YZF-R1 (5PW) -since 2002-

02YZF-R1

「ダイナミック・コーナリング・パフォーマー」

三代目YZF-R1となる2002年登場の5PW型。

内容としては

・エンジン搭載位置を20mmアップ

・剛性30%アップ(デルタボックス3)

・FI(電子制御燃料噴射装置)の採用

・2馬力アップ

・1kg軽量化

・二軸式EXUP

・アルミ鍛造ハンドル

・サスの大径化とストロークのショート化

・リアキャリパーを上付けに

・LEDテールランプ

などとなっています。

単純に数字だけ見ると2馬力アップと1kg軽量化だけなのでマイナーチェンジのように思えますが、その実、先代に続きカタログスペックだけでは分からないコダワリのモデルチェンジとなっています。

まず目に見えて変わったのがデザイン。

02YZF-R1壁紙

具体的に言うと一つはサイドカウル。

それまでカウルといえば空力を考えられたボディカバーの様な形なのが常識でした。整流の為にあるパーツなのだから当たり前といえば当たり前な話。

5PWコンセプトスケッチ

そんなカウルをこの三代目R1は大胆に切り取り、ネイキッドかのようにエンジンを魅せつける形に。

もう一つはテールカウルで、エッジを効かせ裏面までキレイに塗装。

2002R1 LEDテールライト

これはもうフルバンクの姿を美しく魅せるためとしか思えない。

それまで整流パーツという意味合いが強かったカウルを、ドレスアップパーツにする・・・さすがヤマハ、さすがGKデザインとしか言いようがないですね。

おまけでもう一つ言うと、タンクのエンブレムをYAMAHAから音叉マークのみに変えたのもこのモデルから。

02YZF-R1プレストカタログ

グッと世代を新しく感じる細かいけど非常に大きなポイントですね。

しかしそれ以上に凄いこだわりポイントが中身の方。

まず最初に挙げるのはヤマハとしては初となるFI(電子制御燃料噴射装置)を採用したこと。

02YZF-R1エンジン

FIのメリットは燃料を完全制御に出来る事で、簡単に言うと空燃比をコントロールし排気ガス規制を通しやすいというメリットがあります。

ただこれは現代の話で、このモデルの頃はまだまだキャブでも排ガスを通すことは可能だった時代。では何故こんなにも早くFIを採用したのかというと

『正確無比なパワー(環境変化に強い)』

というもう一つのメリットを得るため。

キャブは負圧という受動的な動作の都合上、環境によってパワーの出方にどうしてもムラが出てしまう。

02YZF-R1コーナリング

コーナリングのR1にとって、この雑味に近い要素は無視できないものだったからFIを採用したという話。

ただし・・・FIにもデメリットがあります。それはパワーの出方が尖すぎるという事。

これまたザックリ説明すると、キャブは負圧なので受動的にガソリンを吹くから斜線のような出方をする。それに対しFIは能動的にガソリンを吹くので点のような出方となり、アクセルの開け方次第では唐突にガツンと出る。特に最初期のFIはインジェクターの微細化が未熟だった事もあり顕著だった。

コーナリングマシンにとってこれは致命的な問題。しかしFIの環境に左右されない正確無比なパワーも欲しい・・・そこで編み出されたのが、サクションピストン付きFI。

サクションピストン付きFI

スロットルバルブの上に負圧で開閉する蓋を設けた形。

本来スロットルバルブを開くと上部から空気を吸い始めるんですが、上はサクションピストン(スライドバルブ)がほとんど塞いでいる状態なので、空気は横に備え付けられたサクションチャンバーから吸われる。

するとサクションチャンバー内が負圧になり、そこから横に飛び出しているサクションピストン(の中にあるスプリング)が縮むことでスロットルボディから引っ込む。

FIのメカニズム

そうしてスロットルバルブまでの道が完全に開く本来のインテークになる。

こうする事で開け始めの唐突さを緩和しつつFIの武器である正確無比なトルク特性を得ている。早い話がキャブっぽさを残した非常に凝ったFIというわけですね。

そしてもう一つだけこだわりポイントとして説明したいのがフレーム。

デルタボックス3

この代でフレームも『デルタボックスIII』となりました。

一見するとあまり変わっていないように見えますがフレーム剛性が30%アップ。しかし凄いのは剛性を上げた事ではないんです。

ステムシャフトやメインチューブの肉厚を微調整し・・・そして、ハンドルの逃げスペースを無くした。

02YZF-R1切れ角

ご存知なようにスーパースポーツはスポーツ走行時に一番決まるポジションにするため、低く垂れたハンドルをしているのが基本。その関係でハンドルとフレームが干渉しやすく、結果として切れ角を大きく出来ない。

「SSは一般用途では使いにくい」

と言われる大きな理由の一つでもありますね。だからメーカーは少しでもハンドルが切れるようフレーム部分にハンドルの逃げスペースを作るのが一般的で、YZF-R1も先代までは設けられていたんですが、三代目であろう事かその逃げをほぼ無くした。

これによりただでさえ切れないハンドルの切れ角は27°から更に減って24°と、現代SSも真っ青な歴代R1最狭角クラスに(※確認出来た歴代R1の中では最狭角)

5PWコンセプトスケッチ

ストリート志向のR1で何故こんな事をしたのかという話ですが、これはフレーム剛性(ハンドリングや接地感など)を少しでも良くするため。

フレームは直線かつ均等が理想。しかしエンジンや補機類を積む都合上、そう単純にはいかない。そんな中で出来る最善の選択が、ハンドルの逃げを無くす事でメインチューブの上下剛性を合わせる事。

しかし何度も言うようにハンドルのキレ角が余りにも減ってしまうため開発陣でも議論となったのですが、話し合った末に敢行。そうして出来たのが切れ角24°のデルタボックスIIIという話。

これは先に話したFIを始めとした細部の改良にも言えることですが、プロジェクトリーダーだった小池美和氏いわく

「ラップタイム云々ではなく、コーナリングをダイナミックに楽しむためには何が重要か」※モーターサイクリスト2002/5より

という事を最優先に考えて開発されたから。これがカタログスペックには現れないこだわりポイント。

5PW

「目指したのは速さではなく快感(テストライダー談)」※RIDERS CLUB/No337

たった2馬力増と1kg減という変化が、如何にコーナリングを楽しむ事だけをストイックに追求したかを物語っていますね。

主要諸元
全長/幅/高 2040/705/1105mm
シート高 820mm
車軸距離 1395mm
車体重量 193kg(装)
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 998cc
最高出力 152ps/10500rpm
最高トルク 11.0kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)

後190/50ZR17(73W)
バッテリー GT12B-4
プラグ

※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9E

または

U27ESR-N
推奨オイル ヤマルーブ

10W30~20W40
オイル容量

※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.8L

交換時2.9L

フィルター交換時3.1L
スプロケ 前16|リア43
チェーン サイズ530|リンク114
車体価格 1,180,000円(税別)

※プレスト価格
系譜図
fz750 1985年
FZ750
(1FM)
fzr1000 1987年
FZR1000
(3GM/3LK/3LG)
yzf1000r 1996年
YZF1000R Thunder Ace
(4SV)
4xv 1998年
YZF-R1
(4XV)
5jj 2000年
YZF-R1
(5JJ)
5pw 2002年
YZF-R1
(5PW)
5vy 2004年
YZF-R1
(5VY前期)
5vy後期 2006年
YZF-R1
(5VY後期/4B1)
4C8 2007年
YZF-R1
(4C8)
14b 2009年
YZF-R1
(14B~1KB/45B)
2012YZF-R1 2012年
YZF-R1
(45B/1KB/2SG)
2015YZF-R1 2015年
YZF-R1/M
(2CR/2KS/BX4)
2019YZF-R1 2019年
YZF-R1/M
(B3L/4BS)

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