「King of Motorcycle」
2012年からのZX-14R/ZX1400E型とABSモデルのZX1400F型。
ZX-12R以来となるNinjaそしてZX-Rというネームの復活にいろんな人が湧きましたね。
今までと違い発売前から思わせぶりな宣伝を打ってきたことから相当な自信があるのだろうと思ってたら、やっぱり出てきたのは緑色な怪物でした。
目立つ変更点としてはトラクションコントロールシステム。
仕組みについては1400GTRで話したので割愛しますが、ZX-14Rの場合は強弱に加えて切ることも可能な3モードタイプ。オマケというとアレだけど合わせて2つの出力特性を選べるパワーモードとスリッパークラッチも付いて安全性とスポーツ性が向上。
見た目の方も大きなカバーレンズで覆われZX-Rに合わせた二眼のような四眼に変更されました。
エンジンはストローク量を上げるだけでなく、合わせてヘッド周りは削り出しに変更されピストンやバルブも刷新し圧縮比を向上させ全域でパワフル化。
これによって遂に非加給(ラムエア無しで)200馬力を達成。
ちなみに2016年モデルからはEURO4(排ガス規制)に対応するためキャタライザーが増設され、日本に入ってくるアジア仕様はハンドルも上げられて少し優しくなっています。
写真はブレンボオーリンズ装着のハイグレードモデル。
ただZX-14Rで一番注目してほしいのは実はカタログスペックに載らない部分にあります。
一見すると変わっていないように思えるフレームは剛性が大きく見直され、それに合わせて足回りも
・サスペンションの再セッティング
・軽量化されたホイール
・10mm延長されたスイングアーム
・軽量なスリードチェーン
などなど変わっていないようで大きく変更されてある。
ZX-14Rのモデルチェンジのミソな部分は実はここ。
一見すると地味とも言えるこの変更点の狙いは何かと言うと
「軽快感を出すため」
にあるんですが、この軽快感というのがZX-14Rの裏コンセプトに繋がるんです。
メガスポーツというと世界最速が至上命題にあるわけですがZX-14Rにはもう一つ別の狙いがありました。
それは
『ZZRを造る』
という事です・・・これだけ言うとちょっと混乱しますよね。
「いやいや先代や欧州名はZZR1400じゃん」
って。
でもこの場合のZZRという言葉が指す意味はそれじゃない。この場合が指すZZRの意味はこれ。
この系譜でもご紹介しているZZRの始まりでありZX-14Rの先祖様でもあるZZR1100です。※写真は後期モデル
ZZR1100はカワサキが考える独創的なスーパースポーツの形として登場し一時代を築いた名車。現代風にいえば最高速だけじゃない軽快になんでも熟せる万能スーパースポーツ。
ZX-14Rはこれを現代の技術で造るという裏コンセプトがあったんです。
というのもZX-12RかZZR1200でも話したと思うですがカワサキ社内にはZやGPZ900Rこそがカワサキの象徴だと考える人がいる一方で
「ZZR1100こそがカワサキの象徴だ」
という人たちも数多くいる。
ZZRの事になると口を出さずにいられない
『ZZR信者』
という厄介な存在がいるわけです。
そして何を隠そうこのZX-14Rの開発リーダーを努めた大島さんもその一人で、もちろんZZR1100(D)のオーナー。
そんな大島さんはZZR1400の後継を任された際にこう考えた。
「ZZR1100オーナーが満足するZZRを造ろう」
と。
そのために自身の価値観や経験はもちろんZZR1100オーナーの話を聞き回ったりオーナーのブログを漁ったりして
『ZZR1100が絶大な支持を得るに至った理由』
を徹底的に検証しZX-14Rに反映させた・・・軽快感を出すためにフレームまでをも見直した理由はここにあるわけです。
(ZZR1100は車格を感じさせない軽快なハンドリングが高い評価を得ていた)
それ以外にもメットホルダーの標準装備や収納式荷掛けフックなんかもZZR1100譲りですね。
「じゃあなんでZZR1400からZX-14Rに改名したのか」
っていうとこれは新しくなった事をアピールするためマーケティング側の要望から。そんなもんだからインタビューなんかで
「名前はZX-14Rだけど造ったのはZZRです」
的なマーケティングを無視した発言をしてしまう始末。
ただ豪華にしたわけじゃない、ただ速さだけを取ったわけじゃない。
ZZR1100が持っていた
『何でも軽快に熟せる万能スーパースポーツ』
という要素を現代の技術で造ったのがこのZX-14Rなんです。
そんなZX-14Rも残念な事に規制の問題から2019年にブライト取扱が終了となりました。
『ZX-14Rという名の新世代型ZZR1100』
という狭義過ぎる為にマーケティングの観点から伏せられていたこの事実をどれだけのZZRファンが感じ取ってくれたのかは分からない。
もしも開発者達に負けないくらいZZR1100が大好きでまだこのZX-14Rを知らない人がいたら是非とも見て乗って体感して欲しいと思います。
『ZZRこそがカワサキのフラッグシップ』
今でもそう信じ疑わず愛してやまない人たちが、同じように信じ疑わず愛してやまない人たちの為に造ったその想いを感じてほしいと切に願います。
主要諸元
全長/幅/高 | 2170/780/1170mm |
シート高 | 800mm |
車軸距離 | 1480mm |
車体重量 | 265kg(装) [268kg(装)] {269kg(装)} |
燃料消費率 | – |
燃料容量 | 22.0L |
エンジン | 水冷4サイクルDOHC4気筒 |
総排気量 | 1441cc |
最高出力 | 200ps/10000rpm |
最高トルク | 16.6kg-m/7500rpm {16.1kg-m/7500rpm} |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前120/70ZR17(58W) 後190/50ZR17(73W) |
バッテリー | YTX14-BS |
プラグ | CR9EIA-9 |
推奨オイル | カワサキ純正オイルR4/S4 または MA適合品SAE10W-40 |
オイル容量 | 全容量4.6L 交換時3.8L フィルター交換時4.2L |
スプロケ | 前17|後42 |
チェーン | サイズ530|リンク118 |
車体価格 | 1,566,000円(税込) [1,632,000円(税込)] ※スペックはマレーシア仕様 ※[]内はABSモデル(ZX1400F) ※{}内はG/H型 |