F4 第二世代 -since 2009~-

第二世代F4

2009年にフルモデルチェンジ

750ccは廃止され1000ccへ一本化されました。

一般的にこの年式から第二世代と言われています。

見た目はLED化やマフラーエンドなどの細部がリファインしたくらいで大きくは変わってませんね。

マフラーエンド

かと言って古さも感じない。

完成されたデザインって事なんでしょう。奇才マッシモ・タンブリーニ恐るべしです。

ちょっとF4の話というよりMVアグスタの話ばかりしてしまったので、少しF4の中身の話を。

F4最大の特徴は「ラジアルバルブ」

ラジアルバルブ

ラジアルバルブっていうのは文字通りバルブがちょっと傾いている事。

(少しだから見ても分からないと思いますが)

トラコンとかモード切り替えとかそこら辺の機能はF4でわざわざ説明する必要もないかと思うので割愛。

先にも話したけどF4のエンジンはフェラーリのエンジニアが作った物ということで当然ながらラジアルバルブもフェラーリが生み出した技術。

フェラーリ642

ラジアルバルブは吸排気口の面積を大きく取れるというメリットがある。

ただFerrariのそれとは違いF4はロッカーアームを使わない直動型のラジアルバルブ。

その開発が非常に難航したんだけど、それを救ったのはなんと当時ホンダのF1エンジニアだった日高義明さん。

F4にホンダの技術が入っていたとは驚きですね。

ホンダフェラーリ

MVアグスタのよってフェラーリとホンダの技術が融合って歴史的な事じゃなかろうか。

そんな紆余曲折がありつつも形となったMV AGUSTA F4は伝説になった・・・かといえばそうでもなかったです。

ライバルメーカーたち(というか日本メーカー)との競争激化で経営不振に陥ると、ハスクバーナやドゥカティといった買収していたメーカーを売却し最後にはほぼMVアグスタ一本に。

そして社名もMVアグスタに改名し元のカジバはその一部門になるという上下がひっくり返ったような会社に。

それでも不振が続いたため、買収され、売られ、捨てられと2000年代は色んなメーカーを転々としていました。

アグスタ本社前

そんなこんなでたらい回しにあっていたMVアグスタですが、2010年に売却という形で晴れて自由の身(カジバ経営)に。

そこでMVアグスタが最初に取った行動は値下げでした。

それも289万円から210万円と大幅なもの。

理由は当初は円高だと言われてましたが円安になっても値段はそれほど変わらず。

走る宝石といえど売れないとまた飼い殺しに合っちゃうからそれを防ぐためか

もっと多くの人に乗って欲しいのか公式アナウンスは無いのですが

どちらにしろハードルを下げてきたわけですね。

日本で「MVアグスタ」というとその知名度・認知度の低さからBimotaと同様に

超高級ブランドバイクと捉えられている人が多いです。

アグスタ工場

確かに安くはないですがよく考えてみてください。

ブレンボ&オーリンズのCBR1000RR SPが200万円なのに対し

ブレンボ&フェラーリエンジンのF4が220万円って超高額でしょうか?

1000RR SPと同じブレンボ&オーリンズを装備したトップグレードのF4RRでも300万円です。

安くはないですが超高級でもないですよね。ドゥカティとどっこいくらい。

むしろ一台一台職人の手によって作られているフェラーリバイクと考えれば安いと思っても不思議じゃない。

F4RR

フェラーリエンジンですよ。

マッシモ・タンブリーニが作った走る宝石ですよ。

(アフターサービスはあまり期待できませんが・・・)

最後に余談

MV500Tre

最初に言った通りMVアグスタは「サーキットの覇者」が原点です。

意外に思うかもしれませんが

再建してレース規格に沿った規格で進化してきたF4

実はレースではガチンコ(ワークス参戦)で世界と戦った事はまだありません。

このことから「アグスタなのは名前だけ(中身はカジバ)」とか「負けてる事を恐れてる」とか色々と陰口を叩かれました。

上にも書いてますが、飼い殺し状態だった事や予算の問題、当然技術的な問題など様々な理由で再建後もずっと参戦せずにいたのは事実です。

まあそれだけMVアグスタへの期待が大きいということでもありますが。

が、自由の身になって最初にしたことが値下げなら次にしたことは

F3を開発しWSB(ワールドスーパーバイク)のSSK(ミドルスーパースポーツ部門)へのワークス参戦でした。

かつてのサーキットの覇者がどれだけやれるのか、それはそれは世界が興味津々。

F3

最初はみな期待していなかったものの、実力も年を追う毎に増し僅か数年で優勝争いが出来るレベルにまで達しました。

SBK F4さらに、2015年からF4RCで待望のSBKワークス参戦が決定。

サーキット覇者の伝説が再来するのか見届けてみるのも面白いかもしれませんね。

レースがよく分からない人は「ロードレースの系譜」もどうぞ。

エンジン:水冷4サイクルDOHC4気筒(本国仕様)
排気量:998cc
最高出力:
195{201}ps
13400{13600}rpm
最大トルク:
11.3{11.6}kg-m/9600rpm
車両重量:191{190}kg(乾)
※{}内はRRモデル

系譜図
アグスタ125

1923年~
F4が生まれるまで

F4_750

1999年~
第一世代F4

F4_1000

2009年~
第二世代F4

F4 第一世代 -since 1999~-

カジバ

時代はそれから少し飛んで1990年代中頃。

イタリアでCAGIVA(カジバ)というメーカーが当時ありました。

ドゥカティやハスクバーナを筆頭にバイクメーカーを次々に買収し僅か10年で超巨大オートバイメーカーへと成り上がった会社です。

巷でこのメーカーが

「マッシモ・タンブリーニやフェラーリのエンジニアと協力してフェラーリバイクを作ろうとしている」

という噂が広まっていました。

もともとドゥカティとフェラーリは本社も近く企業間の仲も良好なうえに

その道中の高速道路で謎の赤いカウルを付けたバイクの目撃情報が多々あったからです。

プロトタイプF4

それがこのバイク。

なんかF4とは似ても似つきませんよね。

ゴッツいツインスパーフレームだし何より美しくない。

それもそのはずでこのプロトタイプはいわばフェイクモデル。

実はもう一台、謎の赤いバイクが存在したんです。

それがこれ。

マッシモ・タンブリーニが生み出したトレリスフレームと片持ちスイングアーム・・・

カジバ916

どう見てもドゥカティの916・・・・・・じゃなかった。

(上の写真がプロトタイプで下は916)

916

なんと皮こそ916だけどトレリスフレームとピボットプレートのハイブリッドフレームに直四のフェラーリエンジンを積んでいる。

もうお分かりになったと思います。

アグスタF4カウルレス

そう、コレこそがF4(フェラーリ4)だった。

カジバはアグスタのブランド使用権を取得し1999年にMVアグスタの名を復活。

アグスタF4

そして発表されたのがMVアグスタF4でした。

名門の復活、タンブリーニの設計&デザインに世界中が称賛。

オルガンパイプマフラーと呼ばれる四本出しに度肝を抜かれた人も多いのでは?

F4四本出し

今ではすっかりアグスタの象徴になりましたね。

ちなみにモデルをざっくり紹介すると

oro

最初が1999年のF4 Oroで限定300台

そして同年に出た廉価モデルがF4 750S

セナモデル

2002年~のEVOまたは750SRモデルとSENNAモデル限定300台

750SPR

2004~は750Sをベースにレースユースに特化したSPRモデル

こちらも限定300台。

なんかもうF4になるとOHLINSやbremboが当たり前なんで書く気も・・・ってよく見てください。

F4oro足廻り

なんとSHOWAのサスにNISSINのキャリパーではありませんか。

フェラーリバイクにしちゃ随分と庶民的だな~。

って思ったけどよく見たら巷に溢れてる物と違ってF4専用のオーダーメイド品な模様。

ブレンボだオーリンズだと騒ぐクラスとは次元が違うって事ですかね・・・

F4 1000S

そして2005年には排気量を1000ccまで上げたF4 1000AGOとSが追加。

その後も

Tamburini、Senna、Vektro Strada、Pista、R、CC、RR312等など

合わせると10以上の限定モデルを出してるので書ききれません。

全部書くととんでもない量になっちゃうので割愛させてもらいます・・・ごめんなさい。

まあしかしそんな中でもコレだけは知っとけというのが2006年に発表されたF4CC

アグスタF4 CC

CCは普通の限定モデルであるF4のエンジンの排気量を更に上げ1078ccとしたスペシャルなエンジンを搭載したスペシャルモデル

・・・最早なにがスペシャルで何がスペシャルじゃないのかわかりませんね。

ちなみにCCというのは社長であるクラウディオ・カスティリョーニの頭文字から。

カウルはカーボン、細部のアルミは全て手仕上げ、公称200馬力オーバー。

F4CCテール

お値段驚きの1500万円。

ドゥカティのデスモセディチも裸足で逃げ出す値段ですね。

そりゃブレンボも付くわって話です。

ちなみに見慣れないサスペンションはMARZOCCHI(マルゾッキ)製。

知る人ぞ知るイタリアのサスペンションメーカーです。

エンジン:水冷4サイクルDOHC4気筒(本国仕様)
排気量:749{1078}cc
最高出力:
126{200}ps
12600{12200}rpm
最大トルク:
7.5{12.7}kg-m
10500{9000}rpm
車両重量:180{187}kg(乾)
※{}内はCCモデル

系譜図
アグスタ125

1923年~
F4が生まれるまで

F4_750

1999年~
第一世代F4

F4_1000

2009年~
第二世代F4

F4が生まれるまで -since 1923~-

MotoGP

MVアグスタの歴史を知っている人は少ないと思います。

ということでまずMVアグスタの歴史からサラッとご紹介していこうと思います。

もともとMVアグスタというのはアグスタ伯爵が作ったイタリアの航空機(主にヘリコプター)メーカーでした。

アグスタ伯爵

しかし敗戦で飛行機の製造を禁止されるハメに。

どうしようか考えてた伯爵は「イタリアの名誉を取り戻せる事業を」と考えました。

すると当時すでにレースで世界中から喝采を浴びていたフェラーリをみて

「じゃあうちはオートバイ界のフェラーリを作ろう」と思ったのがキッカケ。

ちなみにMVアグスタのMVはMeccanica(力学) Verghera(町の名前)という意味があります。

さて、オートバイ事業に参入したアグスタは当時大手だったベネリやドゥカティから技術者をヘッドハンティングし、次々と高性能バイクを生み出していきます。

この時まだ1940年代。ホンダがやっと創業した頃です。

そしてフェラーリと同じようにレースへ注力。

その結果としてMVアグスタはWGP(現MotoGP)で圧倒的な速さを誇り、タイトル総ナメ状態が20年近く続きました。

その伝説は今も語られ続けています。

4C500

その速さの最大の理由として挙げられるのが、世界初にして唯一無二だった並列四気筒エンジン。

ホンダがCB750FOURを作り上げる実に20年前の時点でアグスタは既に直四を作っていたのです。

当時ちょうど視察に訪れていた本田宗一郎もコレにはビックリで工場まで押しかけたとか。

アグスタ750S

しかしそんな栄光の歴史とは裏腹に71年、転機が訪れました。

当時社長をやっていたドメニコ・アグスタが急死し、弟のコラード・アグスタが社長に就任。

その弟の経営方針の転換でアグスタはオートバイ事業からの完全撤退が決定しました。

というのも実はこの頃アグスタは経営危機に陥っていた。

そこで解禁され好調だった航空機製造への一本化の為にオートバイ事業を切ったと言われています。

これでアグスタはオートバイの世界から消えてしまうことになったわけです。

ちなみに航空機製造のアグスタは今でもアグスタウェストランドとして現存。

アグスタ社製ヘリコプター

富士山やアルプスなどで警察が使っているヘリコプターもアグスタ製だったりします。

系譜図
アグスタ125

1923年~
F4が生まれるまで

F4_750

1999年~
第一世代F4

F4_1000

2009年~
第二世代F4

1190RX/SX -since 2014-

1190RX

ニューモデルとして出して来たのが1190RXとネイキッドモデルとして1190SX・・・なんですが、2015年にHEROから見限られ再び経営破綻。

1190SX

オークションに掛けられた結果、レアメタル等を扱うAtlantic Metals(アトランティックメタル)のバイク好きCEOが落札し再び復活・・・かと思いきや期日内に資金を用意できず復活ならず。

2016EBR

その後グダグダありつつも三度目のオークションにてLAP(Liquid Asset Partners)というインディアンモーターサイクルも手掛けたコンサルティング会社に買収される事で今度こそ本当に復活。

開発どころではなかったのもあり、基本的には先代1190RSのブラッシュアップモデル。ただ流石エリックというべきかまた独創的な物が一つフロントに追加されています。

1190SX

これはディスクローターとキャリパーピストンへ走行風を積極的に当てることで冷却性を上げ熱ダレを防ぐ装備。

そして今EBRがどうなっているのかというと・・・実は2017年に想定を大幅に下回る経営だった事からまたまた破産し競売に掛けられる事に。

1190SX

しかも今までとは違い、手を差し伸べてくれる企業や投資家が現れなかった為、設備からパーツの一つに至るまでバラ売り。

つまり遂にEBR/Buellという会社は完全に消える事が決まりました。

最後に・・・。

エリックビューエル

「TRILOGY OF TECH(技術のトリオジー)」

マスの集中化×高剛性フレーム×バネ下重量の軽減

これはエリックがバイクを作るに辺りこだわり続けていた理論です。

エリックビューエル

エリックがこう考えるようになったのはまだBuellが発足する前、TZ750でレーサーとして走っていた時代。

エリックはこの時レース中の事故で友人を二人亡くしているんです。この出来事がキッカケでエリックの中にある考えが生まれました。

「バイクは何よりもコントローラブルじゃないといけない」

そして生まれたのが技術のトリオジー。エリックはその考えを、ワンマンと批判されようと、会社が何度破産しようと、結局最後まで貫き通しました。

最後の最後に・・・

XB2の時に

「ビューエルはアメリカよりも欧州の方で人気がある」

と言いましたが、実はアメリカでのビューエルの評価はそんなに高くないんです。

日本車に劣る信頼性、弄りにくい独自構造、度重なる破綻などで不甲斐ないバイクメーカーという認識。この2017年の完全消滅もそれほど話題になっていません。

1190RX

海外メーカーに負けないアメリカのスポーツバイクを作ることに死力を尽くしてきたエリック・ビューエルを惜しむ声が、復活を望む声が、肝心のアメリカから全く聞こえない。

こんな悲しい話は無いです・・・。

※2021年追伸

EBRは2019年から新会社となり2021年から再びビューエルブランドで1190シリーズを展開し始めています・・・が、エリックビューエルさんは関わっていません。

現在はクラウドファンディングで立ち上げたFUELLという電気自動車会社のCTO(最高技術責任者)を務めています。ちなみに2024年にエリックが造った電動バイクが発売予定。

参照:fuel.com(公式)

エンジン:水冷4サイクルDOHC二気筒
排気量:1190cc
最高出力:
185ps/10600rpm
最大トルク:
14kg-m/8200rpm
車両重量:173kg(乾)
※スペックは1190SX

系譜図
エリックビューエル 創業者
Erik Buell
RR1000/1200 1986年
RR1000/1200
RS1200 1989年
RS1200
S2 1994年
S2 Thunderbolt
S1 1996年
S1 Lightning
S3 1996年
S3/T Thunderbolt
M2 1997年
M2 Cyclone
X1 1999年
X1 Lightning
BLAST 2000年
Blast
XB9シリーズ 2003年
XB9R Firerbolt
XB9S Lightning
XB12シリーズ 2004年
XB12R Firerbolt
XB12S Lightning
XB12X ULYSSES
1125シリーズ 2007年
1125R
1125CR
1125シリーズ 2011年
1190RS
1190シリーズ 2015年
1190SX
1190RX

1190RS -since 2011-

1190RS

「EBR:ERIC BUELL RACING」

インド最大の二輪メーカーのヒーローと提携・援助で復活したビューエル。会社の場所は勿論ビューエル時代と同じウィスコンシン州で今度は従業員13人からスタート。

先代1125でROTAXに作らせたエンジンの権利を購入しエリックがほぼ全て作り直したニューエンジンが積まれています。

ただこのバイクは100台限定&300万円という実質的にレースを走るためのホモロゲーションモデルだからまず見ることも無いし、正規で入ってきていないので買うことも無いと思います。一応国内でも4台ほど何処かの誰かかが購入したようですが。

エリックZTL

そういえばビューエルの特徴の一つであるZTL(ゼロ・トーション・ロード)について説明していませんでした。日本ではXB9が初出のブレーキシステム。

ZTL2

見れば分かりますがディスクローターがホイールのリムにマウントされているわけです。こうする事でディスクローターのインナーが不要になり軽く出来るというわけ。バネ下軽量が狙いで同クラス比-2kg以上だそうです。

ただキャリパーが一般的な外から差し込むタイプではなく中から差し込むタイプなので、ブレーキパッドを変えるだけでもホイールを外す必要があるというメンテナンス性の悪さがあったりします。一応外さないでも出来るように逃げが作られてはいますが・・・

1190RSリア

それにしても目につくのが懐かしきコムスターの様なリアホイールですね。

と言っても今の人はわからないので説明するとコムスターホイールっていうのはホンダが編み出したホイールでComposite(合成)とStar(星形)という意味。

1190RSリア

スポークプレートをリベットでリムに固定しているホイール。組み立て式キャストホイールみたいな感じ。キャストホイールが認可されていなかった時代の産物です。

重ねて言いますがこの1190RSはちゃんとキャストホイールですよ。ただ形がコムスターホイールに似ているというだけです。

小言。

恐らくビューエルに関心がある人の多くは

「空冷こそビューエルであり水冷はビューエルではない」

と思われてるかと。

実際X1ライトニングは11,228台。そしてXB9が合算で22,961台、XB12は45,929台も製造されてました。それに対し水冷化した1125Rは5,836台、CRモデルは3,099台とXBシリーズの半分以下。

EBR1190

もちろんこれはハーレーが取扱を止めた事や経営のゴタゴタもありますが、水冷化を望んでいない人が多かったのも大きな理由。

これは本当に難しかったと思います。

日本の空冷ビューエル乗りに怒られそうですが、Buellが成功したのは他の何処にもない唯一無二の味を持っていたスポーツ版ハーレーだったから。

しかしエリックが目指していたのは味があるスポーツバイクではなくMade in USAのスポーツバイク。本意とは別の形で世間に認められたわけです。

1190

つまりハーレーと手が切れ、水冷のコンパクトなDOHCエンジンを選んだという事は言い換えれば、この水冷モデルこそエリックが本当に作りたかったバイクとも言えるんじゃないかと。

エンジン:水冷4サイクルDOHC二気筒
排気量:1190cc
最高出力:
185ps/10600rpm
最大トルク:
14kg-m/8200rpm
車両重量:173kg(乾)
※スペックは1190SX

系譜図
エリックビューエル 創業者
Erik Buell
RR1000/1200 1986年
RR1000/1200
RS1200 1989年
RS1200
S2 1994年
S2 Thunderbolt
S1 1996年
S1 Lightning
S3 1996年
S3/T Thunderbolt
M2 1997年
M2 Cyclone
X1 1999年
X1 Lightning
BLAST 2000年
Blast
XB9シリーズ 2003年
XB9R Firerbolt
XB9S Lightning
XB12シリーズ 2004年
XB12R Firerbolt
XB12S Lightning
XB12X ULYSSES
1125シリーズ 2007年
1125R
1125CR
1125シリーズ 2011年
1190RS
1190シリーズ 2015年
1190SX
1190RX

1125R -since 2008-

1125R

ROTAXに作らせた146馬力を発揮する狭角75度水冷エンジンを積んだ第三世代水冷ビューエルの1125R。

1125エンジン

リムマウントディスクローターやXブレードフレームなど基本的な思想はXBシリーズと同じ。ただスイングアーム内にオイルを貯めるタイプではありません。

1125フレーム

相変わらずサスペンションはフレームマウントですが、エンジンを非常にコンパクトにできたことでスイングアーム長を大きく取りコーナリング性能を高めています。

昨今(特に日本)のスーパースポーツに通ずるところがありますね。

1125

そしてこちらは一年遅れで登場したネイキッドモデルの1125CR。

ビューエル1125CR

中々なマッスル感。

ちなみに両サイドにあるふっくらしたカバーは横に持ってきたラジエーターの為の整流カバー。狙いはもちろん全長を縮めるため。

1125CR正面

相変わらずバランサーは付いていないので空冷モデルほどでは無いにしろ振動は健在。

しかし何よりも水冷化に対しビューエル界では大きな波紋が広がりました。

何故水冷にしたのかといえばレースで勝つためでしょう。

ビューエルXB-RR

もともとビューエルはXBRRというXBをベースに150馬力までチューニングされたエンジンとカーボンカウルのマシンで参戦していました。

しかしやはり空冷OHVでは並み居るSS相手には勝てなかった・・・エリックも分かっていたのか、このXBRRでレースをする裏で並列して1125Rとレースマシン1125RRの開発が進んでいたというわけ。

ビューエル1125RR

これがその1125RR。当時エリックがノリノリで紹介していました。

そして見事スーパーバイク全米選手権プライベータークラスで勝ったんです。RR1000で苦汁を飲まされてから20年後の事。

ビューエル1125RR

アメリカのレースで、アメリカのバイクメーカーが勝つ。これは本当に全米が泣きました・・・が、1125R/CRは日本には入ってきていません。

というのも記憶に新しいリーマンショックによる世界不況で親会社だったハーレーの業績が悪化。そのため経営の合理化としてBUELLの生産・取扱を止めるという判断が下されたんです。

V-ROD

一説ではV-RODの水冷エンジンを使うことをエリックが拒否し、ROTAXエンジンを採用という背任行為が理由とも言われています。

ただ同時にMVアグスタも手放しているので、その線は薄いと。

EBR11125

1125R発売から一年足らずの出来事で、ちょうど日本国内の為にデモランまで済ませ発売寸前まで来ていた矢先の話。

あまりにも急なことでエリックの肩を落とした報告動画が印象的でしたが、ビューエルで働いてる人もこの動画を見て始めて知った人も多かったとか。

正に天国から地獄ですね。

エンジン:水冷4サイクルDOHC二気筒
排気量:1125cc
最高出力:
146ps/9800rpm
最大トルク:
10.5kg-m/8300rpm
車両重量:170kg(乾)
※スペックは1125R

系譜図
エリックビューエル 創業者
Erik Buell
RR1000/1200 1986年
RR1000/1200
RS1200 1989年
RS1200
S2 1994年
S2 Thunderbolt
S1 1996年
S1 Lightning
S3 1996年
S3/T Thunderbolt
M2 1997年
M2 Cyclone
X1 1999年
X1 Lightning
BLAST 2000年
Blast
XB9シリーズ 2003年
XB9R Firerbolt
XB9S Lightning
XB12シリーズ 2004年
XB12R Firerbolt
XB12S Lightning
XB12X ULYSSES
1125シリーズ 2007年
1125R
1125CR
1125シリーズ 2011年
1190RS
1190シリーズ 2015年
1190SX
1190RX

XB12S Lightning -since 2004-

XB12Sライトニング

XB9Rのエンジンをロングストローク化させトルクフル(1202cc化)にしたXB12SとXB12R。

そしてこの頃からスポーツスターのエンジンをビューエルが使うのではなく、ビューエルのエンジンをスポーツスターが使うように。立場逆転ですね。

XB12Sライトニング

ちなみに本場アメリカではXB2シリーズと呼ぶようですが、これまたバリエーションが色々とあって分かりにくい面があります。

日本国内で最も売れたのは2005年登場のXB12Scg(センターグラビティ)と呼ばれるモデル。

XB12Sライトニング

サスペンションを縮め、シートも変更されたローシートモデル。

他には中道のSs(スポーツ)、一人乗りトラッカー仕様のXB12STT(トレールトラッカー)など。

XB12STT

そしてこれらのグレードに共通しているのがノーマルのXB12Sよりも長いスイングアームを採用したこと。

フロントフォークも少し寝かせホイールベースとトレール量を伸ばしたことで懐が広くなっています。流石に250並みのホイールベースじゃ厳しかったのか。

XB12Sライトニング

更にSとRに次いで投入されたのがXB12X/XT Ulysses(ユリシーズ)。

サスペンションをロングストロークな物に変更したデュアルパーパスモデル。

XB12X

販売台数が順調に伸びていった事によるスケールメリットもあってか、年を追う毎に車体価格も安くなっていった事と、積極的な試乗会により更に人気を呼びました。

XB12ポスター

※2005年初期は170万で、晩年の2010年には120万円ほど。

少し話がそれますが、ビューエルって何処の国に人気かご存知ですか。

Made in USAと謳っている事からもアメリカが一番人気と思いがちですが、当時の資料を見ると意外にも一番台数が出ているのは欧州なんです。

XB12Sポスター

比率的には

欧州5|北米4|日本1

との事。意外ですよね。

エンジン:空冷4サイクルOHV二気筒
排気量:1203cc
最高出力:
101ps/6000rpm
最大トルク:
11.2kg-m/6000rpm
車両重量:179kg(乾)
※スペックはXB12S

系譜図
エリックビューエル 創業者
Erik Buell
RR1000/1200 1986年
RR1000/1200
RS1200 1989年
RS1200
S2 1994年
S2 Thunderbolt
S1 1996年
S1 Lightning
S3 1996年
S3/T Thunderbolt
M2 1997年
M2 Cyclone
X1 1999年
X1 Lightning
BLAST 2000年
Blast
XB9シリーズ 2003年
XB9R Firerbolt
XB9S Lightning
XB12シリーズ 2004年
XB12R Firerbolt
XB12S Lightning
XB12X ULYSSES
1125シリーズ 2007年
1125R
1125CR
1125シリーズ 2011年
1190RS
1190シリーズ 2015年
1190SX
1190RX

XB9R Firebolt -since 2002-

XB9Rファイヤーボルト

新世代ビューエルとして登場したXB9R Firebolt。

ここまで来ると馴染みがある人も多いでしょう。

一番の大きな特徴は何と言っても

「Xブレードフレーム」

という名が付けられた極太アルミツインスパーフレーム。このフレームただのツインスパーではなくガソリンタンクを兼ねるという普通では考えられない構造をしているんです。

フューエルインフレーム

フレームにガソリンを注ぐという奇想天外な考えですが、実はこれ構想自体はずっとまえからあったそう。

というのはエリックがレーサーをやっていた頃、ガソリン量の減少によるハンドリングの変化が気になって仕方なった。

これはガソリンタンクが重心よりも高い位置にあることによる慣性モーメントの変化が原因。ガソリン満タンと空の状態だと全然違うのは誰もが知ることですね。

XB9Rカタログ写真

マスの集中化を何よりも大事にするビューエルとして何とか出来ないか、もっと重心に近い部分にガソリンを置けるスペースがないか探した所フレームが空いている事を発見。

ただ技術的やコスト面の問題があったから中々採用できなかった。それが今回フルモデルチェンジでやっと実現したというわけ。

しかし面白ギミックなのはこのタンクだけには留まりません。

ハーレーの狭角45度Vツインエンジンはドライサンプといって一般的なウェットサンプと違い、オイルを溜めておくプールがエンジンの下ではなく別の場所に設けられます。

今までのモデルはだいたいシート下にオイルタンクが置かれていたのですが、前後長を切り詰めたかったエリックはエンジンオイルのプールとして第二のフレームであるスイングアームを選択。つまりこのスイングアームの中にはエンジンオイルが入っている。

オイルインスイングアーム

更にエンジンもビューエルからの注文で改良した物ではなく、最初からビューエル用のエンジンが積まれる事になったおかげでホイールベースが脅威の1320mmに。

1320mmがどれだけ短いかというと、一般的な250ロードスポーツモデルですら1390mm前後。身近なモデルで一番近いのを探してみるとホンダのPCX(1315mm)が近い。

XP9Rポスター

それくらい短いわけですが、これは本当に賛否両論ありました。

ホイールベースが短いというのは物凄くクイックではあるんだけど安定性の問題が出てくるから。

ただこれはエリックが考えていた設計思想なんです。エリックが次世代のビューエルを作る際、集めたメンバーに対して

TZ250

「このTZ250に我々のエンジンを積んだら最高のバイクが出来る。」

と言ったわけです。

当然そんなの無理に決まってると相手にされなかったのですがエリックは本気で、しかも本当にやってのけたわけです。(ホイールベースがほぼ同じ)

翌年にはX1の後継であるネイキッドモデルXB9Sも登場。

フューエルインフレーム

国内ではすぐ後継にバトンタッチし最終的にはXB9SXのみとなりましたが、国内外問わず

「今までに無いバイクだ」

と絶賛され、BUELLはアメリカ第二位のオートバイメーカーに上り詰めました。

フューエルインフレーム

一番BUELLが輝いていた時代ですね・・・。

エンジン:空冷4サイクルOHV二気筒
排気量:984cc
最高出力:
92ps/7200rpm
最大トルク:
9.37kg-m/5500rpm
車両重量:175kg(乾)
※スペックはXB9R

系譜図
エリックビューエル 創業者
Erik Buell
RR1000/1200 1986年
RR1000/1200
RS1200 1989年
RS1200
S2 1994年
S2 Thunderbolt
S1 1996年
S1 Lightning
S3 1996年
S3/T Thunderbolt
M2 1997年
M2 Cyclone
X1 1999年
X1 Lightning
BLAST 2000年
Blast
XB9シリーズ 2003年
XB9R Firerbolt
XB9S Lightning
XB12シリーズ 2004年
XB12R Firerbolt
XB12S Lightning
XB12X ULYSSES
1125シリーズ 2007年
1125R
1125CR
1125シリーズ 2011年
1190RS
1190シリーズ 2015年
1190SX
1190RX

BLAST -since 2000-

ブラスト

EVOエンジンの片肺だけ切り取る(流用する)事でコストを下げたBuellとしては唯一の単気筒モデルのBLAST。

ただこれはアメリカ専売モデルで日本には入ってきていません。というのもこのモデルは日本でいうところの教習車的な立ち位置だったから。

ブラスト

アメリカというのは免許を取る際は車両持ち込みが原則、つまり最初に車両を用意しないといけない。だからレンタル業者を利用したりする人が多いんだけど非常に不便な面があった。

そこでHarley-Davidson’s Rider’s Edge New Rider programと称し、最初から使えるように購入と同時にナンバー付きで卸され、ハーレー・ビューエルディーラーがその車両で代わりに教習し合格まで指導するという囲い込みのような販売方法。

ハーレーダビッドソンアカデミー

この取り組みは2009年まで続けられ、結果としてトータルで2万台ほど売りました。ある意味ではビューエルとして最も成功したバイク。

エンジン:空冷4サイクルOHV単気筒
排気量:492cc
最高出力:
34ps/6500rpm
最大トルク:
4.1kg-m/6500rpm
車両重量:163kg(乾)

系譜図
エリックビューエル 創業者
Erik Buell
RR1000/1200 1986年
RR1000/1200
RS1200 1989年
RS1200
S2 1994年
S2 Thunderbolt
S1 1996年
S1 Lightning
S3 1996年
S3/T Thunderbolt
M2 1997年
M2 Cyclone
X1 1999年
X1 Lightning
BLAST 2000年
Blast
XB9シリーズ 2003年
XB9R Firerbolt
XB9S Lightning
XB12シリーズ 2004年
XB12R Firerbolt
XB12S Lightning
XB12X ULYSSES
1125シリーズ 2007年
1125R
1125CR
1125シリーズ 2011年
1190RS
1190シリーズ 2015年
1190SX
1190RX

X1 Lightning -since 1999-

X1ライトニング

S1の後継として大変貌を遂げたX1。パイプフレームビューエル(第一世代)の集大成モデルでもあります。

S1との大きな違いは、ハーレーのエンジンをベースにチューニングしてきた今までと違い、ハーレーに注文を出して作ってもらったビューエル専用エンジンを積んでいること。

X1LIGHTNING

更に電子制御インジェクターのDDFIをハーレーよりも先に採用し、シートフレームもまだ20世紀なのにアルミダイキャストでそのまま外装にするという最先端技術の塊。エアクリーナーも熱対策を考えられた形状へ変更されています。

X1ミレニアムリミテッド

これは2000年に100台限定で発売された全身シルバーのX1Millennium Limited Edition。この他にもカーボンモデルやホワイトライトニングなども発売。

ただ一番大きい変更点はS3で少し話しましたが、エンジンマウントが大幅に改良・補強された事だったりします。

エンジン:空冷4サイクルOHV二気筒
排気量:1203cc
最高出力:
101ps/6000rpm
最大トルク:
12.4kg-m/4550rpm
車両重量:200kg(乾)

系譜図
エリックビューエル 創業者
Erik Buell
RR1000/1200 1986年
RR1000/1200
RS1200 1989年
RS1200
S2 1994年
S2 Thunderbolt
S1 1996年
S1 Lightning
S3 1996年
S3/T Thunderbolt
M2 1997年
M2 Cyclone
X1 1999年
X1 Lightning
BLAST 2000年
Blast
XB9シリーズ 2003年
XB9R Firerbolt
XB9S Lightning
XB12シリーズ 2004年
XB12R Firerbolt
XB12S Lightning
XB12X ULYSSES
1125シリーズ 2007年
1125R
1125CR
1125シリーズ 2011年
1190RS
1190シリーズ 2015年
1190SX
1190RX