1400GTR(ZG1400A/B) -since2008-

1400GTR

「TRANSCONTINENTAL SUPERSPORT」

ZX-12RとZZR1200の一本化をしたかと思ったら出てきた1400GTR。ZX-14Rと分けようか迷ったのですが合わせて紹介しないと多分誰も読まないのでここに。

言ってしまえばZZR1400から更に中低速域におけるパワーの厚みを増したツアラー特化のようなモデル・・・なんだけど、まあこれが大人しい見た目に反して結構意欲的な造りをしてたりするので興味のない人も少しお付き合いを。

一応紹介しておかないといけないのですが1400GTRにもご先祖様が居ます。

コンコース1000

それは1986年にGPZ1000RXのツアラーバージョンとして出た1000GTR。

CONCOURS(コンコース)という名前は北米名。日本や欧州では1000GTR。この流れは今も変わらず、この1400GTRも北米ではCONCOURS14(ZG1400B)という名前。

上のカタログ写真を見ると、見るからに古いバイク感がありますが実はこれ最終にあたる2004年モデル。86年から大きく形を変えることなく続いたモデルだったりします。

そんな1000GTRの後継として3年ぶりに登場した1400GTRですが、ZZR1400と違う所として先ず挙げられるのが可変バルブタイミング機構を備えてる事。

1400GTR可変バルブタイミング

油圧によって吸気バルブのタイミングを変更する機能の事で、低回転時には速く、高回転時には遅く閉じるようになっています。車では非常にメジャーなので知ってる人も多いと思います。

なんで吸気のタイミングを変えた方がいいのか簡単に説明すると、回転数の高さというのはピストンスピードでもあるわけです。つまりピストンスピードの速さ・強さで負圧(空気を吸う力)も変わってくる。

そして一番効率(体積効率)を良く吸える開口時間(吸気バルブタイミング)というのはその吸う力によって違う。吸う力が弱い低回転でいつまでも空いていたら漏れるし、吸う力が強いのにすぐ閉まっちゃったら全然吸えない。

だから低回転と高回転でバルブタイミングを変えようとなって出来たのが可変バルブタイミング。どっかでも説明したかな。

1400GTR

1400GTRが可変バルブタイミングを取り入れた理由はボア・ストローク比をZZR1400から変える事なく中低速に厚みを持たせるためでしょうね。圧縮比も落とされて厚みを持たせるだけでなくマイルドな出力特性になっています。

そしてもう一つ。どちらかというとコチラの方が1400GTRを最も表す部分かな。

1400GTR

1400GTRはシャフトドライブ駆動なんだけど、シャフトドライブなのにテトラレバーリヤサスペンションといって両持ちでリンクロッドが4本も伸びてる凄い形をしてる。

これはシャフトドライブの宿命である加減速時に起こる反トルクから来るサスペンションの上下運動を可能な限り抑えるため。BMWのパラレバーが有名ですね。

1400GTR

シャフトドライブのスーパースポーツが少ないのはこの反トルクによる挙動のブレがあるからなんですが、カワサキはそんな反トルク対策のロッドを4本も付けてシャフトドライブ特有の挙動を徹底的に消し、チェーン駆動と変わらない挙動にしているわけです。だからリアアーム周りがシャフトドライブにあるまじきマッチョさを持ってる。

初代1400GTR

GTではなくGTRとしているのは、メンテンスフリーなシャフトドライブ駆動ながらも、時にはチェーン駆動であるZZR1400の様にスポーツ走行も出来る特性を持たせたからでしょう。

2009CONCOURS14カタログ写真

もちろんキーレス、パニアケース、DC電源ソケット、電動スクリーン、空気圧メーターといったグランドツアラーとしての装備はちゃんと備えられてますけどね。

主要諸元
全長/幅/高 2170/760/1170mm
シート高 815mm
車軸距離 1460mm
車体重量 220kg(乾)
[224kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 22.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1352cc
最高出力 150ps/8800rpm
最高トルク 13.9kg-m/6200rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー FTZ14-BS
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4/T4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量4.7L
交換時4.0L
フィルター交換時4.4L
スプロケ
チェーン
車体価格
※スペックはマレーシア仕様
※[]内はABSモデル(ZG1400B)
系譜図
gpz900r 1984年
GPZ900R
(ZX900A)
gpz1000rx 1986年
GPZ1000RX
(ZX1000A)
zx-10 1988年
ZX-10
(ZX1000B)
zzr1100 1990年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100C)
zzr1100 1993年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100D)
ZX-12R 2000年
ZX-12R
(ZX1200A/B)
zzr1200 2002年
ZZR1200
(ZX1200C)
zzr1400 2006年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400A/B)
1400GTR ZG1400A 2008年
1400GTR
CONCOURS14
(ZG1400A/B)
zx-14 2008年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400C/D)
ZG1400C/E 2010年
1400GTR ABS
CONCOURS14
(ZG1400C/D/E)
ZX-14R 2012年
ZX-14R
(ZX1400E)

ZZR1400(ZX1400C/D) -since2008-

ZX1400C

規制強化に伴いマイナーチェンジされたC型とD(ABS)型。

外見上の変更ほぼ無いものの、EURO3規制に対応するためにエンジンに手が入りました。

O2センサー(欧州仕様)の追加、キャタライザーの増設などで排ガス規制をクリア。凄いのは規制に対応させただけじゃなくて吸気ポートやピストンやインジェクターの改良で従来モデルよりも3psアップしてること。

しかも単に馬力を上げただけでなく出力特性をマイルドにし、中低速域を更に改善しています。その分お値段と車重がちょっと上がっちゃったけどね。

ZZR1400/ZX-14はフラッグシップモデルとして2011年まで5年間ほど販売されていた事もあって多彩なカラーリング設定がありました。

ZZR1400C

上の写真はその一例である2009年SEカラーなんですが、ZZR1400のカラーリングでちょっと意外だったのがライムグリーンが出たこと。

カワサキと言えば誰もがライムグリーンを思い浮かべると思うのですが、ZZR1400で正規逆輸入車(アジア仕様 ※実質日本向け)でライムグリーンの設定があったのは最終年度となる2011年モデルだけ。

ZZR1400C

というか実は歴代ZZRでライムグリーンの設定は(記憶が確かなら)一度も無かった。カワサキとしてはZZRとZ・Ninjaは違うという意志表示だったのかもしれないですね。

それが最後の最後でどういう心境の変化があったのか分かりませんがライムグリーンのZZRが出たというわけです。後継がNinjaになったのもそういう事なんでしょう。

主要諸元
全長/幅/高 2170/760/1170mm
シート高 800mm
車軸距離 1460mm
車体重量 220kg(乾)
[224kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 22.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1352cc
最高出力 190ps/9000rpm
最高トルク 15.7kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー FTZ14-BS
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4/T4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量4.5L
交換時3.7L
フィルター交換時4.1L
スプロケ 前17|後41
チェーン サイズ530|リンク116
車体価格 1,420,000円(税別)
[1,480,000円(税別)]
※スペックはマレーシア仕様
※[]内はABSモデル(ZX1400D)
系譜図
gpz900r 1984年
GPZ900R
(ZX900A)
gpz1000rx 1986年
GPZ1000RX
(ZX1000A)
zx-10 1988年
ZX-10
(ZX1000B)
zzr1100 1990年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100C)
zzr1100 1993年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100D)
ZX-12R 2000年
ZX-12R
(ZX1200A/B)
zzr1200 2002年
ZZR1200
(ZX1200C)
zzr1400 2006年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400A/B)
1400GTR ZG1400A 2008年
1400GTR
CONCOURS14
(ZG1400A/B)
zx-14 2008年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400C/D)
ZG1400C/E 2010年
1400GTR ABS
CONCOURS14
(ZG1400C/D/E)
ZX-14R 2012年
ZX-14R
(ZX1400E)

ZZR1400(ZX1400A/B)-since2006-

ZZR1400

「FLAGSHIP MEGA SPORTS」

再び一本化して登場したZZR1400のA型とABS付きのB型。

バックボーン式モノコックフレームなのを見ると分かる通りどちらかといえばZX-12R色が強くなっています。

ZZR1400カウルレス

エンジンもZX-12Rの物をベースに排気量を153ccも上げた物ですが、ロングストローク化やスロットルボディの小径化などZZR1200が持っていた低域での扱いやすさも重視した改良内容。

それでも車重は12Rとほぼ同等という見た目からは想像が付かない軽さを持っています。

ZZR1400質実剛健

しかし改めて見ると本当に面白いフレームですよね。

エアクリーナーボックス兼バッテリー兼フレームで、サブフレーム(シートフレーム)もありえないほど下の方から伸びている。

06zzr1400

これのおかげでシート高も12Rから10mm下がって800mmになっています。

でも一番話題になったのはやっぱりミラーに写ると思わず道を譲りたくなってしまうインパクトのある顔。

zx14face

デザインされたのはマツダの初代ロードスターなどを担当された田中俊治さんなんですが、とにかく一度見たら忘れられない魑魅魍魎さを出すことがコンセプトだったそう。

ZZR1400コンセプトスケッチ

それまで培ってきた自動車デザインよりも面白いと言い切っちゃってる辺りZZR1400のデザインは相当刺激的でエキサイトメントだったんでしょうね。

ZZR1400金剛力士

もちろんベースとなっているのは徹底的に追い求めたエアロダイナミクスによるもの。

1352ccで乾燥重量215kgで190馬力

全域最速パワーと一度見たら忘れない顔。ただそれだけでなく扱いやすさも兼ね備えていた事から非常に人気となりました。

zzr1400/zx1400a

最強ZZR1200と最速ZX-12Rを一本化した事で最強最速となったわけですね。

主要諸元
全長/幅/高 2170/760/1170mm
シート高 800mm
車軸距離 1460mm
車体重量 215kg(乾)
[218kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 22.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1352cc
最高出力 180ps/9000rpm
最高トルク 15.0kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー FTZ14-BS
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4/T4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量4.5L
交換時3.7L
フィルター交換時4.1L
スプロケ 前17|後41
チェーン サイズ530|リンク116
車体価格 1,600,000円(税別)
※スペックはマレーシア仕様
※[]内はABSモデル(ZX1400B)
系譜図
gpz900r 1984年
GPZ900R
(ZX900A)
gpz1000rx 1986年
GPZ1000RX
(ZX1000A)
zx-10 1988年
ZX-10
(ZX1000B)
zzr1100 1990年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100C)
zzr1100 1993年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100D)
ZX-12R 2000年
ZX-12R
(ZX1200A/B)
zzr1200 2002年
ZZR1200
(ZX1200C)
zzr1400 2006年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400A/B)
1400GTR ZG1400A 2008年
1400GTR
CONCOURS14
(ZG1400A/B)
zx-14 2008年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400C/D)
ZG1400C/E 2010年
1400GTR ABS
CONCOURS14
(ZG1400C/D/E)
ZX-14R 2012年
ZX-14R
(ZX1400E)

ZZR1200(ZX1200C)-since2002-

ZZR1200

「(Super)Sport Tourer」

ZZR1100の後継車として開発されたZZR1200のZX1200C型。

先に紹介したZX-12Rと併売する形で登場しました。

ZZR1200カタログ写真

メルセデスの提灯ヘッドライトを参考にしたと言われるライト形状などからも分かる通り、高級感を出したグランドサルーンのようなメガスポーツ。

アルミツインスパーフレームにZZR1100から改良スケールアップされ続けた伝統のGPZエンジンを搭載というZZR1100の後継らしい王道な造り。

ZZR1200ディメンション

立ち位置としてもSSライクなZX-12Rとは違いツアラー要素にウェイトを置いてある・・・わけですが、フラッグシップモデルそれもフレームからエンジンから全く違うモデルを二つも用意するというのは普通なら有り得ない話。

ZX-12RとZZR1200

なんでこうなったのかって話なんですが

公式では

「最速は12Rに任せて、ZZR1200は最強を目指した」

という見解でした。

一方で市場では

「12Rが尖りすぎていたから」

と言われているんですが、これ恐らく社内で意見が二分化したからじゃないかと思うんです。

そう思う根拠は二つあります。

カワサキZX1200C

一つはZX-12Rの企画担当だった谷さんがBSのインタビューでZX-12Rの開発で一番大変だった事を聞かれた際に

「社内にいるZZR信者の説得(原文ママ)」

と漏らした事。

そしてもう一つはZX-12Rが

『ZZRの上位版(次世代版)』

というコンセプトで開発が始まったにも関わらずZZRとは名乗らなかった事。

これらから推測するに、鋭利化するZX-12Rに納得いかない人達が多く居たからツアラーの様なZZR1200が造られたのではないかと。

ZX1200Cカタログ

というのもZZR1100が素晴らしかったのは最高速だけでなくワインディングも長距離も何でも熟せるスーパースポーツだったから。

つまり『ZZRの素晴らしい所』というのは人によって様々あり、それはカワサキの中の人達にとっても同様だった。

だからこそZZR1100の”速さ”を研ぎ澄ませたZX-12Rというこれから先(既定路線)を担うフラッグシップが生まれた一方で、ZZR1100の”万能さ”を研ぎ澄ませたZZR1200という別のZZRが後継は造らないと言っていたにも関わらず登場した。

ZX1200Cパンフ

ZZR1200カタログブックのインタビューで

「最速ZX-12R、最強ZZR1200」

と仰った言葉の真意はここにあるのではないかと。

何にせよ

2002年ZZR1200

「カワサキの人達にとってZZRは特別」

という事ですね。

主要諸元
全長/幅/高 2160/755/1245mm
シート高 800mm
車軸距離 1505mm
車体重量 236kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 23.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1164cc
最高出力 155ps/9800rpm
最高トルク 13.0kg-m/8200rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTX14-BS
プラグ CR9E
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4/T4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量4.2L
交換時3.3L
フィルター交換時3.6L
スプロケ 前17|後44
チェーン サイズ530|リンク112
車体価格 1,150,000円(税別)
※B型はマレーシア仕様
系譜図
gpz900r 1984年
GPZ900R
(ZX900A)
gpz1000rx 1986年
GPZ1000RX
(ZX1000A)
zx-10 1988年
ZX-10
(ZX1000B)
zzr1100 1990年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100C)
zzr1100 1993年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100D)
ZX-12R 2000年
ZX-12R
(ZX1200A/B)
zzr1200 2002年
ZZR1200
(ZX1200C)
zzr1400 2006年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400A/B)
1400GTR ZG1400A 2008年
1400GTR
CONCOURS14
(ZG1400A/B)
zx-14 2008年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400C/D)
ZG1400C/E 2010年
1400GTR ABS
CONCOURS14
(ZG1400C/D/E)
ZX-14R 2012年
ZX-14R
(ZX1400E)

ZX-12R(ZX1200A/B)-since 2000-

ZX-12R

「新世代フラッグシップ」

いろんな意味で有名なZX-12R。そのせいか今となっては中古が高止まりでプレミア化しています。

いわゆる変態バイク的な扱いをされる車種な為かネタばかりが先行して真面目に書かれてる所が少ないのでここでは真面目に紹介したいと思います。

ZX-12Rカタログ

まず細かいことを言うとZX-12RはZZR1100の後継ではありません。しかし一方で後のZZR1400やZX-14Rの礎となったモデルでもあります・・・ややこしいですね。

礎になったと言われる最大の理由はエンジンの横ではなく上を通る量産車で初となるバックボーン型モノコックフレームの始まりがここだから。

ZX-12Rフレーム

これはスケールアップによって肥大化する車体幅を抑えるため。

一般的なツインスパーフレームはエンジンの横を通す必要性がある為、どうしても幅が大きくなってしまうで上を通そうというのがバックボーン。

フレームにエアクリーナーやバッテリーボックスなどフレーム以外の役割も請け負わせて一石二鳥によるというのがモノコック。

合わせてバックボーン型モノコックフレームというわけ。

カワサキはもともとレーサーの方ではこのバックボーンモノコックフレームを開発しレースに参戦していました。

KR500

1982年のWGPレーサーKR500これが元ネタ・・・かと思いきや違う。

ZX-12Rのフレームは車体設計の古橋さんが10年以上を掛けて練っていた一から考えられた構想なんです。

GPZ900R外装のモノコック、ZX-9R外装のモノコックなどを造り

モノコックフレーム

「モノコックにすればこれだけスリムに出来る」

と社内で何度も熱くプレゼンした結果、遂にZX-12Rで採用される事になったという経緯があります。

ただ試作機が出来た時はあまりにも見慣れない形だった為に誰も乗りたがらず、結局テスト走行は古橋さん本人がやる羽目になったんだそう。

そしてそんな個性的なフレームに負けず劣らず凄いのが完全新設計のエンジン。

ZX-12Rエンジン

剛性メンバー(フレーム)の一部として個性的なフレームに合わせて造られた新設計のもの。

ZX-12R銀

B/S比も83.0mm×55.4mmとかなりのビッグボア型で低速トルクが1200ccと思えないほどなく、このクラスにも関わらずかなりブンブン回して走らせるタイプ。

ZX1200Aカタログ

狙いはもちろんGPZ900Rの頃からよりもずっと前、Z1の頃からこだわってきた

『世界最速』

を成し遂げるため。

そのためにこんな極端なボアストローク比のエンジンになっているんですが、ここで終わらないのがZX-12Rの凄い所。

独自の車体設計に加えて航空部門の技術者を招致し、エアロダイナミクスも徹底したんです。

ZX-12Rエンジン

どストレートに来ている吸気口や弾丸のようなミラー、そしてサイドカウルに設けられたウィングなどが正にその証。

MotoGP系で話題になっているウィングをカワサキはこの段階でやっていたわけです。

とにかく何もかも新しい技術が詰め込まれたZX-12R。

完全新設計にも関わらず排気量は抑え気味に1199ccという排気量を選んだのは間違いなく技術力を示すためでしょうね。

ZX-12Rエアフロー

しかし・・・当時はそれほど暖かく迎え入れられる事はありませんでした。生産終了した今のほうが騒がれてるんじゃないかと思うほど。

その理由の一つに”扱いにくい”というイメージが先行した事があります。

「ZX-12Rは曲がらない」

「最高速だけを取ったバイク」

とか言われるのを聞いたことがあると思います。

ZX-12R広告

何故こういう印象を与えてしまったのかというと想定域が高すぎたから。

例えばバイクはフレームが捩れる事で初めて綺麗に曲がれるわけなんですが、その捩れるポイントがこのZX-12Rは圧倒的に高い。

それに加え200/50のタイヤなども加わって曲がらない寝ないバイクという印象が立ってしまった。

これはカワサキらしい伝統のハンドリングともいえ旧来のカワサキを知るオーナー達にとっては

「簡単には曲がってくれない感が面白い」

と好評だったんですけどね。

ただパタンパタンと簡単に寝るSSがトレンドだった当時はそれを認めてくれる人があまり居なかった。

2002年にはそれらネガな部分を潰した後期(通称B型)が登場。

ZX-12R後期

140箇所以上にも及ぶ改良によって若干フレンドリーに変更。

見た目の方もライト形状の変更に加え、ただの筒だったラムエアダクトをカウル形状に合わせた物になりました。

ZX-12R後期サイド

さらにフロントフォークとブレーキがZX-10Rと同じラジアルマウント式に変更・・・多分モデルチェンジでの一番の恩恵はこれかと。

怒涛の加速と直進安定性で

「ZX-12Rは危ない」

とかネタで言われたりするんですが、そのネタの中にもは制動力の無さも関係してたり・・・まあこの頃のクラスはみんなブレーキに様々な悩みを抱えてたのでZX-12Rに限った話でもないですけどね。

今にして思えばSSとメガスポーツその両方を足して2で割った様なバイクでした。

主要諸元
全長/幅/高 2080/725/1185mm
[2085/740/1200mm]
シート高 810mm
[820mm]
車軸距離 1440mm
[1450mm]
車体重量 210kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 20.0L
[19.0L]
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1199cc
最高出力 178ps/10500rpm
[178ps/9500rpm]
最高トルク 13.8kg-m/7500rpm
[13.7kg-m/7500rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後200/50ZR17(75W)
バッテリー YTX14-BS
プラグ CR9EKPA
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.6L
交換時2.5L
フィルター交換時2.8L
スプロケ 前18|後46
チェーン サイズ530|リンク116
車体価格 [1,250,000円(税別)]
※A型はUS仕様
※[]内B型はマレーシア仕様
系譜図
gpz900r 1984年
GPZ900R
(ZX900A)
gpz1000rx 1986年
GPZ1000RX
(ZX1000A)
zx-10 1988年
ZX-10
(ZX1000B)
zzr1100 1990年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100C)
zzr1100 1993年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100D)
ZX-12R 2000年
ZX-12R
(ZX1200A/B)
zzr1200 2002年
ZZR1200
(ZX1200C)
zzr1400 2006年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400A/B)
1400GTR ZG1400A 2008年
1400GTR
CONCOURS14
(ZG1400A/B)
zx-14 2008年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400C/D)
ZG1400C/E 2010年
1400GTR ABS
CONCOURS14
(ZG1400C/D/E)
ZX-14R 2012年
ZX-14R
(ZX1400E)

ZZ-R1100(ZX1000D)-since1993-

ZX1100D

「A Legend in Its Time」

四年目にして早々とモデルチェンジとなったZZR1100後期型の通称D型。

目立った変更としては

・フレーム改良
・ローター径アップ
・リアタイヤ180/55化
・ラムエアダクトのデュアル化
・デザインのブラッシュアップ
・細部の不具合潰し

【1995年モデル】

・騒音規制対応マフラー
・スプロケ丁数の変更
・サスペンションの変更
・キャブレターの変更
・ミッションの改良

【1998年モデル】

・触媒入りマフラー

【2001年モデル】

・メーターが320km/hから280km/hに

などなど改良は多岐にわたっています。

ZZR1100カタログ

ところでZZRというと上の写真を見てもらうと分かる通り

「ZZR」「ZZ-R」

と2パターンの書き方があるんですが、実はこれどちらも正解。仕様地や年度によってバラバラなんです。

ただ2000年ごろから”ZZR”で統一するようにしたよう。だからZZR1100はZZ-Rでもいいんでしょうけどね。

あと発音の方ですが

「ゼットゼットアール」「ズィーズィーアール」

と色んな呼ばれ方をされていますが、カワサキの開発者はズィーズィーアールと言っていたのでズィーズィーアールと読むほうが混乱が少ないかと思います。

ZX1100D4

さてZZR1100は日本のみならず世界的に認められていたんですが、じゃあなんでZZRはそんなに評価されたのか当時を知らない方も多いと思うので少しお話を。

ZZR1100はどうしても

「最高速が凄かったバイク」

という紹介やイメージが先行してしまうんですが、人気となった秘訣は実はそこじゃないんです。

zz-r1100d

人気となった理由はスラントノーズやウイングのようなテールカウルなどエアロダイナミクスを更に進化させた他にない空気を醸し出しているカウルデザインだったのも勿論あるんですが、一番は

「圧倒的なパワーなのに軽快感があったから」

なんですね。

ZZR1100D透視図

これは当時としてはコンパクトに纏めた車体と前後17インチによるもので、ZZRがすごく評価されのは実はこのハンドリングなんです。

でもこれ偶然じゃないんですよ。これこそが開発陣がZZR1100開発で非常に大事にしたこと。

何故ならZZR1100は

『カワサキが考えるスーパースポーツ』

というのがコンセプトだったから。

直線番長だけではなくツーリングでも、街乗りでも、峠でも、サーキットでも、どんなシチュエーションでも敵なしといえるバイクこそがスーパースポーツという考え。

ZZR1100カタログ

だからこそハンドリングに凄くこだわったんです。

これはデザイン担当の青木さんを始めZZRに関わった人みんなが口を酸っぱくして何度も言ってる大事なこと。

そのコンセプトをまざまざと示したのがこのD型。

多くの改良をしたにも関わらずC型から馬力は1馬力も上がっていないんです。理由はもちろんトップスピードだけがコンセプトじゃないから。

ZZR1100カタログ

元祖最高速バイクというイメージが先行しがちですが正しくは

『カワサキ流スーパースポーツ』

というのがZZR1100のコンセプトであり、絶賛された部分でもありました。

主要諸元
全長/幅/高 2165/730/1205mm
シート高 780mm
車軸距離 1480mm
車体重量 233kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 24.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1052cc
最高出力 147ps/10500rpm
最高トルク 11.2kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTX14-BS
プラグ CR9E
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量4.0L
交換時3.2L
フィルター交換時3.5L
スプロケ 前17|後44
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格
系譜図
gpz900r 1984年
GPZ900R
(ZX900A)
gpz1000rx 1986年
GPZ1000RX
(ZX1000A)
zx-10 1988年
ZX-10
(ZX1000B)
zzr1100 1990年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100C)
zzr1100 1993年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100D)
ZX-12R 2000年
ZX-12R
(ZX1200A/B)
zzr1200 2002年
ZZR1200
(ZX1200C)
zzr1400 2006年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400A/B)
1400GTR ZG1400A 2008年
1400GTR
CONCOURS14
(ZG1400A/B)
zx-14 2008年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400C/D)
ZG1400C/E 2010年
1400GTR ABS
CONCOURS14
(ZG1400C/D/E)
ZX-14R 2012年
ZX-14R
(ZX1400E)

ZZ-R1100(ZX1000C) -since1990-

ZZR1100 ZX1100C

「世界一の動力性能」

リッターオーバー車の方向性を決定付けたといえるZZR1100の前期C型。ちなみに北米ではZX-11という車名だった事からイレブンという愛称で呼ばれたりもしています。

ZX-11

先代ZX-10をベースにボアを2mm拡大しつつシリンダー傾斜角を2°増、更にピストンやコンロッドも新設計で高回転寄りにして1052cc/147馬力というクラストップの147馬力をマーク。

ストック状態で280km/hまで達する性能で時速300km/hが見えてきたと話題になりました。

※一部雑誌では300km/h超えをマーク

ZZR1100は頭一つ抜きん出ていた速さを持っていたわけですが、この理由の一つはこれ。

F40

0-1000で20秒台を記録し当時世界最速と言われていたフェラーリのF40。

これをベンチマークにし、超える事がZZR1100の目標だった。そのために専用のカウンターまで用意。

最終的に完成したZZR1100は0-1000を18.9秒と19秒台どころか18秒台に。※KBM1999/7より

ZZR1100 C型

ここまでの速さを身につけられた秘訣は、タンクが盛り上がっているにも関わらずガソリン容量が先代から1L減ってる事から見ても分かるように大容量のエアクリーナーボックスなのが一つ。

そしてもう一つがそれに合わせて備え付けられた特徴的なラムエアダクト。

1990ZX11000C

走行風をダイレクトにエアクリーナーに取り入れる事で空気を加圧するセルフターボの様な仕組みで、初出はZXR250なんですが世間が大々的に認知するようになったのはこのZZR1100から。それほどZZR1100のインパクトは強かった。

・・・ただし今でこそ名車として有名なZZR1100ですが、モーターショーでは同時発表されたゼファーに話題を全て持って行かれ影に隠れていました。

1989東京モーターショーZZR

カワサキ自身も国内では750自主規制もあって売れないと考えていたのかアピールしなかった事もあるかと。

じゃあどうやって人気が広まったいったのかというと雑誌などのインプレッション。それまでとは一線を画する速さを持っていることがテストや最高速アタックで白日の下に晒される事になったんです。

ZX-11C

この事で初めてとんでもない性能のバイクだということが多くの人に認知さるれとジワジワと人気が出始め、限定解除や逆輸入という当時としては非常に高いハードルがあったにも関わらず大人気モデルに。一時は弾不足で高騰すら招きました。

※国内登録台数(RIDERSCLUB98/12)

90年1,992台
91年2,626台
92年2,169台
93年623台

1990ZX11000C

ZZR1100はカワサキがGPZ1000RX、ZX-10と止めずに拘り続けた姿勢が報われたモデルであると同時に

「リッターオーバーの方向性を決定づけた」

ともいえるパイオニアの様なモデルでした。

主要諸元
全長/幅/高 2165/720/1210mm
シート高 780mm
車軸距離 1480mm
車体重量 228kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 21.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1052cc
最高出力 147ps/10500rpm
最高トルク 11.2kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70VR17(58V)
後170/60VR17(72V)
バッテリー YB14L-A2
プラグ CR9E
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量4.0L
交換時3.2L
フィルター交換時3.5L
スプロケ 前17|後45
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格
系譜図
gpz900r 1984年
GPZ900R
(ZX900A)
gpz1000rx 1986年
GPZ1000RX
(ZX1000A)
zx-10 1988年
ZX-10
(ZX1000B)
zzr1100 1990年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100C)
zzr1100 1993年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100D)
ZX-12R 2000年
ZX-12R
(ZX1200A/B)
zzr1200 2002年
ZZR1200
(ZX1200C)
zzr1400 2006年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400A/B)
1400GTR ZG1400A 2008年
1400GTR
CONCOURS14
(ZG1400A/B)
zx-14 2008年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400C/D)
ZG1400C/E 2010年
1400GTR ABS
CONCOURS14
(ZG1400C/D/E)
ZX-14R 2012年
ZX-14R
(ZX1400E)

ZX-10(ZX1000B)-since1988-

ZX-10

「INTRODUCING A NEW BALANCE OF POWER」

二年でフルモデルチェンジされた後継となるZX-10。

フレームがアルミツインスパーのe-BOXフレームとなり、エンジンもヘッドとピストンの見直しで16kgもの軽量化&12psアップで再び世界最速に。

ホイールも不評だった前後16インチというクラスにあるまじき小径から主流だった17/18インチへと変更。

ZX-10ボディ

ZX-10の狙いはズバリこのラジアルタイヤにしたかったのが最大の狙い。

このおかげでゼロヨン10.5秒、最高速度270km/hと文句なしの性能になりましが・・・が、残念ながら最速バイクの割にはあまり話題にはならなかった。

ニンジャZX-10

ZX-10が売れなかったとされる理由は、デザインがモッサリだとして評判があまり良くなかったGPZ1000RXからほとんど変えなかったから。

中身を凄く進化させたのに外見はほぼそのままっていう。

何故カウルデザインを大きく変えなかったのかというと、車体担当の藤井さんいわく

ZX1000B

「これはモデルチェンジではなくGPZ1000RXのエボリューションモデルだから」

との事。

要するに変えるために変えるのではなく、積み上げていく安心感を第一に考えた変更ということ。

同じものを何十年も売る重工業らしい考えですね。

主要諸元
全長/幅/高 2170/715/1240mm
シート高 790mm
車軸距離 1490mm
車体重量 222kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 22.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 997cc
最高出力 137ps/10000rpm
最高トルク 10.5kg-m/9000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70VR17
後160/60VR18
バッテリー YB14L-A2
プラグ CR9E
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量4.0L
スプロケ 前17|後45
チェーン サイズ532|リンク110
車体価格
系譜図
gpz900r 1984年
GPZ900R
(ZX900A)
gpz1000rx 1986年
GPZ1000RX
(ZX1000A)
zx-10 1988年
ZX-10
(ZX1000B)
zzr1100 1990年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100C)
zzr1100 1993年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100D)
ZX-12R 2000年
ZX-12R
(ZX1200A/B)
zzr1200 2002年
ZZR1200
(ZX1200C)
zzr1400 2006年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400A/B)
1400GTR ZG1400A 2008年
1400GTR
CONCOURS14
(ZG1400A/B)
zx-14 2008年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400C/D)
ZG1400C/E 2010年
1400GTR ABS
CONCOURS14
(ZG1400C/D/E)
ZX-14R 2012年
ZX-14R
(ZX1400E)

GPZ1000RX(ZX1000A)-since1986-

GPZ1000RX

「パフォーマンス・キング」

GPZ900Rからわずか二年で登場したGPZ1000RX(北米名NINJA1000R)。

GPZ900Rを超えるマシンとして997ccまで排気量を上げ、当時としては珍しい空力に優れるミラーと一体型ウィンカーを付けているのが特徴。

前後16インチながらフレームはダイヤモンドではなくオーソドックスなダブルクレードル。

ZX1000A

商品企画の吉田さん曰く

「GPZ900Rでは飽き足らない人向けのハイパフォーマンスモデル」

GPZ900Rが次世代のZなら、GPZ1000RXはZを超える新しいバイクというのがコンセプトでした。

GPZ1000RX壁紙

ちなみにGPZ1000RXはGPZ900Rが発売されると同時に開発がスタートしたバイクで最初はGPXで出す予定でした。しかしGPZ900Rがヒットを飛ばし始めたこともあり、GPZというネームを継続採用する事に決定した背景があります。

GPZ1000RXテクニカルイラストレーション

でもいま振り返ってみるとGPZと名前がつくバイク全体で見ると不人気に終わったバイクが多いんですよね。成功したのはGPZ900RとGPZ400Rくらい。

ちなみにそんなハイパフォーマンス路線だったGPZ1000RXのエンジンが如何に凄かったかを示す一台のバイクがあります。

ランボルギーニのバイク

このバイクかの有名なあのランボルギーニがGPZ1000RXのエンジンを使って造ったバイク。

つまりGPZ1000RXはイタリアのランボルギーニすら認めたというわけ。

主要諸元
全長/幅/高 2230/725/1215mm
シート高 805mm
車軸距離 1505mm
車体重量 238kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 21.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 997cc
最高出力 125ps/9500rpm
最高トルク 10.1kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/80-V16(V270)
後150/80-V16(V270)
バッテリー YB14L-A2
プラグ DR8ES
または
X27ESR-U
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量4.0L
交換時3.5L
フィルター交換時4.0L
スプロケ 前15|後40
チェーン サイズ632|リンク94
車体価格
系譜図
gpz900r 1984年
GPZ900R
(ZX900A)
gpz1000rx 1986年
GPZ1000RX
(ZX1000A)
zx-10 1988年
ZX-10
(ZX1000B)
zzr1100 1990年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100C)
zzr1100 1993年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100D)
ZX-12R 2000年
ZX-12R
(ZX1200A/B)
zzr1200 2002年
ZZR1200
(ZX1200C)
zzr1400 2006年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400A/B)
1400GTR ZG1400A 2008年
1400GTR
CONCOURS14
(ZG1400A/B)
zx-14 2008年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400C/D)
ZG1400C/E 2010年
1400GTR ABS
CONCOURS14
(ZG1400C/D/E)
ZX-14R 2012年
ZX-14R
(ZX1400E)

GPZ900R(ZX900A)-since1984-

GPZ900R

「新世代スーパースポーツ Ninja」

元祖ニンジャでお馴染みGPZ900R/ZX900A。

Ninjaと名付けられたキッカケは米カワサキの提案によるもので向こうではNinja900という愛称でした。

Ninja900カタログ

ネーミングの経緯については

『Ninja』と名乗るようになった理由|バイク豆知識

をどうぞ。

そんなGPZ900Rですがコンセプトは『次世代のZ』というもの。

・高出力、コンパクト、軽量で圧倒的な走行性能を発揮すること

・事業性目標(採算性)を厳守すること

これらの目標を掲げ開発が始まったわけですが、そんな開発におけるメンバーのポリシーの一つが

「迷ったら新しい技術を取る」

というもので意欲の塊の様な設計だったことから開発期間も実に5年と通常の倍以上を掛けて造られました。

それが如実に表れているのがフロント16インチやバックボーンフレームもそうですが何よりも水冷エンジン。

GPZ900Rエンジン

水冷化だけでなくカムチェーンがセンターではなくサイドに来ているサイドカムチェーンレイアウトに。

これ今でこそ珍しくもなんともないんですが当時はF1くらいで参考になるようなデータがなく設計に相当な苦労されたそう。

「どうしてサイドカムチェーンが良いのか」

と言うと、吸気の流れがセンターカムチェーン(トンネル)に邪魔されずストレートになることで流速が増す事と、壁と軸受を実質的に一つ減らせる事からエンジンのコンパクト軽量化に繋がるわけです。

GPZ900Rチラシ

まさに

「高出力を得るための新しい要素」

という事を表している部分。

苦労して造られた時代先取りエンジンだっただけありZRX1200DAEGまで長く使われる事になったんですが、実は最初は水冷直四ではありませんでした。

検討段階ではV型を始めとしたありとあらゆるエンジンが検討され、その中で有力候補として開発されたのは空冷2バルブ直列六気筒エンジン。

直列六気筒GPZ900R

Z1300のノウハウを活かしたモデルで完成の域にまで来ていたものの

・コストの兼ね合い

・コンパクトに出来ない

・紳士過ぎる(振動がない)

などの理由でお蔵入りとなり空冷四気筒で再開発される事に。

そしてそこから更に

「空冷よりも水冷の方がパワーを出せる」

という再三に渡るやり直しの末この形になった背景があります。

もしも直列六気筒エンジンになっていたらどうなっていたんでしょうね・・・設計していた山田さんもアレも良かったと悔やまれていました。

でももしもそのままスムーズに進んでいたらこんなカウル付きのデザインにはならなかったでしょうね。

ニンジャ900

ちなみにその直列六気筒も900ccで、最後に形となったこのGPZ900Rの水冷直列四気筒も908cc。

既に時代は空冷イレブン時代と言われリッターオーバーが当たり前だった時代で、カワサキ自身もGPz1100というバイクを出して対抗していたにも関わらず900という何故か寸足らずの排気量。

この『9』という数字は最初から決められた事で、理由はパワーウェイトレシオのバランスなどもありますがプロジェクトリーダーの稲村さんいわく

「Z1(900Super4)からの縁起物だから」

という理由もあったそう。※RIDE70にて

しかし何度も言いますが当時は既にリッターオーバーの時代だったので市場では最初は総スカン。正直カワサキも焦った事と思います。

そんな状況を好転させたのが有名ですがトムクルーズ主演の映画トップガン。

トップガンGPZ900R

ですが・・・実はカワサキはブランドイメージを損なう恐れがあるとしてタイアップの許可を出さなかったそう。

だからロゴやエンブレムが外されシールがベタベタと貼られていたわけですが、最大の特徴であるカワサキ初の特徴的なカウルなどはほぼそのままだったからGPZ900Rだと丸わかりで

「あのバイク格好いい」

と世界中で話題となり、映画を見た後バイク屋に駆け込む人が大量に出た。

この結果GPZ900Rは世界中に認知される事となったわけですが、これはあくまでも大ヒットとなるキッカケです。

GPZ900Rライムグリーン

映画によって初めて寸足らずというだけで見向きもされなかった状況から、多くの人にビッグバイクとして見てもらえる様になった。

そしたら115馬力で最高速247km/hという世界最速はもちろんの事、ダイヤモンドフレームやフロント16インチが織りなすコーナリング性の素晴らしさなどトータル性能の高さに舌を巻くジャーナリストやライダーで溢れかえり、また口コミでも凄いバイクだと広まったことで大ヒットとなったわけです。

戦闘機とGPZ900R

もちろん性能に負けないほどのインパクトを持った戦闘機がイメージのデザインも人気の理由。

特にこのデザインへの評価は高く、車体設計だった藤井さんが人気に応えようと改良点を聞き込みに出たら何処に聞いても

「見た目だけは絶対に変えないでくれ」

と念を押される始末。

KAWASAKIGPZ900R

そんなもんだから

85年後期型:ヘッド改良

88年型:ディスクローター、カムテンショナー

89年型:キャブヒーター(英のみ)

90年型:AVDS廃止、ブレーキキャリパー、F17インチ化

91年型:国内仕様の販売開始

93年型:キャブヒーター(国内仕様)

99年型:前後サス、6ポットキャリパー、ラジアルタイヤ

02年型:KCA(エアインジェクション)

03年型:ファイナルエディション

と長きに渡り数々の改良が加えられたものの見た目は最後まで変わらず。

GPZ900Rファイナル

それでも人気は一向に衰えることはなく、終わってみれば約20年に渡って計80,000台生産という異例のロングセラーを記録。

GPZ900Rは『新世代Z』であると同時に『元祖Ninja』でもある保守と革新その両方を成し遂げた20世紀を代表する名車でした。

主要諸元
全長/幅/高 2200/750/1215mm
A4~:2200/750/1215mm
A7~:2220/730/1220mm
A11~:2220/740/1220mm
シート高 790mm
車軸距離 1495mm
A7~:1500mm
[1500mm]
車体重量 228kg(乾)
A7~:234kg(乾)
[234kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 22.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 908cc
最高出力 115ps/9500rpm
A7~:108ps/9500rpm
[86ps/9000rpm]
最高トルク 8.7kg-m/8500rpm
A7~:8.5kg-m/8500rpm
[7.3kg-m/6500rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ

前120/80V16|後130/80V18
A7~:前120/70V17|後150/70V18
[前120/70R17(58H)|後150/70-18(70H)]

バッテリー YB14L-A2
プラグ DR9EA
[DR8ES
または
X27ESR-U]
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量4.0L
交換時2.7L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前17|後49
[前17|後47]
チェーン サイズ525|リンク110
車体価格 ※[]内は国内仕様
系譜図
gpz900r 1984年
GPZ900R
(ZX900A)
gpz1000rx 1986年
GPZ1000RX
(ZX1000A)
zx-10 1988年
ZX-10
(ZX1000B)
zzr1100 1990年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100C)
zzr1100 1993年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100D)
ZX-12R 2000年
ZX-12R
(ZX1200A/B)
zzr1200 2002年
ZZR1200
(ZX1200C)
zzr1400 2006年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400A/B)
1400GTR ZG1400A 2008年
1400GTR
CONCOURS14
(ZG1400A/B)
zx-14 2008年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400C/D)
ZG1400C/E 2010年
1400GTR ABS
CONCOURS14
(ZG1400C/D/E)
ZX-14R 2012年
ZX-14R
(ZX1400E)