Z750(ZR750L) -since 2007-

2007年式Z750

水冷Zとなって二代目のZ750(ZR750L)

先代から質感が大幅に上がり倒立サスを奢ってもらえた。
これは先代がコストパフォーマンスの優秀さなどで欧州でそこそこ好評だったからにほかならない。

先代もそうだけど基本的な構造はZ1000に倣ってるいるのでモデルチェンジも合わせて行われたんだけど、意外と専用品がチョコチョコあったりする。

そしてこのモデルからZ1/Z2から続く兄と弟という関係が明確に変わり始めました。

Z1000とZ750

というのもZ1000が年を追う毎にスペックが上がっていくのに対し、Z750は逆にスペックが下がっていった。
この理由についての正式な理由はカワサキからは何もないけどその後の経緯から見ても、Z1000とZ750の方向性の違いが最大の要因だと思う。

Z750はZ1000と違い、スペックよりもオールマイティに何でも熟せるバイクへとより大きく舵を切った。

ZR750L

例えるなら無鉄砲な兄のZ1000を冷めた目で見る器用な弟・・・的な。

でも結果的にコレが日常でバイクを使う欧州人に「日常で楽しめるストリートファイター」としてウケた。

Z750カタログ写真

結果として兄であるZ1000を凌ぐ販売台数を記録。

750ccで100馬力もある直四のバイクが「チョウドイイ」と思える欧州人の感覚は日本とはかけ離れてる気がしないでもないですね。

主要諸元
全長/幅/高 2085/805/1440mm
シート高 815mm
車軸距離 1440mm
車体重量 203kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 18.5L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 748cc
最高出力 100ps/9000rpm
最高トルク 8.0kg-m/8300rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTX9-BS
プラグ CR9EK
または
U27ETR
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4/T4
または
MA適合品10W-40
オイル容量 全容量3.8L
交換時3.1L
フィルター交換時3.3L
スプロケ 前15|後43
チェーン サイズ520|リンク112
車体価格 880,000円(税別)
系譜図
Z21973年
750RS
(Z2/Z2A)
Z750FOUR1976年
Z750FOUR
(Z750A4/A5/D1)
Z750FX1979年
Z750FX
(Z750D2/D3/E)
Z750GP1982年
Z750GP
(Z750R)
ZR750J2004年
Z750/S
(ZR750J/K)
ZR750L2007年
Z750
(ZR750L)
ZR750N2011年
Z750R
(ZR750N/P)
ZR800B2012年
Z800
(ZR800A)
ZR900B2017年
Z900
(ZR900B)
ZR900B2017年
Z900RS/CAFE
(ZR900C/E)

Z750/S(ZR750J/K) -since 2004-

2004年式Z750

「新世代Zパフォーマンス」

実に20年ぶりに復活したZ750。

Z1000の一年遅れで登場という奇しくもZ1/Z2と全く同じ登場の仕方になったZ750(ZR750J)の通称J型。過去のZ750と区別するために水冷Z750とか言われたりもしてますね。

ただそれまでのZ1/Z2と大きく違うのはZ1/Z2が世界戦略車と国内向けだったのに対し、Z750も世界戦略車ということ。

Z750リア

基本的な構造はZ1000に準ずるもののサスペンションを正立にしスイングアームも簡略的な物になりマフラー四本出しから集合管へと変わっている。

これは海外市場において750ccという存在が日本で言う400ccのミドルクラスに近い存在でコストパフォーマンスが要求されるから。

エンジンも尖ったZ1000の物だけどストローク幅はそのままボアを縮小し748ccまでダウン。これによりZ1000よりも広域で扱いやすい性格になっています。

それでも最高出力はZ1000が127馬力なのに対し109馬力と750にしてはかなり高い方だけどね。

更にその一年後には大型のハーフカウルを付けたSモデルが登場。

Z750S

恐らく多くの人が

「あーあったねこんなの」

ぐらいに思ってるかと。なんでこんなの出したのか疑問に思う人も多いのではないかと。

その理由はZRX1200Sもそうだけど

「日本人の言うネイキッド≠欧米のネイキッド」

だから。

海外でネイキッドと言えば(国によるんだけど)Sモデルみたいなバイク。でもその海外でも無印ばかりが売れてSモデルは余り売れなかったみたいですけどね・・・

まあしかしそのおかげでZ1000もZ750もヘッドライトはオマケ程度でも良いと分かりストファイブームに一役買った事は間違いないです。

主要諸元
全長/幅/高 2080/780/1055mm
[2080/780/1180mm]
シート高 815mm
車軸距離 1425mm
車体重量 195kg(乾)
[199kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 748cc
最高出力 109ps/11000rpm
最高トルク 7.6kg-m/8200rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTX9-BS
プラグ CR9EK
または
U27ETR
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4/T4
または
MA適合品10W-40
オイル容量 全容量3.8L
交換時3.1L
フィルター交換時3.3L
スプロケ 前15|後43
チェーン サイズ520|リンク112
車体価格 850,000円(税別)
[860,000円(税別)]
系譜図
Z21973年
750RS
(Z2/Z2A)
Z750FOUR1976年
Z750FOUR
(Z750A4/A5/D1)
Z750FX1979年
Z750FX
(Z750D2/D3/E)
Z750GP1982年
Z750GP
(Z750R)
ZR750J2004年
Z750/S
(ZR750J/K)
ZR750L2007年
Z750
(ZR750L)
ZR750N2011年
Z750R
(ZR750N/P)
ZR800B2012年
Z800
(ZR800A)
ZR900B2017年
Z900
(ZR900B)
ZR900B2017年
Z900RS/CAFE
(ZR900C/E)

Z750GP(Z750R) -since 1982-

Z750GP

各社からZより速いバイクがゴロゴロ出てきた事で、もはやZブランドは無いに等しいものになってた。

そんな状況を何とか挽回しようとしたカワサキが出したバイクがこのZ750GP。

サイドカバーを見てもらうと「GPz750」と書いているのが分かる。

Z750GPなのかGPz750なのか非常に紛らわしいけど車名はZ750GPです。GPz750は二年後に登場する。

じゃあなんでGPz750なんて書いてあるのかというと「GPモデルのZ750」という意味。結果的にこれがGPzという名前を生んだキッカケになった。

さてそのZ750GPだけどエンジンこそ先代FXから続くザッパーだけど兄貴分のZ1000GPの造りを意識した物になっている。

何と言ってもこの時代にFIを採用したこと。

d.f.i

Z1000GPでも言ってるけど正直褒められた出来ではなく、エンジンストールが絶えなかったとか何とか・・・

結果的にZ系のネイキッドはハイスペックカウル車ブームに伴いGPz系へバトンタッチすることでしばらくお休みすることになった。

主要諸元
全長/幅/高 2170/780/1130mm
シート高 -mm
車軸距離 1460mm
車体重量 216kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 21.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 738cc
最高出力 70ps/9500rpm
最高トルク 6.0kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19
後120/90-18
バッテリー YB12A-AK
プラグ B8ES
推奨オイル
オイル容量
スプロケ 前13|後33
チェーン サイズ630|リンク88
車体価格 645,000円(税別)
系譜図
Z21973年
750RS
(Z2/Z2A)
Z750FOUR1976年
Z750FOUR
(Z750A4/A5/D1)
Z750FX1979年
Z750FX
(Z750D2/D3/E)
Z750GP1982年
Z750GP
(Z750R)
ZR750J2004年
Z750/S
(ZR750J/K)
ZR750L2007年
Z750
(ZR750L)
ZR750N2011年
Z750R
(ZR750N/P)
ZR800B2012年
Z800
(ZR800A)
ZR900B2017年
Z900
(ZR900B)
ZR900B2017年
Z900RS/CAFE
(ZR900C/E)

Z750FX(Z750D2/D3/E) -since 1979-

Z750FX

海外で低迷するZ1の人気を再び押し上げたZ1000MARK2の750cc国内バージョンがこのZ750FX。

「通称:角Z」

と呼ばれるモデルです。このモデルも非常に人気が高く、今でもプレミア価格で取引されてます。

Zオーナー達にとっては常識と怒られるかもしれませんが、実はこのFXはZシリーズにおいて大きな転機を迎えたバイクでもあります。

このZ750FXが型式が2つあるのは最初こそZ2ベースだったのですが、1980年のZ750FXIIからはZ650のエンジン(Z750E)になっているから。

ザッパー

Z650通称ザッパーというのはZ1/Z2のエンジンから数年後に開発されたエンジンで軽量コンパクトを重視して作られたスポーツエンジン。Z650に最初に積まれたこのエンジンでZ系もしばらく行くことになります。

ザッパーについてはコチラ

Z750FXII

ちなみにこれがZ650ベースになったZ750FXII/KZ750E型。

角Zから一転して丸Z風に様変わりしたんですが、これが結構不評でした。

Z750FXIII

という事で翌年のZ750FIII/E型後期で再び角Z風にモデルチェンジしていたりします。やっぱりFXといえば角Zと考える人が当時から多かったんでしょうね。

主要諸元
全長/幅/高 2180/900/1190mm
[2135/835/1150mm]
シート高 810mm
車軸距離 1500mm
[1425mm]
車体重量 246kg(乾)
[228kg(乾)]
{232kg(乾)}
燃料消費率
燃料容量 17.8L
エンジン 空冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 746cc
[738cc]
最高出力 70ps/9000rpm
[67ps/9500rpm]
最高トルク 5.7kg-m/8500rpm
[5.6kg-m/7500rpm]
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.25H19
後4.00H18
バッテリー YB14L-A2
[YB12A-A]
プラグ B7ES
または
W22ES-U
[B8ES]
推奨オイル
オイル容量
スプロケ 前15|後42
[前13|後33]
チェーン サイズ630|リンク96
[サイズ630|リンク88]
車体価格 515,000円(税別)
※[]内はFXII(D3)
※{}内はFXIII(E型)
系譜図
Z21973年
750RS
(Z2/Z2A)
Z750FOUR1976年
Z750FOUR
(Z750A4/A5/D1)
Z750FX1979年
Z750FX
(Z750D2/D3/E)
Z750GP1982年
Z750GP
(Z750R)
ZR750J2004年
Z750/S
(ZR750J/K)
ZR750L2007年
Z750
(ZR750L)
ZR750N2011年
Z750R
(ZR750N/P)
ZR800B2012年
Z800
(ZR800A)
ZR900B2017年
Z900
(ZR900B)
ZR900B2017年
Z900RS/CAFE
(ZR900C/E)

Z750FOUR(A4/A5/D1) -since 1976-

Z750フォア

車名を改め、Z750FOURとなったゼッツー・・・と言っていいのかな?

実は人によって意見が別れる所なんです。
もともと”ゼッツー”と呼ばれる様になった要因は型式によるものなのですが
人によっては

「A5までゼッツーだ!」とか「D1までゼッツーだ!」とか「Z2はRSだけだ!」とか意見がまちまちなんです。

これは永遠に解決しない問題です・・・興味のない人にとってはどうでもいい事かも知れませんが、Zオーナー達にとっては死活問題だったりします。

Z750A4

さてこの750フォアと先代の違いとして、フロントブレーキがダブルディスク化したこと、スピードリミッター装備、テールの大型化などが挙げられます。

Z2と数年違うだけで今や中古価格が倍以上違うのを見るとなんだかなーと思ったり。

主要諸元
全長/幅/高 2200/865/1170mm
シート高 820mm
{825mm}
車軸距離 1500mm
車体重量 236kg(乾)
{245kg(乾)}
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 746cc
最高出力 70ps/9000rpm
最高トルク 5.6kg-m/8500rpm
{5.7kg-m/8500rpm}
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.25H19
後4.00H18
バッテリー YB10L-A2
[{YB14L-A2}]
プラグ B8ES
{B7ES
または
W22ES-U}
推奨オイル
オイル容量
スプロケ 前15|後42
チェーン サイズ630|リンク100
[{サイズ630|リンク96}]
車体価格 485,000円(税別)
※[]内はA5
※{}内はD1
系譜図
Z21973年
750RS
(Z2/Z2A)
Z750FOUR1976年
Z750FOUR
(Z750A4/A5/D1)
Z750FX1979年
Z750FX
(Z750D2/D3/E)
Z750GP1982年
Z750GP
(Z750R)
ZR750J2004年
Z750/S
(ZR750J/K)
ZR750L2007年
Z750
(ZR750L)
ZR750N2011年
Z750R
(ZR750N/P)
ZR800B2012年
Z800
(ZR800A)
ZR900B2017年
Z900
(ZR900B)
ZR900B2017年
Z900RS/CAFE
(ZR900C/E)

750RS(Z2/Z2A) -since 1973-

カワサキ750RS

「ROYAL MACHINE」

皆さんご存知ゼッツーこと750RS/Z2~Z2A型。

900Super4(Z1)と同じく当時を知らないと”ゼッツー”が車名だと勘違いしているパターンが多いんですがゼッツー(Z2)は型式で正しい車名は

『750RS(Road Star)』

といいます。ちなみに勘違いしてZ750RSとか言うとバカにされる恐れがあるので注意しましょう。

750RSは900Super4に少し遅れる形で販売されたんですが、そもそもなんでZ1とは別にZ2を作ったのかと言うと、当時の国内仕様では750ccまでしか販売することが許されなかったから。だからこうやってわざわざ用意したという話。

あくまでも自主規制だから逆輸入として900Super4(Z1)を引っ張ってくれば乗れたんですが、まだ正規逆輸入なんか無かった時代で為替も1ドル300円の時代だからとんでもない額だったから今のように簡単には買えなかったんですね。

ゼッツー

じゃあ750RSは幾らだったのかというと当時の値段で418,000円、今で言うなら100万円前後。フラッグシップモデルだと言うことを考えれば手が届かないでもない金額でも無いですね。

市販車初のDOHC750ccで速さはピカイチ、そしてZ1に勝るとも劣らないルックスだった事もあって大ヒットしました。

ちなみにこの二台は瓜二つなんですが簡単な見分け方としては

900Super4(Z1)750RS(Z2)
900エンブレム750エンブレム
可変ステップ固定ステップ
マイルメーターkmメーター
レンズ一体ライトハロゲンライト
タンデムベルト無しタンデムベルト有り

という感じ。もちろん細かいことをいうとキャブやピストンリング、それになんとクランクシャフトまで違います。弟分という事からストロークを短くしただけと思われがちな750RSなんですが、実はクランクシャフトまでわざわざ750RS用に造ってるんです。

これはエンジンを造った稲村さんが

「排気量を落としても性能は落としたくない」

と意地になって譲らなかったから。だから750RSっていうのは国内仕様と言えるんだけど国内スペシャル仕様とも言えるんですね。

しかし750RSが発売されてから数年後の1975年に二輪業界は大きな転機を迎える事になります・・・それは二輪免許制度の改定。

それまで125cc以上というひと括りだった自動二輪免許が

『~400cc|401cc~』

に分けられ俗にいう限定解除制度(要試験)という厳しいものになってしまったんです。

この結果、大型に乗りたくても乗れない人が増えてしまいメーカー的に言えば不味い状況になった。

Z2

何故こうなったのかといえばオートバイのスペック向上に比例して二輪事故が増えたから。

それを象徴するのがずば抜けたデザインと圧倒的な性能を持っていた750RS。皆が憧れ、皆が性能に酔いしれたからこうなった。750RS(Z2)はそれだけ凄かったという話。

主要諸元
全長/幅/高 2200/865/1170mm
シート高 820mm
車軸距離 1500mm
車体重量 230kg(乾)
[232kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 17.0L
[16.0L]
エンジン 空冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 746cc
最高出力 69ps/9000rpm
最高トルク 5.9kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.25H19
後4.00H18
バッテリー YB14L-A2
プラグ B8ES
推奨オイル
オイル容量
スプロケ 前15|後42
チェーン サイズ630|リンク96
車体価格 418,000円(税別)
※[]内はZ2A
系譜図
Z21973年
750RS
(Z2/Z2A)
Z750FOUR1976年
Z750FOUR
(Z750A4/A5/D1)
Z750FX1979年
Z750FX
(Z750D2/D3/E)
Z750GP1982年
Z750GP
(Z750R)
ZR750J2004年
Z750/S
(ZR750J/K)
ZR750L2007年
Z750
(ZR750L)
ZR750N2011年
Z750R
(ZR750N/P)
ZR800B2012年
Z800
(ZR800A)
ZR900B2017年
Z900
(ZR900B)
ZR900B2017年
Z900RS/CAFE
(ZR900C/E)

Vulcan500LTD(EN500C) -since1996-

EN500C

「STREET SMART」

A/B型最終年度の一年前となる1996年にクロスフェードする形で登場したVulcan500LTD/EN500C型。

・タンク容量を+4Lし15Lに
・タンクオンメーター
・合わせてボディを大型化
・シート高を15mm下げ715mmに
・ホイールをキャストからスポークへ変更
・駆動をベルトからチェーンへ変更
・六速から五速ミッションへ変更
・スラッシュマフラー

などなど利便性を更に向上させるとともに更にクルーザーらしいフォルムへとモデルチェンジしました。

EN500Cメーター写真

まあ正直に言ってしまうと日本でこのモデルに興味がある人は非常に少ないかと思います。ただし、カワサキにとってこのモデルは間違いなく社史に刻まれるモデルかと。

というのもこのVulcan500LTDは1996年から大きなモデルチェンジをすることなく、実に2007年まで主に北米で販売されていたロングセラーモデルなんですね。

なんでそんなに続いたのかといえば454LTDでも話した通り、このクラスが向こうにとってのエントリークラスだからというのが大前提としてあるんですが、そのクラスの中でもVulcan500LTDは非常に良く出来ていたから。

まず上げられるのが乾燥重量199kgとクルーザーとしては非常に軽い部類だった事。そしてもう一つはバランサーを搭載した事で非常に滑らかに回り、かつ高速巡航も出来るポテンシャルをもったエンジンだった事。

EN500Cスペック

これらの要素から

「ちょい乗りにも使えるクルーザー」

という評価を得た。それは必然的に初心者にうってつけなモデルという需要を得たんです。

EN500Cサイド

ありのまま北米での評価というか世論を書くと、向こうでバイクと言えばクルーザーでありクルーザーといえばやっぱりハーレーという常識がある。だからカワサキにも張り合えるようにVNシリーズというビッグVツインモデルを用意している。バルカンといえばそっちを思い浮かべる人も多いかと。

しかし自分がどれだけバイクに適正があるのか、何処でどんな使い方をするか分からない状況で、初っ端からいきなりビッグクルーザーというのは賢い選択ではないという常識もある。

じゃあ小さいクルーザーにするかというとそれだとクルーザーらしさが薄れるし、大型に混じって走るのはパワー的な面でキツい・・・そういった問題がある中で、5000ドル程度で買えて、軽くて脚付きも良くて、ジェントルだけど元気なパラツインを持っているVulcan500LTDというのは非常に有力な選択肢になる。

カワサキEN500

だからVulcan500LTDはエントリー層に人気あった。

これ本当に面白いんですよ。

というのもVulcan500LTDには兄弟車としてGPZ500Sというロードスポーツモデルがあったんですが、あっちはあっちでロードスポーツが盛んな欧州において

「バイクに乗ってみたいならコレを買っておけ」

と言われる初心者向けベストバイクという立ち位置で人気だった。

EN500Cカタログ写真

それを北米ではVulcan500LTDが担っていたという話。

主要諸元
全長/幅/高 2290/840/1230mm
[2320/830/1125mm]
シート高 730mm
[715mm]
車軸距離 1555mm
[1595mm]
車体重量 186kg(乾)
[199kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 11.0L
[15.0L]
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 498cc
最高出力 60ps/9800rpm
最高トルク 4.6kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57S)
後140/90-15(70S)
バッテリー YB12A-A
プラグ D9EA
または
X27ES-U
推奨オイル SAE10W-40
オイル容量 全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ
チェーン
車体価格
系譜図
EN4541985年
EN454/LTD
(EN450A)
EN500A1990年
Vulcan500/LTD
(EN500A/B)
EN500C1996年
Vulcan500/LTD
(EN500C)
EN6502016年
Vulcan S
(EN650A-B/C-D/G/J)

Vulcan S(EN650A-B/C-D/G/J) -since 2016-

バルカンS

「Fun Riding Urban Runner」

先代にあたる500LTDの生産終了から9年後の2016年に登場したVulcan S/EN650A型と、ABS付きのEN650B型。

カワサキの得意とするオフセットレイダウンリアサスペンションである事からも分かる通り、この代からタイで生産されているNinja650系と同じFI化された水冷DOHC並列二気筒649ccが積まれた形になっています。

バルカンSカタログ写真

そんなVulcan Sですがコンセプトを一言で現すと

「既存のクルーザー像に囚われない」

ということになります。

先ず分かりやすいのがデザインで、パッと見でも分かる通りローロングながら逆三角形ヘッドライトやラジエーターシュラウド。それにギュッと凝縮された流線型のボディなど明らかに従来のクルーザースタイルと違うモダンな見た目。

バルカンSリア

テールライトも薄型のLEDタイプで、メーターも多機能LCDタイプ。

しかしVulcan Sが枠に囚われないという要素はデザインだけじゃありません。面白いのは中身の方にある。

Vulcan SにはERGO-FITと称した可変ポジション機能が備えられています。

エルゴフィット

フットペグ:標準/+25mm/+50mm(シフトロッド別売)

ハンドル:標準/前方へ+36mm(別売)

シート:後方へ50mm/標準/前方へ53mm(別売)

と18通りのポジション変更が行える親切機能でなんですが、さらに嬉しいのが標準の段階でハンドル位置を44mm手前(ライダー側)に寄せている仕様にしている事。

バルカンSのハンドルポジション

カタログが用意されなかったりする事から日本での販売はオマケという印象を受けそうになるんですが、こうやってわざわざ日本仕様を用意する力の入れよう。

だからフォワードコントロールの大型クルーザーにありがちな

「ハンドルやステップが遠くて手足が伸び切ってしまう」

という心配が無く、シート高も705mmしかないから脚付きも抜群。

何故これほどまでに、クルーザーにも関わらずここまでポジションにこだわっているのかというと

「スポーツ走行を楽しむため」

です。

バルカンSの壁紙

最初にも話した通りエンジンは万能の象徴とも言えるミドルスポーツNinja650の並列二気筒エンジンをベースに低中速を強化したもの。そしてリアサスペンションも7段階のプリロード調節機能付きで良好なダンピング性能を可能とするリンク式オフセットレイダウンリアサスと、クルーザーらしかぬモノを持っている。

そこに合わせられるのがいま話したERGO-FITという親切機能。そしてシート後方と盛り上がりやニーグリップを考慮したワイドタンクなどでガッチリと身体をマシンにホールド出来るようデザインされた車体。

これによりクルーザーながらマン・マシンの一体感を持って軽快に走れる様になっているんです。当然ながらステアリングもクルーザーらしからぬ軽快さ。

カナダ仕様

これは乗り出すのが億劫にならない街乗りにも使えるクルーザーという先代で評価された部分を更に研ぎ澄ませたスポーツクルーザーと言えるわけですが、もっと突っ込んで語弊を恐れず例えるなら・・・

2016バルカンS

「フォワードコントロールのロー&ロングネイキッド」

という表現がピッタリなモデルじゃないかと。所詮はクルーザーだと高を括って乗ると唸ること間違いなし。

主要諸元
全長/幅/高 2310/855/1090mm
シート高 705mm
車軸距離 1575mm
車体重量 224kg(装)
[227kg(装)]
{229kg(装)}
燃料消費率 23.3km/L
<23.0km/L>
※WMTCモード値
燃料容量 14.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 649c
最高出力 61ps/7500rpm
最高トルク 6.4kg-m/6600rpm
<6.3kg-m/6600rpm>
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70-18(59H)
後160/60R17(69H)
バッテリー YTZ10
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル SAE10W-40
オイル容量 全容量2.3L
交換時1.6L
フィルター交換時1.8L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク120
車体価格

770,040円(税別)
[760,000円(税別)]
{770,000円(税別)}
<830,000円(税別)>

[]内はABS装備のB型
{}内はG型
<>内はJ型

系譜図
EN4541985年
EN454/LTD
(EN450A)
EN500A1990年
Vulcan500/LTD
(EN500A/B)
EN500C1996年
Vulcan500/LTD
(EN500C)
EN6502016年
Vulcan S
(EN650A-B/C-D/G/J)

Vulcan 500(EN500A/B) -since1990-

EN500A

「STREET SMART」

1990年に登場したキャストホイール仕様のEN500A型とスポークホイールLTD仕様のEN500B型。アメリカなど一部の国ではこのモデルからVulcan500という名前でも販売。

EN500B

ナンバリングからも分かる通り排気量を44cc上げたわけですが、これが何故かというとGPZ500という欧州向けのヒットモデルとエンジンを共有し足並みを揃える事になったから・・・と言えるんですが、もっと厳密に遡るとベースがGPZ900Rからその後継であるGPZ1000RX~ZX-10になったから。

ハーフニンジャの経緯

先代と同じように流用しているからボアストローク比も一緒で、997ccを半分だから498ccになっているという単純明快な話。

EN500の仕様

ただしこのモデルからはVulcanという名前がつけられている事からも分かる通り、車体の方も少し大型化され存在感をアップさせると同時に、キャブを絞るなどして低中速トルクを重視するセッティングがなされており、先代のまんまNinja切り取ったエリミネーターかと思うようなタイプよりもクルーザーらしい性格となりました。

主要諸元
全長/幅/高 2290/840/1230mm
[2320/830/1125mm]
シート高 730mm
[715mm]
車軸距離 1555mm
[1595mm]
車体重量 186kg(乾)
[199kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 11.0L
[15.0L]
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 498cc
最高出力 60ps/9800rpm
最高トルク 4.6kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57S)
後140/90-15(70S)
バッテリー YB12A-A
プラグ D9EA
または
X27ES-U
推奨オイル SAE10W-40
オイル容量 全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ
チェーン
車体価格
系譜図
EN4541985年
EN454/LTD
(EN450A)
EN500A1990年
Vulcan500/LTD
(EN500A/B)
EN500C1996年
Vulcan500/LTD
(EN500C)
EN6502016年
Vulcan S
(EN650A-B/C-D/G/J)

EN454/LTD(EN450A) -since1985-

EN450

「FIRE YOUR IMAGINATION」

カワサキが1985年に出したEN450または454LTD、それにLTD450など国によって色んな名前を持つEN450A型。カワサキのパラツインミドルクルーザーつまりVulcan Sにつながる系譜の始まりはこのモデルになります。

LTD450

日本ではEN400の方が有名かと思いますが、これはそのフルサイズバージョンで残念ながら欧米専売モデル。そのため基本的に欧米(特に北米)での話を中心に進めます。

先ず持って最初に説明すると海の向こうでこのクラスは今も昔もエコノ(エコノミー)クラスと呼ばれる日本で言う250に近いクラスで、カワサキも70年代から空冷パラツインであるZ440/LTD(日本版Z400/LTD)というネイキッドスタイルのモデルを出していました。

EN454エンジン

それがここにきて一気に15馬力アップとなる水冷ハイパワーエンジン搭載のベルトドライブクルーザー”EN”へと進化。エコノミーというには明らかにオーバースペックなモデルを投入したわけですが、これは前年デビューしたある有名なモデルが関係しています。

1984年に出たカワサキの有名なモデルといえば・・・そう、トップガンでお馴染み元祖NinjaことGPZ900R。

ハーフ忍者エンジン

このEN450もとい454LTDはGPZ900のエンジン部品を流用することで、コストをエコノミークラスに抑えつつもハイパワー化することに成功したという話。

ヘッドもピストンも当然ボアストローク比も同じ、GPZ900Rのカムチェーン側を2つだけ切り取ったような文字通りハーフNinjaエンジン。908ccの半分だから454ccなんですが、アメ車に詳しい方は”454”というナンバリングを聞くとシボレー(ビッグブロック)を思い浮かべるのではないでしょうか。

知らない人に簡単に説明すると、454というのは1970年にシボレーが開発したエンジンの事。

『V8で7.4L(454立方インチ』

というアメリカを具現化したようなエンジンの事で、コルベットなど搭載されたモデルには454というナンバリングが付き、アメリカで非常に人気でした。

454LTDカタログ写真2

そんなモデルとナンバリングが偶然にも同じだった為か、アメリカのバイク雑誌サイクルガイドが両者を競わせる企画を実施。

すると

「454LTDの方がコルベット454LSより1/4マイルでは1秒以上速い」

という結果に。これが話題となり、エコノクラスながら速くて軽くて便利そして何より破格なバイクという形で人気に。

454LTDカタログ写真

しかしそんな人気とは裏腹に残念ながら454LTDは販売から5年目となる1990年を最後に生産終了となりました。理由はメイン市場だったアメリカでのGPZ900R生産を打ち切ったから。そのため454LTDも道連れに近い形で生産終了。

良くも悪くもGPZ900Rと一蓮托生だった454LTD。これがVulcan Sへと続く系譜の始まりになります。

ちなみに気になる車体価格は当時のアメリカの平均が4万ドル程度だった自体になんとお値段お驚きの$1999。

主要諸元
全長/幅/高 2205/820/1220mm
シート高 745mm
車軸距離 1485mm
車体重量 180kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 11.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 454cc
最高出力 50ps/9500rpm
最高トルク 4.0kg-m/10000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57S)
後140/90-15(70S)
バッテリー YB12A-A
プラグ D9EA
または
X27ES-U
[DR8ES
または
X27ESR-U
※CAモデル]
推奨オイル 10W-40
オイル容量 全容量3.4L
スプロケ
チェーン
車体価格
系譜図
EN4541985年
EN454/LTD
(EN450A)
EN500A1990年
Vulcan500/LTD
(EN500A/B)
EN500C1996年
Vulcan500/LTD
(EN500C)
EN6502016年
Vulcan S
(EN650A-B/C-D/G/J)