KLE250(LE250A)-since 1993-

KLE250アネーロ

「ATTRACTIVE QUARTER」

なんとも珍妙な色と形をしているKLE250ANHELO。

“ANHELO”はアネーロといいスペイン語で”憧れ”の意味なんですが、カタログもこれまた凄く珍妙。

KLE250カタログ写真

いわゆる未舗装路もそれなりに走れるデュアルパーパスモデルで400/500がほぼ同じデザインで先に出ていたわけですが、カタログにも描いてある通りアネーロにはモチーフになった鳥がいます。

KLE400カタログ写真

それはオーストラリアに生息する非公式の国鳥エミュー(上の写真はKLE400)です。言われてみれば何となくそう見えなくもない気がしないでも・・・。

エミュー

見た目に反して温厚で人懐っこい性格の持ち主。だからイメージに選ばれたのかもしれませんね。

肝心の車体の方はというと、足はストロークが深いサスペンションにフロント21インチのスポークホイールを履かせて走破性をアップ。

LE250A

しかしながらフレームはダブルクレードルフレームなので二気筒なのも相まって車重は少しある。それにエキゾーストパイプがエンジンの下を通るから最低地上高も高くない。

何よりエンジンがZZR250の並列二気筒を特に下(低速トルク)を太らせるわけでもなく基本そのままだからソコソコ高回転寄り。だからコレで未舗装路を走るには結構スキルが居る。

KLE250カタログ写真

オンロード性能はというと荷物を載せられる頑丈なキャリアを付けて長距離のツーリングも考慮されてるんだけど、シートがあまりヨロシクなくお尻がすぐに痛くなる上にタンク容量が12Lしか入らないので航続も得意な方ではない。

器用貧乏と言えるほど器用でも・・・例えるならスプリンターデュアルパーパスといったところでしょうか。

250アネーロ広告写真

当時の広告もこれまた何を表したいのか・・・しかしまさかコレが20年以上の時を経て復活するなんて誰が想像したでしょう。

主要諸元
全長/幅/高 2150/825/1165mm
シート高 805mm
車軸距離 1445mm
車体重量 146kg(乾)
燃料消費率 43.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 12.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 248cc
最高出力 35ps/11000rpm
最高トルク 2.4kg-m/10000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前3.00-21(51S)
後120/80-17(61S)
バッテリー YTX7L-BS
プラグ CR8HSA
または
U24FSR-U
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量1.9L
交換時1.6L
フィルター交換時1.9L
スプロケ 前14|後43
チェーン サイズ520|リンク106
車体価格 449,000円(税別)
系譜図
アネーロ2501993年
KLE250 ANHELO
(LE250A)
ヴェルシス2502017年
Versys-X 250
(KLE250D)

VERSYS650/ABS(LE650E/F) -since 2015-

KLE650e

「All Roads, One Bike」

シリーズ展開されるようになった事から車名に650が付いてシリーズ統一顔へと変貌した三代目のVERSYS650/LE650E型とABSのLE650F型。

今回も主な変更は

・リアをキャリアからグラブバーに変更

・リモート式プリロードアジャスターリアサス

・VERSYSシリーズで統一されたデザイン

など約10年ほど経ったにも関わらず基本的にそのままでお色直しがメイン。

兄弟車が

ER→Ninja650R/ER-6n→Ninja650/Z650

と世代を重ねていったのに対してヴェルシスはずっとそのままだったので離れ離れというか実質的に別モデルに近い存在になりました。

しかし残念ながら日本での冷遇は先代から変わらずで国内正規取り扱いをしなかったのは勿論、ブライト(正規逆輸入車)も2016年モデルをもって取り扱い終了。

ブライト最終モデル

実質的にABS付きのF型を2年売っただけ。これが最終モデルになります。

日本ではNinjaとZのツートップ体制で台数がそんなに稼げない事が関係しているかと思いますが、一方で欧米では2021年時点でも健在。

このモデルからはバリエーション展開もされており厳しいミドル市場で定評を得ています。

KLE650e

ところでヴェルシス650は先代でも言ったようにデザイン変更がメインで中身は2007年からそんなに大きく変わってない。

なのに今でも第一線で売られてるだけではなく、新しいミドルデュアルパーパスが出るたびに必ずと言っていいほど比較対象に引っ張り出されたりしています。

そしてそこで何処を見ても大体

スクリーンとメーター

「降りないとスクリーン調整出来ない」

「メーターデザインが古い」

などの細かいネガの指摘に始まり走行性能なども比較される。

系譜を見ると分かる通り物凄く息が長いモデルなので

「世代が全然違うのに比べるのは酷でしょ」

と一瞬ヴェルシス650に同情心が湧いたんですが・・・その必要はなかった。むしろそれこそ失礼な話。

わざわざ引っ張り出すのにはちゃんと理由があった。

ヴェルシス650壁紙

「ヴェルシス650はミドルアドベンチャーの要点を一番抑えてるモデルだから」

です。

・良好な防風性と視界のポジション
・乗り心地良好なシート
・オンが主軸ながらオフも多少は行ける足回り
・軽い車重とマスの集中化をもたらすパラツイン
・低中速に厚みを持たせ650ながら過不足ないパワー
・実燃費20km/L越えの燃費と19Lビッグタンク
・フォグや片手で開けるパニアなど豊富なOP
・クラスなりの車格と価格

ヴェルシス650は当たり前に思えて意外と難しいミドルデュアルパーパスの要点全てで及第点を取ってるんです。

ブライト最終モデル

だから10年以上経とうが排気量が近い新しいモデルが出るたびに引っ張り出される。

Ninja650やZ650など兄弟車がモデルチェンジしてもヴェルシス650だけは大きく変わらなかった理由もここにあるんじゃないかと思います。

『性能/利便性/コスト』

その全てが奇跡とも言えるバランスで調和しているから大きく変わらず、また変えずとも20年弱経った今でもベンチマークにされる。

カワサキヴェルシス650

カワサキブランドのエヴァみたいな顔のバイクという事から破天荒なイメージを抱きがちですが、実は全くもってリーディングエッジじゃないどころか良く出来たバランスを保ち続けている超保守的なミドルデュアルパーパスなんですね・・・だから日本には入ってこないのかもしれない。

主要諸元
全長/幅/高 2165/840/1400mm
シート高 840mm
車軸距離 1415mm
車体重量 208kg(装)
燃料消費率
燃料容量 21.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 649cc
最高出力 69.0ps/8000rpm
最高トルク 6.5kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー FTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
推奨オイル JASO MA
SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時1.7L
フィルター交換時1.9L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク114
車体価格 939,600円(税込)
系譜図
LE500A1991年
KLE500
(LE500A)
LE500B2005年
KLE500
(LE500B)
KLE650A/B2007年
VERSYS/ABS
(LE650A/B)
KLE650C/D2010年
VERSYS/ABS
(LE650C/D)
KLE650E2015年
VERSYS650/ABS
(LE650E/F)

VERSYS/ABS(LE650C/D) -since 2010-

KLE650c

「Street Surfing」

ヴェルシスとしては初モデルチェンジで二代目となったVERSYS/LE650C型とABS付きのLE650D型。

最初に主な変更点を上げておくと

・縦型デュアルヘッドライト

・角度調節機能付きスクリーン

などでどちらかというとルックス変更がメイン。

ヴェルシスは欧州がメインなのでデザインもER-6に非常に近い独特な物だったんですが、今回のモデルチェンジで更に独創的な物になりました。

LE650C壁紙

良い意味でタフギア感が増したというかボトムズ感が出たというか・・・ちなみに説明を忘れていたのですがVERSYSの名前の由来は

『Vertex(頂点)+System(システム)』

を掛け合わせた造語になり、もう一つ補足としてこのモデルまでは正確に言うとVERSYS650ではなく

『VERSYS』

だけで数字は付きません。まだこの頃はシリーズ展開しておらずこのモデルだけだったからです。

・・・ってもう書けることが無い。

以下は余談なんですが、このヴェルシスって欧州の方ではインプレや比較が結構されている一方で日本国内ではビックリするぐらい露出は疎か情報すら皆無なんですね。

逆輸入車(ブライト取扱)という事でメーカーが取り上げないというのも勿論あるんでしょうが、メディアやカワサキ系販促を見てもそもそも掲載すらしてないのが当たり前という冷遇っぷり。

LE650Cブライトカタログ

載っていたのはせいぜいブライトのカタログの一コマくらいで

「これ買った人はよく見つけたな」

と感心するほどだったりします。

主要諸元
全長/幅/高 2125/840/1330mm
シート高 845mm
車軸距離 1415mm
車体重量 206kg(装)
燃料消費率
燃料容量 19.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 649cc
最高出力 64.0ps/8000rpm
最高トルク 6.2kg-m/6800rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
推奨オイル JASO MA
SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時1.7L
フィルター交換時1.9L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク114
車体価格 840,000円(税込)
系譜図
LE500A1991年
KLE500
(LE500A)
LE500B2005年
KLE500
(LE500B)
KLE650A/B2007年
VERSYS/ABS
(LE650A/B)
KLE650C/D2010年
VERSYS/ABS
(LE650C/D)
KLE650E2015年
VERSYS650/ABS
(LE650E/F)

VERSYS/ABS(LE650A/B) -since 2007-

KLE650A

「ストリートサーフィン」

ここで登場するのが今も続くヴェルシス650の始まりとなるVERSYS/LE650A型とABS付きのLE650B型で、日本に入ってきていた(ブライトが取り扱った)のはA型のみになります。

チラリと顔を覗かせるガチャピンエンジンからも分かる通りER-6がベースになったもののヴェルシスだけ特別に

・低中速に厚みをもたせるチューニング
・フルアジャスタブル倒立フォーク
・7段階プリロード及び13段階伸側減衰力の調節機能付きリアサス
・アルミスイングアーム
・19Lフューエルタンク

などのVIP待遇を受けています。

ガチャピンエンジン

念の為に補足しておくとガチャピンと言われる様になった理由はこれ。

先代比べて何が大きく変わったのかといえば共有の17インチホイールが採用されデュアルパーパスながらストリート色が強いモデルになったこと。

KLE650A壁紙

・・・なんですが、じゃあなんで特別な装備がわざわざ奢られたという話。

その理由は

『ストリートサーフィン』

というヴェルシスのコンセプトを実現するため。

これは簡単に言うと、とにかくライダーに自由なライディングをしてもらうという狙いになります。

KLE650Aサイド

ヴェルシスはER-6とほぼ共有ながら決定的に違う部分があります・・・それはポジションです。

「デュアルパーパスなんだから当たり前でしょ」

と怒られそうですがそう単純な事ではありません。

その違いを最も象徴している部分はシートになります。

KLE650A各部

ヴェルシスはER-6ベースながらわざわざ絞って反って跳ね返らせ、タンデムシートを切り離したセパレートタイプが新たに用意されている。

こうすることでライダーの有効着座面積を広げると共に高さにも差を付け、シチュエーションによって前乗りや後ろ乗りなど誰が活用する着座位置による荷重変化幅を凄く大きく取れるようになっている。

そしてここに合わせられるのがVIP待遇の各部。

極端な走行でもアンダーコントロール出来るよう掌握しやすいワイドハンドル、そしてストローク量を稼げる倒立フォーク、簡単にはヨレないアルミスイングアームなど許容量を上げるような装備が奢られてる。

LE650A壁紙

『どんな乗り方も許容する』

というデュアルパーパスの根本を大事にした結果がこれだけの特別な装備であり、ストリートサーフィンというヴェルシスの魅力なんですね。

主要諸元
全長/幅/高 2125/840/1315mm
シート高 840mm
車軸距離 1415mm
車体重量 207kg(装)
燃料消費率
燃料容量 19.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 649cc
最高出力 64.0ps/8000rpm
最高トルク 6.2kg-m/6800rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
推奨オイル JASO MA
SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時1.7L
フィルター交換時1.9L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク114
車体価格
系譜図
LE500A1991年
KLE500
(LE500A)
LE500B2005年
KLE500
(LE500B)
KLE650A/B2007年
VERSYS/ABS
(LE650A/B)
KLE650C/D2010年
VERSYS/ABS
(LE650C/D)
KLE650E2015年
VERSYS650/ABS
(LE650E/F)

KLE500(LE500B) -since 2005-

KLE500日本仕様

「Multi-Fun machines」

EURO2という欧州の排ガス規制を機に、実に14年ぶりというとんでもない年月の後にモデルチェンジした二代目のKLE500/LE500B型。

誰も覚えてない、もしくは知らず

「とんでもない形をしたZ1000みたいだ・・・」

と驚愕してる人も多いと思いますが、このモデルは先代と違いブライトが逆輸入車として取り扱いをしていました。

ブライト正規取り扱い

ちゃんと国内にも売ってたんです。

まず走ってるのを見た事ない人が大半だと思いますが、一部の超物好きにはフロント21インチの軽量デュアルパーパスという事で今も名前が上がったり。

KLE500Bサイド

先代からの主な変更点としては外見とシートの改良でエンジンはハーフニンジャを続投。

規制に合わせて3馬力/200rpmほど抑えられていますが、それ以外は基本的に先代を続投する形になっています。

ダカールラリーを皮切りにまさかのご長寿モデルとなったKLE500なんですが、KLE500がラリーに参戦したのはそれっきりで再戦する事はありませんでした。

では一体どうしてこんな何年も販売される事になったのか、一体何処らへんが評価されて10年以上も続くモデルになったのか気になったので欧州レビューを読み漁ってみたところ

「何の気兼ねもなく乗れる日常万能車」

という感じで評価されていました。

KLE500B

並列二気筒エンジンを中低速寄りにチューニングしたものだからコンパクトで、トルクも回転数に依存せず出てくれるから取り回しが良い。

加えて6速だから街乗りだけではなくツーリングもお手の物だし、オフロードの方もフロントが21インチな事もあって多少のことなら難なくこなせる。

オマケにハンドルガードやアンダーガードまで標準装備で車体価格も安いという事も相まって一番気軽に乗れる下駄車&エントリーモデルというミドルデュアルパーパス冥利に尽きるような需要があったようです。

余談ですけどこれなにが面白いってベースとなっているEX-5/GPZ500も向こうでは

「買って間違いないロードスポーツのエントリーモデル」

みたいな評価だった事。

兄弟車

やはり血が繋がっているだけの事はある。出来る兄弟ですね。

ちなみにKLE500はGPZ500向けのハイカムやピストンなどでパワーアップが出来るちょっと美味しい思いを出来る立場でもありました。

主要諸元
全長/幅/高 2215/880/1270mm
シート高 850mm
車軸距離 1500mm
車体重量 181kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 498cc
最高出力 44.9ps/8300rpm
最高トルク 4.2kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前90/90-21(54S)
後130/80-17(65S)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR9EA
または
X27ESR-U
推奨オイル JASO MA
SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前17|後44
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格
系譜図
LE500A1991年
KLE500
(LE500A)
LE500B2005年
KLE500
(LE500B)
KLE650A/B2007年
VERSYS/ABS
(LE650A/B)
KLE650C/D2010年
VERSYS/ABS
(LE650C/D)
KLE650E2015年
VERSYS650/ABS
(LE650E/F)

KLE500(LE500A) -since 1991-

KLE500A

「WILD AT HEART」

カワサキが1991年に発売したKLE500/LE500A型。

日本も発売されたKLE400の欧州専売モデルで、400と同じくトレール用のパイプフレームにハーフニンジャことEX500(GPZ400Sの500版)のエンジンを中低速よりにチューニングしたものを積んだデュアルパーパスになります。

このモデルを出した理由はダカールラリー、そしてそこからのデュアルパーパスという文化が欧州で流行っていた事が要因かと。

KLE500のカタログ写真

ただカワサキはダカールラリーにはワークス参戦もしていなかったのでインスピレーションやバックボーンがあるわけでもなく、ダカールラリーを睨んで造られたわけでもない。

正直に言うと燃料タンクが15Lしかないのも見ても分かる通り、あくまでも需要があるから造られた雰囲気ラリーレイド的な存在でした。

ただしそこで終わらなかったからヴェルシスへと続く長い系譜になった。

KLE500ラリーレイド

なんとこのKLE500もダカールラリーに1991年から参戦したんです。

「ダカールはテンガイじゃなかったっけ」

と思われている方も多いかと。

確かにテンガイもフランスカワサキ主導で参戦していたんですが、一方でKLE500もイタリアカワサキが主導して参戦していたんです。

1992年のダカールラリー

このダカールラリー参戦がKLE500の命運を決めました。

というのもイタリアヤマハはKLE500が1991年に発売されるとすぐにダカールラリー参戦を計画し、API(イタリアの石油企業)というメインスポンサーの獲得に成功したことで実現。

しかし伊カワサキはタンクを54Lのビッグタンクに変更したくらいで、それ以外の部分は大きくKLE500からかけ離れるようなチューニングをしなかった。

1992年のダカールラリー

要するにプロダクション(市販車)みたいな形でレースに出場。

もちろんワークス体制でバリバリのファクトリーマシン(試作車)を用意していたライバルには敵わなかったんですが、見事に走り切る事に成功し500クラスとしては優秀な成績だった。

いろんなページで言ってるように当時のラリーは欧州をメインに一番加熱していた時代だったからこの事で

「カワサキの市販デュアルパーパスやるじゃん」

と最高のアピールになったんです。

またEX-5/GPZ500ベースで価格も抑えていた事も相まって飛ぶように・・・とまでは言わないけどイタリアやスペインを中心に広く認知されるようになった。

LE500Aのカタログ写真

ダカールラリーというバックボーンを販売後に作るという一風変わった背景を持ってるKLE500。

「試合に負けて勝負に勝ったデュアルパーパス」

と言えるかと。

主要諸元
全長/幅/高 2215/880/1270mm
シート高 850mm
車軸距離 1500mm
車体重量 181kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 498cc
最高出力 48ps/8500rpm
最高トルク 4.3kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前90/90-21(54S)
後130/80-17(65S)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR9EA
または
X27ESR-U
推奨オイル JASO MA
SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前16|後44
チェーン サイズ520|リンク108
車体価格
系譜図
LE500A1991年
KLE500
(LE500A)
LE500B2005年
KLE500
(LE500B)
KLE650A/B2007年
VERSYS/ABS
(LE650A/B)
KLE650C/D2010年
VERSYS/ABS
(LE650C/D)
KLE650E2015年
VERSYS650/ABS
(LE650E/F)

KLX125(LX125C) -since 2009-

KLX125

「Fun to ride」

80年代にあれだけ流行っていた林道ブームが完全に去ってしまった事と、排気ガス規制により死滅状態になってしまった市場に登場したKLX125。

それまでのフルサイズと違い75%くらいのミニモトサイズ。タイを中心に発売されているKLX150をベースがベースです。

KLX150

スチール製ペリメターフレームや5速ミッション、フルデジタルメーターなど125としては結構上等な装備をつけています。更にISC(アイドルスピードコントロール)付きのFIとセルも装備。

125オフが実質KLX125一択だったこともあり初動は良かったようです。

D-TRACKER125
(LX125D) 
-since 2009-

D-TRACKER125

「easy to ride」

こちらはモタードモデルのD-TRACKER125(LX125D)。KLXとの違いは倒立フォークと前後14インチのホイールを履いている事。ミラーなどの細部も変更されていたりします。一部では小虎という愛称で親しまれていますね。

LX125C/LX125D

2012年にレギュレーターやシートが改良され、2014年にはサスペンションの変更が入っています。

残念ながらD-TRACKER125の方は2015年、KLX125の方は2016年モデルをもって生産終了(店頭在庫のみ)となりました。後継が控えてるとは思いますが。

LX125D

さて・・・4st空冷2バルブエンジンで10.2馬力という点を見てもらうと分かる通り、KLX125/D-TRACKER125はお世辞にも速いとはいえない125です。場合によっては昨今のスクーターより遅いです。今時の125MTにしては走る方ですけどね。

それは4stになったという事が大きいわけですが、ご存知の通り2stと4stでは抗えないほどの差があります。馬力で比べるとKDX125SRの22馬力から10馬力と半減。加えて言うとオフロード車というのは軽さも非常に大事なわけで、これも4st/2stではエンジンの構造上どうして重量差がある。

排ガス規制の煽りを一番受けているクラスはこの125オフでしょう。2stの頃は250に負けない性能が当たり前だったわけですから。

KLX125/D-TRACKER125

ただ悪いことばかりではありません。カワサキもパワーを出せないなら出せないなりに考えています。

まず分かりやすいのが最初に言ったフルではなくミニモトな車体サイズ。このおかげで足つきも小回りも良い上に車重もそれなりに抑えられている。D-TRACKERなら14インチホイールだから更に良くなります。

そしてFI採用による正確な燃焼により空冷ながら40km/Lが当たり前という恐るべき低燃費性能。パワーが2st時代の半分になったぶん燃費が二倍に伸びてるわけです。

マフラーからオイルも吹かないし、FIということでキャブのように神経質になる必要もない。更には125だから維持費も安い・・・と考えるとオフ/モタというより通勤通学に非常に使えるMTバイク。

サスペンションなどが柔めに設定されていることを見ても、カワサキもそこら辺を狙ったんだろうと思います。原付二種の需要が日に日に高まっていた中でカワサキはスクーター持っていませんからね。

LX125C

ただ通勤通学に打ってつけの125MTとはいえ腐ってもオフ/モタです。特化したモデルほどの走破性は持ち合わせていないけどそれなりのものは持っている。行こうと思えば道を選ばずに行けるわけです。

毎日の通勤通学で気にも止めていなかったあぜ道、誰も通らないガレた道、そういった道と認識していなかった道を

「通れるのかな。何処に繋がっているのかな。」

と足つきの良さと、小ささと、大人しいエンジンで両足をペタペタと付きながら走ってみる事が出来る。そうすれば全て知っているつもりだった地元の知らなかった新しい一面や遊び場を発見出来る。

D-TRACKER125/KLX125

皆が一分一秒を争う通勤通学レースに勤しむ中、トコトコとコースアウトしてあらぬ場所に出てしまうという楽しいタイムロスができる道草バイク。

主要諸元
全長/幅/高 1980/770/1090mm
[1900/770/1060mm]
シート高 830mm
[805mm]
車軸距離 1285mm
[1255mm]
車体重量 112kg(装)
[113kg(装)]
燃料消費率 46.4km/L
※WMTCモード値
燃料容量 7.0L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 124cc
最高出力 10.2ps/8000rpm
最高トルク 1.0kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前70/100-19(42P)
後90/100-16(51P)
[前100/80-14(48P)
後120/80-14(58P)]
バッテリー FTX7L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR7HSA
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4/T4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.1L
交換時0.9L
フィルター交換時1.0L
スプロケ 前14|後47
[前14|後44]
チェーン サイズ428|リンク124
[サイズ428|リンク122]
車体価格 339,000円(税込)
[359,000円(税込)]
※[]内はD-TRACKER125
系譜図
125TR

1970年
125TR
(F6)

KE125

1975年
KE125
(KE125A)

KMX125

1986年
KMX125
(MX125A)

KDX125SR

1990年
KDX125SR
(DX125A)

KLX125

2009年
KLX/D-TRACER125
(LX125C/D)

KDX125SR(DX125A) -since 1990-

KDX125

「Welcome to Woody World」

KMX125の後継モデルとなるKDX125SR。

最大の特徴はクラス初の倒立フォークもそうなんだけどペリメターフレームを採用したこと。ペリメターフレームというのはツインスパーのカワサキ呼称で太いトップチューブが二本あるフレームの事。

ペリメターフレーム

KMX125を見ると分かる通り従来のフレームは一本の太いフレームが通っていたタイプでした。

何故ここに来てフレームが大きく変わったのかというと、先に紹介したユニトラックサスやディスクブレーキといった大幅な走行性能の向上(速度の上昇)によってフレームの剛性を上げる必要性が出てきたから。フロントフォークが倒立になったものステム周りの剛性を上げるためです。

KDX125SR

そしてこのフレーム変更には剛性以外にもう一つメリットがあります。それはキャブを始めとした吸気系レイアウトの自由度が増すこと。

従来のフレームだとセンターに太いフレームがあったから高さの制約が大きかった。それが横を通るタイプのフレームになった事で高さの制約が緩和され、吸気からキャブ、キャブから燃焼室までを積み木のようにダウンドラフトキャブ(垂直キャブ)など直線で結ぶ事が可能になったというわけ。

ただし、じゃあKDX125がストレート構造になっているかというと・・・なっていません。

KDX125SRカタログ写真

吸気ラインを直線で結ぶということは吸気系を後ろ側に持っていかないといけない。エンジンの吸気は後ろ側ですからね。

そうするとリンク構造の付いた優れたユニトラックサスのスペースと被ってしまうわけです。サスペンション担当は当然ながらそんな事は絶対に許さない。でもエンジン担当も吸気ラインをストレートにすればもっとパワーを出せるとこれまた譲らない。

二者択一な状況になってしまうわけだけど、先代で言った通り”速く走るためには馬力ではなくサスペンション”という考えからユニトラックサスが優先されたというわけ。エンジンよりもサスペンション優先な作りということです。

KDX125A

KDX125は2st125オフロードとしては最後のモデルで、今まで挙げてきたユニトラックサス・ディスクブレーキ・ペリメターフレームとモトクロッサーKX125をそのまま公道仕様にしたモデルということもあり非常に人気で、2000年に排気ガス規制で生産終了となるまで大きく変更されることもなく長く発売されました。

一応1991年モデル(A2型)で電装系の改良とディスクブレーキカバーの装着、94年(A5型)でリアサスのリザーバータンクが別体式にされる改良が入っています。

主要諸元
全長/幅/高 2115/855/1190mm
シート高
車軸距離 1395mm
車体重量 104kg(乾)
燃料消費率 56.5km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 9.0L
エンジン 水冷2サイクル単気筒
総排気量 124cc
最高出力 22ps/9500rpm
最高トルク 1.9kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前70/100-21(44P)
後4.10-18(4PR)
バッテリー YB3L-A
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BR8ES
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.2L
スプロケ 前15|後52
チェーン サイズ428|リンク132
車体価格 335,000円(税別)
系譜図
125TR

1970年
125TR
(F6)

KE125

1975年
KE125
(KE125A)

KMX125

1986年
KMX125
(MX125A)

KDX125SR

1990年
KDX125SR
(DX125A)

KLX125

2009年
KLX/D-TRACER125
(LX125C/D)

KMX125(MX250A) -since 1986-

KMX125R

「2-STROKE INCENTIVE PERFORMANCE」

KE125以来11年ぶりの登場となったKMX125。モトクロッサーKX125がベースとなっています。

KX125

排気デバイスKIPSの採用で22馬力に上がったパワーも目を引くけど、最大の売りはクラス初採用となったディスクブレーキ。

この頃はまだまだドラムブレーキが主流でディスクはタブーに近かった。泥や石といったゴミがキャリパーに入ってきてトラブルを招く恐れがあったからですね。サスペンションのストローク量が多い事からブレーキラインの取り回しの大変さもあります。

しかしドラムブレーキは重くなる上に効きがコントローラブルじゃない。そんな中でカワサキはライバルに打ち勝つ為にタブーとされていたディスクブレーキを採用したモトクロッサーでレースに挑み、トライアンドエラーを繰り返すことで実用化にこぎつけたわけです。始まりはZ400FXのリアキャリパーの流用からだったそうです。

KMX

そして1982年の市販モトクロッサーKX125にて標準採用され、市販車KMX125にも下りてきたというわけ。

このカワサキが形にしたオフロード車でのディスクブレーキは制動力が一気に上がった革新的な装備で、モトクロスレースの走り方を一変させました。

ただもう一つ忘れてはならない革新がユニトラックサスです。今ではスポーツバイクでは欠かせない装備となっているリンク式モノサス(一本サス)ですね。

ユニトラックサスペンション

これは初期の物で現在の物(ボトムリンク式)とは少し違うので違和感があるかもしれませんが、これがリンク式モノサスペンションの原型。

こうすると何が良いのかというのを簡単に言うと、スイングアームが直接サスペンションを動かすわけではないので、ホイールトラベル(ホイールの上下の動きの幅)を大きく取れ、初期沈みは柔らかく吸収し路面を追従する一方で沈み込みが深くなると踏ん張る(簡単に底打ちしない)プログレッシブ(二次曲線)な特性を得られる。

これが出るまでのいわゆる二本サスというのは衝撃を受けたら受けた分だけ比例してサスペンションが縮んでいた。それで問題となるのは底打ちした時。ドッタンバッタンと動くオフロードでサスペンションが底打ちをすると吸収しきれなかった分の衝撃がライダーに来るので吹っ飛んでしまう。

だからとっても硬いサスペンションにして底打ちさせないようにしていたんだけど、そうすると今度は簡単なギャップを全く吸収せず弾くようになるからポンポン跳ねるようになりスピードを出すのが難しい状況だった。

そんなデメリットを解消したユニトラックサスは上で紹介したディスクブレーキ以上に革新的なサスペンションで、始めて装備したモトクロッサーKX125は圧倒的な速さを誇り、ライバルメーカーも後を追うようにリンク式サスペンションへと変わっていきました。

ただ面白い事にこのユニトラックサスを最初に考えたのはモトクロッサーKX125の開発メンバーではありません。これを実現させようと開発していたのは同じ設計室で進められていたKR350/250というロードレーサーのチーム。

カワサキKR

先に挙げたサスの問題を抱えていたKXの増田さんがその構造を見て

「これはオフロードにこそ必要だ」

という事で拝借のような応用。それが正しい判断で大成功に繋がったというわけ。

KMX

このユニトラックサスペンションによる大変貌&快進撃によりカワサキは

“速く走る為に大事なのは馬力ではなくサスペンション”

とそれまでの考えを改める事になりました。

主要諸元
全長/幅/高 1988/840/1165mm
シート高 845mm
車軸距離 1375mm
車体重量 96kg(乾)
燃料消費率 44.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 9.0L
エンジン 水冷2サイクル単気筒
総排気量 124cc
最高出力 22ps/9000rpm
最高トルク 1.7kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前2.75-21(4PR)
後4.10-18(4PR)
バッテリー YB4L-B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BR8ES
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.2L
スプロケ 前14|後48
チェーン サイズ428|リンク128
車体価格 282,000円(税別)
系譜図
125TR

1970年
125TR
(F6)

KE125

1975年
KE125
(KE125A)

KMX125

1986年
KMX125
(MX125A)

KDX125SR

1990年
KDX125SR
(DX125A)

KLX125

2009年
KLX/D-TRACER125
(LX125C/D)

KE125(KE125A) -since 1975-

KE125

「駆ける、翔ぶ―目的は2つ。」

低速寄りに変更され13馬力となったエンジンと、クラス初となる六速ミッションを装備したKE125。実質125TRの最終モデルなバイクです。

KE125後期

二本サスながらホイールサイズもフロントを21インチに上げることで走破性がアップなど手堅いモデルチェンジと80年にタンクが角タンクへと変更されたくらいで先代から数えて12年あまりのロングセラーとなった125最速トレールでした。

KE125赤タンク

ちなみに上の写真を見ると分かる通りこの頃のカワサキといえば”緑”というよりかは”赤”でした。

これが何故かと言うと、カワサキが一番初めにレースで成果を上げたのが1963年のモトクロス選手権だったんですが、この時のバイクが赤タンクだったんです。

その事からしばらくはロードレースなども”赤タンク”をセールスで広く採用。

赤タンク

「カワサキ=赤タンク」

というイメージで押していました。じゃあどうして赤を止めて緑にしたのかというと・・・

「赤=ホンダ」

が既に広く定着し被ってしまったから。

主要諸元
全長/幅/高 2075/870/1075mm
シート高
車軸距離 1350mm
車体重量 115kg(装)
燃料消費率 50.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 6.7L
エンジン 水冷2サイクル単気筒
総排気量 124cc
最高出力 13ps/6500rpm
最高トルク 1.5kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前2.75-21-4PR
後3.50-18-4PR
バッテリー 6N6-3B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
B8HS
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.3L
スプロケ 前14|後50
チェーン サイズ428|リンク126
車体価格 185,000円(税別)
系譜図
125TR

1970年
125TR
(F6)

KE125

1975年
KE125
(KE125A)

KMX125

1986年
KMX125
(MX125A)

KDX125SR

1990年
KDX125SR
(DX125A)

KLX125

2009年
KLX/D-TRACER125
(LX125C/D)