TMAX530(2PW)-since 2015-

五代目TMAX

「上質を、堪能しよう。」

熱も冷めぬ内にマイナーとはいえモデルチェンジされ五代目となったTMAX/2PW型。調べてみたら先代が日本では2013年の6月発売、そしてこの後期モデルの2PWは2015年1月でなんと2年も経ってない。

変更点を上げると

・LEDヘッドライト
・倒立フォーク
・ラジアルマウントキャリパー
・インテリジェントキー(スマートキー)

などなど。

五代目TMAX

ドレスアップの意味合いが強い変更となったわけですが、やはり目につくのは倒立フォーク。しかもYZF-R1の初期モデルと同径の太いタイプでラジアルマウントキャリパーまで装備。

倒立サス

「コミューターなんだから正立の方が切れ角とか稼げるし良いのでは」

と思うんですが、これは主戦場である欧州のTMAXユーザーに対し

「変更するならどこを変更して欲しいか」

というアンケートを取ったところ

「倒立フォーク、LEDヘッドライト、インテリジェントキー」

という結果が出たことから搭載されることになったという話。やはりコミューターとして人気なのでそこら辺の声には敏感なんですね。

イタリアモデル

それに初代で説明した通り気持ちはYZF-R5でもあるのでまあ倒立フォークも不思議なことでもないのか。

ただTMAX界隈に一番衝撃を与えたのは倒立フロントフォークでもラジアルマウントキャリパーでもない・・・LEDヘッドライトです。

LEDヘッドライト

「そんなことが衝撃なのか」

と思うかも知れませんがLEDになってTMAXは大きく変わった事があるんです・・・それは

LED点灯

『両眼点灯』

になったことです。

TMAXはこれまで歴代全部片眼点灯でした。

片眼点灯の理由についてネットでは

「両眼点灯だと眼の間隔が狭いため、距離が遠いと勘違いされて事故が起こるから」

などが言われてますが、少なくともTMAXは難解な理由じゃない・・・その理由とはズバリ

「欧州では片眼点灯が流行ってるから(ヤマハ談)」

至極単純ですね。

2015TMAX顔

これは欧州で大人気の耐久レース影響。向こうでは片眼点灯がスポーツの証みたいなイメージがあるから、ただのビッグスクーターではなくビッグスクーターの皮を被ったスポーツバイクみたいなTMAXも採用されていたという話。

しかし一方で日本ではあまり耐久レース文化が根付いていない事もあってか

「球切れみたいで見窄らしい」

という意見が多く自分で両眼点灯に改造したり。まあこれはTMAX530に限った話ではないですが。

2015TMAX530

それが今回LED化に伴い高級感を出すためか欧州での流行りが終わったのか定かではありませんが、両眼点灯に生まれ変わったわけですね。

主要諸元
全長/幅/高 2200/775/1420mm
シート高 800mm
車軸距離 1580mm
車体重量 222kg(装)
[218kg(装)]
燃料消費率 21.7km/L
※WMTCモード値
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 530cc
最高出力 48ps/6750rpm
最高トルク 5.4kg-m/5250rpm
変速機 Vベルト
タイヤサイズ 前120/70-15(56H)
後160/60-15(67H)
バッテリー YTZ12S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR7E
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.6L
交換時2.7L
フィルター交換時2.9L
スプロケ
チェーン
車体価格 980,000円(税別)
系譜図
SJ02J 2001年
TMAX
(5GJ)
SJ04J 2004年
TMAX
(5VU)
SJ08J 2008年
TMAX
(4B5)
SJ12J 2012年
TMAX530
(59C)
2015SJ12J 2015年
TMAX530
(2PW)
2017TMAX 2017年
TMAX530SX/DX
(BX3/BC3)
2020TMAX 2020年
TMAX560/TECH MAX
(B3T/B7M)

TMAX530(59C)-since 2013-

四代目TMAX

「Try the Maximum」

四代目になったTMAXの59C型。このモデルからは正確に言うとTMAX530という名前になりました。

ちなみにグッドデザイン賞に続いてこのモデルでは権威あるドイツのレッドドット・デザインアワードで見事

『プロダクトデザイン2012』

を受賞しました。確かに格好良いですもんね。

話を戻して最初に変更点を上げると

・ボアを2mm拡大し530ccに
・合わせて吸気バルブも1mm拡大
・アルミ鍛造ピストン
・バランサーにアルミスリーブ追加
・メインフレームの見直し
・新設計アルミスイングアーム
・チェーンドライブからベルトドライブに
・282mmの大径リアブレーキ
・プロジェクターヘッドライト
・LEDテールライト
・アルミサイドスタンド
・ABSモデルの追加

などとなっています。

四代目TMAXカタログ写真

このモデルで特筆すべき点はエンジンを530ccまで上げ加速性能を向上させた事もそうなんですが、TMAXの特徴の一つであった2段掛けチェーン駆動がベルト駆動になった事。

ベルトドライブ

これは騒音規制への対応とバネ下のさらなる軽量化(-3.5kg)、そして遊びが少ないことによるリニアな反応が狙い。

そんなTMAX530なんですが先行発売していた欧州でどうだったかと言えば2012年には販売台数一位(約16000台)を記録したようです。販売台数一位というのは125cc等の原付も含めた数。

もう凄いとしか言いようがないですね。10年4代で人気が全く落ちない。

XP530

書き忘れましたがこのTMAXは逆輸入モデルより国内仕様のほうがカタログスペックが上という珍しいバイクだったりします。

これは2013年から国内の騒音規制が欧州に順従する形となった事と、元々TMAXの開発コンセプトにエンジンの存在を消すという目的があった事。

そしてベルトドライブになった事などが挙げられ国内用マッピングに合わせた際に変わった物かと。

TMAX_giro

あとイタリアの一番有名な自転車レース『ジロ・デ・イタリア』では伴走車として活躍したりしました。

ピンクも意外と合いますね。

主要諸元
全長/幅/高 2200/775/1425~1475mm
シート高 800mm
車軸距離 1580mm
車体重量 217kg(装)
[221kg(装)]
燃料消費率 27.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 530cc
最高出力 48ps/6750rpm
最高トルク 5.4kg-m/5250rpm
変速機 Vベルト
タイヤサイズ 前120/70-15(56H)
後160/60-15(67H)
バッテリー YTZ12S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR7E
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.5L
交換時2.7L
フィルター交換時2.9L
スプロケ
チェーン
車体価格 920,000円(税別)
[970,00円(税別)]
※[]内はABSモデル
系譜図
SJ02J 2001年
TMAX
(5GJ)
SJ04J 2004年
TMAX
(5VU)
SJ08J 2008年
TMAX
(4B5)
SJ12J 2012年
TMAX530
(59C)
2015SJ12J 2015年
TMAX530
(2PW)
2017TMAX 2017年
TMAX530SX/DX
(BX3/BC3)
2020TMAX 2020年
TMAX560/TECH MAX
(B3T/B7M)

TMAX(4B5)-since 2008-

三代目TMAX

「スポーツコミューターの進化」

初めてのフルモデルチェンジとなった三代目のTMAX/4B5型。

最初に変更点を上げると

・アルミフレーム
・モノブロックMOSキャリパー
・エンジンのリセッティング
・新設計アルミホイール
・フロントも15インチへ
・キャスター角やホイールベースの見直し
・燃料タンクを+1Lで15Lに

などとなっていますが、何より特筆すべきはフレーム。

SJ08J

なんとフレームがアルミのしかもダイキャスト製というスクーターにあるまじき豪華なものになりスポーツ性が更に向上。

加えてブレーキキャリパーもR1と同じ住友のMOSキャリパーを奢られ、もう本当に

「お前はスーパースポーツか」

と突っ込みたくなるような構造に。

2008TMAX

ヤマハの資料によるとこの頃は欧州だけで20000台/年という更にありえないほどの売れっぷり。当時の欧州ビッグスクーター市場は50000台前後なので約半数をTMAXが占めてる事になる。どんだけ・・・ちなみにメインはイタリアやフランス。

向こうのヤマハ販売店は一店舗でTMAXを年間300台売ることも珍しくないんだとか。

TMAX WGPカラー

念の為に言っておきますが向こうでも決して安い乗り物ではないです。日本と変わらない値段。

じゃあなんで売れるのかっていうとA2免許(日本でいう普通二輪)という事もあるんでしょうが、一番はスクーターに対する認識の違いでしょうね。

主要諸元
全長/幅/高 2195/775/1445mm
シート高 800mm
車軸距離 1580mm
車体重量 222kg(装)
燃料消費率 25.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 499cc
最高出力 38ps/7000rpm
最高トルク 4.5kg-m/5500rpm
変速機 Vベルト
タイヤサイズ 前120/70-15(56H)
後160/60-15(67H)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR7E
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.6L
交換時2.8L
フィルター交換時2.9L
スプロケ
チェーン
車体価格 900,000円(税別)
系譜図
SJ02J 2001年
TMAX
(5GJ)
SJ04J 2004年
TMAX
(5VU)
SJ08J 2008年
TMAX
(4B5)
SJ12J 2012年
TMAX530
(59C)
2015SJ12J 2015年
TMAX530
(2PW)
2017TMAX 2017年
TMAX530SX/DX
(BX3/BC3)
2020TMAX 2020年
TMAX560/TECH MAX
(B3T/B7M)

TMAX(5UV)-since 2004-

二代目TMAX

「より高いライディングプレジャー」

僅か三年足らずでモデルチェンジとなった二代目のTMAX/5UV型。

最初に変更点を上げると

・フロントフォークのインナーチューブ径アップ
・5本スポークホイール
・リアホイールを14インチから15インチへアップ
・フロントWディスクブレーキ化
・前後ラジアルタイヤ化
・FI化と圧縮比の向上
・三元触媒の採用
・新設計デジタルメーター
・パーキングブレーキ

などとなっています。

二代目TMAXカラーバリエーション

この頃もう既にTMAXによって欧州でもビッグスクーターブームが起きててライバル車が数多く出ていたんですが、一番人気キングオブスクーターの座はパイオニアだったTMAXで変わらず。

理由はもちろん初代でも話した通りビッグスクーターの延長線上にいるスポーツモデルではなく、スポーツバイクの延長に居るようなビッグスクーターだったから。

SJ04J

結果としてTMAX人気は留まるところを知らず発売から僅か三年で4万台を超える販売台数を記録。その後も一万台以上/年をコンスタントに売り上げ欧州ヤマハの顔にまで成長しました。

売れるから開発費が掛けられる、開発費が掛けられるから良いモデルが造れるという正のスパイラルに突入したわけですね。

主要諸元
全長/幅/高 2235/775/1235mm
シート高 795mm
車軸距離 1575mm
車体重量 225kg(装)
燃料消費率 27.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 14.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 499cc
最高出力 38ps/7500rpm
最高トルク 4.6kg-m/4500rpm
変速機 Vベルト
タイヤサイズ 前120/70-14(55H)
後160/60-15(67H)
バッテリー GT9B-4
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR7E
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.6L
交換時2.8L
フィルター交換時2.9L
スプロケ
チェーン
車体価格 809,000円(税別)
系譜図
SJ02J 2001年
TMAX
(5GJ)
SJ04J 2004年
TMAX
(5VU)
SJ08J 2008年
TMAX
(4B5)
SJ12J 2012年
TMAX530
(59C)
2015SJ12J 2015年
TMAX530
(2PW)
2017TMAX 2017年
TMAX530SX/DX
(BX3/BC3)
2020TMAX 2020年
TMAX560/TECH MAX
(B3T/B7M)

TMAX(5GJ)-since 2001-

初代TMAX

「ニュー・オートマチック・スポーツ」

キングオブスクーターことTMAXの初代モデルである5GJ型。

当時のヤマハとしてはTMAXはビッグスクーターじゃないという旨の事を言っていて、公式サイトでもスクーターカテゴリじゃなくスポーツバイクカテゴリに入れていました。

その根拠は何かって話ですが、それは構造にあります。

初代TMAX

確かにTMAXはオートマチックに加え33Lのトランクスペースというビッグスクーターの武器を備えているんですが、ビッグスクーターらしさがあるのはほぼそれだけ。

まず第一にビッグスクーターといえばフレームはネイキッドのフレームを押し下げたアンダーボーンやダブルクレードルフレームが一般的なんですが、TMAXは水平に寝かせた並列二気筒エンジンを剛性メンバーとして積極的に使うダイヤモンドフレームに積んでいる。

TMAX500内部

そしてフロントフォークもブラケットで懸架されたオートバイタイプ。

さらに駆動方式もスイングアームとエンジンが一体になっているスイングユニット式が一般的なのに対し、リアアームが分かれているスイングアーム式で最終駆動もチェーン。

これはスイングユニット式だとエンジンをダイレクトマウントして剛性メンバーとして使うことが出来なくなる上に、バネ下重量が激増してしまい路面追従性が悪くなってしまうから。

チェーン式無段階変速機

つまり簡単にいうとTMAXっていうのは見た目はスクーターのなんだけど造りは完全にスポーツバイクなんですね。

これがTMAXがスクーターじゃないと言われる所以で開発者は

『YZF-R5』

を目指して造ったとの事。

XP500

「そもそも何故こんなモデルを造ろうと思ったのか」

という話ですが、これはヤマハが1995年に出したビッグスクーターの代表格としてお馴染みマジェスティにあります。元々マジェスティは日本向けに出した面が強かったんですが欧州でも販売したところ

「荷物も詰めてソコソコ機敏に走れる楽ちんバイク」

として予想外のヒットとなった。

しかし向こうの人は体格の大きくスポーツ性にもうるさいのでソコを狙って開発されたのが

「テクノロジーをマックスで詰め込んだTMAX(Tech MAX)」

というわけ。

2003TMAXブラックエディション

その狙いは見事に的中し、初年度の欧州だけで9000台も販売。キングオブスクーターとして大好評となりました。

ちなみに日本のグッドデザイン賞を受賞したバイクでもあるんですが、その中でも金賞を獲得したのは国産バイクではこのTMAXだけだったりします。

主要諸元
全長/幅/高 2235/775/1235mm
シート高 795mm
車軸距離 1575mm
車体重量 218kg(装)
燃料消費率 30.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 14.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 499cc
最高出力 38ps/7000rpm
最高トルク 4.5kg-m/5500rpm
変速機 Vベルト
タイヤサイズ 前120/70-14(55S)
後150/70-14(66S)
バッテリー GT9B-4
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR7E
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.6L
交換時2.8L
フィルター交換時2.9L
スプロケ
チェーン
車体価格 740,000円(税別)
系譜図
SJ02J 2001年
TMAX
(5GJ)
SJ04J 2004年
TMAX
(5VU)
SJ08J 2008年
TMAX
(4B5)
SJ12J 2012年
TMAX530
(59C)
2015SJ12J 2015年
TMAX530
(2PW)
2017TMAX 2017年
TMAX530SX/DX
(BX3/BC3)
2020TMAX 2020年
TMAX560/TECH MAX
(B3T/B7M)

TRICITY155(BB8)-since 2017-

トリシティ155

「Leaning Multi Wheel 第二弾」

高速道路も乗れてしまうTRICITYの155ccモデル。

「これで高速はちょっと・・・」

と思う人もいるかもしれませんが、高速道路を乗ったことがある人なら誰もが経験する横風による煽りも反対側のタイヤで踏ん張るので強かったりします。

というかトリシティというと前二輪でコケないというアピールとイメージが強すぎて、”横風に強い”とか”実質Wディスクで制動性に優れる”とか”乗り心地が凄く良い”というその他のメリットが全くもって伝わってないですよね。

トリシティ155UK仕様

まあコレばっかりは乗らないと分からないから仕方ないか。ちなみにブレーキもちょっと変わってて、本来ならリアブレーキの役割を担う左レバーが前後を担う前後ブレーキとなっています。

さて155はただ125の排気量アップかなと思ったらコチラのモデルはブルーコアエンジンなんですね。

ブルーコア

ブルーコアエンジンというのはヤマハが社内のエンジニアを総動員して作ったとされる新世代の低フリクション(低燃費)エンジン。

ブルーコアエンジンにもバリエーションが幾つかあるんですが、TRICITY155に積まれている物はNMAXの物と同様ブルーコアエンジンの中でも最上位の水冷モデル。

ブルーコアエンジン

燃焼時にピストンとコンロッドが一直線上になるオフセットシリンダー、冷却性に富んだオールアルミのDiASil(ダイアジル)シリンダー、エンジン横に設けられたコンパクトなラジエーター、低中速域と高速域での燃焼効率を両立する可変バルブVVAなどなど。

ブルーコアエンジン

最近可変バルブを取り上げる機会が多いですね。ちなみにこれもCBのVTECやBanditのVCとも動きは違います。

可変するのは吸気側のみで、BanditのVCエンジンのように中低速用と高速用のカムとロッカーアームの両方を備えており6000rpmを超えると中低速用のロッカーアームと高速用のロッカーアームを連結させる事で高速用に切り替えてる。

ヤマハVVAシステム

車の方では一昔前までメジャーだった方法。

これらの装備により従来モデルに比べ燃焼効率が50%も伸びたそう。MotoGPのエンジニアも呼び寄せたと言うだけの事はありますね。

既存の5種類以上ある小排気量エンジンを3種類のブルーコアエンジンに集約する為、1基辺りにお金かかってる事もありますが。

tricity155白

まあそんなメカニズムの話ばかりしても面白くないのでちょっと蛇足。TRICITYに対する声で多いのが

「屋根つけろ」

という意見。

確かにこれに屋根をつければ車代わりになれそうな気がしないでもない。

法律でも全長は車体長以内、高さは2m以内なら認められています・・・では何故メーカーは屋根を用意しないのかですが、恐らく2つ理由あると思います。

理由その1:車体価格が高くなってしまう

非常にシンプルかつ有力な理由。

屋根付きバイクとして現存している国産車にホンダの商用原付GYROがあります。ピザ屋でおなじみですね。

ジャイロ

ジャイロは屋根のついていないジャイロXが358,050円なのに対し、屋根付きのジャイロキャノピーは523,950円。その差16万円ほど。装備が若干異なっていますが基本的に同じバイクです。

これをTRICITYに当てはめると50万円を超える。50万円を超える125/155を買う人は125最速のYZF-R125/MT-125の売れ行きを見てもほぼ居ない。

理由その2:転んだ時に危ない

バイクというのは転倒する危険性があります。それは三輪のTRICITYでも可能性は既存のバイクよりも低いけどある。

プロであるバイクレーサーの転倒シーンを思い浮かべてもらうとわかりますが、転倒した時には必ずバイクから手を離しリリースしています。これはバイクに巻き込まれる事が一番危ないことを知っているから。

転倒

もし屋根があったら横になった屋根と車体に閉じ込められてシェイクされてしまう危険性が非常に高くなるわけです。バイクメーカーはちゃんと転倒時の事も考えて作ってるんですよ。

だから社会的責任を伴う規模の大きい日本メーカーとしては

「屋根が欲しいなら自分で付けて」

というスタンスで屋根付きを出さないのではないかと思います。

そういう事に一番うるさいホンダがGYROで出してるのは30km/hしか出せない商用の原付だからかと。

余談ですがイタリアのADVIA(アディバ)というメーカーが電動開閉機能の付いたバイクを出しています。

ジャイロ

電動開閉のオープンカーならぬオープンバイク。世界で特許を取得済み。

ただ当然ながらお高く、125でも50万円を超えます。しかも重い。

あと屋根をつけろと言ってる人に言っておきたいのが、屋根をつけても普通に濡れます。濡れないのは上半身だけで肩から手、下半身への浸水は防げません。大人しく合羽着るのが安くて確実です。

トリシティに関係ない話ばかりですね。

MW155

でも恐らくバイクに乗られてる方はTRICITYに興味のない、または一度乗ってみただけの興味本位の人、ぶっちゃげると

「これ買うくらいならNMAX買う」

って人が多いかと思います。

でもそれはヤマハも狙い通りというか織り込み済みで、このバイクは新規需要掘り起こしを狙って作られた側面が強いバイク。国内新車販売台数100万台という目標に向けてヤマハが出したバイクでもあります。

というのもヤマハが過去に行った調査でバイクに乗らない人の乗らない理由を聞いたところ

「転倒が怖い」

という意見が大多数を占めていた。

つまりトリシティというのはそういった声を聞いて作られたバイクなんです。自立しないので前二輪であろうとコケる時はコケる。でも前にタイヤが2つあるから”転倒しなさそう”というイメージが湧いて転倒の怖さを軽減してる。後ろに乗る人も前が二輪だと安心でしょう。

二人乗り

芸能人の多用など普通では見ないような方法で宣伝をしている事を見ても、ターゲットが我々バイク乗りでは無いことは明白ですね。

そういった層がメインターゲットだからトリシティ(125)は原二クラスの中でも年間8000台前後と新型原二としては今ひとつな販売台数なんだけど、新規(またはリターン)ライダーの割合は恐らくトップかと思われます。

欧州モデル

トリシティでリーンというバイクでしか味わえない面白さを安全に知り、バイクに目覚めている人が増えているのは間違いない。

そう考えるとトリシティが市場に与える影響というのは”販売台数”という数字だけで片付けられる簡単な物ではないでしょう。

余談:トリシティに興味のない既存のバイク乗りへ

関係のない話ばかりしてきたのはあんまり興味が無かったからなのですが、密かにブームの兆しを見せている遊びを見て改めました。

それはトリシティによるオフ路走行。発端はタンデムスタイルさん(参照)かな?

トリシティオフ走行

もともと石畳やギャップを物ともしない走りが武器だから、多少の悪路はそつなくこなせる走破性を持ってる。

最低地上高が低いから岩だらけのガレ場とかの極端な場所は流石に無理だけど、多少の悪路なら写真のようなブロックタイヤを履かずとも難なく走れるしチェーンを巻けば雪道でも走れるATV(四輪バギー)のようなバイクに早変わり。

デュアルパーパス顔負けな走りが出来るかもしれない。

でも元々そういう走行を前提にしているわけではないので、走行した場合は汚れ(特に砂など)をちゃんと落とすようにしましょう。

主要諸元
全長/幅/高 1980/750/1210mm
シート高 780mm
車軸距離 1350mm
車体重量 165kg(装)
燃料消費率 41.7km/L
※WMTCモード値
燃料容量 7.2L
エンジン 水冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 155cc
最高出力 15ps/8000rpm
最高トルク 1.4kg-m/6000rpm
変速機 Vベルト式
タイヤサイズ 前90/80-14(43P)
後130/70-13(57P)
バッテリー YTZ7V
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR8EA-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.0L
交換時0.9L
スプロケ
Vベルト BB8-E7641-00
車体価格 420,000円(税別)
系譜図
トリシティ125 2014年
TRICITY125/A
(2CM)
トリシティ155 2017年
TRICITY155
(BB8)

【関連車種】
PCXの系譜LEADの系譜CYGNUSの系譜Addressの系譜

TRICITY125/A(2CM)-since 2014-

トリシティ125

「Leaning Multi Wheel」

2013年の東京モーターショーで発表され話題になった前二輪の三輪車。でも一応原付二種というバイク扱いなので小型二輪以上の免許が入ります。これくらいなら自動車免許でも良いような気も・・・。

知らない人の為に補足しておくと、この前二輪のバイクを一番最初に出したのはイタリア最大手のPIAGGIO(傘下にVespa・aprilia・MOTO GUZZI)というバイクメーカーから出たMP3というバイクが初出。

PIAGGIO MP3

2007年に発売され、欧州でヒットを飛ばしました。

向こうでは国によっては車の免許で乗れたり、数時間の講習を受けるだけで乗れたりする事もヒットの要因だったりします。フランスが正にそれで、2015年時点で70000台も売れるほどの大ヒット。

という事でフランスのメーカーでスクーターを作ってたプジョーからもMETROPOLISという同じタイプのバイクをトリシティが出る2年前の2012年から発売。

プジョー メトロポリス

つまりトリシティは遅い登場だったわけですが、ヨーロッパでの評価やシェアが高いヤマハとプジョーに市場を奪われたピアジオが怒って2015年に特許侵害で訴訟。判決は探しても見つからなかったのですが、今でも普通にヤマハもプジョーも売っているので敗訴か和解をしたんでしょう。

というかそれが特許侵害になるとテレスコピックサスペンション(一般的なフロントフォーク)を採用しているバイクは全部BMWの特許侵害になっちゃいますし。※テレスコピックサスペンションはBMWが発祥

ヤマハとしてはトリシティの元になっているのは実は34年前に作っていたパッソル。

三輪パッソル

HY戦争でもっと台数を稼ぐために考えた案の一つにコレがあった。もしもHY戦争が長引いてたり勝ったりしてたらもっと前に出てたかもしれませんね。

ちなみに三輪の初出は1974年にダイハツが造った

『ハロー』

というモデル。

ダイハツハロー

今でこそピザ屋やヤクルトで多少は見慣れている形ですが当時は異端車でした。

って、いい加減トリシティの話をしろと怒られそうなのでトリシティに話を戻しましょう。

トリシティで語ることと言ったらLMW(Leaning Multi Wheel)つまり前輪が2つあることですね。

LMW

これは片持テレスコピックサスペンションとそれを支えるハンガー状のパラレログラムリンクというレイアウトになっており、バイクのようでバイクじゃない様なフロントまわりをしてる。

一つのホイールにつき二本を付けてるのでなかなか迫力のある足回りですが、片側二本のうち前の方はガイドのみの役割でサスペンションとしての仕事は後ろのフォークが担っているとの事。

LMWメカニズム

片持ちだからタイヤ交換が凄く楽そうに見えるけどキャリパーも内側だから逆に大変なのかな。恐らくタイヤライフも荷重が二分するのでタイヤ交換の機会は減りそうですが。

どうしてパラレログラムリンクなんていう仕組みになってるのかというと、左右のタイヤを車体と同様に左右を狂いなくリーン(傾け)させて曲がるため。大島優子さんが”り~ん”と言って手を傾けていたのが記憶に新しいと思います。

大島優子トリシティ

ちなみに当時トリシティに試乗したら大島優子さんのクリアファイルがもらえるっていうキャンペーンがあったんですが、バイク屋に在庫の電凸する人や、(免許を持っていない事から)クリアファイルだけクレと交渉しに来る人などで溢れかえり一部のバイク屋は大変だったとか・・・AKBの力恐るべしですね。

さっきから脱線してばかりですね。スイマセン。

じゃあこのパラレログラムリンクがどういう仕組みなのかって事ですが、前にタイヤが二輪もあるからといって左右のタイヤの動きがバラバラだったり、片方が接地しなくなる事があると安定せずに危ない。

トリシティ車体構成

両方同じように傾き、同じように設置する必要がある。つまり今まで一輪で100担っていた仕事量を左右で綺麗に50:50にしないといけないわけです。その為のパラレログラムリンク・・・って言っても分からないですよね。

まあとにかくこうしたのは何度も言いますがリーンするため。

トリシティハンドリング

「トリシティってどんなハンドリングなんだろう?」

と考えている方も多いと思いますが、若干安定性重視ながら基本的にバイクと一緒。それはパラレログラムリンクによって一般的なバイクと同じようにリーンで曲がるからです。

主要諸元
全長/幅/高 1905/735/1215mm
シート高 780mm
車軸距離 1310mm
車体重量 152kg(装)
[156kg(装)]
燃料消費率 38.8km/L
※WMTCモード値
燃料容量 6.6L
エンジン 水冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 124cc
最高出力 11ps/9000rpm
最高トルク 1.0kg-m/9000rpm
変速機 Vベルト式
タイヤサイズ 前90/80-14(43P)
後130/70-13(57P)
バッテリー YTZ7V
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR8EA-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量0.9L
交換時0.8L
スプロケ
Vベルト 2CM-E7641-00
[BB8-E7641-00※18以降]
車体価格 330,000円(税別)
系譜図
トリシティ125 2014年
TRICITY125/A
(2CM)
トリシティ155 2017年
TRICITY155
(BB8)

TRICKER(B8C)-since 2018-

2018年式トリッカー

「FREE RIDE PLAY BIKE」

一度生産終了を迎えつつも復活した2018年型からの実質Sモデルのみとなった三代目TRICKER/B8C型。

主な変更点は

・排ガスを監視するO2センサー

・蒸発ガソリンを防ぐキャニスター

・エアインダクションの廃止

など排ガス規制に対応したもの。

2018年式XG250

聞き慣れないであろうキャニスターというものを少し説明すると、これは車体から漏れ出てくる蒸発ガス対策のもの。

ガソリンスタンドとかで臭ってくるあれと同じでガソリンベーパーとかとも言われていますね。

仲間であるセローやSR400にも付くようになったこの箱がキャニスターといって中には脱臭炭・・・じゃなくて活性炭が入っています。

トリッカーのキャニスター

早い話が排ガス規制(正確にはエバポ規制)に対応するために蒸発ガスを大気放出するのではなくキャニスターに一時的に吸わせることで漏れを抑えているという話。

キャニスターのフロー

ちなみにエンジン始動の有無にかかわらず働く装置なので、トランポや屋内に置いても臭くなりにくい・・・ハズ。

ただずっと乗らないと破過といって容量オーバーで大気放出するようになります。乗れば戻りますが。

エアクリーナーからバイパスさせてエキゾースト内で漏れ出た燃料を再燃焼させるエアインダクションが廃止されたのはこれのおかげで漏れ出るガスが減った事が要因かと。

2018トリッカーエンジン

ただそんな事より目につくのがカタログスペック。

ガスケットの変更により圧縮比が0.2上げられた事で2馬力UP。更にはトルクも0.1kgf-m上がってピーク回転数が500rpm低くなっている。

2018トリッカーカタログ写真

つまり更に振り回せる様になったというこの上ない改良が行われているわけです。

さて・・・繰り返しになりますがトリッカーというバイクは若者にバイクを振り回して遊ぶ事の楽しさを伝える為に生まれたバイク。

2018年式トリッカーカタログ写真

しかしじゃあトリッカーは若者限定バイクなのかと実はそうでもない。

というのもトリッカーの生みの親で自身も乗って遊んでいる近藤PLいわくトリッカーには裏コンセプトというか参考モデルがありました。

「振り回して楽しいバイク」

という企画を見て近藤PLはあるバイクを思い出し

「”アレ”を造ればいいじゃん」

と、昔のヤマハ車を思い出しトリッカーを造った・・・そのモデルとなった”アレ”とは何か。

トリッカーTY-S

「外装で復刻したTY250だろ」

とトリッカーマニアやトレールマニアなら思うでしょう・・・が、残念ながら違います。

正解はこれ。

GT50

そう『ミニトレ』です。

知らない人の為に補足するとミニトレというのは一大トレールブームを巻き起こした250DT1の原付版として70年代に登場したFT50やGT50の事。

ミニトレールということからミニトレという相性で多くの若者に支持され、また多くの若者をトレールの世界へ誘いました。

何を隠そうプロジェクトリーダーの近藤さんもその一人。

2018年式トリッカー壁紙

「自分がミニトレに出会って夢中で走り回った楽しさを、ずっと走り続けたいと思った感動をもう一度」

という秘めたる思いが込められているんです。

つまりトリッカーというのは現代のミニトレとも言えるバイクなんですよ。

主要諸元
全長/幅/高 1980/800/1145mm
シート高 790mm
車軸距離 1330mm
車体重量 127kg(装)
燃料消費率 38.7km/L
※WMTCモード値
燃料容量 6.0L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 20ps/7500rpm
最高トルク 2.1kg-m/6,000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前80/100-19(49P)
後120/90-16(63P)
バッテリー TYZ7S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR7EA
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.4L
交換時1.2L
フィルター交換時1.3L
スプロケ 前15|リア45
チェーン サイズ428|リンク124
車体価格 433,000円(税別)
系譜図
2004トリッカー2004年
Tricker
(5XT)
2009トリッカー2008年
Tricker
(5XT後期)
2018トリッカー2018年
Tricker
(B8C)

【関連車種】
CRF250RALLY/L/Mの系譜SEROWの系譜KLX250/D-TRACER Xの系譜スモールDUKEの系譜

TRICKER(5XT後期)-since 2008-

二代目トリッカー

「Ride on!」

二代目にあたる2008年からの5XT後期型。

排ガス規制に対応するためFI化と吸気ポートの形状変更で対応しつつトルク感を更に向上。

他にもタンク容量を1.2L上げて7.2Lにすることで航続距離まで伸び、サスとシートの見直しが入っています。

二代目トリッカーのフューチャーマップ

さて・・・先代で話しそびれたのですがTRICKERは一言で表すならば

『街中トライアルバイク』

と言える良い意味で非常識なバイクなんですが、その印象に一役買っているのがデザインでこれも非常に考えられているわけです。

デザインしたのはもちろんGKで飯村さんという方なんですがテーマは『CD/MDウォークマン』だったそう。

二代目トリッカーS

「常に一緒にあり楽しませてくれる」

という事からなんですが確かに言われてみればガジェットな感じがありますね。

ただそれだけじゃなくてもう一つミソなのが縦のデザインというやつ。

二代目トリッカーS

通常バイクというのはフレームの上にタンクやシートを載せるような形なので『横基調のデザイン』になっているわけですが、このトリッカーはその常識を破り『縦基調のデザイン』にする事を大事にされたわけです。

それを最もよく表しているのが何を隠そう突き刺さる様に立っている細長いタンク。

トリッカーのタンク

ニーグリップもスタンディングも出来て、なおかつ縦基調にするという非常に考えられた形状。

この形状を実現させるためにトリッカーのタンクは一般的な3ピース構造ではなくモナカ合わせの2ピースになっています。

どうしてそこまで縦に拘ったのかと言えばもちろんTRICKERというバイクは

黒トリッカー

「飛んだり跳ねたりして遊ぶバイクだから」

ですね。

主要諸元
全長/幅/高 1980/800/1145mm
シート高 810mm
車軸距離 1330mm
車体重量 125kg(装)
燃料消費率 39.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 7.2L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 18ps/7500rpm
最高トルク 1.9kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前80/100-19(49P)
後120/90-16(63P)
バッテリー TYZ7S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR7EA
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.4L
交換時1.2L
フィルター交換時1.3L
スプロケ 前15|リア45
チェーン サイズ428|リンク124
車体価格 436,000円(税別)
系譜図
2004トリッカー2004年
Tricker
(5XT)
2009トリッカー2008年
Tricker
(5XT後期)
2018トリッカー2018年
Tricker
(B8C)

TRICKER(5XT)-since 2004-

2004年式トリッカー

「遊びの天才」

2004年に登場したBMXをバイク化したようなトライアル系ともフリースタイル系ともX系とも言える佇まいの初代トリッカーことXG250 TRICKERの5XT型。

プロジェクトリーダーがセローの生みの親である近藤さんである事や、少し後に同じエンジンを積んだセローが出たことから

『セローの派生モデル』

というイメージで片付けてしまいがちですが全くもって異なるモデルです。

このトリッカーは

コンセプトスケッチ

「みんなが夢中になって楽しめるバイク」

という開発コンセプトを元に造られたモデルで、下の写真は最初に登場した2003年東京モーターショーモデル。

トリッカープロ

真ん中にいるのはコンセプトを先鋭化したPROモデルで右にあるのは原付版のチビッカー。

そもそもこのプロジェクトの発端となったのが何処にあるのかというと商品企画の樋口さんが

「ストリート軽二輪の売れ筋がTWしかない」

という状況に懸念を抱いた事がキッカケ。

そこで幾つか案を出してプレゼンしたところ社内で一番人気が高かったのが

『コンパクト&パワフルで振り回せるバイク』

というコンセプトだった。

これがトリッカーの素案になります。

ヤマハTRICKER

そうしてセローの生みの親でありかつてはトライアル選手でもあった近藤さんをプロジェクトリーダーに据え開発が開始。

「振り回して楽しいとはなんぞや」

と議論と数々の試走を重ねた結果

・スムーズにターン出来る

・段差を楽に超えられる

・ウイリーが簡単に出来る

などの小排気量が得意とする要素から大排気量が得意とする要素まで様々な意見が出された。

そしてこれらの意見をまとめる際にベンチマークとなったのがキッズ向け2stモトクロッサーYZ80とSEROW225の二台。

トリッカーとYZ80とセロー

同じ取り回しの良さを持ちつつもパンチがあるYZ80と安心感のあるSEROW225。

「この二台の良い所取りをしたバイクを」

となったわけです。

それを実現するためにTRICKERは本当に無茶な事をやっています。

何が無茶ってセローよりも小さく短いフレームにセローより大きいエンジンを押し込んだから。

トリッカーのディティール

しかもシート高もセローより低くするという無茶なオマケ付き。

このレイアウトはフレームを何百回もミリ単位でやり直した末に何とか形に出来たもので、プロジェクトリーダーの近藤さんも

初代トリッカー

「このバイクはシート下に凝縮という名の芸術が詰まっている」

と豪語するほど。

そうしてセローより20mmも低い全長とシート高のコンパクトで足つきベッタリな、更には125かと思うほど短かいホイールベースとパンチがあるエンジンで振り回せるトリッカーが完成した。

トリッカーのフューチャーマップ

ただトリッカーにはもう一つ絶対条件がありました・・・それは

「40万円を切ること」

です。

これがどうしてかというと近藤PLを始めチームのみんなが

「若者にバイクの本当の楽しさを伝える必要がある」

という危機感を持っていたから。

TRICKER

若者に乗ってもらうにはシート高を始めとした取り回しはもちろんのこと車体価格も安くしないと選んでもらえない。

だから車体価格もギリギリまで詰めて40万円を切ることも絶対で、実際に車体価格は税別ながら399,000円を切った安さだった。

そのため質感への予算はほとんど設けられず、それらは翌年から発売された特別塗装やメッキなどが施された+2万円のトリッカーSでカバー。

TRICKER-S

一体なぜそんなに若者に対する危機感を持っていたのかというと少子化・・・じゃない。

当時の若者に圧倒的に支持されていたバイクがビッグスクーターだったからです。

ビッグスクーターブーム

この頃は空前のビッグスクーターブーム。まだ記憶に新しい人も多いと思います。

そんな状況に対し

「ビッグスクーターでは若者のバイク愛は育たない」

という危機感を覚えた開発チームの思いが振り回して遊べるトリッカーを生んだわけです。

広報の加藤さんいわくトリッカーは

TRICKER/5XT

「打倒ビッグスクーターの意気込みで造った」

との事・・・自分たちがマジェスティで生んだブームを自分たちで倒しにかかるっていう。

※インタビュー記事:別冊モーターサイクリスト317

主要諸元
全長/幅/高 1980/800/1145mm
シート高 790mm
車軸距離 1330mm
車体重量 120kg(装)
燃料消費率 50.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 6.0L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 21ps/7500rpm
最高トルク 2.14kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前80/100-19(49P)
後120/90-16(63P)
バッテリー TYZ7S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR7EA
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.4L
交換時1.2L
フィルター交換時1.3L
スプロケ 前15|リア45
チェーン サイズ428|リンク124
車体価格 399,000円(税別)
系譜図
2004トリッカー2004年
Tricker
(5XT)
2009トリッカー2008年
Tricker
(5XT後期)
2018トリッカー2018年
Tricker
(B8C)
系譜図
2004トリッカー2004年
Tricker
(5XT)
2009トリッカー2008年
Tricker
(5XT後期)
2018トリッカー2018年
Tricker
(B8C)