ER-5(ER500A/C) -since 1997-

ER-5

バリオス・・・じゃないですよ。パラツイン500ccのネイキッドでERシリーズの始まりになるER-5/ER500A/C型。

先に紹介したGPZ500S/Ninja500Rと併売されたネイキッドバージョンのバイク。

カワサキは昔から

「ミドルはパラツインがベストバランス」

と言い続け、直四全盛期だろうと執念深くパラツインを売ってきたんだけど、その信念が(日本においては)遂に折れたモデル。折れたというのはみんな知らないようにこのモデルはほとんど売られていません。

バリオス2

その代わり国内向けに同じボディにZXR系の直四エンジンを積んだバリオスに使うことで台数を稼ぎコストを抑えたというわけ。

この二台を見比べると日欧の違いが鮮明に出ていますね。バリオスはリアもディスクブレーキ、ER-5はドラム。

ER-5カタログ写真

スペックを求める日本と、コスパを求める欧州。バイクのグローバル化が進まなかったのはこういう問題があったからなんでしょう。

主要諸元
全長/幅/高 2070/730/1070mm
シート高 800mm
車軸距離 1430mm
車体重量 174kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 498cc
最高出力 50ps/8500rpm
最高トルク 4.6kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70-17(54H)
後130/70-17(62H)
バッテリー YTX12-BS
プラグ DR9EA
またはX27ESR-U
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前17|後42
チェーン サイズ520|リンク106
車体価格

系譜図

GPZ500S 1987年
GPZ500S
EX500R
Ninja500R
(EX500A)
ER-5 1997年
ER-5
(ER500A/C)
ER-6 2006年
ER-6f
(EX650A)
ER-6n
(ER650A)
Ninja650R 2009年
Ninja650R
(EX650C)
ER-6n
(ER650C)
Ninja650 2012年
Ninja650
(EX650E)
ER-6n
(ER650E)
2017Ninja650 2017年
Ninja650
(EX650K)
Z650
(ER650H)
系譜図
GPZ500S1987年
GPZ500S
EX500R
Ninja500R
(EX500A)
ER-51997年
ER-5
(ER500A/C)
ER-62006年
ER-6f
(EX650A)
ER-6n
(ER650A)
Ninja650R2009年
Ninja650R
(EX650C)
ER-6n
(ER650C)
Ninja6502012年
Ninja650
(EX650E)
ER-6n
(ER650E)
2017Ninja6502017年
Ninja650
(EX650K)
Z650
(ER650H)

GPZ500S(EX500A) -since 1987-

GPZ500S

ある国ではGPZ500Sと呼ばれ、またある国ではNinja500Rと呼ばれ、またまたある国ではEX500Rと呼ばれていたバイク。

日本では400の方がGPZ400Sとして入ってきてハーフニンジャと呼ばれていましたが、それは海外でも同じ。

ハーフニンジャっていうのはトップエンドだったGPZ1000RXのエンジン(四気筒)を半分にした(二気筒)エンジンという事からそう呼ばれていました。

Z454LTD

※一番最初にこの方法を取ったのはGPZ500SではなくGPZ900Rのエンジンを半分にした454LTD(上の写真)というクルーザーなんだけど、それを紹介するとバルカンの系譜になってしまうので割愛させてもらいます。バルカンSの系譜も書かないといけませんね。あとヴェルシスもか。

EX500R

GPZ500Sは並列二気筒498ccながらGPZ1000RXのエンジンベース(というか二気筒にぶった切り)しているだけあってトルクフルながら54馬力を発揮。そんなエンジンが積まれるのは適度な硬さのツインスパースチールフレーム。更には適度な前傾にクセのないハンドリング。

本当に当時のカワサキらしからぬ素行の良さを持ったバイクで、欧米でエントリーモデルとして非常に高い評価を得たロングセラーモデル。

このバイクの何が評価されたのかという

「何でもこなせる」「取り回しが楽」「街乗りに適した足回り」「車体価格が安め」「意外と速い」「そのわりには低燃費」

という感じ。向こうにとってはこれが日本でいう400みたいなもんだからGPZ400Sにも言える様な評価だね。

Ninja500R

日本ではモデルチェンジを機に車名をGPZ400SからEX-4に改めたんだけど、向こうでは好評だったから同じモデルチェンジをしつつも名前はそのままだったり仕様地によって色々。

日本(GPZ400S)では車名をEX-4に改めて装備を豪華にしてもカラキシだったけど、コスパや実用性を求められる向こうでは受け入れられロングセラーに。どれくらいロングセラーかというと1987年から驚きの2009年まで(一部の国では2006年まで)売られたほど。

GPZ500Sカタログ写真

「新米ライダーは何も考えずコレを買って練習しろ。」

と言われる老将のような存在にまでなりました。更にはバイク便の需要までも獲得したみたい。

主要諸元
全長/幅/高 2125/675/1165mm
シート高 770mm
車軸距離 1440mm
車体重量 190kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 498cc
最高出力 54ps/9500rpm
最高トルク 4.7kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-16(54H)
後120/90-16(63H)
バッテリー YT12A-BS
プラグ DR8ES
または
X27ESR-U
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ
チェーン
車体価格
系譜図
GPZ500S1987年
GPZ500S
EX500R
Ninja500R
(EX500A)
ER-51997年
ER-5
(ER500A/C)
ER-62006年
ER-6f
(EX650A)
ER-6n
(ER650A)
Ninja650R2009年
Ninja650R
(EX650C)
ER-6n
(ER650C)
Ninja6502012年
Ninja650
(EX650E)
ER-6n
(ER650E)
2017Ninja6502017年
Ninja650
(EX650K)
Z650
(ER650H)

VERSYS1000(LZ1000B) -since 2015-

2016ヴェルシス1000

「Riding Fun」

二代目VERSYS1000にあたるB型。

先代のマッスル感の強い顔が不評だったのか弟の650と一緒にNinja顔へと変更されました。でもやっぱりただでは起きないのかNinjaなんだけどちょっと異型。

2015ヴェルシス1000顔

暴走モードで口を開けたエヴァンゲリオンみたいですが、これ単なるデザインというわけではありません。正面の空気を左右に捌きつつラジエーターやエンジン周りといった熱源に積極的に風を当てる為の機能的デザインだったりします。

その他の変更点としては吸気の見直しによるレスポンス向上(2馬力UP)とアイドリング時のジェネレーター出力の増加(12.3A→15.3A)、そしてスリッパークラッチを採用によるバネレートを軽減(クラッチが軽くなる)、パニアケースのアタッチメント刷新とOPの更なる充実、燃費の向上などなど。

カワサキグリーンプロダクト2015

アドベンチャーとして更なる磨きをかけカワサキグリーンプロダクト2015に選ばれました・・・・・が、ここで少し耳の痛い話。

実はこのVERSYS1000は海外(特に欧州)では意見が真っ二つというか賛否両論あります。

その最大の理由が直列4気筒エンジン。アドベンチャーで直列4気筒というのは通常では有り得ない話なんです。

直列4気筒というのは非常に合理的なエンジンなんですが、それは馬力を求められるオンロードでの話であってオフロードではタブー。

その理由は横に4つ気筒を並べるわけなので車幅が増す事や、車重が増えてしまう事からバランスを取らないといけないオフロードでは扱い辛さ悪く走破性に難が出るから。他にも燃費が悪い、低速トルクがない等の問題も出てきます。

KLZ1000Bエンジン

ライバルであるAFRICA TWIN(HONDA)やSuper Ténéré(YAMAHA)が並列二気筒な事やV-STROM1000(SUZUKI)がVツインなのはそういう理由からなんですが、VERSYS1000の場合は更にホイールも前後17インチという完全にオンロードバイクな形。

その為アドベンチャー文化やダートが身近な欧州を中心とした国では

「何も分かってないビッグアドベンチャー」

と一部で言われていたりするわけです。これはNinja650やVersys650といった大好評&大成功を収めた並列二気筒のバイクがあったにも関わらずという背景も影響していると思います。

じゃあどうしてカワサキがこんなにズレたアドベンチャーを出したのかというと、恐らくアドベンチャーのイメージがカワサキには無いからかと。

アドベンチャーの最高峰といえば何と言ってもパリダカですが、砂漠の女王NXR(HONDA)、地球を制した記号 Ténéré(YAMAHA)、ファラオの怪鳥DRZ(SUZUKI)、といったワークスで挑んでいた歴史がカワサキには無い。

KLR750tengai

一応1987年にKLR650 tengaiというラリー(ベース)マシンも発売しましたが結局ワークス参戦はせず。つまりカワサキはアドベンチャーで必須とも言えるパリダカ要素を持っていないんです。

じゃあ今のカワサキが持っている最高のアピール要素は何だろうとなると・・・やっぱりSBK。

カワサキSBK

2013/15/16年そしてこのままいけば17年もワールドチャンピオンに輝きそうなほどの強さを誇っているスーパーバイク世界選手権。

VERSYS1000の公式ページでもカワサキはアドベンチャーとはほとんど言っておらず、”レース(パリダカではなくSBK)で培った技術”や”ZX-10Rと同様の技術”といったまるでスーパースポーツかのような謳い文句を並べています。

要するに”敢えて王道からハズした”わけですが、重要なのは何度も言っているけどオンとオフの性能や楽しさはどうやったって両立しない事。だからどちらに比重を置くかが要になってくるんだけど、VERSYS1000の場合はいま説明してきたようにほぼオンロード走行での性能とファンライドに振っている。比率で言えば9:1以上と言っていいくらいオン寄りでオフは本当にオマケ程度。

ヴェルシス1000usa

そのせいで一部から「分かってないアドベンチャー」とか言われたりもするんだけどそれはあくまでも海の向こうでの話。ここは道路舗装が隅々まで行き届いている日本です。

ツーリングに出て気持ちよく走れるワインディングロードと、未舗装路の割合ってどれくらいでしょう。

恐らく舗装路がほぼ大半で、未舗装路といってもせいぜいフラットダート(慣らされた未舗装路)くらいではないかと思います。単純な数値で言うと日本は簡易舗装を含めると約97%が舗装路です。

そう考えるとスーパースポーツ技術を注ぎ込む事でオフロードでの走破性よりもオンロードでの性能やファンライドを取ったVERSYS1000という”分かってないビッグアドベンチャー”は

2016ヴェルシス1000

「日本のことをよく分かっているビッグアドベンチャー」

とも言えるのかと・・・それを狙ったのかどうかは分からないけどね。

カワサキの事だし

「ビッグアドベンチャーでも最速」

という単純明快な理由かもしれない。

【関連車種】

Africa Twinの系譜SUPER TÉNÉRÉの系譜V-STROM1000の系譜R1200GSの系譜

主要諸元
全長/幅/高 2240/895/1400~1465mm
シート高 840mm
車軸距離 1520mm
車体重量 249kg(装)
燃料消費率
燃料容量 21.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1043cc
最高出力 120ps/9000rpm
最高トルク 10.4kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTX9-BS
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量4.0L
交換時3.2L
フィルター交換時3.8L
スプロケ 前15|後43
チェーン サイズ525|リンク116
車体価格 1,350,000円(税込)
系譜図
初代2010年
VERSYS1000
(KLZ1000A)
二代目2015年
VERSYS1000
(KLZ1000B)

VERSYS1000(LZ1000A) -since 2010-

2010年式ヴェルシス1000

「Street Surfing」

カワサキのビッグアドベンチャーとして登場したVersys1000。国内では二年遅れの2012年から登場しました。

VERSYS(ヴェルシス)の名前の由来は”Vertex(頂点)”+”System(システム)”です。

VERSYSの意味

このモデルは現存モデルで兄弟車(Z1000/Ninja1000)も居るので、なかなかカタログ落ちにはならないと思いますしソッチの系譜に組み込んでも良かったのですが散らかってしまうのでコチラに。

その兄弟車であるZ1000/Ninja1000の並列4気筒エンジンをベースに圧縮比を下げ低速寄り&低燃費チューニングされたエンジンを搭載しているわけですが、メインフレームも共有化したエンジンの上を通るバックボーンのようなアルミツインチューブなのでZ1000/Ninja1000と同様に直四にしては意外とスリム。

ヴェルシス1000エンジン

基本的にZ1000/Ninja1000とほぼ一緒と言えなくもないのですが、VERSYS1000だけの試みとして面白いのがエンジンハンガー部分にパイプが付けられている。万が一の転倒時のエンジンガードにもなるし、引き起こしの際の取っ手にもなる面白い配慮ですね。

ヴェルシス1000ネイキッド

他にもビッグアドベンチャーとしての配慮としてサブフレーム(シートフレーム)は積載やタンデムを考えて220kgまで耐えうるスチール製の高硬度フレーム。更にタンク容量も21Lに大容量化に可変スクリーン、サスペンションもストローク量の大きいKYBの軽量倒立の物に。トラコン・ウィリーコントロール・ABS・出力モード切替といった最新電子制御も当然のように付いています。

それらの装備がまだ付いていなかった同年のNinja1000が1,302,000円だったのに対し1,298,000円。今にして思うとかなりのバーゲンセール。

ヴェルシス1000A顔

・・・にしてもこの顔はER系を更に強めた感じでインパクトがありますね。写真ではスケール感が伝わり辛いのが残念でなりませんが、一度見たら間違いなく忘れないと思います。

更に2014年モデルにABSが10Rの物へバージョンアップされるなどの一部改良が入りました。

主要諸元
全長/幅/高 2235/900/1045~1430mm
シート高 845mm
車軸距離 1520mm
車体重量 257kg(装)
燃料消費率
燃料容量 21.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1043cc
最高出力 120ps/9000rpm
最高トルク 10.4kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTX9-BS
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量4.0L
交換時3.2L
フィルター交換時3.8L
スプロケ 前15|後43
チェーン サイズ525|リンク116
車体価格 1,298,000円(税込)
系譜図
初代2010年
VERSYS1000
(KLZ1000A)
二代目2015年
VERSYS1000
(KLZ1000B)

VERSYS650/ABS(LE650E/F) -since 2015-

KLE650e

「All Roads, One Bike」

シリーズ展開されるようになった事から車名に650が付いてシリーズ統一顔へと変貌した三代目のVERSYS650/LE650E型とABSのLE650F型。

今回も主な変更は

・リアをキャリアからグラブバーに変更

・リモート式プリロードアジャスターリアサス

・VERSYSシリーズで統一されたデザイン

など約10年ほど経ったにも関わらず基本的にそのままでお色直しがメイン。

兄弟車が

ER→Ninja650R/ER-6n→Ninja650/Z650

と世代を重ねていったのに対してヴェルシスはずっとそのままだったので離れ離れというか実質的に別モデルに近い存在になりました。

しかし残念ながら日本での冷遇は先代から変わらずで国内正規取り扱いをしなかったのは勿論、ブライト(正規逆輸入車)も2016年モデルをもって取り扱い終了。

ブライト最終モデル

実質的にABS付きのF型を2年売っただけ。これが最終モデルになります。

日本ではNinjaとZのツートップ体制で台数がそんなに稼げない事が関係しているかと思いますが、一方で欧米では2021年時点でも健在。

このモデルからはバリエーション展開もされており厳しいミドル市場で定評を得ています。

KLE650e

ところでヴェルシス650は先代でも言ったようにデザイン変更がメインで中身は2007年からそんなに大きく変わってない。

なのに今でも第一線で売られてるだけではなく、新しいミドルデュアルパーパスが出るたびに必ずと言っていいほど比較対象に引っ張り出されたりしています。

そしてそこで何処を見ても大体

スクリーンとメーター

「降りないとスクリーン調整出来ない」

「メーターデザインが古い」

などの細かいネガの指摘に始まり走行性能なども比較される。

系譜を見ると分かる通り物凄く息が長いモデルなので

「世代が全然違うのに比べるのは酷でしょ」

と一瞬ヴェルシス650に同情心が湧いたんですが・・・その必要はなかった。むしろそれこそ失礼な話。

わざわざ引っ張り出すのにはちゃんと理由があった。

ヴェルシス650壁紙

「ヴェルシス650はミドルアドベンチャーの要点を一番抑えてるモデルだから」

です。

・良好な防風性と視界のポジション
・乗り心地良好なシート
・オンが主軸ながらオフも多少は行ける足回り
・軽い車重とマスの集中化をもたらすパラツイン
・低中速に厚みを持たせ650ながら過不足ないパワー
・実燃費20km/L越えの燃費と19Lビッグタンク
・フォグや片手で開けるパニアなど豊富なOP
・クラスなりの車格と価格

ヴェルシス650は当たり前に思えて意外と難しいミドルデュアルパーパスの要点全てで及第点を取ってるんです。

ブライト最終モデル

だから10年以上経とうが排気量が近い新しいモデルが出るたびに引っ張り出される。

Ninja650やZ650など兄弟車がモデルチェンジしてもヴェルシス650だけは大きく変わらなかった理由もここにあるんじゃないかと思います。

『性能/利便性/コスト』

その全てが奇跡とも言えるバランスで調和しているから大きく変わらず、また変えずとも20年弱経った今でもベンチマークにされる。

カワサキヴェルシス650

カワサキブランドのエヴァみたいな顔のバイクという事から破天荒なイメージを抱きがちですが、実は全くもってリーディングエッジじゃないどころか良く出来たバランスを保ち続けている超保守的なミドルデュアルパーパスなんですね・・・だから日本には入ってこないのかもしれない。

主要諸元
全長/幅/高 2165/840/1400mm
シート高 840mm
車軸距離 1415mm
車体重量 208kg(装)
燃料消費率
燃料容量 21.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 649cc
最高出力 69.0ps/8000rpm
最高トルク 6.5kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー FTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
推奨オイル JASO MA
SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時1.7L
フィルター交換時1.9L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク114
車体価格 939,600円(税込)
系譜図
LE500A1991年
KLE500
(LE500A)
LE500B2005年
KLE500
(LE500B)
KLE650A/B2007年
VERSYS/ABS
(LE650A/B)
KLE650C/D2010年
VERSYS/ABS
(LE650C/D)
KLE650E2015年
VERSYS650/ABS
(LE650E/F)

VERSYS/ABS(LE650C/D) -since 2010-

KLE650c

「Street Surfing」

ヴェルシスとしては初モデルチェンジで二代目となったVERSYS/LE650C型とABS付きのLE650D型。

最初に主な変更点を上げておくと

・縦型デュアルヘッドライト

・角度調節機能付きスクリーン

などでどちらかというとルックス変更がメイン。

ヴェルシスは欧州がメインなのでデザインもER-6に非常に近い独特な物だったんですが、今回のモデルチェンジで更に独創的な物になりました。

LE650C壁紙

良い意味でタフギア感が増したというかボトムズ感が出たというか・・・ちなみに説明を忘れていたのですがVERSYSの名前の由来は

『Vertex(頂点)+System(システム)』

を掛け合わせた造語になり、もう一つ補足としてこのモデルまでは正確に言うとVERSYS650ではなく

『VERSYS』

だけで数字は付きません。まだこの頃はシリーズ展開しておらずこのモデルだけだったからです。

・・・ってもう書けることが無い。

以下は余談なんですが、このヴェルシスって欧州の方ではインプレや比較が結構されている一方で日本国内ではビックリするぐらい露出は疎か情報すら皆無なんですね。

逆輸入車(ブライト取扱)という事でメーカーが取り上げないというのも勿論あるんでしょうが、メディアやカワサキ系販促を見てもそもそも掲載すらしてないのが当たり前という冷遇っぷり。

LE650Cブライトカタログ

載っていたのはせいぜいブライトのカタログの一コマくらいで

「これ買った人はよく見つけたな」

と感心するほどだったりします。

主要諸元
全長/幅/高 2125/840/1330mm
シート高 845mm
車軸距離 1415mm
車体重量 206kg(装)
燃料消費率
燃料容量 19.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 649cc
最高出力 64.0ps/8000rpm
最高トルク 6.2kg-m/6800rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
推奨オイル JASO MA
SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時1.7L
フィルター交換時1.9L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク114
車体価格 840,000円(税込)
系譜図
LE500A1991年
KLE500
(LE500A)
LE500B2005年
KLE500
(LE500B)
KLE650A/B2007年
VERSYS/ABS
(LE650A/B)
KLE650C/D2010年
VERSYS/ABS
(LE650C/D)
KLE650E2015年
VERSYS650/ABS
(LE650E/F)

VERSYS/ABS(LE650A/B) -since 2007-

KLE650A

「ストリートサーフィン」

ここで登場するのが今も続くヴェルシス650の始まりとなるVERSYS/LE650A型とABS付きのLE650B型で、日本に入ってきていた(ブライトが取り扱った)のはA型のみになります。

チラリと顔を覗かせるガチャピンエンジンからも分かる通りER-6がベースになったもののヴェルシスだけ特別に

・低中速に厚みをもたせるチューニング
・フルアジャスタブル倒立フォーク
・7段階プリロード及び13段階伸側減衰力の調節機能付きリアサス
・アルミスイングアーム
・19Lフューエルタンク

などのVIP待遇を受けています。

ガチャピンエンジン

念の為に補足しておくとガチャピンと言われる様になった理由はこれ。

先代比べて何が大きく変わったのかといえば共有の17インチホイールが採用されデュアルパーパスながらストリート色が強いモデルになったこと。

KLE650A壁紙

・・・なんですが、じゃあなんで特別な装備がわざわざ奢られたという話。

その理由は

『ストリートサーフィン』

というヴェルシスのコンセプトを実現するため。

これは簡単に言うと、とにかくライダーに自由なライディングをしてもらうという狙いになります。

KLE650Aサイド

ヴェルシスはER-6とほぼ共有ながら決定的に違う部分があります・・・それはポジションです。

「デュアルパーパスなんだから当たり前でしょ」

と怒られそうですがそう単純な事ではありません。

その違いを最も象徴している部分はシートになります。

KLE650A各部

ヴェルシスはER-6ベースながらわざわざ絞って反って跳ね返らせ、タンデムシートを切り離したセパレートタイプが新たに用意されている。

こうすることでライダーの有効着座面積を広げると共に高さにも差を付け、シチュエーションによって前乗りや後ろ乗りなど誰が活用する着座位置による荷重変化幅を凄く大きく取れるようになっている。

そしてここに合わせられるのがVIP待遇の各部。

極端な走行でもアンダーコントロール出来るよう掌握しやすいワイドハンドル、そしてストローク量を稼げる倒立フォーク、簡単にはヨレないアルミスイングアームなど許容量を上げるような装備が奢られてる。

LE650A壁紙

『どんな乗り方も許容する』

というデュアルパーパスの根本を大事にした結果がこれだけの特別な装備であり、ストリートサーフィンというヴェルシスの魅力なんですね。

主要諸元
全長/幅/高 2125/840/1315mm
シート高 840mm
車軸距離 1415mm
車体重量 207kg(装)
燃料消費率
燃料容量 19.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 649cc
最高出力 64.0ps/8000rpm
最高トルク 6.2kg-m/6800rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
推奨オイル JASO MA
SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時1.7L
フィルター交換時1.9L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク114
車体価格
系譜図
LE500A1991年
KLE500
(LE500A)
LE500B2005年
KLE500
(LE500B)
KLE650A/B2007年
VERSYS/ABS
(LE650A/B)
KLE650C/D2010年
VERSYS/ABS
(LE650C/D)
KLE650E2015年
VERSYS650/ABS
(LE650E/F)

KLE500(LE500B) -since 2005-

KLE500日本仕様

「Multi-Fun machines」

EURO2という欧州の排ガス規制を機に、実に14年ぶりというとんでもない年月の後にモデルチェンジした二代目のKLE500/LE500B型。

誰も覚えてない、もしくは知らず

「とんでもない形をしたZ1000みたいだ・・・」

と驚愕してる人も多いと思いますが、このモデルは先代と違いブライトが逆輸入車として取り扱いをしていました。

ブライト正規取り扱い

ちゃんと国内にも売ってたんです。

まず走ってるのを見た事ない人が大半だと思いますが、一部の超物好きにはフロント21インチの軽量デュアルパーパスという事で今も名前が上がったり。

KLE500Bサイド

先代からの主な変更点としては外見とシートの改良でエンジンはハーフニンジャを続投。

規制に合わせて3馬力/200rpmほど抑えられていますが、それ以外は基本的に先代を続投する形になっています。

ダカールラリーを皮切りにまさかのご長寿モデルとなったKLE500なんですが、KLE500がラリーに参戦したのはそれっきりで再戦する事はありませんでした。

では一体どうしてこんな何年も販売される事になったのか、一体何処らへんが評価されて10年以上も続くモデルになったのか気になったので欧州レビューを読み漁ってみたところ

「何の気兼ねもなく乗れる日常万能車」

という感じで評価されていました。

KLE500B

並列二気筒エンジンを中低速寄りにチューニングしたものだからコンパクトで、トルクも回転数に依存せず出てくれるから取り回しが良い。

加えて6速だから街乗りだけではなくツーリングもお手の物だし、オフロードの方もフロントが21インチな事もあって多少のことなら難なくこなせる。

オマケにハンドルガードやアンダーガードまで標準装備で車体価格も安いという事も相まって一番気軽に乗れる下駄車&エントリーモデルというミドルデュアルパーパス冥利に尽きるような需要があったようです。

余談ですけどこれなにが面白いってベースとなっているEX-5/GPZ500も向こうでは

「買って間違いないロードスポーツのエントリーモデル」

みたいな評価だった事。

兄弟車

やはり血が繋がっているだけの事はある。出来る兄弟ですね。

ちなみにKLE500はGPZ500向けのハイカムやピストンなどでパワーアップが出来るちょっと美味しい思いを出来る立場でもありました。

主要諸元
全長/幅/高 2215/880/1270mm
シート高 850mm
車軸距離 1500mm
車体重量 181kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 498cc
最高出力 44.9ps/8300rpm
最高トルク 4.2kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前90/90-21(54S)
後130/80-17(65S)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR9EA
または
X27ESR-U
推奨オイル JASO MA
SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前17|後44
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格
系譜図
LE500A1991年
KLE500
(LE500A)
LE500B2005年
KLE500
(LE500B)
KLE650A/B2007年
VERSYS/ABS
(LE650A/B)
KLE650C/D2010年
VERSYS/ABS
(LE650C/D)
KLE650E2015年
VERSYS650/ABS
(LE650E/F)

KLE500(LE500A) -since 1991-

KLE500A

「WILD AT HEART」

カワサキが1991年に発売したKLE500/LE500A型。

日本も発売されたKLE400の欧州専売モデルで、400と同じくトレール用のパイプフレームにハーフニンジャことEX500(GPZ400Sの500版)のエンジンを中低速よりにチューニングしたものを積んだデュアルパーパスになります。

このモデルを出した理由はダカールラリー、そしてそこからのデュアルパーパスという文化が欧州で流行っていた事が要因かと。

KLE500のカタログ写真

ただカワサキはダカールラリーにはワークス参戦もしていなかったのでインスピレーションやバックボーンがあるわけでもなく、ダカールラリーを睨んで造られたわけでもない。

正直に言うと燃料タンクが15Lしかないのも見ても分かる通り、あくまでも需要があるから造られた雰囲気ラリーレイド的な存在でした。

ただしそこで終わらなかったからヴェルシスへと続く長い系譜になった。

KLE500ラリーレイド

なんとこのKLE500もダカールラリーに1991年から参戦したんです。

「ダカールはテンガイじゃなかったっけ」

と思われている方も多いかと。

確かにテンガイもフランスカワサキ主導で参戦していたんですが、一方でKLE500もイタリアカワサキが主導して参戦していたんです。

1992年のダカールラリー

このダカールラリー参戦がKLE500の命運を決めました。

というのもイタリアヤマハはKLE500が1991年に発売されるとすぐにダカールラリー参戦を計画し、API(イタリアの石油企業)というメインスポンサーの獲得に成功したことで実現。

しかし伊カワサキはタンクを54Lのビッグタンクに変更したくらいで、それ以外の部分は大きくKLE500からかけ離れるようなチューニングをしなかった。

1992年のダカールラリー

要するにプロダクション(市販車)みたいな形でレースに出場。

もちろんワークス体制でバリバリのファクトリーマシン(試作車)を用意していたライバルには敵わなかったんですが、見事に走り切る事に成功し500クラスとしては優秀な成績だった。

いろんなページで言ってるように当時のラリーは欧州をメインに一番加熱していた時代だったからこの事で

「カワサキの市販デュアルパーパスやるじゃん」

と最高のアピールになったんです。

またEX-5/GPZ500ベースで価格も抑えていた事も相まって飛ぶように・・・とまでは言わないけどイタリアやスペインを中心に広く認知されるようになった。

LE500Aのカタログ写真

ダカールラリーというバックボーンを販売後に作るという一風変わった背景を持ってるKLE500。

「試合に負けて勝負に勝ったデュアルパーパス」

と言えるかと。

主要諸元
全長/幅/高 2215/880/1270mm
シート高 850mm
車軸距離 1500mm
車体重量 181kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 498cc
最高出力 48ps/8500rpm
最高トルク 4.3kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前90/90-21(54S)
後130/80-17(65S)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR9EA
または
X27ESR-U
推奨オイル JASO MA
SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前16|後44
チェーン サイズ520|リンク108
車体価格
系譜図
LE500A1991年
KLE500
(LE500A)
LE500B2005年
KLE500
(LE500B)
KLE650A/B2007年
VERSYS/ABS
(LE650A/B)
KLE650C/D2010年
VERSYS/ABS
(LE650C/D)
KLE650E2015年
VERSYS650/ABS
(LE650E/F)

Z H2/SE(ZR1000K/L)-since 2020-

ZH2

「THE NEW Z」

新たなフラッグシップZとして登場したスーパーチャージャー付きのZ H2/ZR1000K型。

ベースとなっているのはスーパースポーツ系のH2ではなくバランス型のH2SXですが、SXを剥いただけかというと全く違います。
・アップライトのファットハンドル
・フレームマウントのヘッドライト
・剛性を下げしなやかにした専用フレーム
・バルブタイミングと燃調を中低速寄りに変更
・FI口径の小径化
・二次減速比をショート化
・両持ちスイングアーム
・触媒内蔵サイレンサー
・クイックシフター
・SHOWA製SSF-BF
・ホイールを星型から6本スポークに
・ブレンボM4.32モノブロックキャリパー
・フルカラーTFTメーター
・インテグレーテッドライディングモード
(トラコンや出力モードの包括的な切替機能)
・RIDEOLOGYアプリに対応
・Kawasaki Care+

などなどSXよりちょっと豪華になっているんですが、決定的に違う部分としてZ H2はストリートファイターというかネイキッドでポジションが起き気味なことと装備重量もSX比マイナス20kgの240kgと軽量化がされていること。

ZH2のデザイン

デザインの方も

『SUGOMI&Minimalist』

というコンセプトに沿って外装も最小限にはなっているんですが、スーパーチャージャーのエアインテークダクトを前に出さないといけない事もありネイキッドとしてはフロントが大きめで低めのハーフカウルが付いているような形。

更に翌2021年4月には豪華版となるZ H2 SE/ZR1000L型も登場。

ZH2SE

・KECS(電子制御サス)
・スカイフックEERA(電子制御アジャスト)
・ブレンボStylema(上位ブレンボキャリパー)
・ブレンボマスターシリンダー
・スーパーチャージャーエアインテークの銀鏡塗装
・スーパーチャージャーの赤刻印

などとなっているんですが、Z H2が発売されて何が一番衝撃だったかというとH2シリーズにしては凄くお買い得な価格設定だったこと。

H2 Carbon3,300,000円
H2SX SE+2,570,000円
H2SX SE2,220,000円
Z H2 SE1,980,000円
Z H21,720,000円

なんとH2CARBON一台でこれを二台買えちゃうほど安い。スカイフックテクノロジーを搭載した電子制御サスEERA(イーラ)を装備したSEモデルですら税別で200万円を切る安さ。

ちなみにスカイフックテクノロジーというのは簡単に説明するとサスペンションが沈み込んで戻る時の戻りすぎ、反動に近い制御をダンパーの電子制御で最小限に抑え込む技術。

「通常の電子制御サスペンションEERA(イーラ)と何が違うの」

という話をザックリすると、もともとサスペンションには”スカイフック”という究極の乗り心地理論みたいなものがある。

スカイフックの仕組み

こうして車体を宙吊りにすればどれだけサスペンションが動いてもバネ上のピッチング(前後の姿勢変化)が無くなるから最高の乗り心地になるという話なんですが、文字通り空から吊るすというのは現実問題として不可能。

なので車体に備えられたIMU(慣性計測装置)とサスペンションに内蔵されたストロークセンサーで車体姿勢を完全に把握し、減衰力を1/1000秒単位で素早く変え抑えることにより

『バネ上に挙動を可能な限り伝えないようにする制御』

というのが先に四輪の方で生まれ、今回それが二輪でも加わったという話。

スカイフックテクノロジー

これの効果はいま話したように乗り心地の大幅な向上なんですが、しかし一方でレインモードでしか採用されていない事からも分かる通りバネ上に乗っている形であるライダーも車体姿勢を把握しにくくなってしまうので少し違和感が生まれるのもまた事実。

だからこれはスポーツ系装備というよりも乗り心地を向上させる巡航向けのまったりシステムと言った方が良い感じ。

ZH2フロント

「じゃあなんでネイキッドのZに付けられたのか」

って話ですが二者択一の装備ではなくボタン一つでどうとでも変えることが出来る電子制御サスペンションで、先にも言ったようにZ H2はフロントマスクが結構たくましく楽なポジションも相まって普通に巡航もロングスクリーンを付ければイケるという要素を狙ったんじゃないかと。

ただZ H2で何よりも書くべきはスーパーチャージャー。

スカイフックテクノロジー

「いやいやスーパーチャージャーなのはもう知ってるよ」

って人も多いかと思います。でもこれが出たのは本当に凄いことであり、これがH2シリーズの真打ちじゃないかと。

というのも重ねて言いますがバイクで過給が根付かなかったのは急激なトルク変動がマンマシンの一体感というバイクにとって非常に大事な要素を阻害する、もっというと危なかったから。

そんな常識がある中でその危うさを極致下においてエキサイトメントという武器にしたのが第一弾のH2/R。そしてワンクラス上のパワーで余裕を持って走れるダウンサイジングに近い考えを武器にした第二弾のH2SX/SE。

そしてそして低中速寄りにチューニングしポジションも取っつきやすいアップライトで比較的軽く振れるフレンドリーさを武器に出た第三段がZ H2/SE・・・そう、Z H2は過給を積極的に楽しむことを武器にしている。

「ストリートでスーパーチャージャーを気軽に堪能出来る」

という本当に世が世なら間違いなく許されなかったであろう企業の社会的責任ギリギリを責めたコンセプトになっている。

エンジン性能

信号ダッシュや交差点からの立ち上がり、前が開けた時などあらゆる日常シーンで目と鼻の先にブーストゾーンがある。

ポジションもアップライトだから簡単にフロントが離陸すると同時に、身構えないと首を痛めてしまうほどのワープを

「キュルルル、ヒュルルル」

というタービンが生む音と一緒に”比較的誰でも簡単にそこら辺の道で”堪能出来るようになっている。Z H2がH2シリーズの真打ちじゃないかと思う理由はここ。

カワサキH2シリーズ

これこそがスーパーチャージャーが最も活きる使い方だから。

重ねて言いますが、この手軽にブーストはエンジン(クランク)から動力を貰うスーパーチャージャーだからこそ可能なこと。

スーパーチャージャーの構造

ターボだとこうはいかない。何故なら排気を動力源にするターボはある程度の排圧がないと首を痛めるほどのブーストが効かないから。

もちろんデメリットもあって高回転になるとターボのほうが効率が良い。でもそれはあくまでも高回転域での話でストリートでは難しいうえに、吹け上がりや排気音もタービンに邪魔されて濁ったものになる。

つまり何が言いたいのかというと

「このZ H2はスーパーチャージャーを本当に上手く活用してる」

という事。でもだからこそ本当にギリギリアウ・・・じゃなくてセーフ。

ZR1000K

過給機が載っていることが武器ではなく、過給による変化をそれもストリートで楽しむことを武器にしている。

間違いなく乗り手をブースト依存症にし、右手との戦いを一番強いるネイキッドというか別の意味でストリートファイター。

H2シリーズの展開においてカワサキ広報さんが話されていた

「より多くの方にスーパーチャージャーを」

という文言の”多くの方”というのは単純に台数を出す云々の話ではなく、まさかスーパーチャージャーというアドレナリン放出機能の真髄を広く知ってもらう事だったとは。

主要諸元
全長/幅/高 2085/810/1130mm
[2085/815/1130mm]
シート高 830mm
車軸距離 1455mm
車体重量 240kg(装)
[241kg(装)]
燃料消費率 16.9km/L
※WMTCモード値
燃料容量 19.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 998cc
最高出力 200ps/11000rpm
最高トルク 14.0kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/55ZR17(75W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
SILMAR9E9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.7L
交換時3.5L
フィルター交換時4.3L
スプロケ 前18|後46
チェーン サイズ525|リンク118
車体価格 1,720,000円(税別)
[1,980,000円(税別)]
※[]内はSE/ZR1000L
系譜図
マッハ31969年
500SS MACH3
(H1)
マッハ41972年
750SS MACH4
(H2)
H22015年
Ninja H2
(ZX1000N/X/ZX1002J)
H2R2015年
Ninja H2R
(ZX1000P/Y)
H2SX2018年
Ninja H2SX/SE
(ZX1002A/B/D)
zh22022年
Z H2/SE
(ZR1000K/L)