「プロジェクトM1」
CB750FOURでイケイケだったホンダがグランドツアラーの限界を探るために極秘裏に進めていたプロジェクトの車両。
初代ゴールドウィングであるGL1000が登場する3年前に製作されたモデルで水冷式水平対向六気筒で1470ccです。
実はこのエンジンは元々はこのバイクのために造られた物ではなく、有名な車であるシビックの為に開発された物です。
1973年に厳しい排ガス規制を初めてクリアしたCVCCシビックのエンジンになる予定(案の一つ)だった水平対向四気筒が元ネタ。
ただ最終的にシビックは直四でいくことに決まり、既に開発していた水平対向四気筒が宙ぶらりん状態に。
当時エンジン設計をしていた加藤さん曰くそれを見て
「せっかく造ったのに勿体無い(※別モ415)」
という話になりシリンダーを二つ足して六気筒化しバイクに積んでみたのがこのM1というわけ。
ちなみにこの頃のホンダはまだシャフトドライブを持っていなかったのでドライブトレインはBMWの物をそのまま流用。
だからこれはゴールドウィングのプロトタイプというよりスタディモデルに近いんですが、六気筒案は直六として有名なCBXより前のこの段階から既に検証されていたという事ですね。
シビックとゴールドウィングの意外な繋がりでした。
主要諸元
CRF1100L | CRF1100L Adventure Sports |
|
全長/幅/高 | 2310/960/1350 S:2330/960/1395 |
2310/960/1520~1580 S:2330/960/1560~1620 |
シート高 | 810~830mm S:850~870mm |
|
車軸距離 | 1505mm S:1575mm |
|
車体重量 | 226kg(装) S:226kg(装) DCT+10kg ES+2kg |
238kg(装) S:240kg(装) DCT+10kg ES+2kg |
燃料消費率※WMTCモード値 | 21.3km/L | |
燃料容量 | 18.0L | 24.0L |
エンジン | 水冷4サイクルOHC二気筒 | |
総排気量 | 1082cc | |
最高出力 | 102ps/7500rpm | |
最高トルク | 10.7kg-m/6250rpm | |
変速機 | 常時噛合式6速リターン | |
タイヤサイズ | 前90/90R21(54H) 後150/70R18(70H) |
前90/90R21-54H 後150/70R18-70H (チューブ) |
バッテリー | HY110 | |
プラグ | SILMAR8A9S | |
推奨オイル | Honda純正ウルトラG1(10W-30) | |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量4.8L 交換時3.9L フィルター交換時4.0L DCT:全容量5.2L 交換時4.2L(フィルター交換時) 交換時4.2L(クラッチ交換時)] |
|
スプロケ | 前16|後42 | |
チェーン | サイズ525|リンク124 | |
車体価格 | 1,470,000円(税別) DCT+100,000円(税別) |
1,640,000円(税別) DCT+100,000円(税別) ES+300,000円(税別) |
系譜図
【関連車種】
SUPER TÉNÉRÉの系譜|V-STROM1000の系譜|VERSYS1000の系譜|R1200GSの系譜
CRF1000L Africa Twin(SD04) -since 2016-
「True Adventure」
実に15年ぶりの復活となったアフリカツインのCRF1000L/SD04型。
最大の特徴は52°Vツイン742ccから270°クランク並列二気筒998ccのエンジンになっていること。
これは車体のコンパクト化とマスの集中化を図る狙いがあり、これのおかげでリッターとは思えないほどコンパクトになっています。
もちろん最低地上高を考慮したドライサンプな上に、二軸一次バランサーが付いているので疲労に直結する振動はほぼありません。
そんなCRF1000Lで面白い試みなのがDCTを採用したグレードがあること。
「アドベンチャーでDCTって・・・」
と思った方も多いかと思います。
悪路になるとどうやっても滑るから意図的に引っ張って地面を掻いたり、半クラやギアチェンを使うシーンも多々あるわけですからね。
これについてはホンダも最初はお試し程度の半信半疑でテストしたんですが、やってみると意外と良い事がわかったから採用する事になりました。
クラッチレスは良く捉えるとエンジンストールの恐れが無いわけです。
つまりどんなに神経を使う道でもアクセルワークに集中出来る。このメリットが想像よりも大きかった。
ベースとなっているのはVFR-Xの物ですが、もちろんそのままではなくオン/オフどちらも熟せるアフリカツインに合わせてチューニングされた物です。
それに加えアフリカツインは”G(グラベル)モード”というシステムがあります。
DCTは実質ATなので、ギアチェンやアクセルのON/OFF時にはギクシャクしないように半クラ制御が入ります。
この半クラ制御がアクセルで物言わせて走る場合が多い未舗装路では違和感として現れる場合がある。
といってもコンマ何秒の世界なんですが、このGモードはそのコンマ何秒の半クラ状態を更に縮める為の制御。よりアクセルワークをダイレクトに地面に伝える為のモードというわけ。
もちろんギアチェンを自動にしないMTモード、引っ張るSモードLv1~3、自動のDモードなど自分でチョイス出来るようにもなっています。
それに走行モードとABSのON/OFFとTCSのモードを組み合わせると・・・
全部で80通りの走行モードが・・・ホンダのDCTアドベンチャーへの本気度が見て取れますね。
もちろん従来どおりのMTモデルもあります。
開発責任者の飯塚さんのニュアンスから察するにDCTモデルは本気アタックするような人に向けた機能ではなく、気軽に楽しめるようにした初~中級者向けの機能。
「そんなの要らない」
って上級者の方はMTモデルをどうぞという話。
さて、そもそも何故いまになってアフリカツインが復活したのかというと
・アフリカツインの再販を望む声が多かった
・欧州を中心にアドベンチャーブームが再燃した
・ホンダがダカールラリーに再参戦した
などなど様々な理由がありますが、恐らく一番大きいのはマーケットからの要望と思います。
ちなみに現在はパリダカではなくダカールラリー。
これは治安や政治的な問題で舞台が南米になったから。ちなみにレギュレーションは二気筒450ccまでとなってます。
話を戻すと、アフリカツインはアドベンチャーの中でもかなりオフロード寄りな造り。
分かりやすい所で言えばクラストップの21インチFホイールや、クラストップの45mmフロントフォークなど。
明らかにオマケではなく”本気で”オフを走れる様に造ってある。
メディア向けの試乗会でもわざわざモトクロスコースを用意して走らせてる事を見ても明らか。
その意気込みというか思い切りの良さが伝わったのか、このCRF1000Lは発売一週間で年間販売目標の1000台を超えてしまうほどの人気となりました。
MTとDCTの割合は半々で購入層は40~50代がメインとのこと。
やっぱりNXRや旧アフリカツインの世代に人気なんでしょうね。
翌2017年に排ガス規制に対応させ約3馬力アップし、2018年にはマイナーチェンジ。
・電子制御スロットル
・オートウィンカーキャンセラー
・急ブレーキを後続に知らせるエマージェンシーブレーキランプ
・HSTC(電子制御)の設定幅向上
・リチウムイオンイオンバッテリー
・グリップヒーターとACC電源の標準装備
・上下対応クイックシフター※OP
などのマイナーチェンジが実施され、それと同時に
・大型ワイドスクリーン
・24Lのシームレスビッグタンク
・ステンレス専用キャリア
・フロントガード
・フロントユーティリティポケット
・ストローク量を増やした専用サス
が備えられたCRF1000L AS(Adventure Sports)というグレードが追加。
専用サスペンションの関係でただでさえ常人には厳しい足つきだったのに、更にシート高が60mm上がるというガチンコ仕様なんですが流石にそこら辺はホンダも考慮しており、ASモデルにはサスストロークを縮めてシート高を60mmつまりノーマルと同じシート高にしたLD(Low Down)モデルが用意されました。
こちらが非常に人気だったみたいですね。
最後に・・・
アフリカツインは非常に高い評価と人気を獲得しています。
その理由は
『NXR~アフリカツインというブランド』
『ダカールラリーからのフィードバック』
といった事もあるでしょうが、一番の理由は車体設計を担当された山倉(写真中央)さんにあると思います。
山倉さんは子供の頃にパリダカを見てラリーに目覚め、そして砂漠の女王NXRの快進撃に感動し、旧アフリカツインを購入し、ホンダに入社することを決意された方。
そして希望通りホンダに入社してからも
「アフリカツインの設計がしたい。現代技術のアフリカツイン造りたい。」
と、ずーっと言い続けていた。
もうアフリカツインを造るためだけにホンダに入社した様な方で、念願のアフリカツイン復活プロジェクトがスタートした瞬間からヤル気が炎に。
自身が担当する事となった車体設計はもちろん、エンジンも妥協したくないとHRCでMotoGPにも携わっていたスペシャリストの飯田さんを呼び寄せ、デザイナーの小松さんにはアフリカツインらしさを力説。
そしてオフに明るくないメンバーと意思疎通するために、自己所有の旧アフリカツインを持ち出し社内のエンデューロ大会に出場。
その活動を始めたおかげでメンバー全員がアフリカツインがどういうバイクなのか、アフリカツインの魅力が何なのか、エンデューロが如何に楽しいかを共有することが出来た。
それどころか山倉さんの熱にやられてアフリカツインを自費で購入するメンバーが6人も出る始末。
誰よりもアフリカツインに思い入れがある山倉さん、そしてその思いを共有したメンバーによって開発されたCRF1000L Africa Twin。
アフリカツイン愛溢れる人達が造ったら、そりゃ良いアフリカツインが出来るわって話。
※2019年:ETC2.0を標準装備化
主要諸元
全長/幅/高 | 2335/930/1475mm {2330/930/1475mm} |
シート高 | 870~850mm |
車軸距離 | 1505mm |
車体重量 | 232kg(装) [242kg] {230/240kg(装)} |
燃料消費率 | 21.6km/L {21.1km/L} ※WMTCモード値 |
燃料容量 | 18L |
エンジン | 水冷4サイクルOHC二気筒 |
総排気量 | 998cc |
最高出力 | 92ps/7500rpm {95ps/7500rpm} |
最高トルク | 9.7kg-m/6000rpm {10.1kg-m/6000rpm} |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前90/90R21(54H) 後150/70R18(70H) |
バッテリー | YTZ14S |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
SILMAR8A9S |
推奨オイル | Honda純正ウルトラG1(10W-30) |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量4.9L 交換時3.9L フィルター交換時4.1L [全容量5.2L 交換時4.2L(フィルター交換時) 交換時4.2L(クラッチ交換時)] |
スプロケ | 前16|後42 |
チェーン | サイズ525|リンク124 |
車体価格 | 1,250,000円(税別) [1,350,000円(税別)] ※[]内はDCTモデル ※{}内は2019年モデル ※ASは+10kg |
XL1000V VARADERO(SD01/02)-since 1999-
「Change your VIEW」
実質的にトランザルプのリッター版として登場したXL1000Vバラデロ。
エンジンは日本でもお馴染みVTR1000Fの90°Vツインを使っているので、厳密に言うと系譜は繋がっていません・・・が、同じアドベンチャークラスという事で少しご紹介。
ちなみにバラデロっていうのはキューバ最大のリゾート地であるバラデロ半島から取ってます。
トランザルプの方を読んでもらってると分かる通り、このクラスのマルチパーパスというのは欧州で人気があります。
それはこのバラデロも例外ではなく、エンジン元であるVTR1000が2007年の排ガス規制を機に生産終了したのに対し、このバラデロはVTR1000Fを差し置いて2003年にFi化(SD02型)され継続販売。
スペインで2013年まで生産発売され根強い人気がありました。
元気なエンジンを積んだ楽ポジバイク・・・例えるなら”ストリートラリー”ですね。
主要諸元
全長/幅/高 | 2300/930/1465mm |
シート高 | 838mm |
車軸距離 | 1560mm |
車体重量 | 265kg(装) |
燃料消費率 | – |
燃料容量 | 25L |
エンジン | 水冷4サイクルDOHC二気筒 |
総排気量 | 996cc |
最高出力 | 94ps/7500rpm |
最高トルク | 10.1kg-m/6000rpm |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前110/80R19(59H)
後150/70R17(69H) |
バッテリー | 6N4-2A-4 |
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
DPR8EVX-9
[IJR8B9] |
推奨オイル | – |
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに |
交換時3.4L
フィルター交換時3.6L |
スプロケ | 前16|後47 |
チェーン | サイズ525|リンク112 |
車体価格 | –
※国内正規販売なしのため ※[]内はSD02 |
Africa Twin(RD03/04/07) -since 1988-
「ON THE TRAIL OF HEROS.」
先に紹介した通りホンダはNXR750の公道モデルとしてトランザルプを出しました。
しかし
「もっとNXR750なバイク」
という声が多かった。
要するにもっとラリーレイド感溢れるNXR750レプリカって事ですね。
その期待に応える様にホンダが出したのだラリーレイド感が溢れ出ているアフリカツイン。
名前の由来はもちろんパリダカ。広大なアフリカの大地を連想させるという理由から命名されました。
24Lと大きめカウルマウントタンクに大きな丸目二眼がNXR750を彷彿させますね。
日本では馴染みがありませんが、海外ではXRVという車名でした。
アフリカツインは簡単に説明するとトランザルプを更にオフロード寄りにした形。
こう言うとトランザルプと同じ様に見た目だけと思いがちですが、アフリカツインの場合は違います。
専用のサスペンションとフレームで潤沢なホイールトラベル、大径ホイール&ディスクローター&フェンダー兼カバー。
キャブやら何やら(以下省略)でちゃんと煮詰められたオフロード寄りのデュアルパーパス。
その証拠に実はアフリカツインもパリダカに出場してるんです。
参戦したのはプロダクションクラス(無改造)というクラスで・・・しかも見事に優勝。それも一回ではなく1989-1990と二連覇。
これだけでアフリカツインが見掛け倒しのラリーレプリカじゃない事が分かるかと思います。
「本当にパリダカを走れるマシンが買える」
としてトランザルプ同様に世界中で人気となり、限定ながらモデルチェンジを繰り返す事になりました。
Africa Twin
(RD04)
-since 1990-
二代目のRD04型。
・キャブの大径化及び742cc化で57馬力
・ホイールベースを10mm延長
・ヘッドライトの光量アップ
・ダブルディスクブレーキ化
・バッテリー容量アップ
・ハイスクリーン化
・多機能デジタルメーター(92年モデル)
Africa Twin
(RD07)
-since 1993-
三代目となるRD07型。
・フレーム新設計で
・シート見直し
・キャブ変更
・ホイールベース10mm短縮
・リアをラジアルタイヤ化
・EGマッピング&カウル&スクリーン見直し(95年モデル)
そして2000年(一部の国では2003年)に生産終了となりました。
言うまでもありませんが、約10年という息の長さがあったのはNXR750レプリカという要素を除いてみてもよく出来ていたから。
山道も林道も高速道も全てを何不自由なく熟せるスーパーアドベンチャーでした。
主要諸元
全長/幅/高 | 2310/900/1320mm [2330/895/1420mm] {2320/905/1430mm} |
シート高 | 880mm {865mm} |
車軸距離 | 1550mm [1560mm] {1550mm} |
車体重量 | 221kg(装) [236kg(装)] {234kg(装)} |
燃料消費率 | 32.0km/L [30.0km/L] {24.1km/L} ※定地走行テスト値 |
燃料容量 | 24L {23L} |
エンジン | 水冷4サイクルV型OHC二気筒 |
総排気量 | 647cc [{742cc}] |
最高出力 | 52ps/7500rpm [{57ps/7500rpm}] |
最高トルク | 5.7kg-m/6000rpm [{6.1kg-m/5500rpm}] |
変速機 | 常時噛合式5速リターン |
タイヤサイズ | 前90/90-21(54S) 後130/90-17(68S) {前90/90-21(54H) 後140/80-17(69H)} |
バッテリー | YB12A-B [YB14-B2] {FTX14-BS} |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
DPR8EA-9 または X24EPR-U9 |
推奨オイル | – |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
交換時2.2L フィルター交換時2.6L [{全容量3.2L 交換時2.4L フィルター交換時2.6L}] |
スプロケ | 前16|後48 [{前16|後43}] |
チェーン | サイズ525|リンク124 {サイズ525|リンク122} |
車体価格 | 749,000円(税別) [789,000円(税別)] {890,000円(税別)} ※[]内はRD04 ※{}内はRD07 |
XL600V TRANSALP(PD06) -since 1987-
「RALLY TOURING」
ここで登場するのがアフリカツ・・・ではなくトランザルプ。
先に紹介したパリダカのワークスマシンNXRを彷彿させるスタイリングのオンロードマシンとして登場しました。
別名XL600Vともいい、こう見えてXLシリーズの一車種だったりします。
開発もXLを担当したチームでコンセプトは
「NXR750の持つ快適性のオーバーラップ」
ちなみにTRANS(超える)ALPS(アルプス)でつなげてTRANSALP。
ただこう見えてベースとなっているのは偉大な二つのレーサーを生んだXLV750Rではなく、VT500というクルーザー。
Vバンクも45度ではなく52度と僅かながら開いた別物を600ccにまで拡大したエンジン。
こう書くと
「見た目だけのパリダカマシン」
と思いがちですが・・・まあ違うと否定できない部分もあります。
ただしトランザルプは道を選ばないデュアルパーパスと非常によく出来ていたのは事実です。
なんでも、開発チームいわくベース(VT500)が完全なオンロードだったのが逆に良かったそう。
オフロードモデルに使われるエンジンというのは、オン/オフ両対応できる汎用性を考慮して設計されているのが基本。
しかしトランザルプの場合、オフを全く鑑みていないVT500だった。
だから開発チームはXLで培ったオフロード要素を全力で注ぎ込まないとオフ要素をもたせる事が出来ないと考えたんです。
そうして全力でXLのノウハウを詰め込んで出来上がったのを見たら
”オンもオフも高いレベルで熟せる万能マシン”
が誕生したというわけ。
怪我の功名みたいなバイクですね。
トランザルプはその高い快適性と汎用性から欧州で爆発的な人気を誇りました。
危ない部類(100ps/250kmオーバー)ではない事から保険料が安いこと、そしてパリダカマシンNXR750を彷彿とさせるスタイルも追い風となりました。
対して日本は最初の数年のみの販売・・・まあ日本は文化がね。最近になって盛り返して来てますが。
だから生産も途中から欧州に切り替わり、ダブルディスクブレーキ化や外装変更などが加わりしました。
XL650V TRANSALP
(RD10/11)
-since 2000-
これは二代目RD10型とスペイン生産に切り替えられたRD11型。
ボアを拡大し647ccとし、リアタイヤも120/90R17に変更。
XL700V TRANSALP
(RD13/15)
-since 2008-
三代目となるRD13型(スペイン産)とRD15型(イタリア産)。
ボア拡大と圧縮比の向上、更にFI化に加え大型ヘッドライト、前後ラジアルタイヤ化など。
日本からすると考えられないけど、向こうではトランザルプはアフリカツインと共に一時代を築いたTWO BROTHERという立ち位置なんですよ。
主要諸元
全長/幅/高 | 2265/875/1275mm |
シート高 | 850mm |
車軸距離 | 1505mm |
車体重量 | 197kg(装) |
燃料消費率 | – |
燃料容量 | 18L |
エンジン | 水冷4サイクルOHC52度V型二気筒 |
総排気量 | 583cc |
最高出力 | 52ps/8000rpm |
最高トルク | 5.4kg-m/6000rpm |
変速機 | 常時噛合式5速リターン |
タイヤサイズ | 前90/90R21(54S) 後130/80R17(65S) |
バッテリー | YB12A-B |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
DPR8EA-9 または X24EPR-U9 |
推奨オイル | – |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量2.8L 交換時2.2L フィルター交換時2.2L |
スプロケ | 前15|後47 |
チェーン | サイズ525|リンク118 |
車体価格 | 598,000円(税別) |
NXR750-since 1986-
『砂漠の女王』
NewXRということからNXR750と名付けられたアフリカツインのご先祖様というか起源であるホンダのパリダカワークスマシン。
水冷化やクランク新造なので見た目は大きく違うわけですが、前ページのRS750Dを造った松田さんが直後に手掛けたモデルな事もあり同じ45°Vツイン90°位相エンジンを積んでいます。
ちなみに説明していませんでしたが、位相というのはクランクピンを前後で共有せずに(並列二気筒のように)それぞれ設けて少しずらす事。
こうすることで狭角ながら一次振動(大きな振動)が無いVツインとなります。
そんなNXR750の武器はトラクション感が強い90°位相Vツイン(495-225)もそうですが、安定性を向上させる事も重視された。
例えばいま説明した水冷化ですが、当時はまだ空冷がメジャーだった時代。何故なら水がない砂漠でラジエーターが壊れたり、漏れや詰まりが起こったら修復が不可能だからです。
でも安定した性能(冷却性)を確保するなら絶対に水冷がいい。
そこで取った方法が
「冷却を二分割する」
という方法。
万が一、転倒やアクシデントで片方のラジエーターを壊しても、ラジエーターを除くように繋げれば片肺とはいえオーバーヒートは防げる。
これのおかげでNXR750はオーバーヒートによるトラブルが一度もありませんでした。
そしてもう一つは燃料タンク。
パリダカは450kmを走り切る燃料を積むことがレギュレーションで決められていました。
そしてNXR750の燃費は10km/L。悪いように思えますが、これは現地の燃料が粗悪で圧縮比を高く出来ないから。
つまり約50Lもの燃料を積めないといけない。しかしそんな大容量を通常通りの方法で積むと重心や重量バランスが崩れてしまう。
そこで編み出されたアイディアが
「燃料ラインを三分割する」
というラジエーターに通ずる考え。
NXR750の燃料タンクは前にメイン二つ(左右分割&脱着式)、そしてリアに一つという独立した三つのタンク構造になっています。
下の方に行くほど膨れ上がるメインタンクはNXR750のトレードマークですね。
そしてフューエルコックの位置を三つ揃える事で燃料の移動をスムーズにし重量バランスの問題を解決。
更には万が一、転倒などでどれか駄目になってもコックを閉めて移せば走れるという革新的かつ手堅い構造。
なんでも妊娠中の奥さんの(下のほうが膨らんでいる)お腹を見て閃いた構造なんだとか。
NXR750が四連覇を成し遂げられたのはこの”堅実さ”があったからです。
一つ面白い話をすると、初参戦の1986年パリダカの雰囲気が一変したのは有名な話。
何故ならホンダの参戦マシンがWGPと同じスポンサーカラー・・・ロスマンズカラーだったからです。
「ロスマンズカラー×ホンダ×謎のバイク」
これだけでホンダが本気でパリダカを取りに来たのが誰もが分かった。
そしてその下馬評通り・・・どころか下馬評を大きく上回るパリダカ四連覇という伝説を残しました。
主要諸元
※ファクトリーマシンのため不明
XL600R PHARAOH(PD03) -since 1985-
「アドベンチャー・ロマン」
XL500の後継となるXL600R PHARAOH。
大きな変更点は真っ赤に塗られたRFVCエンジン。RFVCエンジンについてはCRF250の方で紹介したと思うので割愛させてもらいます。
「なんでファラオ」
というとファラオラリーに参戦した事と、そのイメージから取っています。
ただ先代同様に日本ではこの重武装したPHARAOHだけでしたが、海外ではノーマルにあたるXL600R/XR600Rも販売されていました。
これがそのXR600Rです。
そしてこっちが公道モデルのXL600R。
パッと見は一緒に見えるんですが、公道向けと否公道向けなので中身(特に足回り)が違います。
初パリダカだったXLの後継なので当然ながら同じ様に挑んでいます。
これがXR600RベースのパリダカマシンXL600L。
XRなのにXLなのはセールスのため・・・だったんですが、時代は単気筒でなく二気筒が圧倒的に優位だった。
だからこのXL600Lでは結果は残せず。
パリダカに社運をかけていたと言ってもいいフランスホンダから
「もっとラリー向けのバイクを作ってくれ、これじゃ勝てない」
とケツを叩かれる事になるわけです。
というのも当時パリダカ発祥の地であるフランスを筆頭に欧州ではパリダカ熱が凄まじく、パリダカの成績がセールスに直結してたから。
そのためダカールラリーの成績と連動するようにXLの売上が落ちていたんです。
主要諸元
全長/幅/高 | 2205/865/1195mm |
シート高 | 880mm |
車軸距離 | 1445mm |
車体重量 | 182kg(装) |
燃料消費率 | 35.0km/L ※定地走行燃費 |
燃料容量 | 28L |
エンジン | 空冷4サイクルOHC単気筒 |
総排気量 | 591cc |
最高出力 | 42ps/6500rpm |
最高トルク | 4.8kg-m/6000rpm |
変速機 | 常時噛合式5速リターン |
タイヤサイズ | 前3.00-21-4PR 後5.10-17-4PR |
バッテリー | YB14-A2(セル) YB3L-A(キック) |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
DP8EA9 |
推奨オイル | – |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
交換時1.9L |
スプロケ | 前15|後40 |
チェーン | サイズ520|リンク106 |
車体価格 | 548,000円(税別) |
RS750D/NS750-since 1983-
ここで紹介しておきたいのがXLV750Rのエンジンをベースに作られたRS750Dというダートレーサー。
一件アフリカツインとは何の関係も無い畑違いなマシンに思えますが大いに関係しているのでお付き合いを・・・。
このバイクは
『グランドナショナルチャンピオンシップ(以下GNC)』
というアメリカで非常に人気があるオーバル状ダートトラックのレースに向けてHRCが造ったワークスマシン。
「肝が据わっているやつが勝つ」
と言われるバイク界のインディ、もっと簡単に言うとバイク版の競馬みたいなもの。
ホンダはこのレースに1979年からアメリカホンダ(以下AHM)主導でCX500のエンジンを750まで拡大しつつ縦に積み直してチェーンドライブ化したCX500改で挑んでいました。
しかしそれでも最も力を入れていたハーレー勢(XR750)に全くもって歯が立たなかった。そこでAHMは本社に力を貸すように直談判したのが始まり。
何故AHMはそうまでしてGNCに力を入れていたのかと言うと、1つはいま話した通りこれがアメリカで最も根付いているレースだったから。
そんなレースに勝てばアメリカ中にホンダの技術を証明出来て認めてもらえると考えたらからなんですが、実にアメリカらしいのが単に勝つだけではなく重要だったのがVツインという事。
「アメリカではVツインじゃないと勝った事にはならないから絶対にVツイン」
という前提条件があったから本社が用意したエンジンが無いと始まらないAHMだけでは限界があった。
そしてもう1つは天才フレディ・スペンサーの存在です。
アメリカで最も根付いているレースという事もあり当時フレディ・スペンサーもホンダから参戦していた。
AHMはこのスペンサーを
『GNC王者からのWGP(ロードレース世界選手権)王者』
という道を取らせたいと考えていた。何故ならライバルがその道を歩んでアメリカのヒーローとなったから・・・そう、ケニー・ロバーツです。
インターカラー(USヤマハカラー)のままWGPの優勝を掻っ攫ったGNC出身のアメリカ人ライダー。
「彼と同じスターの道を歩ませたい、彼を上回りたい」
という考えていたんですね。
この狙いにホンダも答え、NRブロック(後のHRCとなるNRを開発した部署)が開発したエンジンを積んだのがNS750というモデル。
これでホンダは見事GNCでスペンサーを優勝に導く事が・・・出来なかった。
このNS750は1982年までに僅か1勝というホンダらしからぬ戦績の悪さでした。
原因は携わった車体設計の三神さん曰く
「正直ハーレーを過小評価していた」
との事ですが、何よりもトラクション性能を煮詰めきれてなかった事にあった。
もともとCX500/GL500というミドルロードスポーツのエンジンがベースだったので100馬力近いハイパワーな一方でクランクマスが軽い事から一発一発が弱くトラクションが弱かった。
このダートレーサーは
『サイドワインダー』
という一見するとカッコいいアダ名がある事をご存知の方も多いかと思いますが、これ元々はそんなNS750の醜態を揶揄する形で生まれた言葉。
有り余るパワーを軽い吹け上がりで瞬時に発揮する出力特性と弱いトラクションという組み合わせからスペンサーをもってしてもスライドばかりでずっとカウンターを当て続けて走るレベルだった。
つまりずっと斜めを向いたまま走っており、シリンダーヘッドも捻れたりしていた事から
『The sidewinder(ヨコバイガラガラヘビ)みたいなマシン』
と揶揄されるようになったという話。
※ヨコバイガラガラヘビとはアメリカ南西部に生息する横巻きで砂漠を移動するヘビ
この問題がトラクションにある事と気付いたエンジン設計の松田さんが自身が新たに手掛けていたXLV750Rのエンジンをベースに変更。
さらに車体側もロードレーサーNS500の足回りの流用するなどしてこのページの主役であるRS750Dというモデルを開発。
ガラガラヘビだったのが嘘のように圧倒的な速さを誇り1984年に念願だったチャンピオンをリッキーグラハムの活躍により獲得。
加えてこのエンジンはプライベーターへの販売が義務付けれていたので皆がこぞって購入。あまりの速さからリストラクター(吸気制限)が設けられたもののそれでも速く、結果として4年連続でホンダ勢がチャンピオンを獲得したという話。
FTRへ採用されたのでカラーリングに見覚えがある人も多いかと思いますが、それもこのRS750Dの偉業を元にしたものです。
そして何故アフリカツインの系譜にこのバイクを載せたのかというのもおわかりかと。
このNS750の失敗から生まれたRS750Dというマシンとトラクションに関するそのノウハウ。これが直後のパリダカでも大いに活きる事になるんですね。
参照:別冊モーターサイクリスト410|RACERS Vol.37
主要諸元
※ファクトリーマシンのため不明
XLV750R(RD01) -since 1983-
「キング・オブ・ランドスポーツ」
2年ほど遡って紹介となるXLV750R/RD01型。
先に話したようにフランスホンダはパリダカにおいて連敗続きでした。
そこで
「二気筒勢に対抗できるバイクが欲しい」
オブラートに包まずストレートに言うと
「BMW(R100GS)に勝てるバイクを造れ」
という要望というより悲痛な叫びが日本のホンダ、そしてHRCに届いたわけです。
その声に応えるべきだとして目をつけられたのが、ハイスピードデュアルパーパスとして発売されていた狭角VツインのXLV750R。
ベースとなっているのはクルーザーのNV750Customです。
XLの頃に書きそびれたんですがこのシリーズはフレーム内にオイルを溜めることで、フレームにヒートシンクの役割も持たせる面白い構造を持っています。
だからオイル温度が上がるとモロに熱さが伝わるとか何とか。
そしてこのXLV750Rは更に面白いことに水冷だったのをわざわざ空冷に戻すという先祖返りの様なことをしています。
これは水冷だとダート走行時にラジエーターが詰まってしまう恐れがあったから。
ちなみに世界限定1000台で日本へは300台が割り当てられました。
当初はこのXLV750Rをベースにパリダカマシンを造る予定だったのですが、リア側のシリンダーの放熱問題などにより参戦は見送りに。
販売時期も台数も少ない上に色形が独特なので色物XL的なイメージを抱きがちですが、このバイクから偉大なレーサーが二台も誕生する事になります。
主要諸元
全長/幅/高 | 2235/890/1230mm |
シート高 | 835mm |
車軸距離 | 1480mm |
車体重量 | 213kg(装) |
燃料消費率 | 35.0km/L ※定地走行燃費 |
燃料容量 | 19.4L |
エンジン | 空冷4サイクルSOHC二気筒 |
総排気量 | 749cc |
最高出力 | 55ps/7000rpm |
最高トルク | 6.0kg-m/5500rpm |
変速機 | 常時噛合式5速リターン |
タイヤサイズ | 前90/90-21(54S) 後130/80-17(65S) |
バッテリー | FB14-A2 |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
DPR8EA-9/DPR9EA-9 または X24EPR-U9/X27EPR-U9 |
推奨オイル | Honda純正ウルトラG1 |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量3.5L ※交換時3.0L エンジン側1.5L フレーム側1.5L |
スプロケ | – |
チェーン | – |
車体価格 | 750,000円(税別) |