XB12S Lightning -since 2004-

XB12Sライトニング

XB9Rのエンジンをロングストローク化させトルクフル(1202cc化)にしたXB12SとXB12R。

そしてこの頃からスポーツスターのエンジンをビューエルが使うのではなく、ビューエルのエンジンをスポーツスターが使うように。立場逆転ですね。

XB12Sライトニング

ちなみに本場アメリカではXB2シリーズと呼ぶようですが、これまたバリエーションが色々とあって分かりにくい面があります。

日本国内で最も売れたのは2005年登場のXB12Scg(センターグラビティ)と呼ばれるモデル。

XB12Sライトニング

サスペンションを縮め、シートも変更されたローシートモデル。

他には中道のSs(スポーツ)、一人乗りトラッカー仕様のXB12STT(トレールトラッカー)など。

XB12STT

そしてこれらのグレードに共通しているのがノーマルのXB12Sよりも長いスイングアームを採用したこと。

フロントフォークも少し寝かせホイールベースとトレール量を伸ばしたことで懐が広くなっています。流石に250並みのホイールベースじゃ厳しかったのか。

XB12Sライトニング

更にSとRに次いで投入されたのがXB12X/XT Ulysses(ユリシーズ)。

サスペンションをロングストロークな物に変更したデュアルパーパスモデル。

XB12X

販売台数が順調に伸びていった事によるスケールメリットもあってか、年を追う毎に車体価格も安くなっていった事と、積極的な試乗会により更に人気を呼びました。

XB12ポスター

※2005年初期は170万で、晩年の2010年には120万円ほど。

少し話がそれますが、ビューエルって何処の国に人気かご存知ですか。

Made in USAと謳っている事からもアメリカが一番人気と思いがちですが、当時の資料を見ると意外にも一番台数が出ているのは欧州なんです。

XB12Sポスター

比率的には

欧州5|北米4|日本1

との事。意外ですよね。

エンジン:空冷4サイクルOHV二気筒
排気量:1203cc
最高出力:
101ps/6000rpm
最大トルク:
11.2kg-m/6000rpm
車両重量:179kg(乾)
※スペックはXB12S

系譜図
エリックビューエル 創業者
Erik Buell
RR1000/1200 1986年
RR1000/1200
RS1200 1989年
RS1200
S2 1994年
S2 Thunderbolt
S1 1996年
S1 Lightning
S3 1996年
S3/T Thunderbolt
M2 1997年
M2 Cyclone
X1 1999年
X1 Lightning
BLAST 2000年
Blast
XB9シリーズ 2003年
XB9R Firerbolt
XB9S Lightning
XB12シリーズ 2004年
XB12R Firerbolt
XB12S Lightning
XB12X ULYSSES
1125シリーズ 2007年
1125R
1125CR
1125シリーズ 2011年
1190RS
1190シリーズ 2015年
1190SX
1190RX

BLAST -since 2000-

ブラスト

EVOエンジンの片肺だけ切り取る(流用する)事でコストを下げたBuellとしては唯一の単気筒モデルのBLAST。

ただこれはアメリカ専売モデルで日本には入ってきていません。というのもこのモデルは日本でいうところの教習車的な立ち位置だったから。

ブラスト

アメリカというのは免許を取る際は車両持ち込みが原則、つまり最初に車両を用意しないといけない。だからレンタル業者を利用したりする人が多いんだけど非常に不便な面があった。

そこでHarley-Davidson’s Rider’s Edge New Rider programと称し、最初から使えるように購入と同時にナンバー付きで卸され、ハーレー・ビューエルディーラーがその車両で代わりに教習し合格まで指導するという囲い込みのような販売方法。

ハーレーダビッドソンアカデミー

この取り組みは2009年まで続けられ、結果としてトータルで2万台ほど売りました。ある意味ではビューエルとして最も成功したバイク。

エンジン:空冷4サイクルOHV単気筒
排気量:492cc
最高出力:
34ps/6500rpm
最大トルク:
4.1kg-m/6500rpm
車両重量:163kg(乾)

系譜図
エリックビューエル 創業者
Erik Buell
RR1000/1200 1986年
RR1000/1200
RS1200 1989年
RS1200
S2 1994年
S2 Thunderbolt
S1 1996年
S1 Lightning
S3 1996年
S3/T Thunderbolt
M2 1997年
M2 Cyclone
X1 1999年
X1 Lightning
BLAST 2000年
Blast
XB9シリーズ 2003年
XB9R Firerbolt
XB9S Lightning
XB12シリーズ 2004年
XB12R Firerbolt
XB12S Lightning
XB12X ULYSSES
1125シリーズ 2007年
1125R
1125CR
1125シリーズ 2011年
1190RS
1190シリーズ 2015年
1190SX
1190RX

X1 Lightning -since 1999-

X1ライトニング

S1の後継として大変貌を遂げたX1。パイプフレームビューエル(第一世代)の集大成モデルでもあります。

S1との大きな違いは、ハーレーのエンジンをベースにチューニングしてきた今までと違い、ハーレーに注文を出して作ってもらったビューエル専用エンジンを積んでいること。

X1LIGHTNING

更に電子制御インジェクターのDDFIをハーレーよりも先に採用し、シートフレームもまだ20世紀なのにアルミダイキャストでそのまま外装にするという最先端技術の塊。エアクリーナーも熱対策を考えられた形状へ変更されています。

X1ミレニアムリミテッド

これは2000年に100台限定で発売された全身シルバーのX1Millennium Limited Edition。この他にもカーボンモデルやホワイトライトニングなども発売。

ただ一番大きい変更点はS3で少し話しましたが、エンジンマウントが大幅に改良・補強された事だったりします。

エンジン:空冷4サイクルOHV二気筒
排気量:1203cc
最高出力:
101ps/6000rpm
最大トルク:
12.4kg-m/4550rpm
車両重量:200kg(乾)

系譜図
エリックビューエル 創業者
Erik Buell
RR1000/1200 1986年
RR1000/1200
RS1200 1989年
RS1200
S2 1994年
S2 Thunderbolt
S1 1996年
S1 Lightning
S3 1996年
S3/T Thunderbolt
M2 1997年
M2 Cyclone
X1 1999年
X1 Lightning
BLAST 2000年
Blast
XB9シリーズ 2003年
XB9R Firerbolt
XB9S Lightning
XB12シリーズ 2004年
XB12R Firerbolt
XB12S Lightning
XB12X ULYSSES
1125シリーズ 2007年
1125R
1125CR
1125シリーズ 2011年
1190RS
1190シリーズ 2015年
1190SX
1190RX

M2 Cyclone -since 1997-

M2サイクロン

もっとビューエルを身近に感じてもらおうと考えて作られた優しいビューエルなM2サイクロン。

基本的にはS1からのキャリーオーバーモデルなんだけど、タンデムも難なく熟せるロングシートにビューエルとしては初めてとなるSHOWAサスを採用。エンジンもチューニングを控え扱いやすさを重視されています。

価格も135万円(国内価格)とS1に対し20万円ほど安かった事もあり、カスタムベースとしても人気が高く、2002年まで発売された息の長かったモデル。

CYCLONE

1999年にはヘッド周りに手を加え高圧縮化した事で91馬力に、更に2000年にはエキゾーストをスチールからステンレスへ、01には更にフレンドリーにするためにローシート化などの変更が入りました。

エンジン:空冷4サイクルOHV二気筒
排気量:1203cc
最高出力:
83ps/5800rpm
最大トルク:
11.0kg-m/4500rpm
車両重量:197kg(乾)

系譜図
エリックビューエル 創業者
Erik Buell
RR1000/1200 1986年
RR1000/1200
RS1200 1989年
RS1200
S2 1994年
S2 Thunderbolt
S1 1996年
S1 Lightning
S3 1996年
S3/T Thunderbolt
M2 1997年
M2 Cyclone
X1 1999年
X1 Lightning
BLAST 2000年
Blast
XB9シリーズ 2003年
XB9R Firerbolt
XB9S Lightning
XB12シリーズ 2004年
XB12R Firerbolt
XB12S Lightning
XB12X ULYSSES
1125シリーズ 2007年
1125R
1125CR
1125シリーズ 2011年
1190RS
1190シリーズ 2015年
1190SX
1190RX

S3/T Thunderbolt -since 1996-

S3サンダーボルト

S2モデルの後継に当たるS3/T Thunderbolt。

基本的な構造はS2から踏襲されたフラッグシップ的な立ち位置でS1との部品共有が進んでいるモデル。S2にあったようにS3にもハイスピードツーリングモデルであるS3Tもラインナップ。

S3サンダーボルト

国内には殆ど入ってきていない様ですが、本土の方はかなり長く発売されたロングセラーモデルだったりします。

1998年からは先に紹介した101馬力のサンダーストームエンジンを搭載したモデルになりました。

少し話をそらすと、ビューエルといえば

「振動が凄い」

というのを聞いたことがあると思います。

これはとどのつまりハーレーのエンジンを積んでいるからですが、このエンジンを積むにあたって使われているのがエリックが開発したエンジンラバーマウント。

アイソレーター

後にハーレーなどにも採用される振動吸収材で頭(ヘッド)とお尻(ステップ裏)でマウントされています・・・が、まあ当然コレだけで振動を抑えれるわけもなく。

各部にクラックが入ったり、ミラーが飛んでいったり、サイドスタンド立てても動いていったり等など。

代を追う毎にマウントの創意工夫が施され大人しくなっていくのですが、逆に言うと初期であるこのSシリーズは一線を画する振動があります。定期的にマウントを交換しないとフレームにクラックが入るレベル。

ただそれがビューエルの魅力の一つなんですけどね。乗ったら最後です。

エンジン:空冷4サイクルOHV二気筒
排気量:1203cc
最高出力:
91ps/5800rpm
最大トルク:
12.0kg-m/5200rpm
車両重量:211kg(乾)

系譜図
エリックビューエル 創業者
Erik Buell
RR1000/1200 1986年
RR1000/1200
RS1200 1989年
RS1200
S2 1994年
S2 Thunderbolt
S1 1996年
S1 Lightning
S3 1996年
S3/T Thunderbolt
M2 1997年
M2 Cyclone
X1 1999年
X1 Lightning
BLAST 2000年
Blast
XB9シリーズ 2003年
XB9R Firerbolt
XB9S Lightning
XB12シリーズ 2004年
XB12R Firerbolt
XB12S Lightning
XB12X ULYSSES
1125シリーズ 2007年
1125R
1125CR
1125シリーズ 2011年
1190RS
1190シリーズ 2015年
1190SX
1190RX

S1 Lightning -since 1996-

S1ライトニング

ネイキッドスーパースポーツの意味を表すライトニングの名を持ったS1Lightning。

厳密に言うと生産は先に紹介したS2が先だけど、日本に入ってきたのはこのS1が先。※ハーレージャパンの取扱開始が1996年からのため

S1Lightning

お尻が短いことが特徴のS1もS2と同じスポーツスター1200のエンジンなんだけど、ビューエルとしては始めてエンジン内部にまで大きく手を加えられているモデル。

ピストンやヘッド周りを専用の物に変更し圧縮比を上げ、エアクリーナーも大容量の物に変更することで25馬力UPの90馬力に。

車体右側についてる黒い大きな箱のようなものがそのエアクリーナーボックス。

S1W ライトニング

1998年には更にチューニングされ101馬力にまで跳ね上がったS1Wが登場。

バルブ系などを更に拡大したサンダーストームエンジン搭載の一人乗り専用モデルで、ハーレーエンジンとしては初となる100馬力超え。

S1W広告写真

コレに乗ると側頭葉が大変なことになると・・・ちなみにS1Wはホワイトライトニングというペットネームを持っていますが、WはホワイトのWではなく後述のS3と同じ20.8Lワイドタンクのワイドからと言われています。

正式にはS1Wホワイトライトニング、もしくはホワイトライトニングS1Wです。

S1Wブラックライトニング

限定で入ってきたS1WBのBは文字通りブラックからです。ブラックライトニングS1Wというわけ。ややこしいですが。

もしかしたらサスペンションのWP社(ホワイトパワー)と同じように倫理上の問題が絡んでいるのかもしれませんね。

エンジン:空冷4サイクルOHV二気筒
排気量:1203cc
最高出力:
90ps/6200rpm
最大トルク:
10.5kg-m/5000rpm
車両重量:202kg(乾)

系譜図
エリックビューエル 創業者
Erik Buell
RR1000/1200 1986年
RR1000/1200
RS1200 1989年
RS1200
S2 1994年
S2 Thunderbolt
S1 1996年
S1 Lightning
S3 1996年
S3/T Thunderbolt
M2 1997年
M2 Cyclone
X1 1999年
X1 Lightning
BLAST 2000年
Blast
XB9シリーズ 2003年
XB9R Firerbolt
XB9S Lightning
XB12シリーズ 2004年
XB12R Firerbolt
XB12S Lightning
XB12X ULYSSES
1125シリーズ 2007年
1125R
1125CR
1125シリーズ 2011年
1190RS
1190シリーズ 2015年
1190SX
1190RX

S2/S2T Thunderbolt -since 1994-

S2サンダーボルト

このモデルくらいからは覚えてる人も多いかもしれないS2Thunderbolt。

サンダーボルトというのはフラッグシップを表す意味なんですが、それよりも大事なのはそれまでレースやスポーツにあまり重きを置いていなかったハーレーが考えを改め、ビューエルの株の49%を取得(実質子会社化)する契約を結んだこと。

S1/S2カタログ写真

このお陰でそれまでハンドメイドで300万円近かった車体価格が2/3程度にまで抑えられ、日本のハーレーディーラーから発売される様になりました。要するにBuellのメジャーデビューですね。

エンジンはスポーツスター1200の物を専用設計のパイプフレームに搭載したもの。駆動がベルトドライブに変更されているのが特徴ですが、これもいわゆるバネ下重量の軽減というエリックがずっと拘っている事を成すため。

S2Tサンダーボルト

日本に入ってきたのは正確にはS2にパニアケースやレッグシールドを装着したS2T Thunderboltというモデルで、1996年から。

ステップやハンドルの位置も変更されたハイスピードツアラーです。

エンジン:空冷4サイクルOHV二気筒
排気量:1203cc
最高出力:
76ps/5200rpm
最大トルク:
10.5kg-m/5200rpm
車両重量:223kg(乾)
※スペックはS2T

系譜図
エリックビューエル 創業者
Erik Buell
RR1000/1200 1986年
RR1000/1200
RS1200 1989年
RS1200
S2 1994年
S2 Thunderbolt
S1 1996年
S1 Lightning
S3 1996年
S3/T Thunderbolt
M2 1997年
M2 Cyclone
X1 1999年
X1 Lightning
BLAST 2000年
Blast
XB9シリーズ 2003年
XB9R Firerbolt
XB9S Lightning
XB12シリーズ 2004年
XB12R Firerbolt
XB12S Lightning
XB12X ULYSSES
1125シリーズ 2007年
1125R
1125CR
1125シリーズ 2011年
1190RS
1190シリーズ 2015年
1190SX
1190RX

MONSTER750シリーズ -since 1996-

モンスター750

勝手に纏めた空冷MONSTER三兄弟の最後にご紹介するのは次男坊の750シリーズです。

出たのは三兄弟の中で一番最後。

革命をもたらした長男M900、コスパの高さから人気が出てドゥカティを救った三男M600、そして遅れてやってきた次男M750は・・・・残念ながら人気が出ませんでした。

スペックでは兄に負け、コスパでは弟に負けるという少し仕方ない面もありますが、消費者からも中途半端だとして売れず。

2001年には他の兄弟に習ってFI化でM750I.E.となり、2003年には排気量のアップでM800となりました。

M800

なりましたが・・・・

コレじゃいかんという事で05年に兄弟とは別に特別なモデルチェンジが入りました。

05年にS2Rと名前を改め、片持ちスイングアームと片側2本出しマフラー、5本スポークホイールなどS4R(水冷MONSTER)に準ずる戦闘的なMONSTERに大変貌。

S2R

900の方でも話したけど、元々このデザインはそのS4Rという水冷ジャジャ馬MONSTERに合わせたデザインだったから、その見た目に空冷2バルブエンジンってのは非常にアベコベなんだけど、そもそもMONSTER自体が良い意味でアベコベな車体設計だった事を考えると正しい方向性だね。

先鋭と旧態が入り混じった正にモンスターの様なS2Rは非常に人気が出ました。その為か翌年には長男までもがS2R化され、この次男は区別のため翌年からはS2R800と名前に排気量が付く事に。芸人の劇団ひとりさんも乗ってるみたいですね。

苦節十年目にしてやっと次男の時代が来た・・んだけどそんな人気とは裏腹にS2R800はドゥカティ全体が規制を機にしたプラットフォームの維新をする事になっていたため発売されていた期間は5年とMONSTERとしてはそんなに長くない。

そんなS2Rの後継として2010年に出たのが維新された新世代のM796

M796

基本的には弟分のM696と同じだけど次男はS2Rの後継アピールの為か片持ちスイングアームになっています。エンジンは+100ccされたロングストロークエンジンで万能型。796だけど排気量は803ccとちょっとややこしかったりする。

このM796は弟の696と並んで第二世代空冷MONSTERが途切れる最後まで発売されました。と言っても2013年までと短い上に最初で最後なわけだけどね。

空冷MONSTERが絶滅してから4年が経った2017年、M797として再び空冷MONSTERが復活。

M797

Monsteristi(モンスターリスティ ※MONSTERに魅せられた人の事)なら気付くと思いますが、トレリスフレームがアルミダイキャストとのハイブリッドフレームから従来のトレリスアピールバッチリなフレームと両持ちスイングアームに戻りました。

M797トレリスフレーム

エンジンはネオレトロブームに乗っかって40年ぶりに復活したスクランブラーの物。ユーロ4(環境規制)に対応した76馬力で装備重量186kg。といってもコレもともと先代の796に使われてたエンジンなんだけどね。だからコレも797と言ってるけど803ccです。

M797トレリスフレーム

スクランブラーは縮小版の400があるからこの797にそのエンジン積んで400がまた出るかもね。

なんか駆け足過ぎてモデル紹介になってない気がしますが最後に・・・

MONSTERがどれだけ凄いバイクかを表すとした場合いろんな言い方があります。

「916と並んで最も成功したバイク」
「DUCATIで最も売れたバイク」
「DUCATIを救ったバイク」
「欧州でネイキッドというカテゴリを蘇らせたバイク」

でもMONSTERの凄さを表すのに最も簡単明瞭な言葉があります。それは

M797エンジン

「トレリスフレームのネイキッド=MONSTER」

という二度と覆る事のない既成事実。

誰が見てもそう思う。好きとか嫌いとか定番といった次元じゃない。

エンジン:空冷4サイクルSOHC二気筒
排気量:748[803]cc
最高出力:
62[76]ps/7500[]rpm
最大トルク:
6.2[6.93]kg-m/6850[5750]rpm
車両重量:178[186]kg(乾) [装]
※スペックはM750 []内はM797

系譜図
M9001993年~
M900の系譜
M6001994年~
M600の系譜
モンスター750ie1996年~
M750の系譜

【関連車種】
CB650F/CBR650Fの系譜FZ6/XJ6/FZ8の系譜GSX-S750の系譜Ninja650/Z650の系譜Z900の系譜

M600シリーズ -since 1994-

モンスター600

900の系譜で

「MONSTERが大ヒットしてDUCATIを救った」

と言ったけど、その中でも一番貢献したのは実は900ではなくジュニアモンスターまたはベイビーモンスターの愛称で親しまれたこのM600だったりします。

ただでさえお買い得だった900の更なるお買い得版として一年後に登場した三男坊。足つきの良さも相まって老若男女問わず人気が出て非常に息の長いモデルとなりました。

モデルチェンジの流れは基本的に兄弟車とほぼ同じで、02年にはインジェクション採用と排気量も618ccアップで通称M620I.E.に。

モンスター620

馬力が77馬力にまでアップされ非常に人気が出たモデル。

そして一般的に第一世代最後といわれるEURO3(規制)対応の06年発売M695。

モンスター695

細部の不具合潰しに加えエンジンの排気量が695ccにまでアップされたんですが、先代よりも更にショートストローク化された事でスポーツ性が向上。

何故かこの三男坊だけはS2R化(片側2本出しマフラーなど)されなかったため台数はそれほど出なかった。なんでしなかったんだろうね。

696イラスト

ちなみにイタリアでは白バイとしても活躍していました。さすが母国。

少し話が反れますが先代の600/620そして今紹介した695をベースに作られたのが95年から発売されたMONSTER400です。

モンスター400

~96年までの前期型(キャブ)と00~08年の後期型(インジェクション)となってます。排気量を見てもらえれば分かる通り400SSと共に日本やフィリピンといったアジア向けに用意された普通二輪で乗れるMONSTER。

それまでもドゥカティは400F3や400SSといったバイクも出すには出してたけど本土イタリア以上にスパルタンなイメージが出来上がっていた国内においては

「こんなのドゥカティじゃない」

なんて言われてた。当然ながらこれはMONSTER400でも。でもこれMONSTERに限っていうと話が変わってきますよね。

900も母国イタリアをはじめとした欧州でも最初は

「こんなのドゥカティじゃない」

なんて言われたわけですから。

MONSTER400

残念ながら4メーカーのお膝元ということもありイタリアのように大ヒットとはならなかった。

でもMonster900誕生の経緯で話した通りMONSTER最大の武器であり最大の功績はドゥカティの敷居を下げた事。端的に表すなら”日常で楽しめるイタリア車”というのがMONSTER。

そう考えた時、400は確かに6xxのスケールダウンモデルで決して速いとは言えなかったけど、日本の道路事情を考えたら最も日本に合ったMONSTERはこの400だったのかもしれないね。

ハンドリングは他のモンスター同様にスポーティなわけだし。その代わりネイキッドにあるまじき切れ角の無さだけどね。

モンスター(特に古いタイプ)はハンドルの切れ角もそうだけど形状も凄く独特で初めて乗ったら絶対に

「何か違う・・・」

と思うハズ。

話を戻しましょう・・・戻しましょうと言っても三男坊としては最後のモデルになる08年に出たM696。

モンスター696

新世代のジュニアモンスターとして見た目が大きく代わりました。スリッパークラッチ(APTC)の採用やエンジンの腰上(ヘッドやシリンダー周り)の改良で80馬力にアップ。

新生モンスターの中でもM696は一番最初に出た事もあって色んな物議を醸しました。異型ヘッドライトなんかもそうだけど一番は象徴でもあったトレリスフレームが大きく変わったこと。

696イラスト

先代がシートまで綺麗に繋がっていたのに対しこの696(というかここからのMONSTER)は前半はトレリスフレームだけど後ろ半分はアルミダイキャストというハイブリッドに。要するにトレリスフレームアピールが少し弱くなりました。

新生モンスター

「DUCATIといえば綺麗なトレリスフレーム」

って考えのドゥカティスタは多いしMONSTERは長いことデザインを変えずに来てたわけだからそう思うのも無理ないけどね。まあしかしこれはスーパーバイクからのフィードバックで作られたハイブリッドフレームなので優れているのは疑いようもない事実ですし、市場でも受け入れられたみたいです。

厳密にいうと三男坊にはもう一つ659というモデルがありました。日本には入ってきてないけどね。

モンスター659

これは659ccに落とされた696みたいなバイクで主にオーストラリアで2013年まで発売されていました。

なんで659なのかというとオーストラリアでは免許取得後の一年は660ccを超えるバイクに乗れないからです。だからわざわざ用意したというわけ。

オーストラリアは日欧米に比べそれほど大きな市場ではないんですが、それにも関わらず用意したのはやっぱりドゥカティにとって空冷MONSTERというのは売れ筋であり、広告塔であり、エントリーモデルとしてライダーに最も歩み寄ったバイクであるという事の証でしょう。

まして6xxシリーズはコストパフォーマンスや足付きの良い優れた末っ子だったからね。

エンジン:空冷4サイクルSOHC二気筒
排気量:583[696]cc
最高出力:
52[80]ps/9000rpm
最大トルク:
4.9[7.0]kg-m/7750rpm
車両重量:174[161]kg(乾)
※スペックはM600 []内はM696

系譜図
M9001993年~
M900の系譜
M6001994年~
M600の系譜
モンスター750ie1996年~
M750の系譜

M900シリーズ -since 1993-

M900

ドゥカティ初のネイキッドとなるモンスター900が誕生したのは1993年の事・・・なんですが少しモンスターが生まれるに至った経緯をお話ししたいと思います。

今でこそマルチパーパスのムルティストラーダ、マッスルクルーザーのディアベル、最近ではネオレトロのスクランブラーなど色んなバリエーションのバイクを出しているドゥカティですが、モンスター900を出すまでは基本的にフルカウルのスポーツバイクしか作っていませんでした。だから”ドゥカティ=スーパースポーツメーカー”みたいな感じだったわけです。

900SS_750F1

そんな中で登場したネイキッドとして出たモンスターはとてつもない批判に晒されました。

元々ドゥカティが好きだったドゥカティスタからは

「スポーツメーカーだったのに失望だ」

と蔑まれ、他からは

「奇をてらった変な形のネイキッド」

と散々な言われようで誰からも理解されず。造りから見ても851/888ベースのトレリスフレームに900SSのエンジンを積むというよく分からない構成。

ドゥカティが分からない人の為にアベコベさを日本車で例えるなら、GSX-R1000の高剛性フレームにGSX1000Sカタナの油冷エンジンを積んだネイキッドって感じ・・・例えが下手ですいません。

M900青

まあとにかくスポーツバイク専門だったドゥカティが性能も見た目もアベコベで意味不明なバイクを出したわけですが、当然ながら意味もなく出したわけではありません。

EUでも80年代に日本でバイクブームが起こったように日本メーカーの大型スポーツバイクが一世を風靡していました。GSX-RにVFにFZRにGPZに・・・しかしトンデモナイ速度が出る大型スポーツバイクということで事故の件数も増加。それにより保険会社はスポーツバイクの保険料をドンドン上げていきました。

この影響を最も受けたのはスポーツバイクしか作ってなかったドゥカティ。窮地に陥ったドゥカティは閃きました。

「スポーツバイクは保険料が高くて駄目ならスポーツバイクっぽくないスポーツバイクを作ればいい」

そうやって生まれたのがモンスター900です。

空冷エンジンで、ポジションも凄く起きてて、芋虫みたいに長いタンクとシートのネイキッド。そういった事から

「モンスターはネイキッドだし空冷エンジンだからスポーツバイクではない」

という評価を保険会社から受けた・・・正にドゥカティの思惑通りの展開。

空冷といえど元を辿ればスーパーバイクに使われていたエンジンを中低速よりに改良したもので街乗りから峠まで十二分なポテンシャル。そしてフレームも元々スーパーバイクに使われていた物がベースだからハンドリングはとってもクイックな今でいうストリートファイター。

M900黄

当時はスポーツバイクといえばカウルの付いたバイクが当たり前でネイキッドは絶滅していた時代。そんな中でネイキッドながらスポーツを味わえるという口コミが広まり”(費用面から)スポーツバイクに乗りたいけど乗れない”という層をガッチリ獲得することに成功。

ドゥカティにあるまじきお買い得車という事もあり瞬く間にイタリアにおいて日本車を抜き去るほどの販売台数、そして2007年モデルまでの時点で15万台を超える出荷台数を記録。街中を走れるドゥカティのスポーツバイクとしてモンスターは定着しました。

モンスターを出すにあたって最大の難関だったのは当時親会社だったCAGIVAを説得することだったようだけど、ドゥカティの売上の半数以上を占めるまでに至ったんだからCAGIVAも喜んだでしょうね。

ミゲール・A・ガールズィ

ちなみにMONSTERの生みの親である工業デザイナーはミゲール・A・ガールズィ(Miguel_Angel_Galluzzi)というアルゼンチン出身のお方。

MONSTERというとドゥカティのトレードマークでもある剥き出しのトレリスフレームが特徴的だけど、ミゲールさん曰く851のフレームを選んだのは自分の思い描くタンクを作るために一番邪魔にならないフレームだったからだそう。つまりMONSTERのトレードマークはフレームじゃなくてタンクなんだね。

M900ラフデザイン

鬼才として有名なタンブリーニさんもそうだけど、向こうはデザインも中身も1人でパッケージングするのが結構当たり前だったりするわけです。イタ車といえば芸術的な物が多いイメージがありますが、それにはこういった事から来てる面もあるでしょうね。

ミゲールさんはMONSTERの後も各メーカーを転々としていて、最近で言うとApriliaの三眼RSV4(2008)もこの方のデザイン。

03

他にはヤマハのコンセプトであるコレもミゲールさんのデザイン。

さっさと歴代モデルを紹介しろと怒られそうなのでいい加減900に話を戻すと、先ず最初に出たのは上で紹介している93年の初代MONSTERことM900です。欧州でネイキッド革命をもたらしたバイク・・・とその前に、知ってる人も多いと思うけどMONSTERには色々グレードがあります(ありました)。

SHOWA/OHLINSサスやビキニカウルといった装備のトップグレードはSまたは+、そしてメインのノーマルグレード、廉価版のDark。日本人ならこの3つだけ覚えておけば大丈夫。

そしてモチベーションの都合で今回グレード紹介や細かいモデルチェンジは割愛させてもらいます。ごめんなさい。

革命をもたらしたM900に初めて大きく手が入ったのは2000年でFIになりました。分けるためにM900I.E.とも言われています。

00年式M900

このモデルからタコメーターも装着。更に翌2001年にはフレームがST系へと変更された事で少しワイドになり安定性が向上。

そして次のモデルチェンジは2003年で排気量が992ccまで上がってM1000となりました。

m1000

これは兄弟車であったSSシリーズがモデルチェンジで1000になったから。馬力も大きく上がって94馬力となったわけですが、日本向けはほぼSモデル(SHOWAサスペンションの上位モデル)だったようです。

そしてそして見た目が大きく変わった06年のS2R1000。

s2r1000

片持ちスイングアームに片側二本出しマフラーと戦闘的なルックスになりました。もともとこれはS4R(ハイスペックな水冷モンスター)向けだったデザインでしたが弟分の800に続く形となりました。

そしてそしてそして09年に16年目にして初のフルモデルチェンジ。エンジンのみならずフレームも新しくなったM1100になります。

s2r1000

排気量が更に上がって1078ccになり異型ヘッドライトや片持ちスイングアームやトラスフレームとアルミダイキャストのハイブリッドフレームとなった新世代モンスター。

そしてそし・・・せっかくフルモデルチェンジしたのに勿体無い気がするけど11年から13年まで発売されたM1100EVOが長男坊最後のモデルとなります。

s2r1000

空冷SOHC2バルブながら100馬力を発揮するEVOエンジンが積まれクラッチが湿式のスリッパークラッチとなり電スロ化され4段階のトラクションコントロールシステムも採用。

最後にして最高のスペックを引き下げた空冷モンスター。

てっきりドゥカティの空冷MONSTERはこの路線でいくのかと思いましたが、このモデルを最後に長男坊は一足先に生産終了。

s2r1000

やっぱり水冷MONSTERとの住み分けが難しかったのか。規制の問題が一番でしょうけど。

エンジン:空冷4サイクルSOHC単気筒
排気量:904[1078]cc
最高出力:
67[100]ps/7000[7500]rpm
最大トルク:
8.3[10.5]kg-m/6000rpm
車両重量:185[169]kg(乾)
※スペックはM900 []内はM1100EVO

系譜図
M9001993年~
M900の系譜
M6001994年~
M600の系譜
モンスター750ie1996年~
M750の系譜