640DUKE -since 1999-

640デューク

DUKEの二代目となる640DUKE。二代目ということでDUKE2とも言われてたりします。

大きな変更点としてはホイールがスポークからアルミ鍛造キャストになったこと。そして何よりセルが付いたこと。やっぱりケッチンの被害が大きかったんでしょうかね。

見た目も大きく変わりました。

DUKE2

この頃のDUKEを知ってる人からするとDUKEと言えばこの縦二ツ目と言う人も多いかもね。ちょっと前までDUKEと言えばこの顔だったから。

デューク2

KTMにあまり詳しくない人のために説明しておくと、DUKEはKTMにとってはスーパーモタードではありません。まあスーパーモタードと言っていいほどのポテンシャルを持っているのは間違いないんだけど、KTMにとってのスーパーモタードはSupermotoというモデル。

640スーパーモト

見た目は似てるけどコッチはカリッカリのモタードバイク。

競技の事を考えてかライトも至ってシンプルなものなのが特徴。

DUKE640オーナーズブック

じゃあDUKEは何なのかと言えばネイキッドです。日本でネイキッドといえばダブルクレードルフレームにツインショックで丸目っていうイメージがあるから違和感あるかもしれないけどね。

他にもオフ仕様のEnduro、アドベンチャー仕様のADVENTUREなどがDUKEと同じように世代ごとにあります。要するにDUKEもそれらも同じLC4ファミリー。

DUKE640カタログ

ただそれら全部紹介するほどの元気も(国内での)需要も無いと思いますので今回はDUKEに絞らせてもらいます。ごめんなさい。

エンジン:水冷4サイクルSOHC単気筒
排気量:625cc
最高出力:
55ps/7000rpm
最大トルク:
6.12kg-m/5500rpm
車両重量:145kg(乾)

系譜図
デューク1

1994年
620DUKE

デューク2

1999年
640DUKE

デューク3

2008年
690DUKE/R

デューク4

2012年
690DUKE/R

デューク5

2016年
690DUKE/R

620DUKE -since 1995-

620デューク

KTMが正式に国内市場参入した事と125~390という日本でも人気のあるクラスのDUKEが加わった事もあって結構知名度も出てきた様な気がしないでもないKTMのデュークシリーズ。

ちなみに販売台数で見ると欧州メーカーとしてはPIAGGIOに次いで二位のメーカーだったりするわけですが、そんなKTMのDUKEシリーズの始祖となるのがこの620DUKE。

スモールデュークの方でも言ったと思うけどKTMはほぼオフ専門メーカーで、作るスポーツバイクといえばレース向けのモトクロッサーや山を駆け抜けるエンデューロ車がほとんどだった。

KTMポニー

公道モデルといえばスクーターやロータックス社から買った小排気量エンジンを積んだいわゆる生活バイクが大半。

KTM R100

上の写真はKTMが一番最初に作ったバイクのR100。

そんな中でKTMにとって転機となったのが1980年代後半。エンデューロレースで勝つためにLC4と呼ばれる608ccのビッグシングル水冷エンジンを自社開発します。

600エンデューロ

そして更にこれまで培った技術は市販車でも活かせるハズとしてそのエンジンをベースに作り登場したのがこの620DUKE。

「とにかく軽く」

を合言葉に開発設計されただけあり重量は乾燥でわずか145kg。エンジンはもちろんレースでも使われていた620Enduro(上の写真)をベースにカウンターバランサーを加えて公道向けにチューニングしたもの。

620cc

というか中身は殆ど620ENDUROで、公道向けにチューニングといっても元が超々ショートストロークのレースエンジンなだけあって特性は単気筒とは思えないほどの過激っぷり。でもDUKEがウケたのはこの過激さがあったから。

ビッグシングルといえばトルクに物を言わせてトコトコドコドコという感じが当たり前だった時代に、シングルなのに超ショートストロークで回してナンボ、そして回せば吹っ飛ばされる様な加速というビッグシングルにあるまじき特性。軽さも相まってリスキーさというか頭のネジが外れたライダー向けな感じがウケた。

LC4エンジン

軽くするためにセルすら付けなかったっていうスパルタっぷり。市販車なのにこんなビッグシングルがキックのみってケッチンくらっちゃった人は多いだろうな。

1995DUKE

そしてその特性に相反する可愛い二ツ眼。

エンジン:水冷4サイクルSOHC単気筒
排気量:608cc
最高出力:
55ps/7000rpm
最大トルク:
6.12kg-m/5500rpm
車両重量:145kg(乾)

系譜図
デューク1

1994年
620DUKE

デューク2

1999年
640DUKE

デューク3

2008年
690DUKE/R

デューク4

2012年
690DUKE/R

デューク5

2016年
690DUKE/R

スポーツスターの全モデルと年表

スポーツスターの全モデル

スポーツスター(というかハーレー)は毎年必ずと言っていいほど年次改良が入っています。

全てを把握することが難しかったため大きな変更だけ記載しています。すいません。

K -since1952-

モデルK

ハーレー初となるリアサス付きスポーツモデル。

KH -since1954-

モデルKH

モデルKのサイドバルブエンジンをロングストローク化し883ccとしたパパサン(883cc)の始祖。

50周年記念モデルでもある。

KHK -since1955-

KHK

上記KHのレース仕様でサイドバルブエンジンの最終型モデル。

※ここからショベル(アイアン)スポーツスター

XL -since1957-

XL

初めてOHVエンジンを搭載した通称アイアンスポーツの元祖モデル。

XLH -since1958-

XLH

XLをハイコンプ(高圧縮比化)にしたツアラーモデル。

XLCH -since1958-

XLCH

XLのコンペティションホットモデル。

1959:XLHのヘッドライトナセルを採用

1965:XLHのタンク容量をアップ

1966:電装系を12V化&ハム缶

1967:セルモーターを装備

1967;ヘッドライトナセルを小型化

XLH/CH -since1972-

XLH1000

ボアアップにより排気量を1000cc化したモデル。

1973:フロントブレーキをディスク化

1975:ギアチェンジを右から左に変更

XLT1000 -since1977-

XLのツーリングモデル。

XLCR -since1977-

XLCR

新設計フレーム(CRフレーム)のカフェレーサーモデル。

1979:全車CRフレーム化

XLS -since1979-

XLS

リアホイールのサイズを従来の18インチからこれから続く16インチに変更するキッカケとなった3.3ガロンタンクのロードスターモデル。

1982:全車エボ(30th)フレーム化

XLX-61 -since1983-

XLX-61

ハイコンプとシングルシートが施されたアイアンスポーツのラストモデル。

XR1000 -since1983-

XR1000

レース用に造られたXR750フレームにXLXエンジンの限定モデル。

※ここからエボリューションスポーツスター

XLH883/1100 -since1986-

XLCR

エボフレームにエボリューションエンジンを積んだモデル。

XLH883D -since1987-

XLH883D

1100と同じダブルシート仕様883モデル。

XLH883H -since1988-

XLH883H

シート高を抑えたハガースタイルのモデル。

XLH1200 -since1988-

XLCR

ボアアップで1200ccまで拡大した1100の後継モデル。

※同年に全モデルフロントフォークを39mmに大径化

※キャブをバタフライ式からCV式に変更

1991:五速化&電装改良

1991:1200と883Dのみベルトドライブ化

1993:全車ベルトドライブ化

1994:フレーム後部を改良

1995:電子スピードメーター採用

1995:1200のタンクを12.5L化

XL1200S -since1996-

XL1200S

ツインプラグ化(98以降)とダンパー調節機能を付けたスポーツモデル。

1997:883もタンクを12.5L化

XL1200C -since1996-

XL1200C

21インチのフロントホイールを装備したカスタムモデル。

1997:883も12.5L化&リアサス変更

1998:点火モジュール変更とMFバッテリー化

1998:ツインプラグ化(1200Sのみ)

1999:全車フォワードコントロール化

XL883C -since1999-

XL883C

上記カスタムの883モデル。

2000:クランク&カム改良と4POT化

2001:カムとオイルポンプの改良

XL883R -since2002-

XL883R

集合管のリジスポ最終モデル。

2002:ヘッドガスケットやフランジ等を変更

※ここからラバー(ゴム)スポーツスター世代

XL883/C
XL1200/R/C -since2004-

XL883

ラバーマウントフレームに一新された最初のモデル。

XL883L -since2005-

XL883L

ハガーの後継となる更にローシートになったモデル。

2008:全車FI化

XL1200L -since2007-

XL1200L

883のみだったローシート仕様の1200モデル。

XL50 -since2005-

XL50

スポスタ50周年を記念して出された世界限定2000台のモデル。

XL1200N -since2008-

XL1200N

全体をブラック化したメーカーカスタムモデル。

別名ナイトスター。

XL883N -since2009-

XL883N

上記ナイトスターの883モデル。

別名アイアン。

XR1200 -since2009-

XR1200

XRデザインでビューエル譲りのエンジンや足回りを装備したモデル。

XR1200X -since2010-

XR1200X

BPFなどを奢られたXR1200のハイパフォーマンスモデル。

XL883L -since2011-

XLCR

ローの後継モデルで足回りの強化と17リッタータンクを装備したモデル。
別名スーパーロー。

XL1200X -since2011-

XL1200X

ファットタイヤなどでビンデージカスタムされたモデル。

別名48(フォーティーエイト)。

XL1200V -since2012-

XL1200V

70年代に流行ったチョッパーカスタムのモデル。

別名72(セブンティーツー)。

XL1200CA -since2013-

XL1200CA

XL1200Cをベースにストリートドラッガーに仕立てたモデル。

XL1200CB -since2013-

XL1200CB

同じくXL1200Cをベースに現代チョッパースタイルに仕上げたモデル。

XL1200T -since2014-

XL1200T

XL1200のスーパーロー&ツーリングモデル。

XL1200CX -since2016-

XL1200CX

リアを18インチにアップし倒立フォークを装備したカフェレーサーモデル。

XL1200NS -since2018-

XL1200NS

人気が高いアイアン883の1200版となるモデル。

XL1200XS -since2018-

XL1200XS

ブラックとクロームの組み合わせを施したホバースタイルモデル。

ハーレーの見分け方ハーレーの見分け方
※ハーレーが分からない人向け
フラットヘッドスポーツスター1952年
フラットヘッド世代
ショベルヘッドスポーツスター1957年
ショベルヘッド世代
ブロックヘッドスポーツスター1986年
ブロックヘッド世代
ニューブロックヘッドスポーツスター2004年
ニューブロックヘッド世代
スポーツスターの全モデルスポーツスターの全モデル

ニューブロックヘッド世代 -since 2004-

2005xl883

時代は再び進んで2004年。

初めてフレームとエンジンの両方が同時期に新しくなった第4世代スポーツスター。

何が変わったのかというとエンジンがリジットマウントからラバーマウントに変わったこと。そのため『ラバスポ』とか『ゴムスポ』とか言われています。

エボリューションヘッドエンジン

元々スポーツスターのエンジンを使ってスポーツモデルを造っていたビューエルが開発したラバーマウントを応用した形。

エンジンは基本的にラバーマウント部を設けた程度で大きな変更は無いのですが、フレームの方は対応させるため少し大きめに変更されました。名前もそのままラバーマウントフレームと言われています。

狙いはもちろん振動低減による快適性の向上にあります。

ラバーマウントエンジン

この効果は絶大で非常に好評でした。

それまではリジットフレーム故にエンジンの振動がそのまま乗り手に伝わる事から高速走行は罰ゲームに近かった。

それがラバーマウント化によって心地よい振動は残しつつ大幅に振動を減らした事で可能になったからです。

ハーレー界隈でも全く別物の非常に良く出来たスポーツスターと言われています。

ラバスポ

2007年には排ガス規制に対応するためフューエルインジェクション仕様となり更にメンテナンスフリーに。一部では弄れなくなったとしてFIを外してキャブを付ける猛者も居るようですが。

さて・・・イケイケだったハーレーですが2000年代頃から経営方針が大きく変わったことを知っている人も多いかと思います。

それまでハーレーというと

「自分色に染めていく(カスタムしていく)」

というアメリカのガレージ文化そのままのようなバイクだった。

スポーツスターの全モデル

言ってしまえば新車は『カスタムベース車』という感じですね。

ところが2000年代後半になると

「違法カスタム駄目ゼッタイ」

というスタンスになったんです。

違法なカスタムの依頼、または違法車両の整備などを断る経営方針にガラッと変わった。

それと同時に自社関連のアフターパーツのさらなる拡充を開始。

つまり突っ込んで極端に言うと

「自社公認カスタム以外してくれるな」

と捉えられても仕方ないスタンスに変わったわけです。

スーパーロー1200

これの狙いは

・倫理的な問題

・アフターの収益化

・旧世代との線引き

などの狙いがあるものと思われます。

この流れはラインナップを見ても明白で、それまでスポーツスターは最小限のカスタムしか施していない素モデルがほとんどでした。

スポーツスター2019年モデル

しかし近年はフォーティーエイトやセブンティーツーなど、最初からある程度パッケージングされた一種のファクトリーカスタムが多く出るようになった。

要するに最初から多くの選択をハーレー自身が提供する売り方に変わってきた・・・そしてそれが人気を博してる。

スポーツスターのロゴ

カスタムとの高い親和性から人気だったスポーツスターですが、その立ち位置や付き合い方が大きく変わってきている様です。

ハーレーの見分け方ハーレーの見分け方
※ハーレーが分からない人向け
フラットヘッドスポーツスター1952年
フラットヘッド世代
ショベルヘッドスポーツスター1957年
ショベルヘッド世代
ブロックヘッドスポーツスター1986年
ブロックヘッド世代
ニューブロックヘッドスポーツスター2004年
ニューブロックヘッド世代
スポーツスターの全モデルスポーツスターの全モデル

ブロックヘッド世代 -since 1986-

1957XLスポーツスター

時代はグッと進んで1986年。

この年に登場したのがエボリューションエンジン(通称ブロックヘッドエンジン)を積んだ第3世代スポーツスター。

1000cc一本だった状態から伝統の883ccモデル(XLH883)とボアを拡大した1100cc(XLH1100)の二本立て展開が始まったのもここから。

ブロックヘッドの由来はエンジン主要部品が積み木(ブロック)の様に積まれているような形だから。でも日本ではブロックヘッドと呼ばずに単純にスポーツスターと呼ぶ人が多いですね。

エボリューションヘッドエンジン

というのも何を隠そうこのエンジン今のスポーツスターにも使われているやつだから。

油圧式タペット調整機構を備えたアルミブロックの完全新設計で信頼性も大幅に向上した傑作との呼び声高いエンジンです。

ちなみにこのエボリューションエンジンについて

ホンダとハーレー

「これはホンダと造ったエンジン」

とか

「ホンダがハーレーに技術提供した」

とか聞いたことある人も多いかと・・・これはハーレーが経営危機を迎えたことが背景にあります。

時代を少し遡ることになるのですが、先に話した通りハーレーは1950年代から英国勢と北米市場をかけてバチバチ火花を飛ばしてそれなりに善戦していました。

しかし1960年代になると今度はもっと恐ろしい日本勢が登場し、小排気量を中心に猛烈な勢いでアメリカ市場を食っていったんです。

その事に危機感を覚えたハーレーは1960年にアエルマッキというイタリアの小排気量バイクメーカーを買収し反撃に出るも上手く行かず経営は更に悪化。

ショートスター

これはその一つである『X-90』と呼ばれるモデル。

SportsterならぬShortsterという愛称を持っています。

小排気量の販売が何故失敗したのかというと

「ハーレー=ビッグバイク」

というブランドイメージを損なうとしてディーラーから猛反対して売らなかったから。結局アエルマッキは数年でカジバに売却されました。

そんなこんなで持ち直す事が出来ず弱っていったハーレーを当時盛んだった企業買収による乗っ取りから守るために1969年にアメリカの大手機械メーカーであるAMF(American Machine & foundry)が保護買収。

AMFハーレー

ここから約10年は

『AMF Harley-Davidson』

としてやっていく事になったわけです・・・がハーレーファミリーの間ではこのAMF時代を

「思い出したくもない暗黒時代」

とか言われています。

AMFハーレーダビッドソン

何故そう言われるのかというとAMFはハーレーの経営を立て直すためにリストラを始めとした事業の大幅なスリム化を行ったわけです。

すると優秀な人がどんどんハーレーから居なくなり品質ガタ落ちで故障が耐えなくなった。

というか組み立てすらまともに出来てないまま納車されるレベルで

「乗ってる時間より修理してる時間の方が長い」

とか

「車体価格以上の修理費が掛かる」

とか言われるほど本当に酷いものに。

『ハーレー=壊れる』

というイメージが強くあるのはこのAMF時代の影響が大きいんです。

そんなもんだからブランドは更に失墜。

その一方で小排気量のみだった日本メーカーがCBやZなどで遂に大型バイクでも快進撃を開始。

何度も言いますがハーレーは元々ハイスペックメーカーだったのでそんな中でもXLX-61のエンジンにXR750(ファクトリーマシン)のヘッドを装備したXR1000というホモロゲを出したりして対抗しました。

XR1000

そのおかげでBOTT(二気筒レース)やダートトラックでは戦績を上げたものの、一方で四気筒が相手となるデイトナなどでは分が悪く差は歴然だった。

そんな失態の連続もあって1973年には80%以上を誇っていた850ccオーバークラスのシェアも、1983年にはわずか23%とあまりにも無残な状況に。

さすがにこのままではマズいと創業者の孫を筆頭とした資本家グループが1981年にAMFから買い戻し。

ハーレー再建に打って出ました。

ハーレーの買い戻し

「何より急務は品質改善」

という事で、その際に頼ったのがホンダとされています。

V型エンジンのノウハウとサプライヤーとの関係、組立方式の指南などを指導してもらうことに。

そして登場したのがこのエボリューションエンジンで、シリンダーとヘッドの共締めやビッグツインと部品の共有化など日本車に近い作りになっていたことから

「これはホンダとの合作」

とか言われてるわけです。

ちなみに何処までホンダが噛んだのかは門外不出なのか資料が一切見当たらないので分かりません。

そんなエボリューションエンジンによる品質改善と同時に、幸運なのか根回しなのか当時の大統領だったレーガンが

ハーレー保護法

「700cc以上の輸入バイクの関税を6年間4.4%から49.4%に引き上げる」

というハーレー保護法と呼ばれる関税障壁を1983年から実施した事で業績は大きく改善。

これによりハーレーは復活を遂げたんですが・・・それだけでは終わらなかった。

80年代後半になると上記の理由から人気だった883によるワンメイクレースをAMA(アメリカのレース協会)が正式に開催。

これにより北米で883人気が爆発。

『パパサン』

という言葉と車種が日本国内で広く知れ渡る事になったのは発端はこれ。

その波に乗るように89年にハーレージャパン(日本法人)が設立されハーレーが身近なものとなった事でスポーツスターが更に飛ぶように売れました。一時期883ccにちなんで88万3000円で売られていた事を覚えている人も多いかと。

ミズーリ工場

この三段跳びの様な快進撃によりハーレーは業績改善どころか急成長となり、遂にはスポーツスターのために新たな工場まで建設。

北米650cc以上シェアも1999年には49.5%まで回復し、2000年には過去最高となる年間生産台数20万台を突破とイケイケ状態に。

XL883R

今のハーレーがあるのはこのエボリューションスポーツスターがあったからと言っても過言じゃないというわけです。

ちなみに2003年までのこのスポーツスターはリジットフレームな事から『リジスポ』と言われています。

ハーレーの見分け方ハーレーの見分け方
※ハーレーが分からない人向け
フラットヘッドスポーツスター1952年
フラットヘッド世代
ショベルヘッドスポーツスター1957年
ショベルヘッド世代
ブロックヘッドスポーツスター1986年
ブロックヘッド世代
ニューブロックヘッドスポーツスター2004年
ニューブロックヘッド世代
スポーツスターの全モデルスポーツスターの全モデル

ショベルヘッド世代 -since 1957-

1957XLスポーツスター

先に紹介したモデルKの後継で実質的なスポーツスターの始まりと言えるXL。

一番の変更点はヘッドカバーの形がショベルの形に似ていたことからショベルヘッドと呼ばれるOHVエンジンになった事。

ショベルヘッドエンジン

モデルチェンジの理由はもちろん先代から始まった英国勢に勝つためで、OHV化とショートストローク化で排気量はKHに習って883ccながら42馬力。

他のシリーズと違ってシリンダーとヘッドが鉄な事から『アイアンスポーツ』という俗称が有名ですね。

そんなXLですが手を緩めることなく発売の翌年である1958年には圧縮比を7.5から9まで上げたホットモデルXLHを発売。

ショベルヘッドXLH

更にレースのためのコンペティション(レース用)モデルであるXLHCモデルも同年に登場。

ショベルヘッドXLCH

このXHLCはレース用で保安部品が付いていなかったのですが、55馬力というハイスペックだった事から市場でも話題となり

「市販化(公道化)してくれ」

という要望が多く寄せられた事から市販化された歴史があります。

初期型XLCH

上の写真は初期型(~1962)のスクランブラータイプ。

アイアンスポーツはここからXLHとXLCHの二台体制でしばらく行くことになります。

大きく変わったのは約14年後の1972年でライバルに対抗するため1000cc化などが行われたんですが、そんな中で紹介しておきたいのが1977年に出たXLCRというモデル。

XLCR

これはハーレー界の神様と呼ばれているウィリーGというデザイナーが個人的に造った事が発端のカフェレーサー。

既存のKフレームではなく新作フレームでロングタンクとビキニカウルが特徴的。

日本で有名なZ1-Rと被る事からも分かる通りカフェレーサーブームに合わせたもの。

XLカフェレーサー

ハーレーとしては非常に珍しい純正カフェスタイルとして今では一部に絶大な人気があります・・・が、当時は本当に不人気でした。

後期で9本スポークホイールなどの改良も行われたんですが、それでも人気は全く出ずわずか2年ほどで生産終了。

このモデルのために造ったフレームは通称CRフレームとして生産終了の1979年から全スポスタに引き継ぐ形に。

しかしこのCRフレームも剛性面でお世辞にも出来が良いフレームと呼べるものではなかった為に1982年からは再び新作された30thフレーム(またはエボリューションフレーム)に変更。

XLS

形はそのままにガゼット(補強)を追加し剛性不足を解消したもので、こちらは出来が良く次世代まで使われることになります。

そんなショベルヘッド時代の最後を飾ったのは1983年に出たXLX-61。

XLX-61

圧縮比を上げられた専用エンジンを積んだスペシャルモデル。

AMF傘下から脱して初めて造られたモデルで非常に人気が出ました。AMFについては次のページにて。

ハーレーの見分け方ハーレーの見分け方
※ハーレーが分からない人向け
フラットヘッドスポーツスター1952年
フラットヘッド世代
ショベルヘッドスポーツスター1957年
ショベルヘッド世代
ブロックヘッドスポーツスター1986年
ブロックヘッド世代
ニューブロックヘッドスポーツスター2004年
ニューブロックヘッド世代
スポーツスターの全モデルスポーツスターの全モデル

フラットヘッド世代 -since 1952-

フラットヘッド

日本で非常に人気があり多くのハーレー乗りを生み出したであろうハーレーのスポーツスター。

先ページの繰り返しになりますが

「スポーツスターって何」

という所から話すとハーレーの中でもスポーツ志向のモデルの事でまず定義としては

『4カムである事』

が特徴です。

スポーツスターのカムの違い

乱暴な絵ですがエンジンの扉であるバルブを押す役目を持っているカムシャフトと呼ばれる棒が吸気と排気で一本ずつ付いているのが4カム。

言ってしまえばSOHCとDOHCの違いと同じなんですが、ハーレーはOHVといってバルブを動かす(押す)カムシャフトがエンジンの上ではなく下に付いているのが特徴。

スポーツスターのカムの場所

そしてもう一つは『ミッションが一体型になっている事』です。

この2つがスポーツスターの特徴なんですが、名前の通りスポーツ性を高めるために生まれたのが背景にあります。

じゃあそんなスポーツスターの始まりが何処にあるのかと言うと一般的には1952年の『K』が始まりと言われています。

モデルK -since1952-

モデルK

サイドバルブ方式の通称フラットヘッドと呼ばれるエンジンを積んだスポーツモデル。

このエンジン自体は1929年に造られた物がベースなんですが、何故フラットと呼ばれるのかと言うとサイドバルブと書いてあるように我々がよく知るバルブとピストンが向き合う形ではなく横に寄り添うように同じ向きに付いているから。

フラットヘッドエンジン

本当に絵が下手で申し訳ないんですがこんな感じで、カバーを外すとフラット(平面)だからフラットヘッド。

そしてもう一つの始まりであるミッション一体型なんですが、これはエンジンの剛性(ひいては車体剛性)を上げるのが狙い。

モデルKのチラシ

「なんでそんなに性能を上げる必要があるのか」

と今でこそ思いますが、当時のハーレーはどのメーカーよりも速いハイスペックメーカーだったんです。

だから性能を上げる改良を施すのも何の不思議でもない話で、日本の陸王がこのフラットヘッドエンジンをライセンス生産したのも一番高性能だったから。

1950年代のアメリカレース

そんな今では考えられないハーレーなんですが、実はこのモデルKは最初は出す予定じゃなかった。

従来どおりのWLシリーズというモデルを改良し発表したんですが

「これじゃ英国勢に勝てない」

という声が市場から殺到したんです。

というのも当時は終戦と同時にBSAやトライアンフなどのバーチカルツインが輸入されはじめ、性能面で引けを取るようになっていたんですね。

そこで創業者であるダビッドソン兄弟は自分たちで4カム化やミッション一体型などに改造していたモデルをテコ入れとして急遽市販化することに。

モデルK

それがこのモデルK。

フレームも専用のスイングアーム式になっている新作(通称Kフレーム)で30馬力を叩き出すマシン。これがスポーツスターの原型になります。

更に二年後の1954年にはストローク量を上げ750ccだった排気量を883ccにし、38馬力にまでパワーを上げたホットモデルであるKHを発売。

モデルKH

誰もが知っている『パパサン』の元祖モデルです。

パパサンというとファッショナブルなイメージが先行しますが、実はハーレーの中でも非常に歴史が長い排気量なんですね。

ちなみに「パパサン」と言われることを嫌う人も居るのでそこは留意しておく必要があります。

ハーレーの見分け方ハーレーの見分け方
※ハーレーが分からない人向け
フラットヘッドスポーツスター1952年
フラットヘッド世代
ショベルヘッドスポーツスター1957年
ショベルヘッド世代
ブロックヘッドスポーツスター1986年
ブロックヘッド世代
ニューブロックヘッドスポーツスター2004年
ニューブロックヘッド世代
スポーツスターの全モデルスポーツスターの全モデル

ハーレーの見分け方 ~車名の意味~

ハーレーの見分け方

スポーツスターの系譜を始める前に恥ずかしながら自身がそうなように

「そもそもどれが何かか分からない」

という人も少なからず居られると思うので最初に補足しておこうと思います。

ハーレーと言えば

『FLHC』 『XLCH』『FXWG』

などなどアルファベットが無造作に並んでいるようで、何を示しているのかサッパリ分からないですよね。

でも実はこれ理解できると日本車よりも分かりやすかったりします。

まず大前提としてハーレーは

・ビッグツインエンジン

・スポーツスターエンジン

この二種類のエンジンを使っています。※水冷を除く

そして謎のアルファベットですがもちろん意味があり、頭文字の二文字で三種類に分類する事が出来ます。

【頭文字がFL】

FLシリーズ

いわゆる典型的なハーレーらしいモデルというか歴史ある伝統モデル。

前後16インチのファットタイヤ(例外あり)や、シングルカム(現在はツインカム)な事からV字型に伸びてるプッシュロッドのビッグツインエンジンが特徴。

巨漢なやつは大概これでターミーネーターに登場したモデルもこのFL系。

【頭文字がXL】

XLシリーズ

この系譜の主役で『スポーティなやつ』という名前を持つSPORTSTER。

特徴はシリンダーに沿うように並行に4本伸びているプッシュロッドとミッション一体型となっている(右から見ると)長いクランクケース。

スポーツモデルという事で全体的にハーレーの中では軽量コンパクトで日本でも非常に馴染まれてるモデル。

 

【頭文字がFX】

FXシリーズ

最初に紹介した伝統のFLをベースにXLのフロントを突っ込んだ様なモデル。

FLと同じビッグツインエンジンながらフロントが19~21インチホイールになってるのが特徴。

ローライダーという誰しもが目にしたり耳にしたりした事があるやつもこのFX系。

物凄く大雑把ですがこれが感じの括り。

そしてそこから更にバリエーションのアルファベットが付きます。

【STまたはソフテイル】
サスを隠してリジット風にしたフレームの略称(※)

【Dまたはダイナ】
二本サス仕様フレームの略称(※)

※ビッグツイン特有のフレーム表記

【B】
ブラックやバッドボーイ(ワル)という意味

【C】
カスタムやクラシックという意味

【F】
ファットボーイ(太いタイヤ)という意味

【H】
ハイコンプレッション(高圧縮比)またはHOTの意味
またはハガースタイルという意味

【N】
ナイトスターという意味

【R】
ロードスターまたはレーサーの意味

【S】
スポーツという意味

【T】
ツアーまたはツーリングという意味

【L】
(車体やシート高が)ローという意味

などなどいった感じで例えば

『FXSTF』

となれば

『FXのソフティルのファットボーイ』

という感じ。

要するに

「FL・FX・XLの〇〇仕様です」

という事を表すアルファベットとなっているわけです。

まあ要するに頭文字二文字と違って後に続くアルファベットは例外なども多くあるので深く考えず見た目で判断してよろしいかと。

ハーレーの見分け方ハーレーの見分け方
※ハーレーが分からない人向け
フラットヘッドスポーツスター1952年
フラットヘッド世代
ショベルヘッドスポーツスター1957年
ショベルヘッド世代
ブロックヘッドスポーツスター1986年
ブロックヘッド世代
ニューブロックヘッドスポーツスター2004年
ニューブロックヘッド世代
スポーツスターの全モデルスポーツスターの全モデル

R1200GS  -since 2013-

2015年モデル

2013年からのR1200GS。

これまたエンジンが大幅に変更。

まずなんといってもエンジンが水冷化されました。厳密に言うとヘッドは水冷でシリンダー周りは空冷。

更にRシリーズ初となるバランサーを装着し吸排気のポートが前後から上下に変わりました。

2014エンジン

それまでのボクサーは吸排気ポートが前後だったのでインテーク(吸気側)がステップ側にあり邪魔でした。だから吸排気を上下にすることで解決。簡単に書いてますがこれ凄く大変なことです。

他にも電子制御サスだったり前後連動ブレーキABS(これは前から)だったり、出力モードセレクターだったり、可変式スクリーンだったり・・・

ネイキッド

ただ多分こういう構造的な事を言った所でピンと来ないと思うんですよ。もはやそんなの付いてて当たり前な時代でGSだけ特別ってわけじゃないですし。

これは乗ってみないとわからないし、乗ってみるとわかる。

R1200GS壁紙

「転ける気がしない」

R1200GSに乗ったら絶対にみんなこう言うと思う。間違いなく自分のオフロードスキルがソコソコあるかのような錯覚を覚えます。

そして痛い目を見る。オフロードあるある。

2014年モデル

GSが懐が広く安定しているのはテレレバーやパラレバー、そして伝統のボクサーといったBMWの独自技術によるものだったりするんだけど、だからといって”コレがこうだからGSは凄い”っていうのはちょっと違うかと思ってあんまりウダウダと書きませんでした。面倒くさいわけじゃありません。

こっちはビッグタンクのアドベンチャーモデル。スポークとキャストを選べるようになりました。

R1200GS アドベンチャー

系譜を最初から読んでもらえると分かる通りGSは1980の初代、もっというと1970年代の開発時代から会社が傾こうと止まること無く改良進化を続けてたという歴史。ただGSのあるべき姿を追い求める。これを30年以上です。年次改良なんて何回入ってるのかBMW本社ですら正確に把握できてないんじゃないかな。

こう言うとS1000RRの人に怒られるかもしれませんが、S1000RRが売れてるのはBMWだからという理由が少なからずありますが、このR1200GSはBMWだから売れているわけではなくGSだから売れているんです。

R1200GS壁紙

BMWといったらGS。こんな道を走ってみたいですね・・・日本はなぜ島国なんだ。

もしかしたら中にはRTやRSだと言う人も居るかもしれませんが販売台数はGSがトップ。そしてBMWのこれまでのロードマップを見れば分かる通り先進技術もまずGSです。

最後になりましたが、BMWはもっと多くの人にオフロードを楽しんで貰えるようにと2006年から「BMW Motorrad GS TROPHY」というイベントを世界中で行っています。

GSトロフィージャパン

決められたコースと試験に挑戦し順位を争うコース。

優勝すると”日本一のGS乗り”の称号と世界大会への切符を手に入れることが出来ます。

【4バルブGS】【2バルブGS】【HP2 Enduro】【BMW F&G】【BMW以外】【レディースクラス】のクラス分け。

GSトロフィー

他にも初心者向けやスキルアップを目指すコース、自然を楽しむ事を第一としたツーリングコースなど様々なので興味を持たれた方はお近くのBMWディーラーやホームページなどで確認してみてください。

ちなみにどれも泊まり込み合宿で鍛えられる間違いなしです。

エンジン:水冷4サイクル水平対向2気筒
排気量:1170cc
最高出力:
125ps/7750rpm
最大トルク:
12.7kg-m/6500rpm
車両重量:260kg(装)

【関連車種】

Africa Twinの系譜SUPER TÉNÉRÉの系譜V-STROM1000の系譜VERSYS1000の系譜

種類一覧
R80G/S1980年
R80G/S
R100GSパリダカ1988年
R100/80GS
R1100GS1994年
R1100GS
R1150GS1999年
R1150GS
2004R1200GS2004年
R1200GS
R1200GS2013年
R1200GS

R1200GS  -since 2004-

R1200GS

更に排気量が上がった現在進行形R1200GSの五代目モデル。

歴代で最も大幅に生まれ変わったGSであり最も成功したGSでもあります。

エンジン

もう欧米では「とりあえずBMWのR1200GS買っとけ」っていうレベル。

この時点でエンデューロ部門25年間連続トップセールスです。

2007R1200GS

2007年には販売台数10万台を突破という快挙を成し遂げました。GSが人気の主な国はドイツ、アメリカ、フランス、イタリアなど・・・200万のバイクが10万台って。

その中でもドイツがトップセールスなのはまあ母国ですし言うまでもないんですが、ドイツはBMWが25%以上の販売シェアを占めています。これは日本でいうとヤマハ並のシェアなんですが、そのうちの30%強がR1200GS/ADVという事実。ドイツ人は金持ちですね。

でね、このGSで評価されたのは何といってもコンパクトさと軽さ。全面維新で先代が250kgだったのに対して225kgという大幅な軽量化となりました。

アドベンチャーモデル

こちらは後から発売された人気のアドベンチャーモデル。

容量33Lというビッグタンクを積み航続可能距離は脅威の700kmオーバー。東京から本州最北端の青森まで無給油でいけます。

R1200GS

「なんて素晴らしい一日だろう。朝早く起き出し夕方まで走り続けられるとは」

エンジン:空油冷4サイクル水平対向2気筒
排気量:1170cc
最高出力:
98ps/7000rpm
最大トルク:
11.7kg-m/5500rpm
車両重量:225kg(装)

種類一覧
R80G/S1980年
R80G/S
R100GSパリダカ1988年
R100/80GS
R1100GS1994年
R1100GS
R1150GS1999年
R1150GS
2004R1200GS2004年
R1200GS
R1200GS2013年
R1200GS