W800STREET/CAFE(EJ800B/C) -since 2018-

W800/EJ800B

「THE ORIGINAL ICON」

3年の歳月を経て2モデルとなって帰ってきたW800STREET(EJ800B型)とW800CAFE(EJ800C型)。

主な変更点を上げると

・LEDヘッドライト

・Z2ミラー

・燃料タンク形状変更で+1L

・ハンドル形状とポジション変更

・ABS

・アシストスリッパークラッチ

・エンジンの大幅な見直しで4馬力UP

・フェンダーのプラ化などで5kg軽量化

・キャニスターとO2センサー装着

・リアのディスクブレーキ化

・フロント18インチ化

・フレームの肉厚変更

・外装の変更

・ETC2.0標準搭載

などなど見える部分も見えない部分も大きく変更され走行性能を向上。

分かりやすい見分け方は後輪がディスクブレーキになった事やZ2ミラー(丸いミラー)、あとタンクエンブレムですね。

新旧W800

ちなみにSTREETはポジションがかなり起きたものになりました。

そしてこれはもう一つの方であるW800CAFE(EJ800C型)

W800CAFE/EJ800C

グリップヒーター付きスワローハンドルと元々OPでも用意されていたビキニカウルを装着したモデル。

W800CAFEポジション

STREETとは対照的になかなかの前傾姿勢を誇るカフェレーサースタイル。

ちなみにスワローハンドルというのはヤクルトスワローズでお馴染みツバメから。

スワローハンドル

ツバメが翼を広げた時の形に似ていることから名付けられました。

さて変更点はこの位にして少し触れにくいモヤッとした話題について長々と書きたいと思います・・・それは

2016ファイナルエディション

「2016年のファイナルエディションとは何だったのか」

という話。

ZEPHYR、KLX、DAEG、wなどなどカワサキがファイナルエディションという時は本当に終わりな場合がほとんどの中でWだけ復活。

これが何故か考えたんですが『クラシック』だった先代から最新装備の『ネオクラシック』になった事が関係しているのかなと。

「そもそもどうしてネオクラになったのか」

という話ですが一番の要因として考えられるのがリアのディスクブレーキ化。

リアディスクブレーキ

近年ABSが義務化されたわけですが、それには油圧式ディスクブレーキにする必要があり従来の機械式ドラムブレーキだと不可能なんです。これは先代の時点で開発の方も避けられない問題だと車体設計の赤松さんも仰っていました。

それがどうしてネオクラ化に繋がるのかというと、リアまでディスク化するとグッと近代的になるからです。

W800カフェ

そう感じるのはリアのディスク化が始まったのは70年代のハイエンドスポーツモデルが始まりだから。しかしWの元となっているW1はもっと前の60年代に出たモデルで前後ドラム。

ちなみに1973年に出た後継のW3もフロントがディスク化されたもののリアはドラムのままでした。

W800STREET/W800CAFE

つまり『リアのディスク化』という不可避なジェネレーションギャップを擦り合わせる為にはネオクラにしたんだろうという話。

もちろん海外でネオクラやネオレトロがブームなのも大きいんでしょうけどね。

ただネオクラになった理由を日本に絞ってもう少し深読みすると

『ユーザー層の若返り』

もあると思います。

ネオレトロW

Wは先代までは日本がメインターゲットだったんですが、じゃあ日本で売れてたのかというと販売台数はファイナルエディションですらランク圏外(50位以下)でした。

これは

『メグロやダブワンといったバックボーンを知る若者が少ないから』

というのが大きいかと。

もう何十年も前の話なんだから当たり前なんですけどね・・・でもだからこそネオクラになった。

つまり先代で出たファイナルエディションというのはメグロやダブワンなどのバックボーンも含めてWが好きだった人たち

「Wは良いな」

と言ってくれる人たちに向けた最後のモデルだったからファイナルエディション。

オリジナルアイコン

対してこのモデルは別。

エンジンやフレームなどの”性能を上げる改良”に加え、ABSやスリッパークラッチなど最新車に見劣りしない装備を充実し、それを

『STREETとCAFEのネオクラ』

という新鮮かつ明瞭なタイプにする事でバックボーンをまだ知らない若者にも

「カワサキのネオクラ良いな」

と振り向いてもらうためのモデル。

そうしてまず興味を持ってもらい、そこからただのネオクラではなくメグロから続くバックボーンやベベルギアの空冷バーチカルツインなど

『見た目だけじゃないWの魅力』

を知ってもらう・・・というWへの入り口を広くした全く新しいW800。

W800壁紙

だから復活とかモデルチェンジとか言われてますが、このB型/C型はW800の後継というよりWブランドを復興したW650に近い

『新訳ダブワン』

と捉えた方がシックリ来る気がします。

主要諸元
全長/幅/高 2135/925/1120mm
[2135/825/1135mm]
シート高 770mm
[790mm]
車軸距離 1465mm
車体重量 221kg(装)
[223kg(装)]
燃料消費率 21.1km/L
※WMTCモード値
燃料容量 15.0L
エンジン 空冷4サイクルOHC2気筒
総排気量 773cc
最高出力 52ps/6500rpm
最高トルク 6.3kg-m/4800rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前100/90-18(56H)
後130/80-18(66H)
バッテリー YTX12-BS
プラグ CR8E
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.2L
交換時2.7L
フィルター交換時2.9L
スプロケ 前15|後37
チェーン サイズ520|リンク104
車体価格 993,600円(税込)
[1,112,400円(税込)]
系譜図
メグロ1960年
メグロシリーズ
W11966年
650-W1
(W1/S/SA)
650RS1973年
650-RS
(W3)
EJ6501999年
W650
(EJ650A/C/D/E)
EJ4002006年
W400
(EJ400A)
EJ8002011年
W800
(EJ800A)
EJ800A2019年
W800
STREET/CAFE
(EJ800B/C)

W800(EJ800A) -since 2011-

W800/EJ800A

「美の継承」

ベベルギアの減価償却が済んだから許されたのかフルモデルチェンジし800となったW800。

W650をベースにボアを5mm拡大することで773ccとし、FI化で排ガス規制をクリア。

W800マフラー

排ガス規制が厳しくなろうと空冷&キャプトンマフラーで通してきた事に執念を感じますね。

更にカバーレスショックアブソーバーやキックスタートの廃止による軽量化、シート形状見直しによる脚付き改善なども加わっています。

そんなW800ですが、待ち望んでいた人が多かったのか初年度だけで約2000台受注と2011年上半期販売台数ナンバー1の人気でした。

W800カフェスタイル

コチラは新たに追加されたカフェスタイル。

W650で書きそびれたのですが、Wシリーズはお高くとまっているトコトコクラシックではないですよ。

『直四とは違う新しいスポーツ』

というのが始まりなだけあって見かけによらずスポーツの要素も併せ持っています。

W800

もちろん絶対的な速さはないんですが

『360度クランクにしか出せないパルス感』

『ベベルギアにしか出せない唸り音』

で乗り手をその気にさせてしまう、まさに直四とは違うスポーツさを持っているんです。

W800カタログ

とはいえ分類されるとしたらクラシックの類に入るでしょう。

そしてクラシックといえば原型を留めないほど思い思いのカスタムをするのが通例・・・なのにWシリーズに乗っている人はあまり弄っていない人が多いというか、ほぼノーマルでパッと見でもWと分かる車体ばかり。

カワサキW800

これも実は開発チームのこだわりが影響しているんですよ。

新世代Wの企画を担当された谷さんがこう仰っています。

「素材として提供して、後はお客さんの好きにどうぞって考えもありますけどWは違います。」

W800カタログ写真

「コレが一番カッコよくて、コレが一番綺麗だと自信を持って提示してるバイクなんです。」

ノーマルのまま乗るオーナーが多いのは、そんな思いが無意識に伝わっているからなんでしょうね。

主要諸元
全長/幅/高 2180/790/1075mm
シート高 790mm
車軸距離 1465mm
車体重量 216kg(乾)
燃料消費率 33.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 14.0L
エンジン 空冷4サイクルOHC2気筒
総排気量 773cc
最高出力 48ps/6500rpm
最高トルク 6.3kg-m/2500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57S)
後130/80-18(66H)
バッテリー YTX12-BS
プラグ CR8E
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.2L
交換時2.7L
フィルター交換時2.9L
スプロケ 前15|後37
チェーン サイズ520|リンク104
車体価格 850,000円(税込)
系譜図
メグロ1960年
メグロシリーズ
W11966年
650-W1
(W1/S/SA)
650RS1973年
650-RS
(W3)
EJ6501999年
W650
(EJ650A/C/D/E)
EJ4002006年
W400
(EJ400A)
EJ8002011年
W800
(EJ800A)
EJ800A2019年
W800
STREET/CAFE
(EJ800B/C)

W650(EJ650A/C/D/E) -since 1999-

W650

「美しいオートバイの創出」

W3の生産終了から四半世紀経った頃に突如として登場したW1のようで・・・何処かW1とは違うW650。

これは

「直四とは違う新しいスポーツバイクを」

と企画の谷さんの考え始めたのが始まり。

かといってカワサキにV型やシングルスポーツのイメージはない、カワサキらしさを出すなら二気筒という声が多く

「二気筒ならバーチカルツインだろう」

という結論に。

バーチカルツイン

ちなみにバーチカルツインというのはシリンダーが前傾しておらずそびえ立つように直立したエンジンのこと。

そして見た目がクラシックになったのは先に出ていたエストレヤの影響。

思わぬヒットとなったエストレヤのステップアップ先となるバイクにしようとなったんです。

W650スケッチ

このバーチカルツインクラシックというのは実はマーケティングの要望ではなく、造り手たちが勝手に決めた事だったりします。

そして口うるさい人達が寄って集って造ったエストレヤのステップアップ先というだけあり、このW650も非常に拘って造られたというか拘りしかないと言ったほうがいいか・・・

カワサキEJ650

W650の設計にあたり再優先事項だったのは

『機能美』

です。

W650のデザイン担当はW1を所有した事もある猪野さんという方なんですが

「機能美とは何か」

を追求するため欧州の博物館で車や戦闘機などを見て回り、昔のエンジン造形に感銘を受けた。

それを参考にまずバーチカルツインのスケッチからスタート。

エンジンスケッチ

正式採用される事となるベベルギアを始め、コグドベルト、カムチェーン、カムギアなどなど様々なタイプのカム駆動をスケッチ。

案を見てもらうと分かる通り最初はDOHCで行く予定でした。

しかし

「DOHCは頭でっかちで美しくない」

と擦った揉んだあったものの”一番美しい”という理由でSOHCのベベルギアで行くことに。

エンジンモック

これは紙で作ったモック。

ベベルギアというのは要するに傘歯車のことで、厳密に言うと

「ベベル・ドリブン・カム・シャフト方式」

と言います。

エンジン

エンジンの横から垂直に伸びているシャフトがそう。

シャフトドライブとしては今でも使われてますが、カム駆動ではまず採用されることのない方式。

それが何故かといえば凄くコストが掛かるからです。昔はドゥカティもやっていたんですが、そんなドゥカティですらコストを理由に止めています。

しかもカワサキの場合は更に問題がありました・・・ベベルギアを造る設備を持っていなかったんです。

だからベベルギアにするには製造する設備を導入する必要があった。

W650壁紙

たった一車種の為だけに新しい設備を導入するなんてまずありえない話。

しかし猪野さんを始めとした開発チームが

「ベベルギアじゃないと意味がない。ベベルギアなら絶対ヒットする。」

と頑なに折れず、説き伏せる事で設備の導入が決定。

W650がW1と違うバイクである事はここに現れています。

もしもW1の復刻なら簡易で安価なOHVを採用すればいいだけ。

W650当時のHP

でもそうしなかったのはW650がW1の復刻ではなく

「先代より美しいW」

という考えで開発されたバイクだったから。

Wシリーズが採用していたOHVは最初から考えていなかったそうです。

ベベルギアをピックアップして書きましたが、他の部分もたくさんこだわりがあります。

カワサキW650

例えばその下部になるクランクケースやオイルパン形状に至るまで何度もやり直し。

フレームに至ってはスケッチから入るのではなく原寸大のフレームモックを用意させ、そこからデザインを煮詰めていくという異例なワークフロー。

W650デザインスケッチ

当然あーだこーだと討論される度に作り直し。

車体担当だった真野さんは泣きながら作業をしたそうです。

そんな労を惜しまず造られたW650ですが、実は発売前に一悶着ありました。

一般公開に先駆け一部のカワサキファンクラブ(KAZE)会員に先行公開したところ大不評だったんです。

「こんな古臭いバイク出す暇があったら新しいNINJAを出せ」

という怒号のような声が多く返ってきた。※当時RRやR1が世間を賑わせていた

EJ650

更に会社が実施していた

「バーチカルツインのクラシックが出たら欲しいか」

というWという名を敢えて伏せた形で取ったアンケートで欲しいと答えた人は・・・僅か3%。

この事実に開発チームは頭を抱えたらしいのですが、この拘りの詰まったW650には絶対の自信があった。

そしてそれを上司もよく理解しており、腹をくくってくれたから発売することが出来たんです。

W650 THE BOOS写真

発売時にはテコ入れとしてここに書かれている事が載っているスペシャル本まで発行しました。

そしていざ発売されると・・・そんな下馬評が嘘のような歓迎ムード。それまでカワサキに興味がなかった人が振り向いてくれたんです。

カタログ写真

そしてデビュー時だけの人気ではなく、生産終了を迎える2008年までコンスタントに売れ続けるという理想的な人気。

終わってみれば累計生産台数は一万台弱も生産される事となりました。

主要諸元
全長/幅/高 2175/905/1140mm
[2180/905/1140mm]
シート高 800mm
車軸距離 1455mm
[1465mm]
車体重量 194kg(乾)
[195kg(乾)]
燃料消費率 37.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
[14.0L]
エンジン 空冷4サイクルOHC2気筒
総排気量 675cc
最高出力 50ps/7500rpm
[48ps/6500rpm]
最高トルク 5.7kg-m/5500rpm
[5.5kg-m/5000rpm]
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57H)
後130/80-18(66H)
バッテリー YTX12-BS
プラグ CR8E
または
U24ESR-N
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4/T4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.0L
交換時2.5L
フィルター交換時2.8L
スプロケ 前15|後38
[前15|後37]
チェーン サイズ525|リンク104
車体価格 686,000円(税込)
[720,300円(税込)]
※[]内は排ガス対応の04~モデル
※A型:アップライトハンドル
※C型:ローハンドル
※D型:A型+クロムメッキ
※E型:C型+クロムメッキ
系譜図
メグロ1960年
メグロシリーズ
W11966年
650-W1
(W1/S/SA)
650RS1973年
650-RS
(W3)
EJ6501999年
W650
(EJ650A/C/D/E)
EJ4002006年
W400
(EJ400A)
EJ8002011年
W800
(EJ800A)
EJ800A2019年
W800
STREET/CAFE
(EJ800B/C)

650-RS (W3) -since 1973-

650RS-W3

「語りつがれ、受けつがれているロードスター」

W1を更に煮詰めた形となる650-RS通称W3。

良くも悪くも荒々しかったW1とは打って変わり、品質も特性も大きく向上したことで非常に評価が高かったモデル。

650RS-W3

その中でも度肝を抜いたのがダブルディスクブレーキを搭載した事。

当時ダブルディスクブレーキなんてものは本当に限られた一部のバイクにしか付いておらず、カワサキのバイクとしては初となります。

ちなみに先に出ていたフラッグシップモデルであるZ1ですらシングル。それだけで豪華さがわかるかと思います・・・が、そうZです。

国内向けZである750RS(ゼッツー)が発売となったのはW3と同年同月。

ゼッツーとW3

750RSと650RSのWロードスター展開・・・漂う男の体臭って。

当然ながら多くの大型ライダーは市販車初となるDOHC直四のZに目が行きOHVのパラツインはこの時点で時代遅れ扱いに。

750RSと650RS

しかも排気量は向こうが上でセールスでもカワサキオリジナルバイクという事からZ2推し。

まだまだクラシックなんて文化が根付いていない70年代だから仕方なかったといえば仕方のない話なんですけどね。

大型バイクの象徴だったWシリーズはZに株を奪われる形となり1975年をもって生産終了となり、四半世紀もの空白が空くこととなりました。

ところで・・・

「W1→W3ってW2は?」

と思われる方も居るかもしれないので念のために説明するとW2もありました。

kawasaki650-W2

W2はW1の翌年から発売された完全輸出向けの名前で日本でいえばW1Sがそれに当たります。

W2はスクランブラータイプのW2TTといった派生モデルまでありました。

W650-TT

このスクランブラータイプもいま見るとオシャレだから復活させたら需要ありそうですよね。

主要諸元
全長/幅/高 2150/860/1120mm
シート高
車軸距離 1425mm
車体重量 215kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 15.0L
エンジン 空冷4サイクルOHV2気筒
総排気量 624cc
最高出力 53ps/7000rpm
最高トルク 5.7kg-m/5500rpm
変速機 常時噛合式4速リターン
タイヤサイズ 前3.25-19-4PR
後4.00-18-4PR
バッテリー YB7L-B
プラグ B7ES
推奨オイル
オイル容量 全容量3.0L
スプロケ
チェーン
車体価格 363,000円(税別)
系譜図
メグロ1960年
メグロシリーズ
W11966年
650-W1
(W1/S/SA)
650RS1973年
650-RS
(W3)
EJ6501999年
W650
(EJ650A/C/D/E)
EJ4002006年
W400
(EJ400A)
EJ8002011年
W800
(EJ800A)
EJ800A2019年
W800
STREET/CAFE
(EJ800B/C)

650-W1 (W1/S/SA) -since 1966-

ダブワン

「王者の風格」

Wの始まりであるカワサキ650-W1。

「ダブワン」

と言われているのを聞いたことはある人も多いかと思います。

カワサキ650-W1カタログ写真

クランクケース周りを見れば分かる通り、基本的に先のスタミナKをベースにボアアップし624ccとしたモデル。

というのもこの頃のカワサキのバイク事業はいつ撤退となってもおかしくない崖っぷち状況で、一から大型バイクを造るお金なんて無かったんです。

しかしそれでもクラストップとなる47馬力で圧倒的な速さを誇り、スポーツバイク層や旧メグロオーナーなどからも高い支持を獲得しました。

W1スペック

ただし当時はエンジンの振動を打ち消すバランサーなんてものが無い時代。

そんな中で624ccのバーチカルツイン(312ccの単気筒を2つ並べた形)だからいま売ったらクレームものの振動です。

どんくらい振動が凄いかというとセンタースタンドで立ててアイドリングさせたら勝手に歩いていくレベル。

650-W1

ただ当時はソレが大型である証でもありました。

ちなみにこのW1は元々はカワサキ初の対北米戦略車。

カワサキの世界戦略車というと6年後に出るZ1のイメージが強いですが第一号はこのW。

翌67年にはキャブトンマフラーとショートフェンダーのW1Sを海外向けに販売。

翌年にはツインキャブとフロント19インチのW1スペシャルを国内でも取扱い開始。

W1SA

最終モデルとなるのは1970年に発売されたW1SAとよばれるモデルで現代的な左シフトへ変更し、メーター周りなど見た目もスポーティに仕上げたモデル。

このW1最終型であるSAは非常に高い人気を呼び、総生産台数1万台を超えるヒットとなりました。

主要諸元
全長/幅/高 2135/865/1090mm
シート高
車軸距離 1420mm
車体重量 199kg(乾)
燃料消費率 45.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 空冷4サイクルOHV2気筒
総排気量 624cc
最高出力 47ps/6500rpm
最高トルク 5.4kg-m/5500rpm
変速機 常時噛合式4速リターン
タイヤサイズ 前3.25-18-4PR
後3.50-18-4PR
バッテリー YB7L-B
プラグ B7ES
推奨オイル
オイル容量 全容量3.0L
スプロケ
チェーン
車体価格 328,000円(税別)
系譜図
メグロ1960年
メグロシリーズ
W11966年
650-W1
(W1/S/SA)
650RS1973年
650-RS
(W3)
EJ6501999年
W650
(EJ650A/C/D/E)
EJ4002006年
W400
(EJ400A)
EJ8002011年
W800
(EJ800A)
EJ800A2019年
W800
STREET/CAFE
(EJ800B/C)

メグロ Kシリーズ-since 1960-

メグロ K2 スタミナ

「日本最古の大型スポーツバイク」

Wシリーズを紹介するにあたって欠かせないのがメグロというバイクですが、メグロと言われてもピンと来ない人は多いと思うので歴史を中心に紹介します。

メグロというのは戦後まで日本を代表するバイクメーカーだった目黒製作所、そして目黒製作所のバイクのこと。

目黒製作所

ホンダやスズキが生まれるずっと前の1926年に村田と鈴木という二人が設立した会社で、1939年に株式会社になりました。

もともと二人は村田鉄工所という勝海舟の孫である勝精の出資で設立された会社においてエンジンなどを造っていたのですが、思うように仕事が出来ず独立。

新たに目黒製作所を設立し輸入車の補修部品やギアボックスなどを手がける様になったのですが

『品質が良く壊れない』

と評判を呼び、メキメキと頭角を現しました。

そんな世間からの高い評価に自信を持ち

「今こそ部品屋から脱する時」

として、バイクを造りを始めます。

ベルセットKTT

その際に参考にしたとされるのが、マン島レース優勝を果たしたベロセという英メーカーのベロセットKTTというレーサー。

これをベースに完成させたのが目黒製作所の第一号であるZ97。

メグロZ97

単気筒OHV498ccで当時クラストップとなる11馬力。

ちなみにZ97という車名の由来は海軍のZ旗と皇紀2597年(1937年)から取っています。

こうした理由は当時、大型バイクというのは貴族や国が買って乗るものだったから。そしてその狙い通り、国や軍を中心に約850台生産されました。

ただ不運なことにすぐに第二次世界大戦が始まってしまい目黒製作所もオートバイの生産を中断。

目黒製作所のロゴ

終戦から暫くしてオートバイ事業を再開したんですが、今度はホンダやスズキといった後発メーカーが

「速い、安い、オシャレ」

と三拍子揃ったバイクで攻勢をかけてくるように。

目黒製作所

それらに対抗するため目黒製作所もミドルクラスなどバリエーションを展開。

その中でも250ccモデルとして登場したジュニアシリーズは非常に人気で、目黒製作所最大のヒット作となります。

ちなみにこのジュニアは遠い未来に出てくるエストレヤの始祖。

何となく面影がありますね。

更には上で紹介したZ97から始まったZシリーズの上位モデルとして並列二気筒650ccのTシリーズ”セニア号”を1955年に発売。

セニアT1

これはOHV二気筒の始まりであるトライアンフのモデル6/1、それを元に作られたBSAのA7 Shooting Starというバイクを参考に作られたバイク。

トライアンフ6/1

約30馬力で圧倒的な速さを誇っていたものの、相変わらず高かったので生産台数は三桁で半数近くが警察などの官公庁向けでした。

そして1960年、500cc単気筒のZシリーズと650cc二気筒のTシリーズを一本化する形で誕生したのが497cc並列二気筒エンジンのスタミナK1というモデル。

メグロスタミナ

これがWシリーズの始まりであり・・・目黒製作所の最後の大型スポーツバイクとなります。

というのも先に話した通り、この頃になるとホンダやスズキの快進撃が凄まじく、メグロはどんどん苦しくなっていったから。

ここで登場するのがカワサキ・・・正確に言うと重工や車輌と合併する前の川崎航空機工業。

川崎航空機工業

当時の川崎航空機工業はバイクを含め様々なエンジンを造って供給する事業もやっていました。

しかしバイク需要の拡大からエンジン供給だけでなく

「自分たちで全部造って販売しよう」

となり”川崎明発工業”を設立。

メイハツ

”メイハツ(明発)”ってメーカー名を聞いたことないでしょうか。

これが皆が思うカワサキ(カワサキモータース)の始まりです。名前の由来はもちろん明石の発動機だから。

しかしメイハツには2つほど弱点がありました。

一つは

『大型バイクのノウハウを持っていない』

という事です。

カワサキ明発

メイハツが造っていたのは125cc以下の小排気量エンジンのみで大型は未知の世界だったんです。

そしてもう一つは

『販売網を持っていない』

という事。

カワサキはBtoB(企業から企業へ)が基本だったため全国の小売との繋がりを持っていなかった。

そこで

・販売網は全国に持っているものの小排気量が苦手な目黒製作所

・小排気量は得意なものの大排気量技術と販売網を持っていないメイハツ

互いが互いの弱点を補えるとして業務提携し、メイハツはカワサキ自動車販売になりました・・・が、目黒製作所の経営が上手く行かず倒産。

カワサキメグロ

カワサキが救う形で目黒製作所はカワサキメグロ製作所になりました。

しかしそのカワサキメグロも業績不振により1963年に敢えなく倒産し、カワサキ自動車販売に吸収。

カワサキ500K2

ここで目黒製作所はカワサキの一部となり、メグロという名前だけが残る形になりました。

これは当時の移り変わりを象徴するメグロのタンクエンブレム。

メグロ カワサキ エンブレム

左が目黒製作所時代のK1(メグロスタミナ)で、右がカワサキに吸収された後に改良されたK2(カワサキ500メグロK2)のもの。

駆け足でだいぶ割愛した紹介ですが、これがカワサキとメグロの関係。そしてWシリーズの土台です。

ちなみに話が逸れますが、カワサキは目黒製作所と提携する前年までは四輪メーカーを目指していました。

KZ360

これはその試作機であるKZ360という軽自動車。

もし目黒製作所と提携していなかったらカワサキは二輪に舵を切らず、四輪メーカーになっていたかもしれませんね。

三菱、富士、そして川崎という重工の三つ巴を見てみたかった気がしないでもない。

主要諸元
全長/幅/高 2150/900/1070mm
シート高
車軸距離
車体重量 190kg(乾)
燃料消費率 35.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 空冷4サイクルOHV2気筒
総排気量 497cc
最高出力 33ps/6000rpm
最高トルク 4.1kg-m/4000rpm
変速機 常時噛合式4速ロータリー
タイヤサイズ 前3.25-18-4PR
後3.50-18-4PR
バッテリー
プラグ
推奨オイル
オイル容量 全容量2.2L
スプロケ
チェーン
車体価格 295,000円(税別)
※スペックはメグロ500スタミナK1
系譜図
メグロ1960年
メグロシリーズ
W11966年
650-W1
(W1/S/SA)
650RS1973年
650-RS
(W3)
EJ6501999年
W650
(EJ650A/C/D/E)
EJ4002006年
W400
(EJ400A)
EJ8002011年
W800
(EJ800A)
EJ800A2019年
W800
STREET/CAFE
(EJ800B/C)

Ninja650(EX650K) -Since2017-

2017Ninja650

これまた環境規制に対応するためにモデルチェンジされたK型。

見た面も中身もガラッと変わりました。外見の方は正にNinjaシリーズといった顔つきになりましたが、それ以上に変わったのが中身の方。

エンジンの基本設計は変わらないものの理想的な燃焼(空燃比)を実現するため自動補正スロットルバルブが付きデュアルタイプになりました。他には今や当たり前となってしまったアシストスリッパークラッチも装備。

2017Ninja650

ダブルペリメターフレームからトレリスフレームへと再び戻されスイングアームも新設。全体的にコンパクトにされた事もあって20kg近く軽くなってる。

あとサスペンションがカワサキイチオシのホリゾンタルバックリンクになりました。そのおかげか規制対応の為に大きくなったプリチャンバーとマフラーが今まで以上に腹下にしっかり収まってます。

ハンドルもパイプタイプだったものが根本が繋がっている肉抜きセパハン化。そして可変式スクリーンにギヤポジションインジケーター&シフトアップインジケーター付メーターと色々な部分が多機能に。

2017Ninja650

もうここまで来ると日本製と大差ないんじゃないかと思えてきますね。多分カワサキもそこら辺に凄く気を使ってるんでしょう。

そしてこのモデルからネイキッドバージョンであるER-6nがZ650と改められました。ザッパー(1980 Z650)を思い出す人は・・・そんなに居ないか。

Z650
(ER650H)
-Since2017-

2017Z650

カワサキの二大看板であるNinjaとZの融和がどんどん進んでますね。

ネイキッドバージョンのZとフルカウルのNinja戦略が上手くいってるんでしょう。ダブルペリメターフレームをやめたのはZの事もあってだったのかな。

基本的にはこれまでのERと同様に中身はNinja650と同じだけどネイキッドなぶん193kg(装備重量)と6kgも軽くなってます。

2017Z650

面白いのがLEDテールライトでこのZ650もZのデザインコンセプトである”SUGOMI”の例に漏れずテールライトはZの形。

NinjaはXだからわざわざ作り分けたのかと思ったけどそうではなく、点灯位置をそれぞれ切り替えることで変化させてる。

Z650・Ninja650テールライト

・・・ちょっと歯抜けみたいだけどテールライトを覗き込む人なんて居ないでしょうから気にする事でもないか。

少し話が反れますが、ER-6でタイカワサキの話をしてたので最近の話を。

2009年に起こった世界恐慌による先進国の需要落ち込みから、カワサキは生産を段階的に明石からタイへ移管する計画

明石→日欧米向けの高額モデルメイン(25万台生産から10万台生産へ)

タイ→その他のバイク(10万台生産から25万台生産へ)

を進める事となりました。

明石工場

しかし耳にした人も多いかと思いますが、最近では逆にタイから明石に生産を戻す計画(明石工場での生産を10万台から15万台へ)が進められています。

これにはこれまた複合的な要因があるわけですが簡単に言うと

・ASEANの経済成長による人件費高騰と円安でタイで作っても明石で作ってもコストが変わらなくなってきた事

・年々大きくなるASEANの二輪市場用のニューモデルをタイで作るため

といった事から(ホンダなども取り組んでるみたいですが)ASEANから部品を輸入して日本で組み立てる動きが出来てきてるわけです。Ninja250なんかが正にそれなんですが、Ninja650/Z650も日本ではあまり売れないから国内モデルは日本製になる日が来るかも。もはやタイ製でも問題ないんですし、嬉しくもあり悲しくもある理由ですが。

ちなみに明石工場ではロボット事業にも強いカワサキらしく(豆知識:我々が知らないカワサキの別の顔)、自動で必要な部品を所定の場所まで運んでくれるDIY臭プンプンの可愛いロボットが走っています。

ポカヨケ君

ポカヨケシステムというそうです。ポカヨケ君とでも呼ばれているんでしょうかね。

さてさて・・・あんまり車体について話しませんでした。語るタイプのバイクではないので大目に見て欲しいところです。

実際日本でこのバイクに興味のある方は少ないから読む人もそんなに居ないと思いますし。

カワサキを代表するペットネームであるNinjaという割には

「大型バイク」「パラツイン」「先鋭要素無し」

という日本の市場や文化にアンマッチな要素を3つも兼ね備えてますもんね。

Ninja650KRT

最近は当たり前になってきたのでだいぶ聞かなくなりましたが”パラツインなんてNinjaじゃない”と思う人も居るでしょう。

お気持ちはわかります。しかし世界で見た時、カワサキのNinjaといえば今やこの650なのが現実。

ただ安くて台数が出てるだけではありません。確かにコストパフォーマンスに優れる点もNinja650/Z650にとっては欠かせない要素の一つですが、GPZ500Sから一度も期待を裏切らない造りを続けてきたからこそ非常にシビアなミドルクラスで評価され、愛され、欧州カワサキを代表するバイクにまで上り詰めたんです。

それが表れているのがドイツのケルンで開催される世界最大級にして欧州を代表するモーターショーの一つであるインターモト。

インターモト2016カワサキninja650

このインターモト2016でNinja650は初お披露目となったわけですが、単に発表されたわけではなく新型Z1000SXやH2と並び他の車種を抑えてコンパニオン付きお立ち台に上げられるVIP待遇。

これこそカワサキの看板車種の証であり、来場する多くのギャラリーが関心をよせる車種の証でもあるわけです。

Ninja650KRT

そうですねえ・・・このバイクを例えるなら

「最高のNinja/Zではないけど最良のNinja/Z」

といったところでしょうか。

主要諸元
全長/幅/高 2055/740/1135mm
[2055/755/1080mm]
シート高 790mm
車軸距離 1410mm
車体重量 193kg(装)
[187kg(装)]
燃料消費率 24.0km/L
※WMTCモード値
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 649cc
最高出力 68ps/8000rpm
最高トルク 6.6kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー YTZ10S
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量2.3L
交換時1.6L
フィルター交換時1.8L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク114
車体価格 748,000円(税別)
[728,000円(税別)]
※[]内はZ650
系譜図
GPZ500S1987年
GPZ500S
EX500R
Ninja500R
(EX500A)
ER-51997年
ER-5
(ER500A/C)
ER-62006年
ER-6f
(EX650A)
ER-6n
(ER650A)
Ninja650R2009年
Ninja650R
(EX650C)
ER-6n
(ER650C)
Ninja6502012年
Ninja650
(EX650E)
ER-6n
(ER650E)
2017Ninja6502017年
Ninja650
(EX650K)
Z650
(ER650H)

Ninja650/ER-6n(EX650E/ER650E)-Since2012-

Ninja650

環境規制に対応するためフルモデルチェンジされたER-6nと車名からRが無くなったNinja650のE型。

このバイクのモデルチェンジ史を見ているとKMTの生産技術進歩が日進月歩で進んでいる事を感じられますね。これはカワサキに誘われて付いて行ったサプライヤーの努力もあるわけですが。

ER-6n

外見が大きく変わってますが目を引くのは非常に独創的なダブルパイプペリメターフレーム。

まるでツインスパーフレームの様なパイプフレームでスイングアームまで手を抜かず同じ流れを汲んでいるのが凄く面白いし洒落てる。正直モデルチェンジでこのフレームじゃなくなったのはちょっと残念。

ER-6n

街乗りからワインディングまで幅広い用途に柔軟に対応できるように剛性が見直されたそうです。エンジンの方も先代にも増してスムーズさがアップ。

日本ではNinja650がメインだけどER-6n/ER650E型はそんなフレームデザインに負けない外装に。

2013ER-6n

まあしかし走ってる所を見ないですね・・・失礼ながらカワサキらしからぬ独創的とまとまりだと思うんだけど。

そういえば先代はタコメーターがデジタルだったんだけど、どうも不評だったようでこのモデルからnはタコとスピードメーターを反対に、Ninjaはフルデジタルからタコのみアナログへと変更されました。

白バイNinja

上がnで下がNinja、左が先代で右がこのモデル。400と混合してるのですがまあ分かって頂けると思います。タコメーターはアナログ派が多いのかな。

カワサキはSSに留まらずZとかのネイキッドでもフルデジタル化に積極的だったんだけど、ユーザーの意見が絶対なミドル市場では流石に折れたみたい。

カワサキKMT

ちなみにタイで作ってるということでASEANにも関税なしで輸出つまり販売出来るようになったわけですが、流石にこのクラスが売れるような市場ではないのでそれほど売れない。

白バイNinja

その代わりといっては何ですが、ご覧のように白バイに採用されてたりします。ちなみにコレはフィリピン。

主要諸元
全長/幅/高 2110/770/1180mm
[2110/770/1110mm]
シート高 805mm
車軸距離 1410mm
車体重量 209kg(装)
[204kg(装)]
燃料消費率 -km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 16.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 649cc
最高出力 72ps/8500rpm
最高トルク 6.5kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー YT12A-BS
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量2.3L
交換時1.6L
フィルター交換時1.8L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク114
車体価格 780,000円(税別)
[760,000円(税別)]
※[]内はER-6n
※ABSモデルは+2kg
系譜図
GPZ500S1987年
GPZ500S
EX500R
Ninja500R
(EX500A)
ER-51997年
ER-5
(ER500A/C)
ER-62006年
ER-6f
(EX650A)
ER-6n
(ER650A)
Ninja650R2009年
Ninja650R
(EX650C)
ER-6n
(ER650C)
Ninja6502012年
Ninja650
(EX650E)
ER-6n
(ER650E)
2017Ninja6502017年
Ninja650
(EX650K)
Z650
(ER650H)

Ninja650R/ER-6n(EX650C/ER650C) -since 2009-

Ninj650R

基本的なコンセプトや設計は変えずデザインとエンジンマッピング見直しでスムーズさが増したC型。

2010年まではER-6fで2011年からNinja650Rとなってます。少しややこしいですね。

このモデルから生産がタイに移管されたわけですが、これには当然ながら川崎重工業の事情があります。

ZX150

このモデルが出る前からカワサキは現地資本との合併会社でタイ工場にて2stの小型バイクなどを作っていたんですが、90年代後半に起きたアジア通貨危機により現地資本側(問屋/小売側)が資金調達に行き詰まり会社の維持が困難に。

SOSを受けたカワサキは出資比率を高め、工場と販売権を買い取り。Kawasaki Motors Enterprise Thailand(KMT)として完全子会社する事になったわけです。

カワサキタイ工場

本当にタイミングが良かったと言うべきか

・KMT(タイカワサキ)ではアジア通貨危機によるアジア不況でバイクが売れず工場が遊んでる

・本社のある明石では車体価格を抑えるためのコスト削減をどうするかが課題になっている

という問題があった。

つまり予定には無かったKMTの誕生により本社とタイで思惑が一致しタイでグローバルモデルを作るという結論に至ったんですね。なんでも、タイで作ると明石工場(カワサキの国内工場)で作った場合と比べ労務費(要するに人件費)が1/10で済むそうです・・・そりゃ移管するわって話。

そしてそんなKMT発グローバルモデル第一弾のトップエンドとして選ばれたのが、厳しいコストパフォーマンスが求められるER-6になったというわけ。

ER650C

当時はまだアジア製が珍しかったら、日本のライダーも懐疑的でした。アジアで作ったバイクで品質は大丈夫なのかと。

実際のところカワサキも最初が肝心だと相当神経を尖らせたようで、明石から大量の応援を送った上に何重もの品質チェックを課すというコスト面よりも品質に重きを起きを置いたそうです。

EX650C

今では当たり前になってきたKMT(タイカワサキ)のバイクですが、このNinja650/ER-6nはそんなカワサキの新たな一歩となるグローバル戦略を象徴するバイクだったわけ。

主要諸元
全長/幅/高 2100/760/1200mm
[2100/760/1100mm]
シート高 790mm
[785mm]
車軸距離 1410mm
[1405mm]
車体重量 204kg(装)
[200kg(装)]
燃料消費率 -km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.5L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 649cc
最高出力 72ps/8500rpm
最高トルク 6.7kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー YT12A-BS
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量2.4L
交換時1.7L
フィルター交換時1.9L
スプロケ 前15|後45
チェーン サイズ520|リンク114
車体価格 780,000円(税別)
[760,000円(税別)]
※[]内はER-6n
系譜図
GPZ500S1987年
GPZ500S
EX500R
Ninja500R
(EX500A)
ER-51997年
ER-5
(ER500A/C)
ER-62006年
ER-6f
(EX650A)
ER-6n
(ER650A)
Ninja650R2009年
Ninja650R
(EX650C)
ER-6n
(ER650C)
Ninja6502012年
Ninja650
(EX650E)
ER-6n
(ER650E)
2017Ninja6502017年
Ninja650
(EX650K)
Z650
(ER650H)

ER-6f/n(EX650A/ER650A) -since 2006-

ER-6f

「Fun. Style. Easy.」
エンジン、フレーム共に新設計し磨きをかけた新生パラレルツインスポーツ。上の写真はフルカウルのER-6f(EX650A)です。

ER-6nカタログ写真

これは規制強化により主要市場だった欧州でずーっと売ってたGPZ500/Ninja500を売る事が難しくなったから。長いこと設計を変えないままでも高い評価を得ていたGPZ500/Ninja500のモデルチェンジはプレッシャーがすごかっただろうなと思う。クラスがクラスだからイタズラに性能上げればいいってわけでもないしね。

ネイキッドのnモデル(ER650A)はとっても個性的なデザイン。

ER-6n

面白いことに向こうでは日本とは対照的にネイキッドモデルのnの方がデザイン性の良さから人気が高かったみたいです。何でこの路線を止めたんだっていう批判もチラホラ見受けられるほど。

ER-6nフレーム

さて、このER-6でスポットライトを当てる箇所といえばやっぱりオフセットレイダウンリアサスペンションですかね。凄く目につくし。

今ではもっと寝かせたホリゾンタル・バックリンク・リアサスペンションですが、何でリアサスペンションをこんな寝かせてるのか簡単にお話。

分かりやすいように二本サスの新旧ネイキッド(Z1-RとZRX)で説明します。

Z1RとZRX

写真を見てもらうと分かる通りサスペンションの角度がZ1Rは立っててZRXは寝て(オフセットされて)います。

同じネイキッドなのに何故オフセットをするようになったのかというと・・・角度が付いてる方が沈みにくいから。

コーナリング時などのリアサスが沈む時を想像して欲しいんですが、沈むと黄点と赤点の距離が近くなりますよね。沈めば沈むほど同時に角度が更についてくるわけですが、元々の角度が浅い(立ってる)とスイングアームから来る力をそのまま受け取ってしまう為にサスペンション(ショックアブソーバー)の限界(底付き)が近くなってしまう。

それに対し角度が深い(寝ている)とスイングアームの力をそのまま受け取らないので動ける範囲が上がる(奥で踏ん張れる)というわけ。

ER-6fライムグリーン

まあしかしER-6の場合、限界を上げるためのオフセットというよりは足付きを良くするため(高さを抑えつつもストローク量を確保するため)のオフセットと言ったほうがいいと思います・・・じゃあ最初からそう言えよって話ですね。すいません。

主要諸元
全長/幅/高 2105/760/1210mm
[2100/760/1095mm]
シート高 785mm
車軸距離 1410mm
[1405mm]
車体重量 178kg(乾)
[174kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 15.5L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 649cc
最高出力 62.5ps/7000rpm
最高トルク 6.4kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー YT12A-BS
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量2.4L
交換時1.7L
フィルター交換時1.9L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク114
車体価格 780,000円(税別)
[760,000円(税別)]
※[]内はER-6n
系譜図
GPZ500S1987年
GPZ500S
EX500R
Ninja500R
(EX500A)
ER-51997年
ER-5
(ER500A/C)
ER-62006年
ER-6f
(EX650A)
ER-6n
(ER650A)
Ninja650R2009年
Ninja650R
(EX650C)
ER-6n
(ER650C)
Ninja6502012年
Ninja650
(EX650E)
ER-6n
(ER650E)
2017Ninja6502017年
Ninja650
(EX650K)
Z650
(ER650H)