スーパーカブ50/110(AA09/JA44) -since 2017-

AA09

再び熊本工場での生産&丸目という原点回帰したスーパーカブ/プロのAA09/AA07とスーパーカブ110/PROのJA44/JA42。

累計生産台数一億台達成が大きく話題になりました。

2017スーパーカブ50

若干リトルカブの面影があるファッショナブルな見た目になっていますね。

ちなみに125で最も多様性があるとして人気だった派生のクロスカブも少し遅れてJA45へモデルチェンジ。

2018クロスカブ110

そして更にこの代から50cc版となるクロスカブ50(AA06)も登場しました。

クロスカブ50

110との違いはPROと同じ小回りに優れる14インチホイールを履いています。なんか凄くオシャレな郵政カブみたい。

ちなみにC125という派生と言うよりメモリアル的なモデルも出る予定。

C125

これは系譜を見てもらえると分かる通り、スーパーカブの125版というより初代スーパーカブC100のリボーン的なモデルでしょう。

キャストホイールとディスクブレーキが斬新ですが。

まあこれは出たら改めて書くとして話を戻すと、この代のスーパーカブは見た目だけでなくエンジンも大きく変わっています。

いわゆるフリクションロスという抵抗を減らしてパワーと燃費を稼ぐ改良が加わっているんですが、中でも特徴的なのがスパイニースリーブというやつ。

燃焼室を形成している筒であるスリーブは熱膨張しにくい鉄で出来ているのに対し、エンジンの外枠を担っているブロックは熱膨張しやすいアルミで出来ている。

つまり熱膨張性が違うので熱くなってくると円に歪みが生まれ燃焼に悪影響がある。

スパイニースリーブ

その歪みを抑えるために内側の鉄にアンカーを仕込んでアルミ側に食い込ませる事で、アルミが膨らみ始めると内側の鉄も引っ張られて膨らみ円の形が崩れないというわけ。

これに合わせてモリブデンコートスカートや窒化ピストンリングなどピストンやピストンリングも最先端の物になっています。

まあこういう小難しい話は前置きで、大事なのは今まで実質オイルフィルターレスだったのがスクーターと同じ交換式オイルフィルターになったこと。

オイルフィルター

オイル内にあるゴミをキャッチして綺麗にするフィルターがカブとしては初めて付きました。

結局なにが言いたいのかというと、いま説明してきたフリクションロス軽減の為のエンジン一新によってコンディションが少しだけどシビアになったという事。

一番影響を受けるクランクの軸受は変わっていないようなので本当にほんの少しだけど、性能が良くなった分だけ乗りっぱなしは駄目よという話です。

JA44

良い方に捉えると、ちゃんと交換していれば今まで以上に持つ様になったとも言えるんだけどね。

スーパーカブというとカブ伝説が有名だと思います。

「サラダ油でも走る」

とか

「水没しても走る」

とか聞いたことあるかと。

発端はディスカバリーチャンネルだと思いますが、サラダ油でも走るのは別にカブに限った話じゃないです。

例えばレース用のオイルは植物油でサラダ油に毛が生えた程度の物を使ったりしている。ただ市販車でそれをすると潤滑不足で最初は良くてもしばらくすると焼き付く。

水没も同じで、万が一エンジンに水が入った状態からエンジンを掛けるとウォーターハンマー現象で(コンロッドが曲がって)廃車の恐れがあります。

だからあんまり鵜呑みにしないようにね・・・無粋な話ですが。

2017スーパーカブ110

ただし

「スーパーカブはとっても頑丈」

というイメージが定着しているのは本当に頑丈だったからなのも事実。

これはホンダがプライドを持って作っているからです。

最後に少し前までホンダの二輪事業責任者だった梨本さんの小話を。

自動車が好調だったある日、本田宗一郎の一番弟子で最初期からエンジニアとしてホンダを支えた二代目社長の河島さんに

2017スーパーカブ110

「バイクにおけるホンダらしさって何だ?そこらへんをしっかり決めておけよ。」

と言われた事があると仰っていました。

そして梨本さんは色々と考えた結果

「信頼性の高いモノづくりこそホンダらしさ」

という結論に至り、それをこう言い表しました。

C100

「ホンダらしさとはスーパーカブだ」

主要諸元
全長/幅/高 1860/695/1040mm
シート高 735mm
車軸距離 1210mm
[1205mm]
車体重量 95kg(装)
[98kg(装) ]
燃料消費率 69.4km/L
[67.0km/L]
※WMTCモード値
燃料容量 4.3L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 49cc
[109cc]
最高出力 3.7ps/7500rpm
[8.0ps/7500rpm]
最高トルク 0.39kg-m/5500rpm
[0.87kg-m/5500rpm]
変速機 常時噛合式四速リターン
※停止中のみロータリー
タイヤサイズ 前60/100-17(33P)
後60/100-17(33P)
[前70/90-17(38P)
後80/90-17(44P)]
バッテリー GTZ4V
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR6EA-9S
推奨オイル Honda純正ウルトラG1(10W-30)
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.0L
交換時0.8L
スプロケ 前13|後46
[前14|後35]
チェーン サイズ420|リンク106
[サイズ420|リンク100]
車体価格 232,200円
[275,400円]
※[]内は110
系譜図
カブ号F型1952年
Cub F号
初代C1001958年~
SuperCub
C100
1964年式1966年~
SuperCub
C50/65/70/90
1971年式~1971年~
SuperCub
C50/70/90
1980年式~1980年~
SuperCub
50/70/90
2000年式1997年~
SuperCub
50/90
2008年式2008年~
SuperCub
(AA01/JA07)
2012年式50/1102012年~
SuperCub
(AA04/JA10)
2017年式50/1102017年~
SuperCub
(AA09/JA44)

スーパーカブ50/110(AA04/JA10) -since 2012-

スーパーカブ110

それまでのタイから部品を取り寄せて熊本で作っていた流れから、中国での一括生産になった50のAA04型と110のJA10型。

どうして中国製になったのかというとこれにはワケがあります。

というのもスーパーカブというのは国内外問わずコピー商品に悩まされ続けた歴史でもある。

国内では2014年にスーパーカブの形が特許として認められた事で解決しましたが、それが通用しない巨大マーケット中国でのコピーカブ対策はモグラ叩き状態だった。

そこでホンダ取った行動が実に独創的な方法。

それはコピーカブを作って売っていた中でも最大手だった会社との合同会社を設立するというもの。

「コピーを差し止めるのではなく、コピーを本家にしてしまう」

という発想の転換。

新大洲本田

それで誕生したのが

「新大洲本田摩托有限公司」

という主に組立と輸出を行う合同会社です。

コピーを抑えられる上に、低コストな部品供給まで獲得できるホンダ。公式のお墨付きを貰ったコピー会社。

正にWin-Win。

それで誕生したのがこのスーパーカブなんですが、このデラックスの角目とも違う顔には賛否両論・・・というか否定的な声が多かったですね。

JA10顔

カブといえばライト、ウィンカー、フェンダー全てが丸というのが日本人のカブに対するイメージを持っている人が大半かと。

確かにどちらかというとタイカブ系のデザイン。

2012スーパーカブ

一体どうして丸目を止めたのかというと”スーパーカブ”というモデルがグローバルモデルになったからです。

丸目だった先代カブから本格的なグローバルモデルとしてアジアでも売り出したけど総スカン状態だった。

思わぬ躓きに現地でアンケートと取ってみると理由は単純明快。

「代わり映えしない」

という理由から。

アジアでカブが(というかバイクが)根付き出したのは80年代頃。要するに日本ほどまだ歴史を築いていない事が理由。

でもこれは良い意味で捉えると、アジアにとってカブというのは今も当たり前にある日常の下駄であり、日本のようにファッション性が強くなってきた乗り物ではないという事でもある。

インドネシア

「新しさがないなら高いホンダ製じゃなくコピーカブでいい」

この結果にホンダもかなり悩んだそうです。

しかし最終的にアジアの要望を優先しました。まあ日本とは比べ物にならないほどに売れるビッグマーケットを優先するのは当然といえば当然な話。

というか言ってしまうと日本ではもうみんなスクーターばっかりでスーパーカブ買ってくれないし。

でもだからと言ってもう日本のスーパーカブじゃなくなったというとそれは違います。

ちゃんとスーパーカブである根拠はあります。

C100に始まり数々の変更が行われて50年以上経ったけどこの代になっても変わっていない所がある・・・それは荷台の高さ。

荷台

初代のC100が695mmだったんですが、これは歴代どの型も695mmになっています。

これは机の高さと同じで、日本人が屈まずに物を置ける高さ。この高さを1mmでも変えると積み下ろしに違和感や支障が出るためだそう。

しかしこのスーパーカブはそれまでのカブとはフレーム自体が変わったので本当は695mmじゃない。

でもこの695mmというのはスーパーカブのポリシー。

そこでこのスーパーカブは日本仕様だけわざわざ専用のシートフレームに変えて695mmを確保している。売れない日本のためだけにわざわざですよ。

どれだけ日本のためのスーパーカブなんだって話。

そしてこの代でまた別の新たな派生モデルが誕生しました。

クロスカブ(JA10)

クロスカブ

ポップな見た目が特徴的なモデルですが、単にデザインを変更しただけでなくワイドアップハンドルに大径ドラムブレーキ、専用17インチホイールで最低地上高も20mmアップ。

正に文字通りクロスオーバー仕様でハンターカブともリトルカブともプロとも違う全く新しいカブ。

ちなみにリトルカブの方ですが・・・

AA01

一度は生産終了となったのですが、国産カブの系譜を途絶えさせてはいけないと熊本工場での再販化。

国産ということでセル付きモデルで23万円と110と変わらない値段になってしまいましたが、それでも造り続けたのは国産カブの系譜を途絶えさせてはいけないという意地からでしょうね。

熊本製作所

最後に・・・

このカブを担当された今田さんがインタビューでこう仰っていました。

「エンジニアというのは『自分のアイデンティティを出したい、他人のものは使いたくない、変えたい』と思っちゃうんですよね。なのに今まで変えられなかった。スーパーカブを作った開発者の人たちは凄かったと思います。」

と。

更に同じような事をホンダの六代目社長でありNS500などを作った豪腕エンジニアでもあった福井社長も退任会見で言われていました。

C100

「心残りがあるとすればスーパーカブを超えるスーパーカブを造れなかった事。まあ、これは永遠のテーマかもしれません。」

”新しいスーパーカブ”って本当に難しいんでしょうね。

主要諸元
全長/幅/高 1915/700/1050mm
シート高 735mm
車軸距離 1175mm
[1210mm]
車体重量 95kg(装)
[98kg(装) ]
燃料消費率 110km/L
[63.5km/L]
※定地走行テスト値
燃料容量 4.3L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 49cc
[109cc]
最高出力 3.7ps/7500rpm
[8.0ps/7500rpm]
最高トルク 0.39kg-m/5500rpm
[0.87kg-m/5500rpm]
変速機 常時噛合式四速リターン
※停止中のみロータリー
タイヤサイズ 前60/100-17(33P)
後60/100-17(33P)
[前70/90-17(38P)
後80/90-17(44P)]
バッテリー YTX4L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR6EA-9S
または
U20EPR9S
推奨オイル Honda純正ウルトラG1(10W-30)
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.0L
交換時0.8L
スプロケ 前13|後46
[前14|後35]
チェーン サイズ420|リンク106
[サイズ420|リンク100]
車体価格 187,950円
[249,900円]
※[]内は110
系譜図
カブ号F型1952年
Cub F号
初代C1001958年~
SuperCub
C100
1964年式1966年~
SuperCub
C50/65/70/90
1971年式~1971年~
SuperCub
C50/70/90
1980年式~1980年~
SuperCub
50/70/90
2000年式1997年~
SuperCub
50/90
2008年式2008年~
SuperCub
(AA01/JA07)
2012年式50/1102012年~
SuperCub
(AA04/JA10)
2017年式50/1102017年~
SuperCub
(AA09/JA44)

スーパーカブ/110(AA01/JA07) -since 2008-

タイカブ110

「伝統と進化を併せ持つ信頼性の高い新時代のスーパーカブ」

奇しくもスーパーカブC100が生まれてちょうど50年が経った2008年、排ガス規制強化によりカブもFI(電子燃料噴射)化され50(AA01型)と110(JA07型)へと生まれ変わりました。

50はマイナーチェンジであまり見た目は変わっていませんが、110はフルモデルチェンジでマルチリフレクターヘッドライトとなり見た目も一新。

AA04とJA07

これは50が国内生産&組立なのに対し、110はアジア向けのカブとの共有化によるコスト削減のために部品の六割をタイから逆輸入して日本で組み立てるというハイブリッドのような構造になったから。

110になったものそれが理由。だから正確に言うとこの代で50と110は兄弟というよりもハトコみたいな関係というわけ。

ちなみに両モデルともFI化に伴ってエンジンもフレーム共に新設計なんですが、110は更にクラッチも進化しました。

スーパーカブ90のクラッチ

上が先代のクラッチで、下がこのモデルのクラッチ。

スーパーカブ110のクラッチ

これはまあ要するにクラッチを二段にすることでクラッチレスながら変速ショックを和らげるのが狙い。

ちなみにこれはタイカブにも付いていた機能。

そういえばカブの遠心クラッチの仕組みについて話していなかったですね。

要するにエンジン(クランク)の回転による遠心力でクラッチが繋がる仕組み。停車してもエンストしないのはエンジンが止まる前に遠心力が無くなってクラッチが離れるから・・・物凄いザックリですが。

スーパーカブ110

まあ原付のページですし小難しい話は置いておきましょう。構造こそ違えど仕組みはスクーターのクラッチとだいたい一緒です。

だからカブに乗ったことないライダーなんかは、エンストを避けるためにアクセルを煽ってから一速に入れちゃうから一気にクラッチが繋がってウィリー・・・っていうカブあるある。

スーパーカブ50周年

ちなみに排ガス規制によるFI化という世代交代はもちろんメインのカブだけでなく派生モデルへも影響しています。

リトルカブもFI化され、プレスカブはスーパーカブPROとしてこの代からラインナップに常駐するようになりました。

リトルカブとプロ

これらは引き続き熊本産。

そしてこれも。

MD110

実に40年ぶりにフルモデルチェンジというか、初のフルモデルチェンジで90から110になったMD110。

「四速になってキックから開放された(セル付)」

と郵便局員さん大喜びでした。

最後に少し小話を。

一見するとデザインが少し変わっただけに見えるFIカブですが、排ガス規制に対応させるために中身は大きく変わっています。

FI化と簡単に言っていますが、それには各種センサーや、化学反応を起こして排気ガスをクリーンにする触媒などエンジンを管理&監視する補機が大量に必要になる。

各種センサー

そんな中でも大変だったのが燃料を吹く通路のスロットルボディで、スーパーカブ50はスロットルボディの口径が5mmも大きい18mmとなりました。

ただこれは正確に言うと”大きくなってしまった”という方が正しい言い方。本来ならもっと絞ったほうが低速トルクが出せて燃費も稼げる。

スロットルボディ

ではどうして大きくなってしまったのかというと、口径をこれ以上絞ってしまうと人の指が入らず組み立てる事が出来なくなるから。

これでもかなり小型化している世界最小サイズのスロットルボディなんですよ。ガソリンを吹くインジェクターはもちろんアイドルコントロール用バルブとバイパス、圧を測るセンサーやユニットまでモジュール化した高性能スロットルボディとしては現状このサイズが最小。

なんかこういう技術的な問題やスペースの問題と格闘している話を聞くと

JA07壁紙

「開発が一番大変なのは原付なのでは」

と思いますよね。

主要諸元
全長/幅/高 1840/660/1010mm
[1830/710/1040mm]
シート高 735mm
車軸距離 1175mm
[1190mm]
車体重量 79kg(装)
[93kg(装) ]
燃料消費率 110km/L
[63.5km/L]
※定地走行テスト値
燃料容量 3.4L
[4.3L]
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 49cc
[109cc]
最高出力 3..4ps/7000rpm
[8.2ps/7500rpm]
最高トルク 0.39kg-m/5000rpm
[0.86kg-m/5500rpm]
変速機 自動遠心式三速リターン
[常時噛合式四段リターン]
※停止中のみロータリー
タイヤサイズ 前2.25-17(33L)
後2.25-17(33L)
[前2.25-17(33L)
後2.50-17-(43L)]
バッテリー YT4L-BS
[YTZ7S]
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR6EA-9S/CPR7EA-9S
または
U20EPR9S/U22EPR9S
推奨オイル Honda純正ウルトラG1(10W-30)
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量0.8L
交換時0.6L
[全容量1.0L
交換時0.8L]
スプロケ 前13|後40
[前14|後34]
チェーン サイズ420|リンク98
車体価格 155,000円
[249,900円]
※スペックはスタンダード
※[]内は110
系譜図
カブ号F型1952年
Cub F号
初代C1001958年~
SuperCub
C100
1964年式1966年~
SuperCub
C50/65/70/90
1971年式~1971年~
SuperCub
C50/70/90
1980年式~1980年~
SuperCub
50/70/90
2000年式1997年~
SuperCub
50/90
2008年式2008年~
SuperCub
(AA01/JA07)
2012年式50/1102012年~
SuperCub
(AA04/JA10)
2017年式50/1102017年~
SuperCub
(AA09/JA44)

スーパーカブ 50/90-since 1997-

スーパーカブ

これまた結構とんで1997年頃・・・といっても先に紹介したエコノパワーカブから大きな変更はなく、世代的に言うと前ページと同じでカブ史の中では20年以上続いた最長の世代。

そんな中で敢えて挙げるとするなら1996年から採用されたタフアップチューブというタイヤ。

IRCタフアップ

これはスーパーカブの唯一の欠点とも言えるパンクのしやすさを何とかしようとして開発されたチューブタイヤ。まあスーパーカブの欠点というよりチューブタイヤの欠点なんですが。

チューブタイヤというのは自転車と同じように空気が詰まったチューブが入っているタイプのもので、ご存知のように釘などを踏んで中のチューブに刺さるとアッという間に空気が抜けてしまう。

タフアップチューブ

そこで考えられたのがタフアップチューブ。

チューブを二重構造にし、中にパンク修理剤を封入することで万が一クギなどが刺さって穴が空いてもパンク修理剤が飛び出て塞ぐようにしている仕組み。

タフアップチューブの仕組み

これで長距離も安心・・・なハズなんですが、絶対に防げるかと言うとそうでもないのが現実。

例えば見て分かる通りパンク修理剤が入っているのは接地面だけで横には入っていない。

タフアップチューブのサイド

だから例えば路肩で擦るとか、空気圧不足によってリムで擦り潰してしまうなどのサイド起因によるパンクには無力だし、劣化してくるとパンクしていないのに修理剤の封が破れて溢れてくる。

そして何より構造が複雑な分ノーマルチューブに比べて重い上に値段が倍近い(それでも2000円)という事からあまり普及せず、またホンダも後に採用を取りやめたことで2016年頃をもって取り扱っていたIRCも生産を終了しました。

2002年式スーパーカブ

あとは挙げるとするなら70ccが1998年モデルを最後に廃止となり50と90の二台体制となった事と、1999年モデルから排ガス規制対応で0.5馬力下がった事くらい。

マフラーガード無しが規制前、有が規制後モデルです。

それくらいですね・・・では何故ここで区切ったかというと、一貫して国内生産だったカブはこの世代までというのもあるんですが、もう一つは”アレ”が出た年だからです。

リトルカブ
(A-C50)
-since 1997-

リトルカブのカタログ写真

そう「リトルカブ」です。

郵政カブと同じ14インチホイールを履き全体的にコンパクト&カジュアルになった・・・けどカブのスタイルは崩していないお洒落バージョン。

その見た目通り若者が主なターゲットで

「カブ=仕事バイク」

というイメージを払しょくする狙い通り、見事に若い世代にウケました。1999年には排ガス規制に対応しセル付き四速ミッションのAA01型に。

リトルカブ

このリトルカブは

「ホンダ二輪総生産台数一億台目」

という記念すべき車種に選ばれたバイクでもあり、国産カブの大役をのちに担う事になるバイクでもあります。

リトルカブラ

・・・ちなみにリトルカブにもカブラはありました。

主要諸元
全長/幅/高 1800/660/1010mm
[1805/660/1015mm]
シート高 735mm
車軸距離 1175mm
車体重量 78kg(装)
[84kg(装) ]
燃料消費率 135km/L
[60km/L]
燃料容量 4.0L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 49cc
[85cc]
最高出力 4.5ps/7000rpm
[7.0ps/7000rpm]
最高トルク 0.52kg-m/4500rpm
[0.79kg-m/5500rpm]
変速機 自動遠心式三速リターン
※停止中のみロータリー
タイヤサイズ 前2.25-17(33L)
後2.25-17(33L)
[前2.50-17(38L)
後2.50-17-(43L)]
バッテリー FT4L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR6HSA
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
スプロケ 前13|後40
チェーン サイズ420|リンク98
車体価格 155,000円
[177,000円]
※スペックはスタンダード
※[]内は90デラックス
系譜図
カブ号F型1952年
Cub F号
初代C1001958年~
SuperCub
C100
1964年式1966年~
SuperCub
C50/65/70/90
1971年式~1971年~
SuperCub
C50/70/90
1980年式~1980年~
SuperCub
50/70/90
2000年式1997年~
SuperCub
50/90
2008年式2008年~
SuperCub
(AA01/JA07)
2012年式50/1102012年~
SuperCub
(AA04/JA10)
2017年式50/1102017年~
SuperCub
(AA09/JA44)

スーパーカブ 50/70/90-since 1980-

スーパーカブ90

次に大きな変更が加わったのが1980年のこと。

まずそれまでベンリィベースの別物だった90が70のストロークアップ版となり、50と70も翌81年に準拠する共通ボディに変更され完全な三兄弟体制になりました。

スーパーカブ50

そのためかこの世代からスーパーカブ50/70/90と、Cの文字が無くなっています。

※先に話した通りMD90はC90のまま

そして1982年に出たのがカブマニアなら知らぬ者は居ない初代角目モデルのスーパーカブ50スーパーデラックス。

スーパーカブ50デラックス

エコノパワー技術という超低燃費技術により何かの間違じゃないかと思うリッター150kmという驚異的な燃費に。

でも凄いのはただ燃費がいいだけでなく、馬力も5.5馬力と歴代トップな上に四速という文字通りデラックスなこと。

赤カブ

ちなみにしてその時に発売されたのが非常にレアな赤ボディの赤カブです。

しかし驚くのはまだ速い。翌1983年にはスーパーデラックスより更に凄いスーパーカスタムが登場。

スーパーカブ50スーパーデラックス

なんとリッター180km。馬力を0.5落とした代わりに燃費を更に伸ばした燃費スペシャルモデル。

これがカブシリーズで最も低燃費なモデル、つまり原付で最も低燃費なモデルでもあり、いまだにその記録は破られていません。

というか排ガス規制の関係上、もうこれを超える低燃費車は出てこないと思われます。

1986年には電装系が6Vから12Vに変更されハロゲンライトになり、スーパーカスタムの名前はカスタムに変更。

スーパーカブ50スーパーデラックス

断っておくとスーパーカブは飽くなき耐久性と燃費の追求から年次改良が毎年のように入っています。(特にこの頃)

だから同世代でもピストンやバルブヘッドが違うなんて当たり前。恐らく年式による仕様違いを全て把握している人は居ないと思います。

だから余計なお世話ですが、中古を買おうと思われている方は出来るだけ年式の新しいものを、弄るつもり人もそこら辺を注意して下さい。

そしてここで派生モデルを紹介すると1981年に復活したのが相変わらずハンターカブという名前は付かないCT110

CT110

スーパーカブ90をベースに105ccまでボアアップしてパワーを増したモデル。

今回は副変速機はオミットされています。

更に1988年に出たのがニュースカブの後継となるプレスカブ。

初代プレスカブ

サブライト付きの大型バスケットとリアキャリア、積載を考えて大型化されたリアドラムブレーキを搭載した新聞配達特化モデル。

ノーマルタイプとグリップヒーター付きデラックスの二種類で、今あるPROシリーズのご先祖様ですね。

そして帰国子女のようなハイスペックカブことカブ100EX。

初代タイカブ

別名タイカブと言われるタイホンダから引っ張ってきたモデル。

タイカブという名前から全く違う系統と思いがちですが、エンジンの源流はC65なので立派なスーパーカブ。

ただ何人も乗せたりする過酷な使い方を考慮してロングシートとテレスコピックサスペンションを採用しています。

スーパーカブ100

限定3000台だったものの、想定を上回る人気だった為93年から再びスーパーカブ100の名前で輸入されています。ちなみに向こうではドリーム100という名前。

最後にもう一つ紹介しておきたいのが1993年に出たCOBRA・・・じゃなくてCUBRA(カブラ)。

カブラ

これは正確に言うとホンダアクセスが用意した一体型サイドパニア(既存ボディの上から被せる)を始めとしたアクセサリーを標準装着したモデル。

CUBRA

見た目が野菜のカブの様に膨らむことから、関西でそのカブを示す方言カブラと命名。

だけどこのグラマラスに膨らんだラインといい、アクセサリーヘルメットのレーシングストライプといいコブ・・・

主要諸元
全長/幅/高 1835/660/1035mm
[1835/660/1030mm]
{1840/660/1035mm}
シート高
車軸距離 1180mm
[1180mm]
{1185mm}
車体重量 82kg(装)
[83kg(装) ]
{86kg(装) }
燃料消費率 150km/L
[80km/L]
{80km/L}
燃料容量 4.0L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 49cc
[72cc]
{85cc}
最高出力 5.5ps/9500rpm
[6.0ps/7500rpm]
{7.0ps/7500rpm}
最高トルク 0.48kg-m/6500rpm
[0.66kg-m/5500rpm]
{0.79kg-m/5500rpm}
変速機 自動遠心式四速ロータリー
[自動遠心式三速ロータリー]
{自動遠心式三速ロータリー}
タイヤサイズ 前2.25-17-4PR
後2.25-17-4PR
[前2.25-17-4PR
後2.50-17-6PR]
{前2.50-17-4PR
後2.50-17-6PR}
バッテリー
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
C7HSA
[CR6HSA]
{CR6HSA}
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
スプロケ
チェーン
車体価格 137,000円
[149,000円]
{160,000円}
※スペックはSDX
系譜図
カブ号F型1952年
Cub F号
初代C1001958年~
SuperCub
C100
1964年式1966年~
SuperCub
C50/65/70/90
1971年式~1971年~
SuperCub
C50/70/90
1980年式~1980年~
SuperCub
50/70/90
2000年式1997年~
SuperCub
50/90
2008年式2008年~
SuperCub
(AA01/JA07)
2012年式50/1102012年~
SuperCub
(AA04/JA10)
2017年式50/1102017年~
SuperCub
(AA09/JA44)

スーパーカブ C50/70/90-since 1971-

スーパーカブC50DX

1971年からはデラックスグレードが追加。

これはシート下の燃料タンクがボディと一体型になっているモデルで、これから先ずっと続くことになるボディラインの始まりです。

他にもカモメの羽のような形をしていることからカモメハンドルと呼ばれる形のハンドルも特徴的。

ちなみにこのカモメハンドルと行灯というポイントを二つも備えたカブはこのスーパーカブDXだけで一部のカブマニアの間では非常に人気のモデルだったりします。

次に大きな変更点が加わったのが1978年。

スーパーカブC50DX

騒音規制をキッカケにモデルチェンジされたモデル。

行灯のようなポジションライトが廃止となり、モナカ合わせだったマフラーがメガホンタイプに変更。

更にミッションが1→N→2→3だったのがボトムニュートラルのN→1→2→3になりました。

昔のモデルはスポーツバイクと同じで二速にする場合は二回踏み込む必要があったんですよ。

さて、この頃からカブの仕事人仕様が本格的に始動します。

一つはニュースカブというモデル。

ニュースカブ

皆が知る新聞配達用のプレスカブの先駆け的なモデル。新聞協会からの要請によって作られました。

大型のバッグを装備し、スタンドとブレーキを強化、さらに夜間でも見やすいように黄色く塗って視認性を高めたモデル。

そしてもう一つが更にもっと皆が知るモデル。Mail DeliveryのMDシリーズです。

MDカブ

郵政省からの要請により開発されたモデルでフロントフォークがボトムリンク式ではなく、テレスコピック方式で14インチとなっているのが特徴。

チェーンをかけやすいようにフェンダークリアランスが大きめに取ってある割れない鉄フェンダー、グリップヒーター、ハイマウントヘッドライトなど細部まで丁寧に作られています。

ただでさえ高耐久なカブを更に高耐久にして足回りを強化したモデルだから払い下げ品が人気なのが有名ですね。もちろんMDはMDでマイナーチェンジを繰り返しています。

ここでまたちょっと脱線して役に立たない話を・・・

このMDシリーズはカブベースなのでカブと同じようにMD50-MD70-MD90とそれぞれありました。

MD50-70はそれぞれ50ccと70ccのカブエンジンをそのまま使っているため、改良なども足並みも揃えている。

それに対し何故かMD90だけはスーパーカブ90のエンジンが70ベースに新しくなっても、ずっと変わりませんでした。

CS90

つまりにホンダはCM90から始まったこのベンリィエンジンを1980年に市販車が無くなった後も、郵政カブMD90のためだけに2008年まで作り続けた事になる。

強化ミッションや強化クラッチなど専用部品を収まるように作っていたからなのか・・・郵政カブの謎。

主要諸元
全長/幅/高 1805/655/985mm
[1805/655/985mm]
{1820/655/990mm}
シート高
車軸距離 1175mm
[1175mm]
{1180mm}
車体重量 76kg(装)
[78kg(装) ]
{87kg(装) }
燃料消費率 85km/L
[60km/L]
{65km/L}
燃料容量 3.0L
[4.5L]
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 49cc
[72cc]
{89cc}
最高出力 4.8ps/10000rpm
[6.2ps/9000rpm]
{7.5ps/9500rpm}
最高トルク 0.37kg-m/8200rpm
[0.67kg-m/7000rpm]
{0.67kg-m/6000rpm}
変速機 自動遠心式三速リターン
タイヤサイズ 前2.25-17
後2.25-17
[前2.25-17
後2.50-17-6PR]
バッテリー NP4-6
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
C5HSA
推奨オイル honda純正ウルトラオイル(10W-30)
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
0.7L
[0.7L]
{}
スプロケ
チェーン
車体価格 68,000円
[74,000円]
{84,000円}
※スペックはセル付きDX
系譜図
カブ号F型1952年
Cub F号
初代C1001958年~
SuperCub
C100
1964年式1966年~
SuperCub
C50/65/70/90
1971年式~1971年~
SuperCub
C50/70/90
1980年式~1980年~
SuperCub
50/70/90
2000年式1997年~
SuperCub
50/90
2008年式2008年~
SuperCub
(AA01/JA07)
2012年式50/1102012年~
SuperCub
(AA04/JA10)
2017年式50/1102017年~
SuperCub
(AA09/JA44)

スーパーカブC50/C65/C70/C90-since 1966-

C50

恐らく多くの人が思い描くスーパーカブの姿になった1966年~の第二世代スーパーカブ。

ノーマルタイプとM(セル付き)の2モデル展開となったわけですが、最大の特徴はエンジンがOHVから耐久性と燃費向上を図ってOHC化され4.8馬力にまで馬力がアップしたこと。

少しややこしいのですが、この第二世代スーパーカブC50には元となっているモデルがあります。それはC50の2年前に出ていたC65という63ccのスーパーカブです。

C65

スーパーカブ初のOHCエンジンを積んだモデルはこれで、いわゆる先行量産型というやつ。ヘッドライトが少し大きなC100系デザインのバイク。

そしてこの頃のスーパーカブは速くて燃費良くて壊れない上に

「二年5万km保証」

という長期保証によって更に爆発的な人気となり累計生産台数も500万台を突破。

勢いそのままに1968年にはマイナーチェンジが入り先行開発型だったC65も同一ボディのC70に。

C50 C70 C90カタログ写真

特徴は何と言っても二輪初となるポジションライトの採用です。

「行灯カブ」という愛称で今も親しまれています。

少しモデルが多すぎて混乱している人が多いと思うのでここまでを纏めると

C50 C70 C90系譜図

こういう形で、要するにC50はC100の後継なんだけど新設計ボディとC65ベースのエンジンだから厳密に言うと別のモノ。

なんでこんなややこしいことをしたのかというと、フル稼働しているスーパーカブC100の製造ラインを止めることなくOHC化への流れを作らないといけなかったから。

ちなみにC65で作られたエンジンはなんと2000年代のキャブ最終までベースとして続きます。

そしてこの代で出た派生モデルが1968年のCT50です。

初代ハンターカブ

アメリカで先行販売していたハンターカブC105Hの日本版、ただハンターカブという名は付きません。

登坂力18度とアピールしている通り、副変速機という面白い機能を付けています。

CT50

クランクの下にあるレバーによる切り替え方式。

これは要するにドライブスプロケット内にもギアが一つあって変速している内蔵型ダブルスプロケット。

三速でも30kmしか出ないようになる代わりに、圧倒的なトルクで道も荷物も選ばずに走破できるというわけ。

ところで少し話が脱線しますが

「蕎麦屋が片手で運転できるバイク」

というのがスーパーカブのコンセプトだったわけですが、出前のカブとして欠かせないのが「出前機」ですね。

出前機

最近は車やベンリィといったトライクに取って代わられつつあるのであまり見なりましたが、カブと一緒に歴史を歩んできた必須アイテム。

最初はホンダもオプションで発売していましたが、今はマルシンさんだけとなっています。

構造は比較的シンプルで、要はエアサス。

出前機の仕組み

すごく簡単に表すとこんな感じです。本当は一番上の段は吊り下げているんですが。

ちなみにマルシンの出前機は東京オリンピックでは聖火まで出前した(予備の聖火として付いて行った)歴史があります。

出前機セドリック

積んだのはカブじゃなくてセドリックだけどね。

主要諸元
全長/幅/高 1795/640/975mm
[1795/640/975mm]
{1830/640/995mm}
シート高
車軸距離 1185mm
[1185mm]
{1190mm}
車体重量 74kg(装)
[78kg(装) ]
{87kg(装) }
燃料消費率 90km/L
[85km/L]
{80km/L}
燃料容量
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 49cc
[72cc]
{89.6cc}
最高出力 4.8ps/10000rpm
[6.2ps/9000rpm]
{7.5ps/9500rpm}
最高トルク 0.37kg-m/8200rpm
[0.53kg-m/7000rpm]
{0.67kg-m/6000rpm}
変速機 自動遠心式三速リターン
タイヤサイズ 前2.25-17
後2.25-17
バッテリー
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
C5HSA
[C5HSA]
{D6HA}
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
スプロケ
チェーン
車体価格 60,000円
[66,000円]
{76,000円}
※スペックは69(行灯)カブ
系譜図
カブ号F型1952年
Cub F号
初代C1001958年~
SuperCub
C100
1964年式1966年~
SuperCub
C50/65/70/90
1971年式~1971年~
SuperCub
C50/70/90
1980年式~1980年~
SuperCub
50/70/90
2000年式1997年~
SuperCub
50/90
2008年式2008年~
SuperCub
(AA01/JA07)
2012年式50/1102012年~
SuperCub
(AA04/JA10)
2017年式50/1102017年~
SuperCub
(AA09/JA44)

スーパーカブ C125(JA58)-since 2021-

JA58

「New Cub is Your Cub」

2021年9月にモデルチェンジし二代目となったC125/JA58型。

・エンジンをロングストローク化
・圧縮比を9.3から10.0にアップ
・馬力が0.1psアップ
・燃費がWMTCモード値で2.7km/L向上
・ABSを標準装備
・新排ガス規制に対応
・前後サスペンションの見直し
・スマートキーの形状変更
・グレー、ブラックを廃止し新色のレッドを追加

などとなっています。

JA58赤色

主な変更点はエンジンなんですが、これは端的にいうとそれまでのWAVE125iからGROMにベースを変更した事が理由。

もともと親戚みたいな関係だったのに加え、横型エンジンだからこそ可能だった合わせ技のような形。さすが4mini界を支えるエンジン。

見た目の方は先代から大きく変わっておらず、分かりやすいのはいま話したエンジン変更によるケースカバーの造形と、フロントフォークにABSのために付けられたスピードセンサーを隠すためのカバーが付いている事。そしてタンデムステップそしてスマートキーの形状が変更された事くらい。

JA48とJA58

まあそもそも歴代スーパーカブがそうだったように、カブらしさを大きく変える事は不可能に近いですからね。

ということで余談ですが

「じゃあそのカブらしさとは何か」

っていう話を少し。

初代スーパーカブのコンセプトを端的に表すと

「親しみやすく使い勝手の良い乗り物」

でした。

これがカブらしさの原点であり、スーパーカブの歴史はこのコンセプトを磨き上げるモデルチェンジの繰り返しともいえます。

例えばあるスーパーカブ開発者は低燃費性を上げる改良を行いました。

これは

「いつガソリンを入れたか忘れさせるのがスーパーカブだ」

という面白い表現というか考えから。

ではC125の開発で大事にされたカブらしさが何かというと

JA58のコンセプト

「自然と綺麗な姿勢になるように」

だったそうです。言われてみれば確かにスーパーカブってそうですよね。

ナイセスト ピープル

ちなみにこの広告は今回追加された赤モデルの元ネタ、アメリカ向けスーパーカブことCA100。※郵政カブじゃないですよ

ただそれでもスーパーカブの基本形は変わっていない。これが何故かといえばスーパーカブの形っていうのは、完成が高くて変えようがないからなんですね。

これはスーパーカブの系譜でも書いたのですが、長い歴史で色んな開発者が携わる中で、みな自分の色を出そうと模索するけど結局出来なかった歴史でもある。

変えないようにしたわけではないです。スーパーカブは既に我々の想像を遥かに超える高いレベルの域にあったから、ホンダの技術者をもってしても変えられなかったんです。

象徴的な一つエピソードを紹介すると2005年の東京モーターショーに出されたE4-01というモデル。

ナイセスト ピープル

一見するとスーパーカブと何の関係も無いように思えますがそうでもない。

というもの、このモデルは二輪の頂であるWGP(NSR500)そしてMotoGP(RC211V)の開発指揮を取り続けた吉村さんという方が、HRCを離れホンダ社員として最後に

「究極的に使い勝手の良い世界一のバイク」

として考案し開発されたモデル。

『Elegance』『Excitement』『Enjoyment』『Easy』という四要素を備えている事からE4-01と名づけられたんですが、吉村氏はこれを造りあげたときにショックを受けた。

「これスーパーカブとレイアウトが同じだ」

と気づいたからです。#Racers13|三栄書房より

MotoGPを牽引してきた超大御所ですら、人を豊かにする世界一のバイクをゼロから造ってみたらスーパーカブになってしまった。スーパーカブを超える事は出来なかったというお話。

JA58壁紙

この形は懐かしいとかオシャレとかネオクラシックとか色んな魅力が詰まっているのは事実ですが、あくまでもそれは肉付けであって骨格は結局のところ”スーパーカブ”である事にある。

つまりスーパーカブC125っていうのは、ただ振り返って開発されたモデルではなく、振り返ったうえでもう一度前を見据えて開発された

『ホンダイズムのフラッグシップ』

といえるのではないかと。

主要諸元
全長/幅/高 1915/720/1000mm
シート高 780mm
車軸距離 1245mm
車体重量 110kg(装)
燃料消費率 66.1km/L
※WMTCモード値
燃料容量 3.7L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 123cc
最高出力 9.8ps/7500rpm
最高トルク 1.0kg-m/6250rpm
変速機 常時噛合式4速リターン
タイヤサイズ 前70/90-17M/C(38P)
後80/90-17M/C(50P)
バッテリー YTZ5S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR7EA-9
推奨オイル Honda純正ウルトラG1
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.0L
交換時0.8L
フィルター交換時0.85L
スプロケ 前14|後35
チェーン サイズ420|リンク106
車体価格 400,000円(税別)
系譜図
JA482019年
SuperCub C125
(JA48)
JA552020年
CT125・HunterCub
(JA55)
JA582021年
SuperCub C125
(JA58)

CT125・ハンターカブ(JA55) -since 2020-

JA55

「自然をゆったり楽しむ、トレッキングCub」

2020年3月に登場したハンターカブことCT125/JA44型。

先に紹介したC125をベースとしつつも

・メインフレームを強化すると共にリアを延長
・大型のリアキャリア
・ホイールベースを+10mm延長
・ハンドルを一般的なトップブリッジ式に
・スチームリム/ステンレススポークの17インチ
・上記に伴いセミブロックタイヤの装備
・フロントフォークのストローク量を+10mm
・ABS付フロント2ポットΦ220mm/リア1ポット190mmへ
・給排気系統の見直しにより低中速に厚みを持たせ最低地上高もアップ
・エンジンガードを標準装備

などなど、雰囲気だけではなくちゃんと荷物を積んでのトレッキング出来るよう、随所に変更が施されています。

JA55パワーカーブ

日本でのトレールブームというかアウトドアブーム、それからコロナによるロックダウンでの部品供給問題も相まって納車半年待ちやら受注停止やらでとんでもない事になったのが記憶に新しい人も多いかと。

さて・・・トレッキングカブことハンターカブですが

「名前は知ってるけど歴史はあまり知らない」

って人も結構多いじゃないでしょうか。それも無理のない話でハンターカブは知名度の割には・・・ということでちょっとハンターカブの歴史についてザックリ書きたいと思います。

ハンターカブの始まりは1962年のC100Hになります。

C100T

オフロード大国であるアメリカからの強い要望で造られたモデルで日本には入ってきていません。

C105Tシルバーメッキ仕様

ちなみにこれはC100H発売された年に優秀は成績を収めたホンダ販売店に特別に送られたシルバーモンキーならぬシルバーハンターカブ。

更にこの翌年の1963年にはアップマフラーを採用したC105Hが登場。

JA55パワーカーブ

もうこの時点で既にハンターカブらしいワクワクさせる出で立ち。

要するにハンターカブっていうのはアメリカの要望によって生まれたアメリカ発祥カブという事なんですが、では日本でハンターカブが登場したのはいつかというと、その五年後となる1968年のCT50というモデルから。

CT50

3速・副変速機付きでエンジンガードやアップマフラーを採用とかなり本格的ですが、これはいま説明したアメリカ向けC105Tをベースに造られた逆輸入車みたいな形。ただし販売が振るわず、わずか三年足らずでカタログ落ちとなりました。

その後どうなったかというと1981年にアメリカ向けに作られていたCT110をまた逆輸入する形で再登場。

CT110

四速モデルで、このページの主役であるCT125の元ネタでもあるモデルなんですが・・・実はこれも当時は販売が振るわなかった。

というのもこの頃というのは安価なファミリーバイクが乱立していた時代だったから。その後アメリカでも1986年を最後にCT110が生産終了となり市場から姿を消すことになります。

ただ、オーストラリアの郵便配達バイクという官需があり、それのみ2012年まで続きました。レッドバロンが個人輸入して販売していたのでご存知の方もおられるかと。

そう、つまりハンターカブっていうのは実は初登場の1968年から52年間のうち、世に出たのは僅か二代8年間のみしか販売されておらず、それほど華々しい歴史があるわけでも、長い歴史があるわけでもないんですね。

JA55サイド

にも関わらず何故かみんなハンターカブを知っているし、CTではなくハンターカブと愛称で呼ぶ。

面白いのがホンダ社内でも同様で開発中は色んな人から厳しい目でみられる始末。JA55の開発責任者代行だった出羽さんはかなりのプレッシャーに晒されたんだそう。

ホンダCT125/JA55

これが何故か考えたんですけど、それはやっぱり見ただけでワクワクすること。これに乗ったら間違いなく童心に帰る事が出来るからでしょうね。

主要諸元
全長/幅/高 1960/805/1085mm
シート高 800mm
車軸距離 1255mm
車体重量 120kg(装)
燃料消費率 67.2km/L
※WMTCモード値
燃料容量 5.3L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 124cc
最高出力 8.8ps/7000rpm
最高トルク 1.1kg-m/4500rpm
変速機 常時噛合式4速リターン
タイヤサイズ 前80/90-17M/C(44P)
後80/90-17M/C(44P)
バッテリー YTZ5S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR6EA-9/U20EPR9
推奨オイル Honda純正ウルトラG1
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量0.9L
交換時0.7L
スプロケ 前14|後39
チェーン サイズ428|リンク108
車体価格 400,000円(税別)
系譜図
JA482019年
SuperCub C125
(JA48)
JA552020年
CT125・HunterCub
(JA55)
JA582021年
SuperCub C125
(JA58)

スーパーカブ C125(JA48) -since 2018-

スーパーカブC125/JA48

「Personal Commuter for Global “NICEST LIFE”」

2017年の東京モーターショーの大反響から約一年半経った2018年の6月に登場したスーパーカブC125/JA48型。

ナンバリングそれに見た目からも分かる通り、このモデルは既存のスーパーカブシリーズとは違い、大成功を収めた第一世代の初代スーパーカブC100をリボーンさせた形になります。

第一世代と第二世代

最大の特徴であるハンドルからフロントフォークまで一体化したフロントデザインが見事に再現されていますね。

ちなみこのフロントデザインはディズニーの小鹿、バンビ(が前足を突っ張って急ブレーキする仕草)からインスパイアされたものだったりします。

更にいうとシートの赤紫はキャサリンヘップバーン主演の映画『旅情』で登場するベネチアングラスの色から。青は日本の空と海の色が由来でこれまた見事に再現。

※Honda DESIGN Part1|東京エディターズより

もちろん当初から60年後のモデルなので大きく変わっている部分もあります。

スーパーカブC125のディメンション

キーレスやフルLEDの灯火系、それにギアインジケーター付き液晶メーターなどもそうですが、一番目につくのは足回りで、ボトムリンク/スポーク/ドラムからテレスコ/キャスト/ディスクとなっています。

スーパーカブC125の足回り

これは恐らく海外用にABSを装備する必要性があり、そうなるとディスクブレーキがほぼ必須。更にそうなるとボトムリンク式フォークだとディスク(キャリパー)を付けるのが厳しくなるからかと。

キャストホイールになっているのもディスク化された事にデザインを合わせる狙いがあったんだろうと思います。

まあデザインも非常に洗礼されている上に、これで遂にチューブレスタイヤを履けるようになったわけで、ネオレトロらしい使い勝手の向上といえる内容かと。

ただもう一つ劇的に変わっているというか、C125のデザインで要となるポイントは横から見た時のシルエット。

C125コンセプトデザイン

横から見たときに綺麗なS字を描くようになっている。

このラインはC100には無いもので、C125はこのS字を描くために各部を1mm単位で調整している。

「なんでC125はリアフェンダーが鉄なんだろう」

と疑問に思われた方もおられると思いますが、それもこのS字を描く際にプラフェンダーでは強度の問題で綺麗な尾を描けないからわざわざ鉄が採用されているんです。

JA48サイド

ぜひとも一度はセンタースタンドを立てて正面や斜めではなく、真横から見て惚れ惚れして欲しいと思う今日このごろ。

ウイングマークが敢えての旧タイプなのも良い味出していますね。

中身の方を話していなかったので続けると、エンジンはタイ向けに採用されているウェーブ125iがベースですがもちろんそのままではありません。

JA48エンジン

プライマリーギアのヘリカル化(螺旋状化)に加え、高精度のクランクジャーナルベアリングを採用することでエンジンノイズを低減。さらにシフトドラムにベアリングを装着し、各部に防音のためのラバーまで装着。

これによりC125は見た目に驚くだけでなく、乗っても驚く。

と言うのもC125もスーパーカブの例にもれずシフトペダルを踏むだけでクラッチが切れるクラッチレス自動遠心クラッチ。

だからギアチェンジの時は

「ガチャコン」

と結構大きなショックと音が出る・・・というイメージを持っていませんか。それは昔の話です。

スーパーカブは現行の時点で二段クラッチ化(発進用の遠心シュー式/変速用の多段クラッチ式)されており、非常にスムーズになっているんですが、C125はそこから更にいま説明したベアリングの追加やデットニングのおかげで物凄くジェントルにシフトチェンジする。

C125のステップ

加えてこの盛り盛りステップだからシフトチェンジを一回するだけで

「ただのスーパーカブじゃない。40万円は伊達じゃない。」

と実感すること間違いなし。

JA48エンジン

最後に少し蛇足的な余談をすると、このスーパーカブC125はスーパーカブ史の中でもダントツで異質なスーパーカブだと思います。

というのも、スーパーカブの歴史というのは

・日本(欧米)では社用車や下駄車

・アジアでは一家に一台のファミリーカー

という二面性のような形で何十年も続いてきた歴史があります。

しかし税別37万円という車体価格からもわかる通り、このC125は日本でも東南アジアでも欧米でも、つまり世界中で

「ノスタルジックなスーパーカブ」

という形で世に出ているんです。これはスーパーカブ史にとっては本当に異質なこと。

そもそもなんで今こんなモデルを出したのかという話を少しすると

・懐古(ネオレトロ)ブーム

・スーパーカブが60周年

などで日本でも大人気となっているんですが、もうひとつ面白い要素として紹介したいのが

「アジアで日本ブームが起こっている」

ということ。

この頃、アジア(特にタイやインドネシア)ではとにかく和風なものが好まれていて、そうした時にこのC125っていうのは向こうの人達からすると日欧米より衝撃なモデルなんです。

何故なら

「初代スーパーカブC100はアジアで売ってなかったから」

です。

そして同時に所得が上がってきたことから、下駄車でも少し贅沢なモデルが売れるようになってきた。

タイにあるカブハウス

そんなもんだから和の香りがプンプンするC125は、それはもう堪らんという話。

ちなみに上の写真はそれに合わせてタイホンダと現地カフェショップのコラボによって建てられたカフェ兼ちょっとリッチな125を取り扱うオシャレなバイクショップ。

C125がこれまでのスーパーカブと立ち位置が全く違うモデルである事が一目瞭然かと。

主要諸元
全長/幅/高 1915/720/1000mm
シート高 780mm
車軸距離 1245mm
車体重量 110kg(装)
燃料消費率 66.1km/L
※WMTCモード値
燃料容量 3.7L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 124cc
最高出力 9.7ps/7500rpm
最高トルク 1.0kg-m/5000rpm
変速機 常時噛合式4速リターン
タイヤサイズ 前70/90-17M/C(38P)
後80/90-17M/C(44P)
バッテリー YTZ5S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR6EA-9/U20EPR9
または
CPR7EA-9/U22EPR9
推奨オイル Honda純正ウルトラG1
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.0L
交換時0.8L
スプロケ 前14|後36
チェーン サイズ420|リンク106
車体価格 370,000円(税別)
系譜図
JA482019年
SuperCub C125
(JA48)
JA552020年
CT125・HunterCub
(JA55)
JA582021年
SuperCub C125
(JA58)