ニューブロックヘッド世代 -since 2004-

2005xl883

時代は再び進んで2004年。

初めてフレームとエンジンの両方が同時期に新しくなった第4世代スポーツスター。

何が変わったのかというとエンジンがリジットマウントからラバーマウントに変わったこと。そのため『ラバスポ』とか『ゴムスポ』とか言われています。

エボリューションヘッドエンジン

元々スポーツスターのエンジンを使ってスポーツモデルを造っていたビューエルが開発したラバーマウントを応用した形。

エンジンは基本的にラバーマウント部を設けた程度で大きな変更は無いのですが、フレームの方は対応させるため少し大きめに変更されました。名前もそのままラバーマウントフレームと言われています。

狙いはもちろん振動低減による快適性の向上にあります。

ラバーマウントエンジン

この効果は絶大で非常に好評でした。

それまではリジットフレーム故にエンジンの振動がそのまま乗り手に伝わる事から高速走行は罰ゲームに近かった。

それがラバーマウント化によって心地よい振動は残しつつ大幅に振動を減らした事で可能になったからです。

ハーレー界隈でも全く別物の非常に良く出来たスポーツスターと言われています。

ラバスポ

2007年には排ガス規制に対応するためフューエルインジェクション仕様となり更にメンテナンスフリーに。一部では弄れなくなったとしてFIを外してキャブを付ける猛者も居るようですが。

さて・・・イケイケだったハーレーですが2000年代頃から経営方針が大きく変わったことを知っている人も多いかと思います。

それまでハーレーというと

「自分色に染めていく(カスタムしていく)」

というアメリカのガレージ文化そのままのようなバイクだった。

スポーツスターの全モデル

言ってしまえば新車は『カスタムベース車』という感じですね。

ところが2000年代後半になると

「違法カスタム駄目ゼッタイ」

というスタンスになったんです。

違法なカスタムの依頼、または違法車両の整備などを断る経営方針にガラッと変わった。

それと同時に自社関連のアフターパーツのさらなる拡充を開始。

つまり突っ込んで極端に言うと

「自社公認カスタム以外してくれるな」

と捉えられても仕方ないスタンスに変わったわけです。

スーパーロー1200

これの狙いは

・倫理的な問題

・アフターの収益化

・旧世代との線引き

などの狙いがあるものと思われます。

この流れはラインナップを見ても明白で、それまでスポーツスターは最小限のカスタムしか施していない素モデルがほとんどでした。

スポーツスター2019年モデル

しかし近年はフォーティーエイトやセブンティーツーなど、最初からある程度パッケージングされた一種のファクトリーカスタムが多く出るようになった。

要するに最初から多くの選択をハーレー自身が提供する売り方に変わってきた・・・そしてそれが人気を博してる。

スポーツスターのロゴ

カスタムとの高い親和性から人気だったスポーツスターですが、その立ち位置や付き合い方が大きく変わってきている様です。

ハーレーの見分け方ハーレーの見分け方
※ハーレーが分からない人向け
フラットヘッドスポーツスター1952年
フラットヘッド世代
ショベルヘッドスポーツスター1957年
ショベルヘッド世代
ブロックヘッドスポーツスター1986年
ブロックヘッド世代
ニューブロックヘッドスポーツスター2004年
ニューブロックヘッド世代
スポーツスターの全モデルスポーツスターの全モデル

ブロックヘッド世代 -since 1986-

1957XLスポーツスター

時代はグッと進んで1986年。

この年に登場したのがエボリューションエンジン(通称ブロックヘッドエンジン)を積んだ第3世代スポーツスター。

1000cc一本だった状態から伝統の883ccモデル(XLH883)とボアを拡大した1100cc(XLH1100)の二本立て展開が始まったのもここから。

ブロックヘッドの由来はエンジン主要部品が積み木(ブロック)の様に積まれているような形だから。でも日本ではブロックヘッドと呼ばずに単純にスポーツスターと呼ぶ人が多いですね。

エボリューションヘッドエンジン

というのも何を隠そうこのエンジン今のスポーツスターにも使われているやつだから。

油圧式タペット調整機構を備えたアルミブロックの完全新設計で信頼性も大幅に向上した傑作との呼び声高いエンジンです。

ちなみにこのエボリューションエンジンについて

ホンダとハーレー

「これはホンダと造ったエンジン」

とか

「ホンダがハーレーに技術提供した」

とか聞いたことある人も多いかと・・・これはハーレーが経営危機を迎えたことが背景にあります。

時代を少し遡ることになるのですが、先に話した通りハーレーは1950年代から英国勢と北米市場をかけてバチバチ火花を飛ばしてそれなりに善戦していました。

しかし1960年代になると今度はもっと恐ろしい日本勢が登場し、小排気量を中心に猛烈な勢いでアメリカ市場を食っていったんです。

その事に危機感を覚えたハーレーは1960年にアエルマッキというイタリアの小排気量バイクメーカーを買収し反撃に出るも上手く行かず経営は更に悪化。

ショートスター

これはその一つである『X-90』と呼ばれるモデル。

SportsterならぬShortsterという愛称を持っています。

小排気量の販売が何故失敗したのかというと

「ハーレー=ビッグバイク」

というブランドイメージを損なうとしてディーラーから猛反対して売らなかったから。結局アエルマッキは数年でカジバに売却されました。

そんなこんなで持ち直す事が出来ず弱っていったハーレーを当時盛んだった企業買収による乗っ取りから守るために1969年にアメリカの大手機械メーカーであるAMF(American Machine & foundry)が保護買収。

AMFハーレー

ここから約10年は

『AMF Harley-Davidson』

としてやっていく事になったわけです・・・がハーレーファミリーの間ではこのAMF時代を

「思い出したくもない暗黒時代」

とか言われています。

AMFハーレーダビッドソン

何故そう言われるのかというとAMFはハーレーの経営を立て直すためにリストラを始めとした事業の大幅なスリム化を行ったわけです。

すると優秀な人がどんどんハーレーから居なくなり品質ガタ落ちで故障が耐えなくなった。

というか組み立てすらまともに出来てないまま納車されるレベルで

「乗ってる時間より修理してる時間の方が長い」

とか

「車体価格以上の修理費が掛かる」

とか言われるほど本当に酷いものに。

『ハーレー=壊れる』

というイメージが強くあるのはこのAMF時代の影響が大きいんです。

そんなもんだからブランドは更に失墜。

その一方で小排気量のみだった日本メーカーがCBやZなどで遂に大型バイクでも快進撃を開始。

何度も言いますがハーレーは元々ハイスペックメーカーだったのでそんな中でもXLX-61のエンジンにXR750(ファクトリーマシン)のヘッドを装備したXR1000というホモロゲを出したりして対抗しました。

XR1000

そのおかげでBOTT(二気筒レース)やダートトラックでは戦績を上げたものの、一方で四気筒が相手となるデイトナなどでは分が悪く差は歴然だった。

そんな失態の連続もあって1973年には80%以上を誇っていた850ccオーバークラスのシェアも、1983年にはわずか23%とあまりにも無残な状況に。

さすがにこのままではマズいと創業者の孫を筆頭とした資本家グループが1981年にAMFから買い戻し。

ハーレー再建に打って出ました。

ハーレーの買い戻し

「何より急務は品質改善」

という事で、その際に頼ったのがホンダとされています。

V型エンジンのノウハウとサプライヤーとの関係、組立方式の指南などを指導してもらうことに。

そして登場したのがこのエボリューションエンジンで、シリンダーとヘッドの共締めやビッグツインと部品の共有化など日本車に近い作りになっていたことから

「これはホンダとの合作」

とか言われてるわけです。

ちなみに何処までホンダが噛んだのかは門外不出なのか資料が一切見当たらないので分かりません。

そんなエボリューションエンジンによる品質改善と同時に、幸運なのか根回しなのか当時の大統領だったレーガンが

ハーレー保護法

「700cc以上の輸入バイクの関税を6年間4.4%から49.4%に引き上げる」

というハーレー保護法と呼ばれる関税障壁を1983年から実施した事で業績は大きく改善。

これによりハーレーは復活を遂げたんですが・・・それだけでは終わらなかった。

80年代後半になると上記の理由から人気だった883によるワンメイクレースをAMA(アメリカのレース協会)が正式に開催。

これにより北米で883人気が爆発。

『パパサン』

という言葉と車種が日本国内で広く知れ渡る事になったのは発端はこれ。

その波に乗るように89年にハーレージャパン(日本法人)が設立されハーレーが身近なものとなった事でスポーツスターが更に飛ぶように売れました。一時期883ccにちなんで88万3000円で売られていた事を覚えている人も多いかと。

ミズーリ工場

この三段跳びの様な快進撃によりハーレーは業績改善どころか急成長となり、遂にはスポーツスターのために新たな工場まで建設。

北米650cc以上シェアも1999年には49.5%まで回復し、2000年には過去最高となる年間生産台数20万台を突破とイケイケ状態に。

XL883R

今のハーレーがあるのはこのエボリューションスポーツスターがあったからと言っても過言じゃないというわけです。

ちなみに2003年までのこのスポーツスターはリジットフレームな事から『リジスポ』と言われています。

ハーレーの見分け方ハーレーの見分け方
※ハーレーが分からない人向け
フラットヘッドスポーツスター1952年
フラットヘッド世代
ショベルヘッドスポーツスター1957年
ショベルヘッド世代
ブロックヘッドスポーツスター1986年
ブロックヘッド世代
ニューブロックヘッドスポーツスター2004年
ニューブロックヘッド世代
スポーツスターの全モデルスポーツスターの全モデル

ショベルヘッド世代 -since 1957-

1957XLスポーツスター

先に紹介したモデルKの後継で実質的なスポーツスターの始まりと言えるXL。

一番の変更点はヘッドカバーの形がショベルの形に似ていたことからショベルヘッドと呼ばれるOHVエンジンになった事。

ショベルヘッドエンジン

モデルチェンジの理由はもちろん先代から始まった英国勢に勝つためで、OHV化とショートストローク化で排気量はKHに習って883ccながら42馬力。

他のシリーズと違ってシリンダーとヘッドが鉄な事から『アイアンスポーツ』という俗称が有名ですね。

そんなXLですが手を緩めることなく発売の翌年である1958年には圧縮比を7.5から9まで上げたホットモデルXLHを発売。

ショベルヘッドXLH

更にレースのためのコンペティション(レース用)モデルであるXLHCモデルも同年に登場。

ショベルヘッドXLCH

このXHLCはレース用で保安部品が付いていなかったのですが、55馬力というハイスペックだった事から市場でも話題となり

「市販化(公道化)してくれ」

という要望が多く寄せられた事から市販化された歴史があります。

初期型XLCH

上の写真は初期型(~1962)のスクランブラータイプ。

アイアンスポーツはここからXLHとXLCHの二台体制でしばらく行くことになります。

大きく変わったのは約14年後の1972年でライバルに対抗するため1000cc化などが行われたんですが、そんな中で紹介しておきたいのが1977年に出たXLCRというモデル。

XLCR

これはハーレー界の神様と呼ばれているウィリーGというデザイナーが個人的に造った事が発端のカフェレーサー。

既存のKフレームではなく新作フレームでロングタンクとビキニカウルが特徴的。

日本で有名なZ1-Rと被る事からも分かる通りカフェレーサーブームに合わせたもの。

XLカフェレーサー

ハーレーとしては非常に珍しい純正カフェスタイルとして今では一部に絶大な人気があります・・・が、当時は本当に不人気でした。

後期で9本スポークホイールなどの改良も行われたんですが、それでも人気は全く出ずわずか2年ほどで生産終了。

このモデルのために造ったフレームは通称CRフレームとして生産終了の1979年から全スポスタに引き継ぐ形に。

しかしこのCRフレームも剛性面でお世辞にも出来が良いフレームと呼べるものではなかった為に1982年からは再び新作された30thフレーム(またはエボリューションフレーム)に変更。

XLS

形はそのままにガゼット(補強)を追加し剛性不足を解消したもので、こちらは出来が良く次世代まで使われることになります。

そんなショベルヘッド時代の最後を飾ったのは1983年に出たXLX-61。

XLX-61

圧縮比を上げられた専用エンジンを積んだスペシャルモデル。

AMF傘下から脱して初めて造られたモデルで非常に人気が出ました。AMFについては次のページにて。

ハーレーの見分け方ハーレーの見分け方
※ハーレーが分からない人向け
フラットヘッドスポーツスター1952年
フラットヘッド世代
ショベルヘッドスポーツスター1957年
ショベルヘッド世代
ブロックヘッドスポーツスター1986年
ブロックヘッド世代
ニューブロックヘッドスポーツスター2004年
ニューブロックヘッド世代
スポーツスターの全モデルスポーツスターの全モデル

フラットヘッド世代 -since 1952-

フラットヘッド

日本で非常に人気があり多くのハーレー乗りを生み出したであろうハーレーのスポーツスター。

先ページの繰り返しになりますが

「スポーツスターって何」

という所から話すとハーレーの中でもスポーツ志向のモデルの事でまず定義としては

『4カムである事』

が特徴です。

スポーツスターのカムの違い

乱暴な絵ですがエンジンの扉であるバルブを押す役目を持っているカムシャフトと呼ばれる棒が吸気と排気で一本ずつ付いているのが4カム。

言ってしまえばSOHCとDOHCの違いと同じなんですが、ハーレーはOHVといってバルブを動かす(押す)カムシャフトがエンジンの上ではなく下に付いているのが特徴。

スポーツスターのカムの場所

そしてもう一つは『ミッションが一体型になっている事』です。

この2つがスポーツスターの特徴なんですが、名前の通りスポーツ性を高めるために生まれたのが背景にあります。

じゃあそんなスポーツスターの始まりが何処にあるのかと言うと一般的には1952年の『K』が始まりと言われています。

モデルK -since1952-

モデルK

サイドバルブ方式の通称フラットヘッドと呼ばれるエンジンを積んだスポーツモデル。

このエンジン自体は1929年に造られた物がベースなんですが、何故フラットと呼ばれるのかと言うとサイドバルブと書いてあるように我々がよく知るバルブとピストンが向き合う形ではなく横に寄り添うように同じ向きに付いているから。

フラットヘッドエンジン

本当に絵が下手で申し訳ないんですがこんな感じで、カバーを外すとフラット(平面)だからフラットヘッド。

そしてもう一つの始まりであるミッション一体型なんですが、これはエンジンの剛性(ひいては車体剛性)を上げるのが狙い。

モデルKのチラシ

「なんでそんなに性能を上げる必要があるのか」

と今でこそ思いますが、当時のハーレーはどのメーカーよりも速いハイスペックメーカーだったんです。

だから性能を上げる改良を施すのも何の不思議でもない話で、日本の陸王がこのフラットヘッドエンジンをライセンス生産したのも一番高性能だったから。

1950年代のアメリカレース

そんな今では考えられないハーレーなんですが、実はこのモデルKは最初は出す予定じゃなかった。

従来どおりのWLシリーズというモデルを改良し発表したんですが

「これじゃ英国勢に勝てない」

という声が市場から殺到したんです。

というのも当時は終戦と同時にBSAやトライアンフなどのバーチカルツインが輸入されはじめ、性能面で引けを取るようになっていたんですね。

そこで創業者であるダビッドソン兄弟は自分たちで4カム化やミッション一体型などに改造していたモデルをテコ入れとして急遽市販化することに。

モデルK

それがこのモデルK。

フレームも専用のスイングアーム式になっている新作(通称Kフレーム)で30馬力を叩き出すマシン。これがスポーツスターの原型になります。

更に二年後の1954年にはストローク量を上げ750ccだった排気量を883ccにし、38馬力にまでパワーを上げたホットモデルであるKHを発売。

モデルKH

誰もが知っている『パパサン』の元祖モデルです。

パパサンというとファッショナブルなイメージが先行しますが、実はハーレーの中でも非常に歴史が長い排気量なんですね。

ちなみに「パパサン」と言われることを嫌う人も居るのでそこは留意しておく必要があります。

ハーレーの見分け方ハーレーの見分け方
※ハーレーが分からない人向け
フラットヘッドスポーツスター1952年
フラットヘッド世代
ショベルヘッドスポーツスター1957年
ショベルヘッド世代
ブロックヘッドスポーツスター1986年
ブロックヘッド世代
ニューブロックヘッドスポーツスター2004年
ニューブロックヘッド世代
スポーツスターの全モデルスポーツスターの全モデル

ハーレーの見分け方 ~車名の意味~

ハーレーの見分け方

スポーツスターの系譜を始める前に恥ずかしながら自身がそうなように

「そもそもどれが何かか分からない」

という人も少なからず居られると思うので最初に補足しておこうと思います。

ハーレーと言えば

『FLHC』 『XLCH』『FXWG』

などなどアルファベットが無造作に並んでいるようで、何を示しているのかサッパリ分からないですよね。

でも実はこれ理解できると日本車よりも分かりやすかったりします。

まず大前提としてハーレーは

・ビッグツインエンジン

・スポーツスターエンジン

この二種類のエンジンを使っています。※水冷を除く

そして謎のアルファベットですがもちろん意味があり、頭文字の二文字で三種類に分類する事が出来ます。

【頭文字がFL】

FLシリーズ

いわゆる典型的なハーレーらしいモデルというか歴史ある伝統モデル。

前後16インチのファットタイヤ(例外あり)や、シングルカム(現在はツインカム)な事からV字型に伸びてるプッシュロッドのビッグツインエンジンが特徴。

巨漢なやつは大概これでターミーネーターに登場したモデルもこのFL系。

【頭文字がXL】

XLシリーズ

この系譜の主役で『スポーティなやつ』という名前を持つSPORTSTER。

特徴はシリンダーに沿うように並行に4本伸びているプッシュロッドとミッション一体型となっている(右から見ると)長いクランクケース。

スポーツモデルという事で全体的にハーレーの中では軽量コンパクトで日本でも非常に馴染まれてるモデル。

 

【頭文字がFX】

FXシリーズ

最初に紹介した伝統のFLをベースにXLのフロントを突っ込んだ様なモデル。

FLと同じビッグツインエンジンながらフロントが19~21インチホイールになってるのが特徴。

ローライダーという誰しもが目にしたり耳にしたりした事があるやつもこのFX系。

物凄く大雑把ですがこれが感じの括り。

そしてそこから更にバリエーションのアルファベットが付きます。

【STまたはソフテイル】
サスを隠してリジット風にしたフレームの略称(※)

【Dまたはダイナ】
二本サス仕様フレームの略称(※)

※ビッグツイン特有のフレーム表記

【B】
ブラックやバッドボーイ(ワル)という意味

【C】
カスタムやクラシックという意味

【F】
ファットボーイ(太いタイヤ)という意味

【H】
ハイコンプレッション(高圧縮比)またはHOTの意味
またはハガースタイルという意味

【N】
ナイトスターという意味

【R】
ロードスターまたはレーサーの意味

【S】
スポーツという意味

【T】
ツアーまたはツーリングという意味

【L】
(車体やシート高が)ローという意味

などなどいった感じで例えば

『FXSTF』

となれば

『FXのソフティルのファットボーイ』

という感じ。

要するに

「FL・FX・XLの〇〇仕様です」

という事を表すアルファベットとなっているわけです。

まあ要するに頭文字二文字と違って後に続くアルファベットは例外なども多くあるので深く考えず見た目で判断してよろしいかと。

ハーレーの見分け方ハーレーの見分け方
※ハーレーが分からない人向け
フラットヘッドスポーツスター1952年
フラットヘッド世代
ショベルヘッドスポーツスター1957年
ショベルヘッド世代
ブロックヘッドスポーツスター1986年
ブロックヘッド世代
ニューブロックヘッドスポーツスター2004年
ニューブロックヘッド世代
スポーツスターの全モデルスポーツスターの全モデル

VMAX(2S3/2CE) -since 2008-

2008VMAX

「The Art of Engineering」

24年もの歳月を経て登場した二代目にあたるVMAXまたはVMX1700。

車体価格が先代の二倍以上となる税込2,367,000円となった事から分かるように、既存のバイクとは一線を画するスペシャルモデルへと生まれ変わりました。

2017年型VMAX1700

専用部品のオンパレードなのはもちろん、アルミだらけで可能な限り樹脂を使っていない。

更にフロントフェンダー等を見てもらえば分かる通り、組立工場からクレームが来るのも当然なほど細分化されたパーツ構成。

VMAX1700外装

前後フェンダーとタンクとサイドカウルだけでこれだけの部品数。

もうアルミ製プラモデルの域ですね。

アルミエアーダクト

更に更にVMAXのトレードマークであるエアダクトは本物のエアダクトとなり、アルミダイキャストで全て職人による手作業によるバフ掛け。

そして生産も完全受注生産、販売は定められた店のみでした。

VMAXインターカラー

さて・・・このVMAXはこう見えて初代が出る前から開発は始まっていたんです。

では何故24年もの歳月がかかってしまったというと簡単な話

”あーでもないこーでもない”

と何度も開発をやり直したから。

そのためVMAXには開発リーダーだけでも3人が歴任しており、開発に携わった人を全て含めると途方もない数で、正にヤマハが総出となって開発した様なかたち。

赤VMAX

具体的に何処をそんなにやり直したのかというと、代表的なのがVMAXの要であるエンジン。

VMAXは1679ccですが、一番初めは2000ccで開発が進んでいました。

しかしあまりに重くなり過ぎて軽快さが損なわれてしまうという事から開発をやり直し。次に作られたのが1800ccのエンジン。

音塊

「OTODAMA(音塊)」

というタイトルで2001年の東京モーターショーでもお披露目されています。

これで市販化まであと一歩という所まで来たのですが、諸事情によりプロジェクトが停滞した事と、ある技術革新が起こった事で状況が大きく変わりました。

音塊

「電子制御燃料噴射装置(通称FI)」

です。

コンパクト化&精密化出来るFIを採用しない手は無いとしてまた作り直し。

VMAX1700エンジン

これによりVMAXはエンジンの挟み角を更に狭い65°に”凝縮”する事が出来ました・・・が、コレでも終わらなかった。

このFI化で作り直したエンジンで順調に開発が進んでいたんですが、担当していたテストライダーが

「もう少しパワー(排気量)があった方が良くなるのでは」

と完成間近になって提言。

VMAX1700シート

普通ならば

「いまさら無理」

となる。

エンジンのパワーを上げるということはエンジンはもちろんフレームも足回りも再設計になるから聞けるわけがない。

しかし検討やテストの結果、そうした方が良くなるという事が分かり迷いなく再び開発のやり直し。

バンク角65°V型四気筒

この65°V型四気筒1679ccというエンジンはそんな三度のやり直しの末に完成した

まさに

「三度目の正直エンジン」

というわけ。

ただしこういった話はエンジンだけではなく、これまたアルミになったダイヤモンドフレームや足回りでもそう。

VMAX1700イギリス仕様

最初は倒立フロントフォークで進んでいたのに、ハンドリングが硬くなりすぎているとして見直され、規格外の太さを持つ専用の正立フロントフォークになった。

フロントフォークの正倒を変えるという事は、ステム周りの剛性が大きく変わってしまうのでフレームも三叉も当然ながら再設計。

細かい所で言えばタンクの上にある一見すると何の変哲も無いマルチメーターもそう。

VMAX1700有機ELメーター

これ2008年当時としては珍しかった有機ELディスプレイ。

最初は液晶で進んでいたんですが

「発光が液晶より良い」

という理由だけでここでも再設計が行われている。

VMAXマフラー

VMAXの凄い所というのは、見えないカプラーまでもが専用設計な事も、ボルト一本に至るまでデザインされている事も、樹脂がほとんど使われていない事もそうですが

この様に

「何も惜しまない開発をした事」

が一番凄い所なんです。

こんな事が当たり前のように四半世紀も続いたから開発メンバーも

「これ終わらないんじゃ・・・」

と本気で思うほどだった。

もちろんデザインも例外ではありません。

VMAX1700のデザイン案

「過去これほどスケッチしたバイクは無い」

と監修した一条さんや担当された梅本さんも漏らすほど、何十何百と練られた末のデザイン。

新型VMAXの噂が立っては消えていたのはこういった理由があったから。

ちなみにこのVMAXは先代とは違いアメリカがデザインコンセプトではありません。

VMAXコンセプトデザイン

力の象徴『金剛力士像』がデザインコンセプト・・・そうこのVMAXは”和”なんです。

洋から和になった理由、そしてここまで贅沢な開発プロジェクトが許された理由は、VMAXの総括プロデューサーだった牧野さんの信念にあります。

VMAXフェイス

「日本のバイクメーカーとして、ヤマハ発動機としての意地と技術を示したい」

という信念です。

時も金も手間も惜しまず開発を続ける事が出来たのは、社員一丸となってこの信念を貫いたから。

生産終了となった2017年までマイナーチェンジすら一切なかったのは、持ちうる全ての技術を出した妥協のないものだから。

ヤマハの至宝

そしてVMAXを『ヤマハの至宝』と言っていたのは

「自分たちの意地を形にした自慢のバイクだから」

主要諸元
全長/幅/高 2395/820/1190mm
シート高 775mm
車軸距離 1700mm
車体重量 311kg(装)
[310kg(装) ]
燃料消費率 16.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1679cc
最高出力 151ps/7500rpm
[200ps/9000rpm]
最高トルク 15.1kg-m/6000rpm
[17.0kg-m/6500rpm]
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前120/70-18(59V)
後200/50-18(76V)
バッテリー YTZ14S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
または
IU27D
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量5.9L
交換時4.3L
フィルター交換時4.7L
スプロケ
チェーン
車体価格 2,200,000円(税別)
※[]内はEU仕様
系譜図
Vmax1200 1985年
Vmax
(1FK~4C4)
1700 2008年
VMAX
(2S3/2CE)

Vmax1200(1FK~) -since 1985-

vmax1200

「スーパースプリント アメリカン」

対北米戦略車として造られたVmaxまたはVMX1200。

昔はV-MAXとハイフンが付いたりしていたのでハイフンがあったり大文字だったりしても間違いではないんだけど、一応いまはVmaxと小文字で書かれるように統一されているようです。

さて

「アメリカを造る」

という目標から始まったプロジェクトは、当時としては最高馬力となる145馬力を引き下げたドラッガーへとたどり着きました。

Vmax1200リア

まずこうなった経緯から説明すると、この頃のヤマハは日欧でこそ人気を獲得していたけど北米では今ひとつ波に乗れていない状態だった。

そんな中でUSヤマハからある提案がされました。

「V8のマッスルバイクを造れ」

という言っている意味がよく分からない提案。

しかしヤマハは郷に入っては郷に従えと、開発チームをアメリカに送り出した。

そこで目にしたものは若者から年配の人まで夢中になってドラッグレースを楽しんでいる姿だった。

Vmaxプロトタイプ

そういう事かと理解したヤマハは

「ゼロヨン10秒を切るバイク」

という目標を掲げ、当時最大排気量だったベンチャーロイヤルのV4エンジンをベースに145馬力という当時としては最高となる馬力を叩き出すエンジンを開発したというわけ。

VMAX1200エンジン

しかし見てもらうと分かる通り、VmaxのエンジンはVの挟み角が90°ではなく少し狭い70°になっている。

だから点火タイミングも180-270-470-720と、180°の直四とも、同じ180°クランクのV4とも、ハーレーなどに代表される45°Vツインとも違う独特なもの。

VMAX1200点火タイミング

何故70°なのかというと

・狭くして間延び感を抑え生きたサウンドを出したい

・でもキャブレターは4つ積みたい

という反比例する二つの狙いを両立させるために導き出した挟み角が70°だったから。

ただし90°でないため一次振動という大きな振動が発生する。だからVmaxはその振動を消すために馬力ロスとなる一次バランサーを採用しています。

つまり馬力を出すにはVmaxのエンジンは不利な形・・・にも関わらずVmaxが145馬力を叩き出せたのは、有名なコレのおかげ。

ブイブースト

「V-BOOST」

ですね。

V-BOOSTというのは一気筒に一つ付いているキャブの下にある混合気の通路インテークマニホールドの前後を連結(貫通)させて擬似的に一気筒デュアルキャブにする仕組み。

V-BOOSTの仕組み

簡単に表すとこんな感じで、6000rpmから徐々に開き、8500rpmで全開となります。

これはキャブレターが横並びな直四ではなく前後にあるV4だから可能となった仕組みであり、微塵もガソリンを惜しまないアメリカ向けらしい仕組みですね。ちなみに燃費は街乗りで10km/L前後。

そして合わせて必須となるのがW吸気でも枯渇しない大容量エアクリーナーボックス。

1986VMAX1200

そのためVmaxはタンク下が全面エアクリボックスとなっておりガソリンタンクはシート下。

これは低重心にするためでもあるんだけど、この関係でタンク容量はリザーブ込みで15Lしかない。

つまり10km/L×15Lで街乗りしていると満タンでも150km/Lしか走れないという割り切りっぷり。

ちなみ吸気はVmaxのトレードマークでもある大きなエアダクトから・・・と思いがちだけど実はこれダミーで、本当はこのダミー同士の間から普通に吸っていたりします。

VMAX1200サイド吸気口

ここで少し面白い小話をすると、このVブーストはフルパワーの逆輸入車のみに付けられた構造で、国内仕様には付いておらず95.2馬力しかなかった。

そのことから日本でも年を追うごとに(後にワイズギアからV-BOOSTキットが出たものの)逆輸入が人気となりました。

しかし逆輸入と一重にいってもVmaxだけで主に7つの仕様地があり馬力はバラバラ。

カナダ仕様145馬力
アメリカ仕様143馬力
カリフォルニア仕様135馬力
南アフリカ仕様135馬力
欧州仕様
※V-BOOST無
100馬力
日本仕様
※V-BOOST無
97馬力

他にもフランス仕様などもありますが、代表的な仕様地はこれくらい。つまり最高馬力のフルパワー仕様はカナダ仕様という事になる。

そのため

カナダ仕様

「カナダ仕様こそ真のVmax」

という認識が広まった。

ただし差があると言っても数馬力で、晩年には横並びとなったのに

「カナダ仕様こそ真のVmax」

という認識は生産終了まで覆る事はなくカナダ仕様だけが突出して人気でした。

どうしてここまで仕様地へのこだわりが生まれたのかと言えばもちろん

「怒涛の加速」

を最高の形で味わいたい人が多かったからでしょう。

VMX1200エンジンカタログ

発売当時フルスロットルに出来る人は誰も居ないんじゃないかと言われるほどでした。

「SSの方が速いんじゃないの」

と思う人が居るかもしれませんね。

たしかにタイムや実速度だけで見ると昨今のSSの方が速い。でも乗り比べてどちらが速く感じるかと言えば10人中10人がVmaxと答えるでしょう。

VMX1200ポジション

それはこの伏せようにも伏せられない体感的な速度やGを考慮していない低いポジション。

そこに合わせられる6000rpmからターボのようにドッカン加速するVブーストがあるから。

Vmaxは

「”乗る”ではなく”しがみ付く”バイク」

と言ったほうが正しい感じです。

VMX1200パンフレット

ただそんな狂気さにはもう一役買っている要素があります・・・それはヘロヘロなフレーム。

普通に走っていても剛性が足りていないのを感じ取れるほどヘロヘロだったから

「設計ミスじゃないのか」

とか

「リコールしろ」

とか言われる始末でした・・・が、これはワザとそうしているんです。

その狙いはコンセプトの一つにあります。

VMAX1200魔神

「何よりもエンジン」

というコンセプト。

「とにかくエンジンを、エンジンだけを感じ取って欲しい」

という思惑があり、それにはエンジンを受け止めるフレームの包容力は邪魔な存在。

だから可能な限り剛性を落とし存在感を消しているというわけ。

ただこれにはVmaxが歴史に名を残す事となったもう一つの理由、デザインにも関係しています。

Vmaxコンセプト

Vmaxは見て分かる通り

「アメリカの具現化」

がデザインコンセプトです。

そこで開発チームの一員でもあったGKデザインの一条さんは、アメリカでアメ車の代名詞であるV8エンジンの車を中古で購入。

そして乗り回しているうちに

「デカいエンジンに緩いボディで力任せに地面を蹴る愛おしい感覚こそアメリカ」

という事に気付かされた。

VMX12

Vmaxのフレームが弱い理由はここにも繋がっているというわけ。

ちなみにVmaxを手掛ける上で一条さんが大事にしたのは

「マイナスのデザイン」

という考え。

VMX1200ファイナルモデル

Vmaxというと”マッチョ”という言葉がピッタリなんですが、よく見てみるとシート回りやエキゾーストなど絞る所は徹底的に絞ってある。

これが

「膨らみを持たせる程、膨らんでいないマイナスの部分が際立つ」

というマイナスのデザイン。

センスの次元が違いすぎて今ひとつピンと来ない人も多いと思います。

しかしそんな人も一条さんがVmaxのデザインで強く影響されていると言った物を見れば、その意味が分かります。

そしてその強く影響されている物も、これまた実にアメリカらしい物。

F102

米空軍の戦闘機F102です。

言われてみれば確かにボディ後部のクビレと前方にあるエアダクトなどVmaxと通ずる所がありますね。

ちなみに一条さんは根っからの飛行機好き。

言い忘れていましたが、タイトルに型式を書いていないのは物凄い数になるからで・・・モデルチェンジの略歴を含め箇条書きで書いていこうと思います。

初期型 1985~1986

1985年式

フロント5本スポークホイール。

カナダ仕様:1GR/1VM

アメリカ仕様:1FK/1UT

カリフォルニア仕様:1JH/1UR

二型 1987~1989

1987年式

フロントのディッシュホイール化。

カナダ仕様:2LT/3JP3

アメリカ仕様:2WE/3JP1

カリフォルニア仕様:2WF/3JP2

三型 1990~1992

1990年式

デジタル進角&吸排気見直し

カナダ仕様:欠番

アメリカ仕様:3JP-4/7/9

カリフォルニア仕様:3JP-5/8/A

日本仕様:3UF-1/2

四型 1993~1994

1994年式

フロントフォーク大径化&ディスクローターの大径化&4POTキャリパー化など。

カナダ仕様:3JP-B/E

アメリカ仕様:3JP-C/F

カリフォルニア仕様:3JP-D/G

日本仕様:3UF3/4

五型 1995~2002

1996年式

レギュレーター・クランクケース変更&カートリッジ式オイルフィルターへ変更

翌96年にはドライブシャフト周りが見直されカナダが140馬力に、アメリカ仕様が135馬力にダウン。

カナダ仕様:3JP-J/K/L/R/U/|5GK-1/4/7/B

アメリカ仕様:3JP-H/M/S/V/X|5GK-2/5/9

カリフォルニア仕様:3JP-J/N/T/W/Y|5GK-3/6/A

日本仕様:3UF-5/6 ※1998年モデルをもって廃止

最終型 2003~2007

最終型

点火方式をデジタル化とサスペンションのリセッティング。

カナダ仕様140馬力(最終年度135馬力)、アメリカ仕様&南アフリカ仕様135馬力

カナダ仕様:5GK-E/N/T/Y|4C4-5

アメリカ仕様:5GK-C/L/R/W|4C4-3

南アフリカ仕様:5GK-G/H/P/U/V|4C4-1/2

となっています。

オーナー間では通称型式ではわかりにくいので、認定型式で区別するのが広まっているようですね。

補足:車名に続く記号(型式)について~認定型式と通称型式~

最後に

改めてVmaxを振り返ってみると、最後の最後まで変わらずとも色褪せなかった名車ですね。

歴代VMAX1200

何がそんなに人を惹きつけたのかと言えばデザインと、そのデザインに負けない

「怒涛の加速」

でしょう。

この怒涛の加速が一体どんなものなのかというのは実は簡単に説明できるんですよ・・・なぜならVmaxに乗ったことがない人も怒涛の加速を知ってるから。

VMAX1200ポスター

それは初めてバイクに乗ってアクセルを捻った時です。

首がモゲると思ったその感覚、ウィリーして吹っ飛ぶと思ったその感覚。

ブイマックス1200カタログ写真

Vmaxはそんな懐かしい感覚を思い出させてくれる怒涛の加速を持ったドラッガー。

病み付きになる人が多いのも納得でしょう。

主要諸元
全長/幅/高 2300/795/1160mm
シート高 765mm
車軸距離 1590mm
車体重量 283kg(装)
燃料消費率
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1197cc
最高出力 145ps/9000rpm
最高トルク 12.4kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前110/90-18(61V)
後150/90-15(74V)
バッテリー YB16AL-A2
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR8EA-9
または
X24EPR-U9
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.7L
交換時3.5L
フィルター交換時3.8L
スプロケ
チェーン
車体価格 890,000円(税別)
※スペックはフルパワー仕様
※価格は90年国内仕様
系譜図
Vmax1200 1985年
Vmax
(1FK~4C4)
1700 2008年
VMAX
(2S3/2CE)

BOLT/R(BP6/BS5)-since 2017-

2018BOLT

「LESS IS MORE.」

2017年からのBOLT/BP6型とBOLT-R/BS5型。Cは廃盤みたいですね。

規制に伴いABSが標準化されたほか無印の方はスポークホイールに変更。

スポークホイールBOLT

そして先に紹介したSCR950と同じく溶接処理が目立たないフランジレスタンクの採用に伴い燃料容量も1Lアップして13Lとなりました。

さてさて、大きな変更点もなく既に苦しいのでまた長々と無駄話を・・・

青BOLT

実はBOLTには多くのリクエストを頂いていたんですが、クルーザーに明るくないので後回しにしていました。

では何故ここに来て書いたのかというとハーレー系ショップの方からいろいろと話を伺った事がキッカケ。

というのもBOLTについて少しお話を伺った所、大変失礼ながら一蹴させるのかと思ったら意外な事に評価が高かった。しかもそれは普段ハーレーに乗っている顧客の間でも。

ちなみにアメリカのYoutubeなどの比較動画コメント枠などを見ても似たような感じで意外と肯定的だったります。

BOLT LESS IS MORE

では一体どうしてクルーザー通の間でBOLTがそんなに高い評価を獲得しているのかという話なんですが、これがまた面白くて

「比較的安価でノントラブルだから」

とか

「デザインが良いから」

とかいう評価かと思いきやそうじゃなかった。

BOLTが好評を得た最大の要因は

ボルトのハンドリング

「ハンドリングが素晴らしい」

という事から。

もちろんこれは偶然ではなく開発においてデザインと共に徹底して追求されたもの。

初代のページでデザイン面しか話していませんでしたが、BOLTはフロントフォークを立ててブラケットとトップブリッジを何度も何度も作り直して剛性を最適化。

BOLTのフロント

更にアンダーステアやリアブレーキ主体などリアヘビーな事から後輪中心にならざるを得ないクルーザーながら、マスフォアードにしてフロントブレーキを積極的かつ有効的に使えるようにしてある。

ウェーブディスクなのはそれを示す狙いから。

XVS950CU

BOLTはこれらによりクルーザーながら非常に素直でメリハリあるハンドリングをしています。

これがクルーザー慣れした人にとって非常に好評というわけ・・・なんですが、恐らくこれだけでは言葉足らず。

BOLTは素晴らしいハンドリングを持っている事に加えて先代でも話した

・20km/L以上という低燃費性

・ノントラブルで遠出も怖くない

・不安を生まないスリムな車体

・モリモリな力強いエンジン

・スポーティなポジションと深いバンク角

という武器を持っている。

そしてこの一つ一つが一つ一つだけのメリットではなく、素晴らしいハンドリングというメリットと掛け合わされる事で

FASTER SONS BOLT

「走るのが楽しい」

という大きな魅力を生んでいる。

これがBOLTの最大の武器であり、高い評価を獲得している理由ではないかと。

だから最後に一つ個人的な事を言わせてもらうと、BOLTはクルーザーが好きじゃない人こそ乗ってみて欲しいと思います。

2018ボルト

「バガーとかミッドコンとか知らないし、アメリカンでスポーツとか罰ゲームでしょ」

なんて思ってる人こそ乗ってみて欲しいんです。

というのも大達リーダーいわくこのBOLTのハンドリングはクルーザーではなくネイキッドに近い。それが高評価に繋がっているんですが・・・ということはネイキッドは乗り慣れてるけどクルーザーは乗り慣れていない人がBOLTに乗ったらどうでしょう。

2019BOLT-R

ピストンがいまどう動いているか感じ取れてアイドリングまでもが楽しくなる鼓動感と、低域だろうと坂道だろうとゴリゴリ進む豊かなパワー。

そして両足ベッタリで乗れてる自分になれるポジション。

ヤマハ ボルト

ネイキッドの延長線上として何の戸惑いも違和感もなく、クルーザースタイルだからこそ出せる旨味を堪能できるという事でもある。

主要諸元
全長/幅/高 2290/830/1120mm
シート高 690mm
車軸距離 2570mm
車体重量 252kg(装)
燃料消費率 21.2km/L
※WMTCモード値
燃料容量 13.0L
エンジン 空冷4サイクルSOHC2気筒
総排気量 941cc
最高出力 54.0ps/5500rpm
最高トルク 8.2kg-m/3000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前100/90B19(57H)
後150/80B16(71H)
バッテリー YTZ14S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR7EA-9
推奨オイル ヤマルーブプレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.3L
交換時3.7L
フィルター交換時4.0L
スプロケ 前30|後70
Vベルト品番 1TP-46241-10
車体価格 961,200円(税込)
[1,006,560円(税込)]
※[]内はBOLT RスペックABS
系譜図
XVS9502009年
XVS950A
(26P/5S7)
ボルト2013年
BOLT/A/C/R
(1TP/2CY/2DX/B33)
SCR9502017年
SCR950
(BL3)
20192017年
BOLT/R
(BP6/BS5)

SCR950(BL3)-since 2017-

SCR950

「Tough Explorer」

BOLTのスクランブラースタイルとなるSCR950/BL3型。

・22.2mm径のクロスバー付きパイプハンドル

・ポジションの幅を広げる薄型ロングフラットシート

・専用リアフレーム

・フランジレスタンク

・ゼッケンプレート

・アルミリムスポークホイール

・ヘビーデューティータイヤ

・専用セッティングされたサス

などなどのカスタマイズが加わっています。

SCR950フューチャー

クルーザーベースのスクランブラーという珍しいスタイルなんですが・・・モリモリパワーなうえに車重が252kgもある事や最低地上高やホイールトラベルやクリアランスなどから

「スクランブラーじゃないだろ」

なんて声が結構聞かれました・・・世界中で。

アメリカトラックレース

ただアメリカではAFT(旧名GNC)という

『ダート版オートレース』

という大人気レースがあり日本メーカーも単気筒450cc部門などで参戦しています。

だからアメリカ人からするとSCR950はそこまで違和感がないのかも知れない。

SCR950アメリカ仕様

実際アメリカでは

『米ヤマハ×米メディア×有名ビルダー』

の協力でSCR950のトラックレーサーを製作しスーパーフーリガンというお祭りダートレースに参戦してたようですし。

SCR950スーパーフーリガン

SCR950が小さく見える・・・まあただこれはアメリカなので話を日本に戻すと、SCR950はやはり大きいのでプロモーションビデオみたいにダートをスタイリッシュに走るのは相当なテクニックがないと無理。

「ではSCR950の魅力は何処か」

と聞かれればBOLTの派生モデルらしく乗ってる姿が最高にキマっている事でしょう。

SCR950カタログ写真

というか別にスクランブラースタイルだからってダートや林道を走らなきゃいけないわけじゃないんですよ。

そもそもスクランブラーっていうのはオフロードバイクという正解がまだ存在しなかった60年代に(レースや公道などの)未舗装路を何とか走れるようにオンロードバイクを改造したのが始まり。

SCR950カタログ写真

だからもっと走れるモトクロッサーやオフロード車の誕生と共にスクランブラーは廃れていった。

つまり何が言いたいのかというと、今となってはスクランブラーはファッション性の意味合いが強いジャンルなんです。

ということはスクランブラーの正解は走破性よりも

「お洒落かどうか」

が重要なわけで、そう捉えて改めてSCR950を見てみれば大正解のスクランブラーと言えるでしょう。これだけキマってるんですから。

SCR950カタログ写真

昔を知る人なら250DTを思い出す人も多いかと。

車格の問題からか残念ながら人気も出ず僅か二年ほどで生産終了となってしまったんですが、これは逆に言うと新しくてノントラブルで乗れるお洒落な国産車であるにも関わらず

「カスタムせずとも他人と被らない」

というファッション性においてある意味では最も重要な要件を満たしているという事でもある。

主要諸元
全長/幅/高 2255/895/1170mm
シート高 830mm
車軸距離 1575mm
車体重量 252kg(装)
燃料消費率 21.2km/L
※WMTCモード値
燃料容量 13.0L
エンジン 空冷4サイクルSOHC2気筒
総排気量 941cc
最高出力 54.0ps/5500rpm
最高トルク 8.2kg-m/3000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前100/90R19(57H)
後140/80R17(69H)
バッテリー YTZ14S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR7EA-9
推奨オイル ヤマルーブプレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.3L
交換時3.7L
フィルター交換時4.0L
スプロケ 前30|後70
Vベルト品番 1TP-46241-10
車体価格 1,060,560円(税込)
系譜図
XVS9502009年
XVS950A
(26P/5S7)
ボルト2013年
BOLT/A/C/R
(1TP/2CY/2DX/B33)
SCR9502017年
SCR950
(BL3)
20192017年
BOLT/R
(BP6/BS5)

BOLT/A/C/R(1TP/2CY/2DX/B33)-since 2013-

XVS950CU

「Ultimate Purely Bobber」

2013年に登場したヤマハの新世代クルーザーことBOLT/1TP(初年度のみ)/2CY型と写真下のBOLT-R/2DX型。

BOLT-R

Rスペックの方は

・リザーブタンク付きリアサス

・バックスキン調黒表皮シート

・切削ホイール

が追加されてたスポーツモデルです。

更に2015年からはBOLT-C/B33型も登場。

BOLT-C

・アルミクリップオンハンドル

・バックステップ

・Rより6mm長い前後サス

・新デザインシート

・Vバンクカバー

・フォークブーツ

などの変更で少しリフトアップされたカフェレーサーモデル。

さてさて、XVS950CUという正式名称からも分かる通り

赤BOLT

『XVS950Aのボバー(余計な物を極力付けない)スタイル』

と言えるわけですが、それだけで片付けてしまうとBOLTにも開発者の方にも失礼なので長々と紹介。

エンジンベースこそXVS950Aと変わらないもののそれ以外の部分はほぼ別物になっています。

XVS950AとXVS950CU

見た目からも分かる通りXVS950Aが落ち着きあるレディのような特性なのに対しBOLTは元気モリモリな野郎という感じ。

そんなBOLTのイメージコンセプトは

「シンプルでありピュアでありクリーンであること」

なんですが、これが面白い事に従来の方式とはちょっと違う方法で開発された背景があります。

ボルトのコンセプトデザイン

通常コンセプト(企画)に沿ってデザイナーが全体のディティールを決めてそれに向かって車体各部の開発者と擦り合わせて開発するんですがBOLTはそうじゃなかった。

車体各部の開発者がコンセプトを自己解釈した形から始まってるんです。要するにデザインありきではなく皆でイメージコンセプトを擦り合わせて生まれたディティールが

「スリム&コンパクトなBOLT」

というわけ。

リアビュー

だからこそ

・タンクを細くするための小型燃料ポンプ

・リア周りを細くするために21mm幅のスリムなVベルト

・低さと性能と造形を兼ね備えたリアサス

など各所に各々のこだわりが専用開発という形で見え隠れしているわけですね。

Cスペック

「そもそもなんでスリム&コンパクトに拘ったのか」

という話ですが、これがまたよく考えられています。

スリム&コンパクトになったのは理由は主に二つで、一つはピュアである事をアピールするため。

ヤマハXVS950CU

ピュアということは即ち乗りやすいという事。それを視覚でもアピールする為にスリムでコンパクトにしたんです。

BOLTを見ても乗りにくそうに見えませんよね。でも一方でハミ出したエンジンは迫力があってパワフルに見える。

この

「見ただけBOLTがどんなバイクか理解してもらう」

というのが狙い。そしてその印象は乗り出しても決して変わらない。

もう一つの狙い・・・個人的にはこれがBOLTデザインの一番の唸りポイント。

ヤマハBOLT

何度も言いますがBOLTはスリムなのでクルーザーにありがちな

「シート高は低いんだけど幅があるから足つきが悪い」

というクルーザー特有の悩みがなく数値以上に足つきはベッタリ。

身長170cmでこれだけ膝が曲がる。

BOLTのポジション

信号待ちでバレリーナにならないし、よろつかないし、おっかなびっくりにならない。

日本人でも足を踵までドッシリ付けて構える様に停まることが出来る。

ボルトの足つき

そして青になって走り出すとコンパクトでミッドコントロール(足を前ではなく下に曲げるスタイル)な事から手足が伸び切らず、気持ち前傾のスポーティなポジションに自然となる。

乗車デザイン

これらがBOLTデザインの唸りポイント。

BOLTがスリム&コンパクトに拘ったのは

「バイクを転がしてる」

という表現がピッタリな『乗っている』ではなく『走らせている』というシルエットを持たせる為にあるんです。

つまりBOLTが一番カッコよく見えるシーンは

boltのライディング

「自分が運転している時」

という事。

自分も含めて最高にカッコよく魅せてくれるというのがBOLTデザインの最大の唸りポイントなんです。

主要諸元
全長/幅/高 2290/830/1120mm
シート高 690mm
車軸距離 1570mm
車体重量 247kg(装)
[251kg(装)]
燃料消費率 21.5km/L
※WMTCモード値
燃料容量 12.0L
エンジン 空冷4サイクルSOHC2気筒
総排気量 941cc
最高出力 52.0ps/5500rpm
最高トルク 8.2kg-m/3000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57H)
後150/80B16(71H)
バッテリー YTZ14S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR7EA-9
推奨オイル ヤマルーブプレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.3L
交換時3.7L
フィルター交換時4.0L
スプロケ 前30|後70
Vベルト品番 1TP-46241-00
車体価格

874,650円(税込)
{918,750円(税込)}
<977,400円(税込)>
※[]内ABSモデルは+50,000円
※{}内はBOLT-R
※<>内はBOLT-C

系譜図
XVS9502009年
XVS950A
(26P/5S7)
ボルト2013年
BOLT/A/C/R
(1TP/2CY/2DX/B33)
SCR9502017年
SCR950
(BL3)
20192017年
BOLT/R
(BP6/BS5)
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