「Vの本領」
VFR400Rとしては最後のモデルであり、歴代で最も息が長く最も売れたモデルでもあります。
あのVFR750R(RC30)にかなり近いデザインという事も人気を呼んだ理由の一つ。
実際NC30は”レーサーRVF400″ではなく”RC30″のレプリカ。
奇遇なことに型式まで同じ30なサンマル兄弟・・・いや、あんまりそんな呼ばれ方してませんけどね。
先代からの変更点としてはホイールベースの短縮やフロントホイールの17インチ化。リアはこの時まだ18インチでこれがマフラーが左出しに纏められた事と並んでNC30の特徴です。
もちろん他にもバックトルクリミッター付きクラッチや、どうしても後ろ二気筒が熱で苦しくなってしまうV4の課題を解決するためデュアルラジエーターなど、ポジションも含め完全にレーサー路線。
翌年にはリアサスペンションがリザーバータンク別体式の物に変更されています。
ただNC30で語るべきはやはりエンジン。
ホンダは先々代NC21でクランク角を180度(90度、270度ともいう)に変更したんですが、NC30で再び360度に変更しています。
これがまあ難しい問題でして・・・
一般的にV4(90度バンクV型四気筒)には180度クランク角と360度クランクの二種類があります。
V4は開いたシリンダーの角度を表すバンク角と、クランクピンの角度を表すクランク角という2つの角度を表す表記があるから分かりにくいですね。
※もしクランク角がよくわからないという人は「バイク豆知識:二気筒エンジンが七変化した理由」を先に読んでもらえると助かります。
一応このページでは混乱しないようにバンク角の話は置いといてクランクの角度を
“180/360度クランク”
という形で説明していきます。
で、どう違うのかというと360度クランクの場合の燃焼間隔は0-270-360-630-720(0)。
180度クランクの場合は0-270-450-540-720(0)となります。
360度クランクだと一つが点火したらすぐに(90度)次の気筒が点火してしばらく(270度)おやすみ。でまたボンボンと立て続けに点火してまたおやすみ。
ボボン・・・ボボン・・・ボボンといわゆるVツインを2つ並べた点火時期。
対して180度クランクはちょっと長め(270度)に空く時間が一つ出来るのでボボン・・・ボン・ボンという感じ。YZF-R1のクロスプレーンもこうです。
そしてNC30が360度クランクにしたのは
“速く走らせるなら360度クランクの方が有利”
だからです。
これは「バイク豆知識:クロスプレーンだと何が良いのか」のメリットで書いたとおり、タイヤを落ち着かせる270度という間隔が360度クランクの場合は2回転する間に2度もあるから。
対して180度クランクの場合は2回転に1度しかない。
だからトラクション性は360度の方が上回っている。速く走るなら360度なのはこれが主な理由。
じゃあなんで先々代NC21が180度クランクにしたのかというと、初代のVF400F(360度クランク)があまりにも極端な点火タイミング故に、排気音が濁っていると不評だったから。
これは本当に好みが別れるところなんですけどね。
透き通った音が好評な180度クランク直列4気筒も並べてもう一度燃焼間隔を見てみましょう。
V型四気筒の180度クランクと360度クランクのどちらが直列4気筒に近いかと言えば180度クランクの方ですよね。
つまり180度クランクV4は(YZF-R1のクロスプレーンでも言われていますが)高回転まで回すと直列4気筒(180度クランク)とほぼ変わらないサウンドになります。
先代NC21が180度クランクを取ったのはこういった理由が大きいんです。
でもだからといって180度クランクのメリットは音だけなのかというとそうではないですよ。
現存している大型のV4(VFR800)のクランク角は180度クランクです。※VFR1200は位相で全く違う
これはサウンド云々の問題ではなく180度クランクV4は360度に比べ二次振動(微振動)を限りなく0に出来るというメリットがあるから採用してるんです。
トラクション性が(あくまでも360度V4に比べ)劣るぶん振動を限りなく0に出来る最もスムーズな四気筒なのが180度クランクV4。だからNC21-24はエンジンに合わせてポジションなどが少し優しかったわけ。
反対に同じV4でもレース色の強いVFR750R/RVF750(RC30/RC45)やRC213V-Sは360度クランクになっています。これはサーキット走行がメイン、つまりトラクション性が何よりも大事だから。
同じV4でもクランク角によって一長一短あるという事です。
そしてVFR400R/NC30はピュアレーサーのようなVFR750R/RC30のレプリカである事、そしてTT-F3を始めとしたレースに勝つ事に重きを置いたマシンだったから360度を取ったという話。
主要諸元
全長/幅/高 | 1985/705/1075mm |
シート高 | 755mm |
車軸距離 | 1345mm |
車体重量 | 182kg(装) [185]kg(装) |
燃料消費率 | 37.0km/L ※定地走行テスト値 |
燃料容量 | 15L |
エンジン | 水冷4サイクルDOHC4気筒 |
総排気量 | 399cc |
最高出力 | 59ps/12500rpm |
最高トルク | 4.0kg-m/10000rpm |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前120/60-17(55H) 後150/60-18(67H) |
バッテリー | FTX7A-BS |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
ER8EH/ER9EH(標準)/ER10EH または Y24FER/Y27FER(標準)/Y31FER |
推奨オイル | ウルトラU(SAE10W-30) または ウルトラGP(SAE20W-50) |
オイル容量 | 全容量3.0L 交換時2.4L フィルター交換時2.5L |
スプロケ | 前15|後40 |
チェーン | サイズ525|リンク104 |
車体価格 | 749,000円(税別) ※[]内は90年以降モデル |