XT1200Z/ZE SUPER TÉNÉRÉ(2BS/2KB/BP9)-since 2014-

XT1200Z/2BS

「ステージは、世界。挑むは、未開。」

マイナーチェンジが施された2014年からのスッテネ。

最初に変更点をあげると

・エンジン見直しによる2馬力アップ

・クルコン機能

・可変式スクリーン

・小型LEDウィンカー

・フルデジタルメーター

・アルミサイドスタンド

などの変更が加わり、更にこのモデルからZEモデル『XT1200ZE/2KB』が追加。

XT1200ZE

Zとの違いとしては

・電子制御サスペンション

・グリップウォーマー

・サイドカバー

・リアキャリア兼アシストグリップ

・メインスタンド

などが新たに追加された+10万円の上位グレード版。

XT1200ZとZE

電子制御サスなどの豪華付属品を見たら割安ですけどね。逆に言うとZは装備をOP化して先代比10万円安です。

補足として加えると欧州では更に

・ブロックタイヤ

・LEDフォグ

・スキッドプレート

を装備しオフロード性能を上げた

スーパーテネレ ワールドクロッサー

『XT1200Z/ZE Worldcrosser』

が先代から発売されていました。

更に2018年からは

・専用ハイスクリーン

・ウィンドディフレクター

・スキッドプレート

・37Lアルミサイドケース×2

・カーボンサイドカウル

・専用グラフィック

などフル装備モデルとなる

レイドエディション

『XT1200ZE RAID EDITION』

も発売されています。

さてさて・・・先のページで解説した通りこの新世代スーパーテネレは快適に長距離を走れるような強い車体構成をしているわけですが、一方でパリダカを制した750時代の頃と比べるとフロントが19インチになっていたり、排気量が大きくなっている事から見ても分かる通り

「若干オンロード寄りのアドベンチャー」

となっています。

2015XT1200Zワールドクロッサー

もちろんこういう道なき道を走れるポテンシャルも持ってますけどね。

どうしてスーパーテネレというヤマハが誇るラリーマシンの名を冠しているにも関わらずこうしたのかといえば、系譜を辿るとわかるようにXTZ750SUPER TÉNÉRÉとTDM850/TDM900によって

ZEモデル

「ユーザーが本当に求めているアドベンチャーとは何か」

をヤマハは知ったからではないかと。

ユーザーが求めているビッグアドベンチャーというのはそのままラリーに出場できる様なゴリゴリのラリーレイドではない。

2014年モデル

「ツーリングもスポーツも楽しめる万能ビッグアドベンチャー」

という事をXTZ750とTDM850で学んで知ったからこそオンロード性能を高めてる。

他にもフロント荷重を増してハンドリングを良くしたり、またシート高も845mmというアドベンチャーとしては決して高くない値に収めるなどの配慮もあります。

わざわざ自動でダンパー調整していくれる電制サスを割安価格で用意したのもこの万能性を更に高めるためにあるんじゃないかと。

スッテネ

これは

『ダカールラリーマシンXTZ750』

『ストリートラリーマシンTDM850』

2つのラリーを造った経験を持つヤマハだからこそ出来た経験に裏打ちされたアドベンチャー。

例えるならばXT1200Z/ZE SUPER TÉNÉRÉはダカールとストリートを湧かせた2つのラリーマシンを一つにした

XT1200ZEスーパーテネレ

『デュアルラリーマシン』

と言えるのではないかと。

主要諸元
全長/幅/高 2250/980/1410~1470mm
[2255/980/1410~1470mm]
シート高 845~870mm
車軸距離 1540mm
車体重量 257kg(装)
[265kg(装)]
燃料消費率
燃料容量 23.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 1199cc
最高出力 112ps/7250rpm
最高トルク 11.9kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/80-19(59V)
後150/70-17(69V)
バッテリー YTZ12S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR8EB9
推奨オイル YAMALUBE
SAE 10W-40~20W-50
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.2L
交換時3.1L
フィルター交換時3.4L
スプロケ

チェーン
車体価格 1,530,000円(税別)
[1,630,000円(税別)]
※プレスト価格
※[]内はXT1200ZE
系譜図
XTZ750 1989年
XTZ750SUPER TÉNÉRÉ
(3LD/3TD/3VA)
TDM850前期 1991年
TDM850
(4EP/3VD)
XTZ850R 1995年
XTZ850R/TRX
RDM850後期 1996年
TDM850
(5GG/4XT)
TDM900 2002年
TDM900/A
(5PS/2B0)
XT1200z 2010年
XT1200Z
SUPER TÉNÉRÉ
(23P)
XT1200ze 2014年
XT1200ZE
SUPER TÉNÉRÉ
(2BS/2KB)

【関連車種】
Africa Twinの系譜V-STROM1000の系譜VERSYS1000の系譜R1200GSの系譜

XT1200Z SUPER TÉNÉRÉ(23P)-since 2010-

XT1200Zスーパーテネレ

「Ultimate Gear for Intercontinental Adventure」

おおよそ20年ぶりに復活を果たした二代目と言っていいのか分からないほど何もかもが変わったスーパーテネレ。

何と言ってもまず排気量で1199ccと大スケールアップ。

270度位相クランク

他にも

・新設計バックボーンフレーム

・フルアジャスタブルサス

・YCC-T(電スロ)

・トラクションコントロール

・ハイポイドギアのシャフトドライブ

・高さ調整機能付きシート(845~870mm)

・前後連動機能付きABS

などなどスーパーテネレを名乗るだけあり足りないものは何もないと言っていい全部載せアドベンチャー状態になり税別で1,600,000円に。

割高に感じるかもしれませんが決してそんなことはない。目に見える装備だけでなく細部まで丁寧に作り込まれているからです。

XT1200Zストロボ

例えばまずエンジンはラリーで実証済みの270度クランク。

・穏やかな出力特性で疲労を軽減

・メンテナンス性に優れつつ信頼性のあるエンジン

・長距離を走り切る低燃費

アドベンチャーとしての上限を完璧に満たしたエンジンになっています。

XT1200デザインスケッチ

わざわざこのモデルの為だけに用意した専用エンジンなんだから当たり前といえば当たり前ですけどね。

他にも倒立のフルアジャスタブルサスはもちろんオーソドックスながらダンパー付きの補強&防塵防水仕様メーター。

XT1200Zメーター

ナビを付けろと言わんばかりの位置にあるシガソケ標準搭載もありがたいですね。

車体の方でもスーパーテネレはお金が掛かっています。

その代表例がシャフトドライブ。

XT1200Zシャフトドライブ

『横向きのエンジンに縦向きのシャフトドライブ』

という手間とコストが掛かる事から一部の高額車しか採用していない方法を取っているんですが、何故そうまでしてシャフトドライブにしたのかというと一番はメンテナンス性と耐久性を上げるため。

ただスーパーテネレの場合はシャフトドライブも通常のシャフトドライブではなく非常に高い精度を求められるハイポイド式のもの。

スーパーテネレのシャフトドライブ

中心から少しオフセットされてるのがわかるかと思いますが、これは簡単に説明すると複数枚の歯が常に噛みあう(噛み合い率が上がる)ので振動や騒音が減る上に強度的にも有利になる。

そしてそれが結果としてバネ下重量の軽減という多大なメリットを生んでいる。

もう少し分かりやすい所でいうと各部品のレイアウトでこれも非常に考えられている。

ライトカウル

ライダーから見て右側のサイドカウルを外すと

・バッテリー

・ヒューズボックス

・ECU

などなど電装系が纏められててアクセス性が抜群。

では反対の左側の方には何が入っているのかというとラジエーターが鎮座しています。

ラジエーター

実はサイドラジエーター方式なんですね。

VTR1000の系譜の方でサイドラジエーターについて知った人は

「パラツインなのに何故サイドラジエーターなのか」

と疑問に思われるかもしれませんが、もちろんコレにも理由があります。

普通なら飛び石対策と考える所ですがスーパーテネレがサイドラジエーター式になっているのはリアヘビーになりがちな荷重配分の適正化。簡単にいうと前輪荷重を稼ぐためです。

XT1200Zのフロント

そのためにラジエーターを横にズラしエンジンを更に前輪に近づけることでフロントへの荷重を稼いでいるんです。

それらの工夫によってスーパーテネレはビッグアドベンチャーの中でもワインディングは得意な方。

バンクセンサー

だから結構みんな当たり前のようにバンクセンサーを削るくらい寝かせて走っていたりします。

ちなみにプロジェクトリーダーの森さん曰くバンクセンサーが左側にだけあるのもこの為で、これ以上寝かせるとラジエーターぶつけちゃうぞって警告のために左側だけ付けたそう。

バンクセンサー

まあ元々補強されている上に、壊れたという話も聞かないので神経質になる必要はないかと思いますが。

話を戻すとサイドラジエーターにはもう一つ別の箇所のアクセス性を向上させる狙いがあります・・・それは吸気周り。

スーパーテネレはタンクを外すとそこはもうエアクリーナーボックスがあり、更にその下にはスロットルバルブとエンジンヘッドというスーパースポーツの様なストレートレイアウトになっています。

フレーム

加えてフレームがセンターを避けており、先程話したとおり電装系は右に、冷却系は左に纏められてるからアクセスを妨げるものが無く整備性が非常に良い。

新世代のスッテネにはこういった一見すると見えないカタログスペックにも表れない小さい工夫の数々が詰め込まれているわけです。

狙いはもちろん

2011XT1200スーパーテネレ

「快適かつ軽快に大陸横断すら可能にするため」

これだけの作り込みを見れば1,600,000円(OP別売り)という値段も頷けるのではないかと。

ちなみにTDM900のページでも言いましたが、バイクに乗って何日もキャンプツーリングしたりするのが結構当たり前な欧州で再びアドベンチャーと言いますかビッグオフ需要が沸き起こって来たことでスーパーテネレは復活した背景があります。

XT1200Zカタログ写真

しかし向こうの人はその付き合い方の関係から

「バイクはツール」

という考えが強く、まして何日も共にするアドベンチャーとなると非常に厳しい目を持っている。

じゃあそんな本場でこのXT1200Zはどういう評価だったのだろうかと調べてみたところ

XT1200スッテネ

「かつて地球を支配したスーパーテネレの名を冠するに相応しい。ネックがあるとすれば価格が高い事だ。」

だそうです・・・やっぱり高いですねスイマセン。これだけ作り込んでいるんだから当たり前なんですけどね。

主要諸元
全長/幅/高 2255/980/1410mm
シート高 845~870mm
車軸距離 1540mm
車体重量 261kg(装)
燃料消費率
燃料容量 23.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 1199cc
最高出力 110ps/7250rpm
最高トルク 11.6kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/80-19(59V)
後150/70-17(69V)
バッテリー YTZ12S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR8EB9
推奨オイル YAMALUBE
SAE 10W-40から20W-50
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.2L
交換時3.1L
フィルター交換時3.4L
スプロケ

チェーン
車体価格 1,530,000円(税別)
※プレスト価格
系譜図
XTZ750 1989年
XTZ750SUPER TÉNÉRÉ
(3LD/3TD/3VA)
TDM850前期 1991年
TDM850
(4EP/3VD)
XTZ850R 1995年
XTZ850R/TRX
RDM850後期 1996年
TDM850
(5GG/4XT)
TDM900 2002年
TDM900/A
(5PS/2B0)
XT1200z 2010年
XT1200Z
SUPER TÉNÉRÉ
(23P)
XT1200ze 2014年
XT1200ZE
SUPER TÉNÉRÉ
(2BS/2KB)

TDM900/A(5PS/2B0)-since 2002-

TDM900

「SPORTS ALL ROUNDER」

排気量を更に上げて897ccとなったTDM900/5PSとABS付きのTDM900A/2B0。

・アルミ鍛造ピストンとメッキシリンダー

・フューエルインジェクション化

・アルミダイヤモンドフレーム

などなど人気車種なだけありお金がかかってるモデルチェンジ内容になっています。

変更点から見ても分かる通り更にオンロード性能と使い勝手を向上させており欧州では相変わらず好評で

TDM900サイド

「コミューターからスポーツツアラーまで色んなバイクの要素が詰まってる一台」

という高い評価でした。

2004年には小変更のマイナーチェンジとなり、更に2008年にはABS付きのTDM900Aも発売など非常に息が長いモデルに。

850と900を合わせると累計生産台数は10万台を超えるほどだったそう。

TDM900A

そんなTDM900は一部の国を除き8年間も販売され2010年モデルをもって後継を出すこと無く生産終了となりました。

「人気車種なのになんで」

とも思う話なんですが、実はこの頃になると再びオフロード(アドベンチャー)ブームが巻き起こっていたんです。つまり市場が再びTDMではなくスッテネを求めるようになったというわけ。

TDM900Aカタログ写真

そのため多くの人の下駄として、ツアラーとして、そしてワインディングマシンとして活躍したオンロードテネレ・・・言い換えるなら

「オンロードラリーのTDM」

の役割はここで終える事になりました。

主要諸元
全長/幅/高 2180/800/1290mm
シート高 825mm
車軸距離 1485mm
車体重量 221kg(装)
[224kg(装)]
燃料消費率
燃料容量 20.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 897cc
最高出力 86.2ps/7500rpm
最高トルク 9.1kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR18(59W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー GT12B-4
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR8EA-9
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.7L
交換時3.8L
フィルター交換時3.9L
スプロケ 前16|リア42
チェーン サイズ525|リンク118
車体価格 950,000円(税別)
※プレスト価格
※[]内はABSモデル(2B0)
系譜図
XTZ750 1989年
XTZ750SUPER TÉNÉRÉ
(3LD/3TD/3VA)
TDM850前期 1991年
TDM850
(4EP/3VD)
XTZ850R 1995年
XTZ850R/TRX
RDM850後期 1996年
TDM850
(5GG/4XT)
TDM900 2002年
TDM900/A
(5PS/2B0)
XT1200z 2010年
XT1200Z
SUPER TÉNÉRÉ
(23P)
XT1200ze 2014年
XT1200ZE
SUPER TÉNÉRÉ
(2BS/2KB)

TDM850(4EP/3VD)-since 1991-

TDM850

「RUGGED(インテリジェンス力)」

一度見たら忘れないであろう非常にユニークな姿をしているTDM850。

先に紹介した初代スッテネで併売という形が取られましたんですが、このバイクが開発されるキッカケとなったものまたスッテネ。

TDM850国内仕様

どうキッカケになったのかというと、スッテネはラリーレプリカなだけありシチュエーションを選ばず走れる事からで欧州で好評を得ていたのですが一般ユーザーの用途を調査してみてるとオンロード寄りな用途の人が多い事が分かった。

そこで

「もっとオンロード重視のスッテネを」

となって造られたのがこのTDM850なんです。

TDM850デザインコンセプト

デザインは日本のGKとGD(欧州GKの子会社)で行われたものの

・オンロード感を推したい日本側

・デュアルパーパス感を推したい欧州側

でモメにモメた末に欧州がメインマーケットという事から日本側が折れた経緯があります。

もしかしたらそれがTRX850に繋がったのかもしれないですね。

TDM850線画

そんなTDM850なんですがスッテネをベースにしつつも849ccまで排気量を拡大する事で力強いトルクを獲得しミッションもワイドレシオ化。

またフレームも剛性の高いスチール製デルタボックスフレームが奢られました。

TDM850black

これにより軽やかな吹け上がりかつ低速からモリモリ来るトルクでオンロードなら向かうところ敵なしのストリートラリー

『キング・オブ・ザ・ワインディングロード』

として欧州にて爆発的なヒットに。

しかし・・・日本でTDM850というと見たこと無い人はおろか知らない人も結構いるかと。

それも無理もない話でTDM850は文化圏の違いが招く

TDM850カタログ写真

「欧州では人気だったけど日本では不人気だった」

というバイクあるあるの典型的な車種。

原因としてはデザインやコンセントもあるんですがもう一つはエンジン。

TDM850は日本国内におけるツインの課題を浮き彫りにし、ヤマハの二気筒に対する姿勢に多大な影響を与えたバイクでもあるんです。

後期モデルと関係する話なので詳しくはそちらで。

ちなみに併売されていたXTZ750SUPER TÉNÉRÉはTDM850の登場からしばらくして後継もなく生産終了となりました。

ヤマハTDM850

その理由は

「みんなTDM850の方を買うようになったから」

だったりします。狙いはドンピシャだったわけですね。

主要諸元
全長/幅/高 2175/780/1260mm
シート高 795mm
車軸距離 1475mm
車体重量 199kg(乾)
燃料消費率 30.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 849cc
最高出力 72ps/7500rpm
[77ps/7500rpm]
最高トルク 7.8kg-m/6000rpm
[7.6kg-m/6000rpm]
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前110/80-18(58H)
後150/70-17(69H)
バッテリー GT12B-4
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR8EA-9
または
X24EPR-U9
推奨オイル SAE20W-40
SAE10W-30
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.2L
交換時3.8L
フィルター交換時3.9L
スプロケ 前16|リア44
チェーン サイズ525|リンク114
車体価格 750,000円(税込)
※スペックは国内仕様(4EP)
※[]内はEU仕様(3VD)
系譜図
XTZ750 1989年
XTZ750SUPER TÉNÉRÉ
(3LD/3TD/3VA)
TDM850前期 1991年
TDM850
(4EP/3VD)
XTZ850R 1995年
XTZ850R/TRX
RDM850後期 1996年
TDM850
(5GG/4XT)
TDM900 2002年
TDM900/A
(5PS/2B0)
XT1200z 2010年
XT1200Z
SUPER TÉNÉRÉ
(23P)
XT1200ze 2014年
XT1200ZE
SUPER TÉNÉRÉ
(2BS/2KB)

TDM850(5GG/4TX)-since 1996-

TDM850後期

「オーガニックバランス」

欧州における年間販売台数8000台超というはや欧州ヤマハの顔にまでなったTDM850の後期モデルとなる欧州仕様4TXと国内仕様5GG。

最初に変更点を上げると

・ライトを始め外見が一新

・ラジアルタイヤの採用

・フロントディメンションの変更

・80馬力にアップ

・タンク20Lアップ

などなど中身も外見も更にキリッとパワーアップしました。

4xtカタログ写真

ただ特筆すべき変更点はエンジンで、一年前に登場したTRX850譲りの270度位相クランクに変更。

これによって『キング・オブ・ザ・ワインディングロード』と言われていた評価に加え不等間隔燃焼によるパルス感がプラス。

オールラウンドスポーツとしてもう非の打ち所がないバイクになったんですが・・・少し野暮な話をします。

実はこのエンジンの変更にTDM850のエンジンを造ったチームはエンジン開発リーダーの小栗さんを筆頭に難色を示していました。

TDM850はもともと360度クランク(単気筒を2つ並べた形)で安定したトルクを出すうえに吹け上がりも軽くしておりビュンビュン回せる元気の良さを持ったパラツインだった。

TDM850黒

360度クランクの二気筒は最初に誕生した二気筒という事もありWやボンネビルなどレトロ系のエンジンというのが当たり前だった中でビュンビュン回るタイプ。

「ありそうで無い面白い自信作のエンジン」

という背景があったので難色を示したんです・・・では何故変わったのとかというと残念な事に欧州と同じくらい大型バイクが売れる日本での評価が良くなかったんです。

TDM850後期サイド

欧州で高い評価を獲得した一方で日本でTDM850の発売前評価試験を行ったところ

「なんでこんなビュンビュン回るエンジンなの」

と疑問視する声が社内から多く聞かれた、というかそういう声しか上がってこなかった。

この大きな原因は先に話した通り豊かなトルクを生む360度クランクつまり等間隔燃焼が原因。

TDM850クランクアングル

安定したトルクを生む360度クランクというのは等間隔で燃焼する。

等間隔で軽やかに吹け上がる・・・・そう、フィーリングが直四に近いんです。

この結果TDM850は社内評価で

「直四みたい」

という”酷評”をされた。

「直四みたいなんて良いじゃん」

と思う方もいるかも知れない。

でもそう思うのは”直四好き”だから。メインターゲットである二気筒が好きな層の多くは違う。

「今までに無い面白いツインだね」

とは捉えてくれない。ドコドコと言わせて走る

「スポーツツインらしさ(味)が無い」

と捉えられてしまうです。実際ヤマハの社内評価でもそうだった。

この事に自信作だったエンジン設計の小栗さんは衝撃を受けたそう。※別モNo.319より

TDM850リア

360度からパルス感が分かりやすい270度へ変更という本来ならばフルモデルチェンジ級の変更をマイナーチェンジで行ったのはこの

「スポーツツインらしいツインしか認めてもらえない」

という市場背景が少なからずあったから。

この一件でヤマハは

『ツインに対する市場の固定観念』

を思い知る事となり、その後のツインスポーツの方向性に多大な影響を残す事になりました。

もちろん決してTRX850(270度クランク)のエンジンになった事が悪いと言いたいのではありません。

TRX850のエンジンが好評で一本化する意味合いもあったとは思います。実際このエンジンも同じ小栗さんが納得して開発したモノです。

ただ、直列のクランク角やV型のシリンダー角など一見すると多様な形があり認められている二気筒も、スポーツやクルーザーなど乗せるエンジンの形がセオリー化しているカテゴリという枠に収めた時に

TDM850後期カタログ写真

「枠を越える多様性を認めてもらえるか」

というと話が変わってくるという話。

そしてこの問題にヤマハが直面し葛藤したがTDM850・・・という話でした。

主要諸元
全長/幅/高 2165/790/1285mm
シート高 805mm
車軸距離 1475mm
車体重量 232kg(装)
燃料消費率 30.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 20.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 849cc
最高出力 80ps/7500rpm
最高トルク 8.2kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前110/80-ZR18
後150/70-ZR17
バッテリー GT12B-4
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR8EA-9
または
X24EPR-U9
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.2L
交換時3.8L
フィルター交換時3.9L
スプロケ

前17|リア42
[前16|リア43※99年以降の4TX]

チェーン サイズ525|リンク114
車体価格 798,000円(税別)
※スペックは国内仕様(5GG)
系譜図
XTZ750 1989年
XTZ750SUPER TÉNÉRÉ
(3LD/3TD/3VA)
TDM850前期 1991年
TDM850
(4EP/3VD)
XTZ850R 1995年
XTZ850R/TRX
RDM850後期 1996年
TDM850
(5GG/4XT)
TDM900 2002年
TDM900/A
(5PS/2B0)
XT1200z 2010年
XT1200Z
SUPER TÉNÉRÉ
(23P)
XT1200ze 2014年
XT1200ZE
SUPER TÉNÉRÉ
(2BS/2KB)

XTZ850R/TRX-since 1995-

XTZ850R

ここでちょっとご紹介しておきたいのがこのXTZ850RとXTZ850TRXというラリー専用のファクトリーマシン・・・と見せかけて実は市販車なマシン。

ヤマハはXTZ750SUPER TÉNÉRÉをベースにしたファクトリーマシンで戦っていたんですが、あまりの強さからレース運営側が

「もうファクトリーマシンは出場禁止。15台以上売った市販車だけにします。」

となった。

そこでヤマハが造ったのがほぼワークスマシン仕様のまま市販化したスーパーを通り越してウルトラテネレと言える様な300万円のスペサルマシン。

300万円というと高く思えるけどパリダカを第一線で戦えるワークスマシンと考えれば破格。

ヤマハがどれだけラリーを重要視してたかが分かりますね。まあ運営もそうやって第三の参加者(プライベーター)を募るが狙いだったわけですが。

ヤマハXTZ850R

更に1996年モデルからはXTZ850TRXというモデルに。

これは270度相違クランクのエンジンを積んだモデルで、ヤマハはパリダカ四連覇という偉業を成し撤退することになりました。

XTZ850Rパリダカ

ちなみにパリダカに出場しようと思ったら1000万円以上必要だと言われています。

エントリーフィー(入場料)だけで200万円ほど取られます。これは保険料みたいなもので、そのかわりどんな怪我をしても治療を現地で受け続ける限り無料。※治るまで帰れないという意味でもある

ただし優勝しても賞金はありません。貰えるのはトロフィーと名誉ある肩書だけですが、それでも大人気。

オンのマン島、オフのダカールといった所ですかね。

ダカールコース

あとダカールラリーをパリダカと言ってますが、今は治安などの問題からアルゼンチン~ボリビアという南米コースになっており全然パリからダカールではなかったりします。

主要諸元

※ファクトリーマシンのため不明

系譜図
XTZ750 1989年
XTZ750SUPER TÉNÉRÉ
(3LD/3TD/3VA)
TDM850前期 1991年
TDM850
(4EP/3VD)
XTZ850R 1995年
XTZ850R/TRX
RDM850後期 1996年
TDM850
(5GG/4XT)
TDM900 2002年
TDM900/A
(5PS/2B0)
XT1200z 2010年
XT1200Z
SUPER TÉNÉRÉ
(23P)
XT1200ze 2014年
XT1200ZE
SUPER TÉNÉRÉ
(2BS/2KB)

XTZ750 SUPER TÉNÉRÉ(3LD/3TD/3VA)-since 1989-

1989スーパーテネレ

「THE SPIRIT OF ADVENTURE」

ヤマハのアドベンチャーとして有名なスッテネことスーパーテネレ。その始祖となるのが1989年に登場したこのXTZ750 SUPER TÉNÉRÉです。

「そもそもTénéréって何」

という話ですが、これはサハラ砂漠の南西にあるテネレ砂漠のこと。

テネレ砂漠

トゥアレグ語で

「何もない」

という意味を指す言葉。

何でそんな地名を付けたのかというと文字通りこのテネレ砂漠というのは有名なパリダカ(ダカールラリー)の中で障害物が何もない事による高速走行ステージだから。

つまりSUPER TÉNÉRÉという名前には

「カッ飛んで行けるアドベンチャー」

という意味が込められているわけです。

ところで少し話が反れますがヤマハは第一回パリダカの王者だったりします。

XT500改

XT500をベースとしたこのXT500改で二輪四輪の区分すら無かった第一回パリダカにおいてワンツーフィニッシュ。

更に第二回では表彰台独占という快挙を成し遂げました。ただし、この頃はまだテネレという名前は付いていません。

じゃあtenereという名前が最初につけられたのはいつかといえばそれから約4年後となる1983年の事。

XT600テネレ

XT500(XT550)の後継として発売されたXT600Ténéréが始まりです。

しかし・・・実はこの頃になるとヤマハはパリダカで苦戦を強いられていました。

というのもパリダカで二気筒の優位性が高まりシングルしか持っていなかったヤマハは打つ手が無かったから。

そんな現状を打開したのが第一回優勝からちょうど10年後となる1989年に登場したこのバイク。

XTZ750スーパーテネレカタログ

「テネレには夢とロマンの歴史がある。アドベンチャーは常にヤマハがリードすべき」

ということでそれまでのテネレとは別に二気筒化したのがスーパーテネレ。

XTZ750FEATURES

「悪路も長時間走行もハイスピード巡航も街中も出来る性能」

という欲張りすぎるコンセプトを実現するため

・360度クランク水冷5バルブ2気筒

・ダブルクレードルフレーム

というワンクラス上の車格を持ったマシンに。

更に翌年にこれをベースに800ccまで排気量を上げたYZE750T Super Ténéréで出場。

YZE750

当初の目標通り二年目となる1991年に10年ぶりとなる優勝を勝ち取りました。

しかもただ優勝しただけではなく

『市販車ベースにも関わらず圧倒的な速さで1~3位を独占』

という快挙を成し遂げる形での大復活で、更にそこから前人未到の三連覇という文句のつけようが無い戦績。

このわずか数年で圧倒的な速さを持つスーパーテネレを造れたのにはワケがあります。実はこのスーパーテネレのエンジンの発端はバギーにあるんです。

スーパーテネレエンジン

このエンジンを造った山中さんは初代5バルブであるFZ750のエンジンも造った方なんですが、その後バギー部門に移動となりバギー用エンジンを造っていた。

しかしそのプロジェクトがお蔵入りとなり

「せっかく開発したエンジンが勿体ない」

という事で半分に割って流用する形から発展させ出来たのがスーパーテネレの5バルブ二気筒エンジンなんです。

ちなみにスーパースポーツでお馴染みの主要シャフトの三角形配置によるエンジンのコンパクト化という手法を初めて取り入れたも実はスッテネだったりします。

XT750スーパーテネレ

ある意味ではバギーがお蔵入りしたからこそ出せた名車であり、だからこそパリダカ三連覇を成し遂げるほどのポテンシャルを備えることが出来たというわけですね。

主要諸元
全長/幅/高 2285/815/1355mm
シート高 865mm
車軸距離 1505mm
車体重量 195kg(乾)
燃料消費率 38.7km/L
※WMTCモード値
燃料容量 26.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 749cc
最高出力 70ps/7500rpm
最高トルク 6.8kg-m/6750rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前90/90-21(54H)
後140/80-17(69H)
バッテリー YB14L-A2
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR8EA-9
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.2L
スプロケ 前16|リア46
チェーン サイズ520|リンク112
車体価格
※国内正規販売なしのため
系譜図
XTZ750 1989年
XTZ750SUPER TÉNÉRÉ
(3LD/3TD/3VA)
TDM850前期 1991年
TDM850
(4EP/3VD)
XTZ850R 1995年
XTZ850R/TRX
RDM850後期 1996年
TDM850
(5GG/4XT)
TDM900 2002年
TDM900/A
(5PS/2B0)
XT1200z 2010年
XT1200Z
SUPER TÉNÉRÉ
(23P)
XT1200ze 2014年
XT1200ZE
SUPER TÉNÉRÉ
(2BS/2KB)

TRACER9GT(BAP)-since 2021-

TRACER9GT/BAP

「Multirole fighter of the Motorcycle」

MT-09のフルモデルチェンジから半年ほどとなる2021年6月に発表されたTRACER900改めTRACER9GT/BAP型。

最初に変更点をあげるとMT-09の紹介とかぶる部分もありますが

・ストロークを上げて888ccとなった新設計エンジン
・スピンフォージドホイール
・MT-09と同じく新設計アルミダイキャストフレーム
・積載およびタンデムを考え新設計された専用リアフレーム
・MT-09と同様の6軸IMUによる電子制御
(車体姿勢計測型のABS/トラコン/ウィリー制御/スライドコントロール/ブレーキコントロール)
・フルLED&コーナリングランプ
・2モードKADS(KYB製電子制御サスペンション)
・アップ/ダウン対応クイックシフター
・ラジアルマスターシリンダー
・コーナリングランプ搭載の新スタイリング(アローシルエット)
・ダンパー内蔵のサイドケースステー
・3.5インチフルカラーデュアルTFTメーター
・10段階のハンドルウォーマー
・10段階(5mm間隔)可変のウィンドスクリーン
・シート高を先代比-40mmし足つき性を向上
・先代GTと同じくMT-09より60mm長いスイングアーム
・ハンドルガードの小型化

などとなっています。

カタログ写真

特筆すべき変更点としては、アップ/ダウン対応クイックシフターや電子制御6軸IMUによるフル電子制御もですが、目玉はやっぱりKYBが開発した二輪初となる

『KADS(KYB Actimatic Damper System)』

という電子制御サスペンション。

KYB KADS

遂にKYBも電サスの投入となったわけですが、後発なだけあり最初から即応性に優れるソレノイドバルブ駆動による1/1000秒単位で制御可能なレーシングスペックモノ。

加えて面白いのがプリロードアジャスターへのアクセス。

TRACER9GT KADS

なんと電子制御サスペンションなのにそのまま弄れるようになっている。

ブーツを外してカプラー外してやっとアクセスという電子制御ゆえの煩わしさが無いレイアウトになっているんですね。色んなシチュエーションが想定されるTRACER9GTにとっては尚のこと嬉しい配慮。

そしてもう一つ特筆すべきなのが大きく変わった見た目からも分かる通り、コーナリング中にイン側を照らしてくれるコーナリングランプが付いたこと。

顔に見えるシグネチャーランプ部分がその部分で、前照灯のロービームはその下の小さいライト。ちなみにその反対側がハイビームになっています。

ライトの構造

MT-09とYZF-R1のハイブリッドみたいな感じですね。

補足しておくと、近年ツアラーやマルチパーパスに採用が進んでいる有ると無いでは大違いのコーナリングライトですが、これが出始めたのは自動車基準調和世界フォーラム通称WP29、要するに国連が2013年にバイクに装備する事を許可したから。

そしてドンドン採用されて、トレーサーにも八年越しで採用となったわけですが、ちょっと遅かったですね。ここまで遅れてしまったのはコーナリングライトの許可条件が関係しています。

サイドビュー

コーナリングライトを装備するにあってクルマがハンドルの切れ角に応じて照射する用になっているのに対し、バイクはそうではなく

『バンク角に応じて照射する方式のみ許可』

という条件が設けられた。つまりIMU(慣性計測装置)を付けないとコーナリングライトを付けられないわけで、そのせいで採用がなかなか簡単にはいかなかったという話。

コーナリングライト

逆に言うとTRACER9GTを始めとしたマルチパーパスがIMUを率先して搭載している狙いは電子制御による車体コントロールだけでなく、このコーナリングライトを付けるためでもあるんですね。

話を戻すと、トレーサーはもともとMT-09TRACERとして登場し、TRACER900/GTになり、そして今回TRACER9GTとなったわけですが

「何故こうまで名前を何度も変えるのか」

という疑問をお持ちの人も多いかと。調べたところ、ちゃんと狙いというか開発された方々の思いがありました。

失礼ながら要約すると

「MT-09の派生モデルとして見てほしくない」

という話。

実際TRACERは二代目でベースのMT-09とは少し距離を置くような立ち位置になって、違う層へ人気が出ました。その事を名前でも明確にする狙い。

サイドビュー

しかし個人的にはトレーサーでもう一度名前を変えるというのは、かなりの勇気というか攻めの姿勢だなと思います。

というのも、このモデルを優先して書いている理由でもあるんですが、どうもバイク屋で聞いているとトレーサーからの買い替え・・・要するに先代から新型に乗り換える人が他のモデルより多いんだそうです。

傑作と名高いCP3エンジンで元気なパワーを持ちつつも、マルチパーパスとしては車体も絞られていて乗りやすいモタードツアラーという唯一無二の存在というの大きいとは思うんですが、もっとシンプルなところでいうと、リピーターを生む最も大事な要素は言うまでもなく

「高い満足度を与える」

という事に尽きる。つまりトレーサー買ってよかったと思ってる人が多いわけですね。なんかもうこれだけで疑いようのない名車と言えるのでないかと。

フェイスデザイン

でもだからこそ攻めの姿勢だなと思うわけです。既に高い評価を得ているということは逆に言うと、モデルチェンジでは既にかなり高いハードルがあるとも言える。

にも関わらずいくらフルモデルチェンジとはいえ名前を改めるという自ら更にハードルを上げるような事をしたのは、そんなリピーターすら満足させるほどの進化をさせたという自信の現われとしか。

車体価格を上げてでもトップエンドに近い最新装備を積んでいる事からもその意気込みが分かる・・・と言いたい所ですが、テクニカルレビューでプロジェクトリーダーの北村さんが実にカッコよく、実にヤマハらしい事を仰っていました。

壁紙

「電子制御や新技術などが注目されやすいが、開発で大切にした事は乗るたび使うたびに悦びを感じてもらえる官能評価。」

装備や技術はすべて官能のため。人機官能マルチロールファイターここにありですね。

主要諸元
全長/幅/高 2175/885/1430mm
シート高 810~825mm
車軸距離 1500mm
車体重量 220kg(装)
燃料消費率 20.4m/L
※WMTCモード値
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC三気筒
総排気量 888cc
最高出力 120ps/10,000rpm
最高トルク 9.5kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR9EA-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.5L
交換時2.8L
フィルター交換時3.2L
スプロケ 前16|リア45
チェーン サイズ525|リンク118
車体価格 1,320,000円(税別)
系譜図
MT-09 2014年
MT-09/A
(1RC/2DR)
mt-09トレーサー 2015年
MT-09TRACER
(2SC)
XSR900 2016年
XSR900
(B09)
2017MT-09 2017年
MT-09/SP
(BS2/B6C)
TRACER900 2018年
TRACER/GT
(B5C/B1J)
2021mt-09 2021年
MT-09/SP
(B7N/BAM)
TRACER9GT 2021年
TRACER9GT
(BAP)

TRACER900/GT(B5C/B1J) -since 2018-

TRACER900/B5C

「Two Sides of the Same Coin: Sports and Travel」

2018年からのMT-09TRACER改めTRACER900となったB5C型。

最初に変更をあげると

・大型フロントスクリーン

・新設計ハンドル&シート

・6馬力アップ

・60mm延長されたスイングアーム

・新デザインのフロントカウル/マウントステー/フットレスト

などなどとなっており、このモデルからは新たにTRACER900GT/B1J型というグレードも登場。

TRACER900GT/B1J

・フルアジャスタブルフロントフォーク

・リモートアジャスター付きリアサス

・多機能フルカラー液晶メーター

・クイックシフター(アップのみ)

・クルーズコントロール

・グリップヒーター

などを装備しています。

TRACER900の変更点

ホイールベースの60mm延長などからもわかるよう従来のMT-09路線から更に少し離れて快適性と巡航性能を向上させたツーリング寄りなモデルになりました。

基本的にデザインは先代を継承している形なんですが

・ハイスクリーンとアッパーカウル

・ウィンカーの位置

・ブッシュガード形状

・パニアマウントステー形状

などの見た目が変わっています。

MT-09TRACERとTRACER900

こうやって見るとTRACERはデザインが纏まっててキメラバイクがベースには見えないですね。

ちなみにTRACERは安くない派生モデルながら人気があって本家のMT-09と変わらないほど売れていたりするんですが、人気といえばコンフォートシートと同時に

『パフォーマンスダンパー(旧名パワービーム)』

を付けるのが流行っているみたいですね。

パフォーマンスダンパーのメカニズム

これはヤマハが開発したフレーム用の制振ダンパーで

『世界初の粘性技術』

として注目されTOYOTAのクラウンアスリートVXを皮切りにクルマの方ではスポーツモデルでの採用が進んでいます。

パフォーマンスダンパーのメカニズム

一体このダンパーが何なのかという話ですが、フレームというのは路面から伝わる力を吸収変形し減衰するという事を繰り返しながら走行している。

この変形には剛性という聞いた事があるであろう要素が関係しており剛性を高くするほど変形に強くなるんですが、高くしすぎると吸収しないのでゴツゴツした乗り心地になる。スポーツ性が高いモデルなんかが正にそれですよね。

しかし吸収できるよう剛性を低くしすぎるとフレームの変形が収まらず(減衰しきれず)真っ直ぐ走るのも大変になるという二律背反のような問題がある。

だからこそ画期的だと言われたのがこのパフォーマンスダンパーで。

TRACERのパフォーマンスダンパー

「直進安定性が増した」

「振動が減った」

という肯定的な意見が多いですが、分かりやすい例がハンドルが振られてまっすぐ走れなくなってしまうウォブルという現象。

これが起こる1番の原因はフレームの剛性不足により減衰しきれず共振を起こしてしまうから。ヤマハのパフォーマンスダンパーを付けると安定するのは、こういったフレームの減衰を補助してくれる(和らげてくれる)から安定する。

「フレーム剛性ではなくフレームの減衰力を上げるのがパフォーマンスダンパー」

という話で、フレームに粘着性を持たせたという意味も何となく分かるかと。

TRACERのカタログ写真

ただし直進安定性が増すという事はそれを崩す事がキッカケであるコーナリングが若干硬くなる面もある。

それでもTRACERで人気なのはパッタンパッタンと右へ左へ寝かし込んで駆け抜ける走りよりも、色々と積載しつつ程よいスポーツ巡航というフレームに少し辛い用途をする人が多いからじゃないかと。

TRACER900GT壁紙

ちなみにこのパフォーマンスダンパーは簡単に脱着出来る上に作用ストローク量が1mm以下なので、サスペンションのように熱やダストによるシール劣化からのオイル漏れやガス抜けという心配がほとんど無い。

もう一つの敵である紫外線もカバーが付いてるので圧倒的にメンテナンスフリーという要素も持っていたりします。だから車の方でも純正採用されたりしているんでしょうね。

値段は約3万円と安くは無いけど高くもなく長寿命なので試してみるのもあり・・・というTRACERというよりもパフォーマンスダンパーのセールページでした。

主要諸元
全長/幅/高 2160/850/1375mm
シート高 850~865mm
車軸距離 1440mm
車体重量 214kg(装)
[215kg(装)]
燃料消費率 19.7m/L
※WMTCモード値
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC三気筒
総排気量 846cc
最高出力 116ps/10,000rpm
最高トルク 8.9kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR9EA-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.4L
フィルター交換時2.7L
スプロケ 前16|リア45
チェーン サイズ525|リンク118
車体価格 1,030,000円(税別)
[1,110,000円(税別)]
系譜図
MT-09 2014年
MT-09/A
(1RC/2DR)
mt-09トレーサー 2015年
MT-09TRACER
(2SC)
XSR900 2016年
XSR900
(B09)
2017MT-09 2017年
MT-09/SP
(BS2/B6C)
TRACER900 2018年
TRACER/GT
(B5C/B1J)
2021mt-09 2021年
MT-09/SP
(B7N/BAM)
TRACER9GT 2021年
TRACER9GT
(BAP)

MT-09TRACER(2SC) -since 2015-

MT-09TRACER

「Sport Multi Tool Bike」

一年遅れで登場した派生モデルのMT-09TRACER/2SC型。

MT-09と比較して

・燃料タンクの容量アップ(14L→18L)

・アドベンチャー向けに調整された出力特性

・専用セッティングされた前後サスペンション

・調節機能付きワイドハンドル

・レイヤードカウル

・LEDヘッドライト

・高さ調整機能付きのスクリーン&シート

・シガーソケット電源

・専用デジタルメーター

・ABS標準装備

・二段階トラクションコントロール(ON/OFF)

などなど装備から見て分かるよう利便性を上げアドベンチャーにしたモデル。

MT-09トレーサーの変更点

実はこのTRACERはMT-09の後ではなく同時開発されていたモデルだったりします。

そうやって共有することでコストを抑える自動車ではお馴染みのオートモーティブプラットフォームというやつで、MT-09が80万円を切る破格の値段で販売できたのはこのおかげ・・・なんですが、同時にTRACERが出るまでは

「MT-09に付いてる謎のステーやボルト穴は何だ」

という鋭い質問が多く寄せられて誤魔化すのが大変だったとか何とか。

トレーサーコンセプト

そんなTRACERは当初の予定ではFJR1300の様に電子制御サスやスクリーンそして防風性の高いカウルを付けてハイクラスなアドベンチャーモデルにするという計画でした。

しかしどうやってもMT-09の色が消えないことから

「ならばMT-09のパンチ力を活かそう」

となりカウルもスクリーンも最小限、パニアケースのステーも剥き出しで軽快さを優先したライトウェイトスポーツアドベンチャーになった。

ハンドルガード

もちろん最初にあげた変更点をハンドルやサスペンションや出力特性といった変更、それにパッと見では変わっているように見えないホイールなどもわざわざ再設計することで落ち着きを持たせるなどアドベンチャーらしくする変更も加えられている。

少し面白いのがハンドルカバーでアッパーカウルからの繋がりを利用することで整流効果を大きくしているものなんだとか。

フェイス

顔に至ってはLEDヘッドライトでさらにパンチが効いたものに強烈になりました。

こっちも別の意味でパンチが効いてる。

MT-09TRACER白バイ仕様

MT-09TRPというモデルで欧州向け白バイ仕様。残念ながら日本には入れていないみたいですが、日本の白バイ隊員たちも日本の道路事情を考えたらFJRよりコッチが嬉しいんじゃないかと思ったり。

話が逸れたので戻します・・・。

MT-09TRACER

要するにMT-09TRACERはMT-09のアドベンチャー版というよりも

『MT-09のフルオプションモデル』

と言った方がしっくり来るようなモデルじゃないかと。オンロードメインなアドベンチャーなのに装備重量210kgしかないですしね。

トレーサー

ただMT-09と決定的に違うのはCモードが活きる事。

本来Cはビギナーのために用意されたモードなんですがMT-09TRACERの場合、トコトコと景色を楽しみながらのんびり巡航モードになる。これはクルージングが出来るTRACERの特権かと。

主要諸元
全長/幅/高 2160/950/1345mm
シート高 845mm
車軸距離 1440mm
車体重量 210kg(装)
燃料消費率 19.3m/L
※WMTCモード値
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC三気筒
総排気量 846cc
最高出力 110ps/9000rpm
最高トルク 9.0kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR9EA-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.4L
フィルター交換時2.7L
スプロケ 前16|リア45
チェーン サイズ525|リンク110
車体価格 970,000円(税別)

年次改良

2017年
アシスト&スリッパークラッチ
トラコンに強弱機能が追加(切/弱/強)

系譜図
MT-09 2014年
MT-09/A
(1RC/2DR)
mt-09トレーサー 2015年
MT-09TRACER
(2SC)
XSR900 2016年
XSR900
(B09)
2017MT-09 2017年
MT-09/SP
(BS2/B6C)
TRACER900 2018年
TRACER/GT
(B5C/B1J)
2021mt-09 2021年
MT-09/SP
(B7N/BAM)
TRACER9GT 2021年
TRACER9GT
(BAP)