「Leaning Multi Wheel 第二弾」
高速道路も乗れてしまうTRICITYの155ccモデル。
「これで高速はちょっと・・・」
と思う人もいるかもしれませんが、高速道路を乗ったことがある人なら誰もが経験する横風による煽りも反対側のタイヤで踏ん張るので強かったりします。
というかトリシティというと前二輪でコケないというアピールとイメージが強すぎて、”横風に強い”とか”実質Wディスクで制動性に優れる”とか”乗り心地が凄く良い”というその他のメリットが全くもって伝わってないですよね。
まあコレばっかりは乗らないと分からないから仕方ないか。ちなみにブレーキもちょっと変わってて、本来ならリアブレーキの役割を担う左レバーが前後を担う前後ブレーキとなっています。
さて155はただ125の排気量アップかなと思ったらコチラのモデルはブルーコアエンジンなんですね。
ブルーコアエンジンというのはヤマハが社内のエンジニアを総動員して作ったとされる新世代の低フリクション(低燃費)エンジン。
ブルーコアエンジンにもバリエーションが幾つかあるんですが、TRICITY155に積まれている物はNMAXの物と同様ブルーコアエンジンの中でも最上位の水冷モデル。
燃焼時にピストンとコンロッドが一直線上になるオフセットシリンダー、冷却性に富んだオールアルミのDiASil(ダイアジル)シリンダー、エンジン横に設けられたコンパクトなラジエーター、低中速域と高速域での燃焼効率を両立する可変バルブVVAなどなど。
最近可変バルブを取り上げる機会が多いですね。ちなみにこれもCBのVTECやBanditのVCとも動きは違います。
可変するのは吸気側のみで、BanditのVCエンジンのように中低速用と高速用のカムとロッカーアームの両方を備えており6000rpmを超えると中低速用のロッカーアームと高速用のロッカーアームを連結させる事で高速用に切り替えてる。
車の方では一昔前までメジャーだった方法。
これらの装備により従来モデルに比べ燃焼効率が50%も伸びたそう。MotoGPのエンジニアも呼び寄せたと言うだけの事はありますね。
既存の5種類以上ある小排気量エンジンを3種類のブルーコアエンジンに集約する為、1基辺りにお金かかってる事もありますが。
まあそんなメカニズムの話ばかりしても面白くないのでちょっと蛇足。TRICITYに対する声で多いのが
「屋根つけろ」
という意見。
確かにこれに屋根をつければ車代わりになれそうな気がしないでもない。
法律でも全長は車体長以内、高さは2m以内なら認められています・・・では何故メーカーは屋根を用意しないのかですが、恐らく2つ理由あると思います。
理由その1:車体価格が高くなってしまう
非常にシンプルかつ有力な理由。
屋根付きバイクとして現存している国産車にホンダの商用原付GYROがあります。ピザ屋でおなじみですね。
ジャイロは屋根のついていないジャイロXが358,050円なのに対し、屋根付きのジャイロキャノピーは523,950円。その差16万円ほど。装備が若干異なっていますが基本的に同じバイクです。
これをTRICITYに当てはめると50万円を超える。50万円を超える125/155を買う人は125最速のYZF-R125/MT-125の売れ行きを見てもほぼ居ない。
理由その2:転んだ時に危ない
バイクというのは転倒する危険性があります。それは三輪のTRICITYでも可能性は既存のバイクよりも低いけどある。
プロであるバイクレーサーの転倒シーンを思い浮かべてもらうとわかりますが、転倒した時には必ずバイクから手を離しリリースしています。これはバイクに巻き込まれる事が一番危ないことを知っているから。
もし屋根があったら横になった屋根と車体に閉じ込められてシェイクされてしまう危険性が非常に高くなるわけです。バイクメーカーはちゃんと転倒時の事も考えて作ってるんですよ。
だから社会的責任を伴う規模の大きい日本メーカーとしては
「屋根が欲しいなら自分で付けて」
というスタンスで屋根付きを出さないのではないかと思います。
そういう事に一番うるさいホンダがGYROで出してるのは30km/hしか出せない商用の原付だからかと。
余談ですがイタリアのADVIA(アディバ)というメーカーが電動開閉機能の付いたバイクを出しています。
電動開閉のオープンカーならぬオープンバイク。世界で特許を取得済み。
ただ当然ながらお高く、125でも50万円を超えます。しかも重い。
あと屋根をつけろと言ってる人に言っておきたいのが、屋根をつけても普通に濡れます。濡れないのは上半身だけで肩から手、下半身への浸水は防げません。大人しく合羽着るのが安くて確実です。
トリシティに関係ない話ばかりですね。
でも恐らくバイクに乗られてる方はTRICITYに興味のない、または一度乗ってみただけの興味本位の人、ぶっちゃげると
「これ買うくらいならNMAX買う」
って人が多いかと思います。
でもそれはヤマハも狙い通りというか織り込み済みで、このバイクは新規需要掘り起こしを狙って作られた側面が強いバイク。国内新車販売台数100万台という目標に向けてヤマハが出したバイクでもあります。
というのもヤマハが過去に行った調査でバイクに乗らない人の乗らない理由を聞いたところ
「転倒が怖い」
という意見が大多数を占めていた。
つまりトリシティというのはそういった声を聞いて作られたバイクなんです。自立しないので前二輪であろうとコケる時はコケる。でも前にタイヤが2つあるから”転倒しなさそう”というイメージが湧いて転倒の怖さを軽減してる。後ろに乗る人も前が二輪だと安心でしょう。
芸能人の多用など普通では見ないような方法で宣伝をしている事を見ても、ターゲットが我々バイク乗りでは無いことは明白ですね。
そういった層がメインターゲットだからトリシティ(125)は原二クラスの中でも年間8000台前後と新型原二としては今ひとつな販売台数なんだけど、新規(またはリターン)ライダーの割合は恐らくトップかと思われます。
トリシティでリーンというバイクでしか味わえない面白さを安全に知り、バイクに目覚めている人が増えているのは間違いない。
そう考えるとトリシティが市場に与える影響というのは”販売台数”という数字だけで片付けられる簡単な物ではないでしょう。
余談:トリシティに興味のない既存のバイク乗りへ
関係のない話ばかりしてきたのはあんまり興味が無かったからなのですが、密かにブームの兆しを見せている遊びを見て改めました。
それはトリシティによるオフ路走行。発端はタンデムスタイルさん(参照)かな?
もともと石畳やギャップを物ともしない走りが武器だから、多少の悪路はそつなくこなせる走破性を持ってる。
最低地上高が低いから岩だらけのガレ場とかの極端な場所は流石に無理だけど、多少の悪路なら写真のようなブロックタイヤを履かずとも難なく走れるしチェーンを巻けば雪道でも走れるATV(四輪バギー)のようなバイクに早変わり。
デュアルパーパス顔負けな走りが出来るかもしれない。
でも元々そういう走行を前提にしているわけではないので、走行した場合は汚れ(特に砂など)をちゃんと落とすようにしましょう。
主要諸元
全長/幅/高 |
1980/750/1210mm |
シート高 |
780mm |
車軸距離 |
1350mm |
車体重量 |
165kg(装) |
燃料消費率 |
41.7km/L ※WMTCモード値 |
燃料容量 |
7.2L |
エンジン |
水冷4サイクルOHC単気筒 |
総排気量 |
155cc |
最高出力 |
15ps/8000rpm |
最高トルク |
1.4kg-m/6000rpm |
変速機 |
Vベルト式 |
タイヤサイズ |
前90/80-14(43P) 後130/70-13(57P) |
バッテリー |
YTZ7V |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
CPR8EA-9 |
推奨オイル |
ヤマルーブ プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量1.0L 交換時0.9L |
スプロケ |
– |
Vベルト |
BB8-E7641-00 |
車体価格 |
420,000円(税別) |
系譜図
【関連車種】
PCXの系譜|LEADの系譜|CYGNUSの系譜|Addressの系譜|