ビューエルが一番最初に出した市販車がこのRR1000BATTLE TWIN。
皆が思うビューエルのイメージからは大きく掛け離れていると思います。
先に作ったRW750と同様にクロモリ鋼管のトラスフレームという一部のスーパーバイクにしか使われていない贅沢フレームにハーレーのスポーツスターOHVエンジン(XL1000)を積んだマシン。
Buellに詳しい方なら分かると思いますが、恐ろしい事に既に中身はBuellの形が出来上がっている。
しかしこのバイクが誕生したのは実は運が良かった面があります。
というのも当時ハーレーダビッドソンはレースに対し非常に消極的でした。これはCEOだったヴォーン・ビールス氏がアメリカ伝統のサーキット場であるラグナセカのイベントに出席した際に、ハーレー乗りをほとんど見かけなかった事がキッカケ。
レースは売上に繋がらないと判断したわけです。この人も元々はエンジニアなんですけどね。
だからAMA(アメリカのレース)の中でも人気だった二気筒レースBOT(バトル・オブ・ツイン)ではドゥカティやビモータが幅を効かせていたんだけど、その事が我慢ならなかったハーレーのオーナーズクラブが身銭を切ることで会社のワークス参戦を後押し。
「Lucifer’s Hammer (ルシファーズ ハンマー)」
XR750エンジンをベースに1000ccまで排気量を上げたモデル。84~85年と勝利を収めたアメリカでは伝説のツインレーサーです。
ちなみに漫画:特攻の拓で
『Lucifer’s Hammer (悪魔の鉄槌)』
として名前が取り上げられた事から名前は知っている人も多いかもしれませんが、実はそう単純な意味では無かったりします。
この名前には
「レースなんて道楽に金を使ってるとカミさんから怒られるぞ」
という皮肉、つまり
『悪魔の鉄槌(カミさんの鉄拳)』
という揶揄が込められてる。アメリカならではのユニークさですね。
そんなルシファーズハンマーなんですが、86年は戦闘力不足でドゥカティの伝説マシン851に完敗。そこで白羽の矢が立ったのが天才エンジニアだったエリック。
彼も当時バイクを作るために出資を募っている段階。つまり勝てるバイクが欲しいオーナーズクラブと意図が合致したわけです。
そして誕生したのがルシファーズハンマー2と、その公道モデルRR1000というわけ。
惜しくも決勝で転倒し851には勝てませんでしたが、予選ではポールポジションを取る程の速さを見せた事でプライベーター達からの注文が殺到。
ただ残念な事に搭載していたXR1000のエンジンが50機しかハーレーから都合出来なかった事から販売台数は50台のみ。
そのため急遽XLH1200のエンジンを用立ててRR1200も製造。こちらは150台ほど作られたようです。
この一件でエリックビューエルという名がアメリカ中に広まることになりました。
エンジン:空冷4サイクルOHV二気筒
排気量:998cc
最高出力:
77ps/5600rpm
最大トルク:
9.8kg-m/4400rpm
車両重量:179kg(乾)
※スペックRR1000