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-18(56H)
後110/90-18(61H)
バッテリー YB12A-AK
プラグ DP9EA-9
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前16|後42
チェーン サイズ520|リンク106
車体価格 515,000円(税別)
系譜図
Z400FX

1979年
Z400FX
(KZ400E)

Z400GP

1982年
Z400GP
(KZ400M)

GPz400

1983年
GPz400
(ZX400A1)

GPZ400F

1983年
GPz400F/F2
(ZX400A2~/C)

ZR400C

1989年
ZEPHYR(ZR400C)

ZR400G

1996年
ZEPHYR χ
(ZR400G)

Z400GP(KZ400M) -since 1982-

Z400GP

「いま、GPレボリューション」

Z400FXによって切り開かれた四気筒400だったものの、需要の高まりからライバル車が続々と登場していた。

そんなライバル車に対抗すべく開発されたのがこのZ400GP。

GPZ400

サイドカバーを見てもらうと分かる通り

「GPzじゃないのか」

と思うかもしれませんが、GPzという名前が最初に付けられたのは翌年から。

Z400GPカタログ写真

このZ400GPというのはちょうどZがGPzに変わりかけている間のモデルというわけ。

肝心の中身の方はどうかというと、セパハン化にダブルディスク、カワサキの400では初となるユニトラックサス(モノサス)を採用。

そして何よりFXから-13kgという大幅なダイエットとなり、ブラックアウト化されたエンジンも48馬力と走行性能が大幅に向上した・・・んですが、実はこのZ400GPは僅か一年ほどしか発売されていません。

Z400GP当時の広告

すぐに後継が出た事で、このZ400GPはお役御免となりました。

いま振り返ってみるとFXと後継の繋ぎだった少し可哀想なバイクですね。まあ、それだけ当時は競争が激化していたんです。

1983年Z400GP

ましてこのカテゴリはカワサキが自らが切り開いた絶対死守カテゴリでもあったわけですから。

ただ申し分のない性能だったこともあり、このZ400GPは鈴鹿四耐で優勝をしたベースバイクでもあります。

Z400GP四耐

ちなみにその優勝チームはカワサキ社員が自主的に集まって結成されたTEAM38という所。

Z400GPカタログ写真

のちにH2/H2Rを作ることになるチームです。

主要諸元
全長/幅/高 2170/750/1095mm
シート高 780mm
車軸距離 1445mm
車体重量 179kg(乾)
燃料消費率 35.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 18.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 399cc
最高出力 48ps/10500rpm
最高トルク 3.5kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前90/90-19(52H)
後110/90-18(61H)
バッテリー YB12A-AK
プラグ D8EA
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.0L
スプロケ 前16|後40
チェーン サイズ530|リンク104
車体価格 478,000円(税別)
系譜図
Z400FX

1979年
Z400FX
(KZ400E)

Z400GP

1982年
Z400GP
(KZ400M)

GPz400

1983年
GPz400
(ZX400A1)

GPZ400F

1983年
GPz400F/F2
(ZX400A2~/C)

ZR400C

1989年
ZEPHYR(ZR400C)

ZR400G

1996年
ZEPHYR χ
(ZR400G)

Z400FX(KZ400E) -since 1979-

KZ400E

「羨望、Zのクオリティ」

長らく不在だった400cc四気筒として鮮烈なデビューを果たしたZ400FX。

この頃の400というのは二気筒で250と共有な兄弟ラインナップが当たり前でした。

何故なら結局そうしないとこのクラスでは採算が取れないから。だから四気筒は大型の限られたバイク、カワサキで言うならばZ2やZ650だけでした。

Z750フォア

しかし一方で当時は大型が限定解除で難しかった事から、四気筒に乗りたくても乗れないライダーが大勢いた。

ではZ400FXはどうして四気筒で出せたのかというと、250ではなく550(輸出仕様Z550FX)と共有化したから。

Z400FXエンジン

ただZ550FXと共有化と言っても550は海外でもメジャーではないので、日本の400の為の共有化と言っていいでしょう。

カワサキがどうしてそこまでしたのかというと、クラス初の四気筒だったものの採算が取れず止めてしまったCB350/400FOURを超えるという思いも大きく影響していると思われます。

この頃のカワサキは

「打倒ホンダ」

という飢えた空気が社内を占めていたとZ1の方で書かれていました。

Z400FXカタログ写真

直列四気筒だけでなくクラス初となるDOHCとなっているのも、CB750に対するZ1/Z2の流れと完全に同じですしね。

まあそんな社内事情は置いておくとしても、クラス唯一となる四気筒で43馬力を発生させるエンジン・・・そして何より見た目が『Z』そのもの。

KZ400Eカタログ写真

まさに多くのユーザーが待ち望んでいた400だったから1980年には14380台でカワサキ400としては初のトップセールスを記録。

そして何よりこのZ400FXの登場によって翌年から400ccは四気筒戦国時代に突入する事に。

Z400FXパンフレット

補足として1981年の通称E4型でチューブレスタイヤ・フルトランジスタ点火・セミエアサスなどの変更が加わっています。

ちなみにZ400FXは1983年(1982年12月)に一度再販された歴史を持ちます。

Z400FX

これは、性能がライバルや後継に引けを取ってもZ400FXを望む声が一向に止まなかったから。

Z400FXというのはそれだけ400市場、そして400ユーザーに強いインパクトを与えたバイクだったわけです。

主要諸元
全長/幅/高 2100/795/1155mm
シート高 805mm
車軸距離 1390mm
車体重量 192kg(乾)
燃料消費率 30.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 399cc
最高出力 43ps/9500rpm
最高トルク 3.5kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前3.25-19-4PR
後3.75-18-4PR
バッテリー YB12A-A
プラグ D8EA
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.0L
スプロケ 前16|後40
チェーン サイズ530|リンク104
車体価格 385,000円(税別)
系譜図
Z400FX

1979年
Z400FX
(KZ400E)

Z400GP

1982年
Z400GP
(KZ400M)

GPz400

1983年
GPz400
(ZX400A1)

GPZ400F

1983年
GPz400F/F2
(ZX400A2~/C)

ZR400C

1989年
ZEPHYR(ZR400C)

ZR400G

1996年
ZEPHYR χ
(ZR400G)

Vulcan500LTD(EN500C) -since1996-

EN500C

「STREET SMART」

A/B型最終年度の一年前となる1996年にクロスフェードする形で登場したVulcan500LTD/EN500C型。

・タンク容量を+4Lし15Lに
・タンクオンメーター
・合わせてボディを大型化
・シート高を15mm下げ715mmに
・ホイールをキャストからスポークへ変更
・駆動をベルトからチェーンへ変更
・六速から五速ミッションへ変更
・スラッシュマフラー

などなど利便性を更に向上させるとともに更にクルーザーらしいフォルムへとモデルチェンジしました。

EN500Cメーター写真

まあ正直に言ってしまうと日本でこのモデルに興味がある人は非常に少ないかと思います。ただし、カワサキにとってこのモデルは間違いなく社史に刻まれるモデルかと。

というのもこのVulcan500LTDは1996年から大きなモデルチェンジをすることなく、実に2007年まで主に北米で販売されていたロングセラーモデルなんですね。

なんでそんなに続いたのかといえば454LTDでも話した通り、このクラスが向こうにとってのエントリークラスだからというのが大前提としてあるんですが、そのクラスの中でもVulcan500LTDは非常に良く出来ていたから。

まず上げられるのが乾燥重量199kgとクルーザーとしては非常に軽い部類だった事。そしてもう一つはバランサーを搭載した事で非常に滑らかに回り、かつ高速巡航も出来るポテンシャルをもったエンジンだった事。

EN500Cスペック

これらの要素から

「ちょい乗りにも使えるクルーザー」

という評価を得た。それは必然的に初心者にうってつけなモデルという需要を得たんです。

EN500Cサイド

ありのまま北米での評価というか世論を書くと、向こうでバイクと言えばクルーザーでありクルーザーといえばやっぱりハーレーという常識がある。だからカワサキにも張り合えるようにVNシリーズというビッグVツインモデルを用意している。バルカンといえばそっちを思い浮かべる人も多いかと。

しかし自分がどれだけバイクに適正があるのか、何処でどんな使い方をするか分からない状況で、初っ端からいきなりビッグクルーザーというのは賢い選択ではないという常識もある。

じゃあ小さいクルーザーにするかというとそれだとクルーザーらしさが薄れるし、大型に混じって走るのはパワー的な面でキツい・・・そういった問題がある中で、5000ドル程度で買えて、軽くて脚付きも良くて、ジェントルだけど元気なパラツインを持っているVulcan500LTDというのは非常に有力な選択肢になる。

カワサキEN500

だからVulcan500LTDはエントリー層に人気あった。

これ本当に面白いんですよ。

というのもVulcan500LTDには兄弟車としてGPZ500Sというロードスポーツモデルがあったんですが、あっちはあっちでロードスポーツが盛んな欧州において

「バイクに乗ってみたいならコレを買っておけ」

と言われる初心者向けベストバイクという立ち位置で人気だった。

EN500Cカタログ写真

それを北米ではVulcan500LTDが担っていたという話。

主要諸元
全長/幅/高 2290/840/1230mm
[2320/830/1125mm]
シート高 730mm
[715mm]
車軸距離 1555mm
[1595mm]
車体重量 186kg(乾)
[199kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 11.0L
[15.0L]
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 498cc
最高出力 60ps/9800rpm
最高トルク 4.6kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57S)
後140/90-15(70S)
バッテリー YB12A-A
プラグ D9EA
または
X27ES-U
推奨オイル SAE10W-40
オイル容量 全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ
チェーン
車体価格
系譜図
EN4541985年
EN454/LTD
(EN450A)
EN500A1990年
Vulcan500/LTD
(EN500A/B)
EN500C1996年
Vulcan500/LTD
(EN500C)
EN6502016年
Vulcan S
(EN650A-B/C-D/G/J)

Vulcan S(EN650A-B/C-D/G/J) -since 2016-

バルカンS

「Fun Riding Urban Runner」

先代にあたる500LTDの生産終了から9年後の2016年に登場したVulcan S/EN650A型と、ABS付きのEN650B型。

カワサキの得意とするオフセットレイダウンリアサスペンションである事からも分かる通り、この代からタイで生産されているNinja650系と同じFI化された水冷DOHC並列二気筒649ccが積まれた形になっています。

バルカンSカタログ写真

そんなVulcan Sですがコンセプトを一言で現すと

「既存のクルーザー像に囚われない」

ということになります。

先ず分かりやすいのがデザインで、パッと見でも分かる通りローロングながら逆三角形ヘッドライトやラジエーターシュラウド。それにギュッと凝縮された流線型のボディなど明らかに従来のクルーザースタイルと違うモダンな見た目。

バルカンSリア

テールライトも薄型のLEDタイプで、メーターも多機能LCDタイプ。

しかしVulcan Sが枠に囚われないという要素はデザインだけじゃありません。面白いのは中身の方にある。

Vulcan SにはERGO-FITと称した可変ポジション機能が備えられています。

エルゴフィット

フットペグ:標準/+25mm/+50mm(シフトロッド別売)

ハンドル:標準/前方へ+36mm(別売)

シート:後方へ50mm/標準/前方へ53mm(別売)

と18通りのポジション変更が行える親切機能でなんですが、さらに嬉しいのが標準の段階でハンドル位置を44mm手前(ライダー側)に寄せている仕様にしている事。

バルカンSのハンドルポジション

カタログが用意されなかったりする事から日本での販売はオマケという印象を受けそうになるんですが、こうやってわざわざ日本仕様を用意する力の入れよう。

だからフォワードコントロールの大型クルーザーにありがちな

「ハンドルやステップが遠くて手足が伸び切ってしまう」

という心配が無く、シート高も705mmしかないから脚付きも抜群。

何故これほどまでに、クルーザーにも関わらずここまでポジションにこだわっているのかというと

「スポーツ走行を楽しむため」

です。

バルカンSの壁紙

最初にも話した通りエンジンは万能の象徴とも言えるミドルスポーツNinja650の並列二気筒エンジンをベースに低中速を強化したもの。そしてリアサスペンションも7段階のプリロード調節機能付きで良好なダンピング性能を可能とするリンク式オフセットレイダウンリアサスと、クルーザーらしかぬモノを持っている。

そこに合わせられるのがいま話したERGO-FITという親切機能。そしてシート後方と盛り上がりやニーグリップを考慮したワイドタンクなどでガッチリと身体をマシンにホールド出来るようデザインされた車体。

これによりクルーザーながらマン・マシンの一体感を持って軽快に走れる様になっているんです。当然ながらステアリングもクルーザーらしからぬ軽快さ。

カナダ仕様

これは乗り出すのが億劫にならない街乗りにも使えるクルーザーという先代で評価された部分を更に研ぎ澄ませたスポーツクルーザーと言えるわけですが、もっと突っ込んで語弊を恐れず例えるなら・・・

2016バルカンS

「フォワードコントロールのロー&ロングネイキッド」

という表現がピッタリなモデルじゃないかと。所詮はクルーザーだと高を括って乗ると唸ること間違いなし。

主要諸元
全長/幅/高 2310/855/1090mm
シート高 705mm
車軸距離 1575mm
車体重量 224kg(装)
[227kg(装)]
{229kg(装)}
燃料消費率 23.3km/L
<23.0km/L>
※WMTCモード値
燃料容量 14.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 649c
最高出力 61ps/7500rpm
最高トルク 6.4kg-m/6600rpm
<6.3kg-m/6600rpm>
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70-18(59H)
後160/60R17(69H)
バッテリー YTZ10
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル SAE10W-40
オイル容量 全容量2.3L
交換時1.6L
フィルター交換時1.8L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク120
車体価格

770,040円(税別)
[760,000円(税別)]
{770,000円(税別)}
<830,000円(税別)>

[]内はABS装備のB型
{}内はG型
<>内はJ型

系譜図
EN4541985年
EN454/LTD
(EN450A)
EN500A1990年
Vulcan500/LTD
(EN500A/B)
EN500C1996年
Vulcan500/LTD
(EN500C)
EN6502016年
Vulcan S
(EN650A-B/C-D/G/J)

Vulcan 500(EN500A/B) -since1990-

EN500A

「STREET SMART」

1990年に登場したキャストホイール仕様のEN500A型とスポークホイールLTD仕様のEN500B型。アメリカなど一部の国ではこのモデルからVulcan500という名前でも販売。

EN500B

ナンバリングからも分かる通り排気量を44cc上げたわけですが、これが何故かというとGPZ500という欧州向けのヒットモデルとエンジンを共有し足並みを揃える事になったから・・・と言えるんですが、もっと厳密に遡るとベースがGPZ900Rからその後継であるGPZ1000RX~ZX-10になったから。

ハーフニンジャの経緯

先代と同じように流用しているからボアストローク比も一緒で、997ccを半分だから498ccになっているという単純明快な話。

EN500の仕様

ただしこのモデルからはVulcanという名前がつけられている事からも分かる通り、車体の方も少し大型化され存在感をアップさせると同時に、キャブを絞るなどして低中速トルクを重視するセッティングがなされており、先代のまんまNinja切り取ったエリミネーターかと思うようなタイプよりもクルーザーらしい性格となりました。

主要諸元
全長/幅/高 2290/840/1230mm
[2320/830/1125mm]
シート高 730mm
[715mm]
車軸距離 1555mm
[1595mm]
車体重量 186kg(乾)
[199kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 11.0L
[15.0L]
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 498cc
最高出力 60ps/9800rpm
最高トルク 4.6kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57S)
後140/90-15(70S)
バッテリー YB12A-A
プラグ D9EA
または
X27ES-U
推奨オイル SAE10W-40
オイル容量 全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ
チェーン
車体価格
系譜図
EN4541985年
EN454/LTD
(EN450A)
EN500A1990年
Vulcan500/LTD
(EN500A/B)
EN500C1996年
Vulcan500/LTD
(EN500C)
EN6502016年
Vulcan S
(EN650A-B/C-D/G/J)

EN454/LTD(EN450A) -since1985-

EN450

「FIRE YOUR IMAGINATION」

カワサキが1985年に出したEN450または454LTD、それにLTD450など国によって色んな名前を持つEN450A型。カワサキのパラツインミドルクルーザーつまりVulcan Sにつながる系譜の始まりはこのモデルになります。

LTD450

日本ではEN400の方が有名かと思いますが、これはそのフルサイズバージョンで残念ながら欧米専売モデル。そのため基本的に欧米(特に北米)での話を中心に進めます。

先ず持って最初に説明すると海の向こうでこのクラスは今も昔もエコノ(エコノミー)クラスと呼ばれる日本で言う250に近いクラスで、カワサキも70年代から空冷パラツインであるZ440/LTD(日本版Z400/LTD)というネイキッドスタイルのモデルを出していました。

EN454エンジン

それがここにきて一気に15馬力アップとなる水冷ハイパワーエンジン搭載のベルトドライブクルーザー”EN”へと進化。エコノミーというには明らかにオーバースペックなモデルを投入したわけですが、これは前年デビューしたある有名なモデルが関係しています。

1984年に出たカワサキの有名なモデルといえば・・・そう、トップガンでお馴染み元祖NinjaことGPZ900R。

ハーフ忍者エンジン

このEN450もとい454LTDはGPZ900のエンジン部品を流用することで、コストをエコノミークラスに抑えつつもハイパワー化することに成功したという話。

ヘッドもピストンも当然ボアストローク比も同じ、GPZ900Rのカムチェーン側を2つだけ切り取ったような文字通りハーフNinjaエンジン。908ccの半分だから454ccなんですが、アメ車に詳しい方は”454”というナンバリングを聞くとシボレー(ビッグブロック)を思い浮かべるのではないでしょうか。

知らない人に簡単に説明すると、454というのは1970年にシボレーが開発したエンジンの事。

『V8で7.4L(454立方インチ』

というアメリカを具現化したようなエンジンの事で、コルベットなど搭載されたモデルには454というナンバリングが付き、アメリカで非常に人気でした。

454LTDカタログ写真2

そんなモデルとナンバリングが偶然にも同じだった為か、アメリカのバイク雑誌サイクルガイドが両者を競わせる企画を実施。

すると

「454LTDの方がコルベット454LSより1/4マイルでは1秒以上速い」

という結果に。これが話題となり、エコノクラスながら速くて軽くて便利そして何より破格なバイクという形で人気に。

454LTDカタログ写真

しかしそんな人気とは裏腹に残念ながら454LTDは販売から5年目となる1990年を最後に生産終了となりました。理由はメイン市場だったアメリカでのGPZ900R生産を打ち切ったから。そのため454LTDも道連れに近い形で生産終了。

良くも悪くもGPZ900Rと一蓮托生だった454LTD。これがVulcan Sへと続く系譜の始まりになります。

ちなみに気になる車体価格は当時のアメリカの平均が4万ドル程度だった自体になんとお値段お驚きの$1999。

主要諸元
全長/幅/高 2205/820/1220mm
シート高 745mm
車軸距離 1485mm
車体重量 180kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 11.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 454cc
最高出力 50ps/9500rpm
最高トルク 4.0kg-m/10000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57S)
後140/90-15(70S)
バッテリー YB12A-A
プラグ D9EA
または
X27ES-U
[DR8ES
または
X27ESR-U
※CAモデル]
推奨オイル 10W-40
オイル容量 全容量3.4L
スプロケ
チェーン
車体価格
系譜図
EN4541985年
EN454/LTD
(EN450A)
EN500A1990年
Vulcan500/LTD
(EN500A/B)
EN500C1996年
Vulcan500/LTD
(EN500C)
EN6502016年
Vulcan S
(EN650A-B/C-D/G/J)