Bandit1200/S(GV79A)-since 2006-

2006年式Bandit1200

「パフォーマンスネイキッド」

バンディットとしては二代目であり・・・油冷ファイナルでもあるbandit1200のGV79A型。

主な変更点はスイングアームを45mmも伸ばしてホイールベースを1480mmまで延長し安定性を向上させた事や、シート高を770~790mmの二段階調節式にした事など。

Bandit1200S

ネイキッドの方はメーターとライトの間に気持ち程度の風防カウルが付いてるのが特徴的で、ハーフカウルのSバージョンはシェイプアップされたものになりました。

ただ残念なことにこのモデルは規制強化に伴い、このモデルはわずか二年のみの販売。

Bandit1200ファイナルエディション

登場して一年後にはファイナルエディションが出てしまうという短命さ。

ちなみにファイナルエディションにはタンクに油冷ステッカーが付いています。

Bandit1200ファイナルエディション

ただしちょっと覚えておいて欲しいのは、このエンジンが凄いのは油冷システムだけじゃない事。

このエンジンのルーツは1985年の初代GSX-R750にあるんですが、何が素晴らしいってその頃に生まれた油冷というシステムだけでなく造形までも守り続けた事。

Bandit1200エンジン

こんな細かい冷却フィンを持ったエンジンは他には無い。

もともとこれは冷却性を上げようとGSX-R750でやった事。つまりレースで勝つために行ったコストよりも性能な改良。なのにレースとは無縁なネイキッドになろうが続けたんです。

ライバル社の凄い所を言い合う雑誌(失念)の企画でヤマハの人がこの造形は真似ができない(コスト上許されない)と讃えていました。

油冷ファイナル

こうやって画像で見ると間隔が狭すぎてハレーションを起こしてるほど。

このエンジンを積んだ最後のモデルが二年しか売ることが出来ないにも関わらずモデルチェンジのされたこのBandit1200のGV79型。

スズキが如何に油冷に対して誇りを持っていたかが分かるモデルです。

主要諸元
全長/幅/高 2130/790/1095mm
[2130/790/1235mm]
シート高 770~790mm
車軸距離 1480mm
車体重量 212kg(乾)
[215kg(乾)]
燃料消費率 26.5km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 20.0L
エンジン 油冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1156cc
最高出力 100ps/8500rpm
最高トルク 9.5kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前120/70-17(58W)
後180/55-17(73W)
バッテリー YT12A-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
JR8B
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.6L
交換時3.3L
フィルター交換時3.5L
スプロケ 前15|後45
チェーン サイズ530|リンク116
車体価格 828,000円(税別)
[858,000円(税別)]
※[]内はバンディット1200S
系譜図
GSF12001995年
GSF1200/S
(GV75A/B)
イナズマ12001998年
INAZUMA1200
(GV76A)
Bandit1200/S2000年
Bandit1200
(GV77A)
2006Bandit1200/S2006年
Bandit1200/S
(GV79A)
Bandit1250/S2007年
Bandit1250/S/F
(GW72A)
Bandit1250後期2015年
Bandit1250/S/F
(GW72A後期)

Bandit1200/S(GV77A)-since 2000-

2000年式GSF1200

「軽量・コンパクト・スポーティ」

GSF1200の後継モデルとして登場した初代バンディットことBandit1200のGV77A型。

GSF1200のトレードマークであった薄いタンクはそのままに直線基調となったダブルクレードルフレームが特徴。

2000年式GSF1200

驚きなことにあの超ショートホイールベースだったGSF1200から更にホイールベースが縮められ1430mmになりました。

相変わらず引っくり返るのかと思うかもしれませんが、スロットルポジションセンサーによる点火タイミングとキャブ変更によりトルクピークを少し上げて元気さは持ちつつも扱いやすい特性に・・・それでもかなり過激な方ですが。

そしてバンディットといえばコレとも言えるSモデルもカウル造形がシャレた物に。

Bandit1200S/GV77A

油冷ビッグネイキッドというスズキの道を邁進したわけですが、ここでちょっとした豆知識。

詳しい説明はGSX-R750の系譜で書いたので割愛しますが油冷というのは

『走行風に加えてオイルでも冷却』

という空冷の発展形といえる形なので空冷と見分けが付きにくい・・・そう思っている人も多いかと。でも油冷エンジンである事を象徴している分かりやすい部分はちゃんとあるんです。

それはエンジンヘッドとクランクを結んでいるこの太いホース。

油冷エンジン

これはエンジンヘッドからクランクへオイルを戻す為のバイパス。

油冷というのは空冷と違いシリンダーヘッドへオイルをジェットで勢いよく大量に吹くのでオイルの回収が大変。

空冷と同じ様にカムチェーントンネルから戻そうとすると間に合わず、フリクションロスや撹拌による性能低下を招いてしまう。

しかしだからといって専用の通路をブロックに設けてはせっかくのスリムさが台無しに・・・そこでGPマシンにも関わっていた岡本さんは閃きました。

「中を通すこと無理なら外を通せばいいじゃない」

SACS

そうやって生まれたのがこの太いバイパスなんです。

Bandit1200Sジャケット写真

つまりこのバイパスこそ油冷の証であり、油冷の命綱でもあるわけです。

主要諸元
全長/幅/高 2140/765/1100mm
[2070/765/1220mm]
シート高 775mm
車軸距離 1430mm
車体重量 214km(乾)
[218kg(乾)]
燃料消費率 26.5km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 20.0L
エンジン 油冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1156cc
最高出力 100ps/8500rpm
最高トルク 9.5kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前120/70-17(58W)
後180/55-17(73W)
バッテリー FTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
JR8B
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.6L
交換時3.3L
フィルター交換時3.5L
スプロケ 前15|後45
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格 819,000円(税別)
[848,000円(税別)]
※[]内はバンディット1200S
系譜図
GSF12001995年
GSF1200/S
(GV75A/B)
イナズマ12001998年
INAZUMA1200
(GV76A)
Bandit1200/S2000年
Bandit1200
(GV77A)
2006Bandit1200/S2006年
Bandit1200/S
(GV79A)
Bandit1250/S2007年
Bandit1250/S/F
(GW72A)
Bandit1250後期2015年
Bandit1250/S/F
(GW72A後期)

INAZUMA1200(GV76A)-since 1998-

GV76A

「心、解き放つモノ。」

GSF1200とのWラインナップで登場したコテコテなジャパニーズネイキッドスタイルのINAZUMA1200/GV76A型。

このモデルもGSF1200と同じ様に400-750-1200で車体を共有化していたわけですが、こちらの場合は逆にビッグネイキッドらしい大型が基軸。

INAZUMA1200

エンジンもベースこそGSF1200と共有なものの、点火タイミングを制御するスロットルポジションセンサーとキャブレーターの変更で非常にマイルドな仕様。

二本サスでシート高もベタベタの780mmと、何もかもがGSF1200とは真逆なビッグネイキッド。

イナズマ1200カタログ写真

さあ行くぞと意気込むGSFと違って、気軽に乗れるビッグネイキッドというのがコンセプトでした。

ちなみにこのINAZUMA1200はスズキとしては非常に珍しいオーソドックスな油冷ネイキッドだった事と、新車でも89万円という安さだった為か、本来とは別の需要で人気が出ました。

別の人気・・・それはKATANA化のベース車両として。

主要諸元
全長/幅/高 2140/780/1100mm
シート高 780mm
車軸距離 1465mm
車体重量 208kg(乾)
燃料消費率 28.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 18.0L
エンジン 油冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1156cc
最高出力 100ps/8500rpm
最高トルク 10.0kg-m/4500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前120/70-17(58W)
後170/60-17(72W)
バッテリー FTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
JR8B
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.6L
交換時3.3L
フィルター交換時3.5L
スプロケ 前15|後44
チェーン サイズ230|リンク112
車体価格 798,000円(税別)
系譜図
GSF12001995年
GSF1200/S
(GV75A/B)
イナズマ12001998年
INAZUMA1200
(GV76A)
Bandit1200/S2000年
Bandit1200
(GV77A)
2006Bandit1200/S2006年
Bandit1200/S
(GV79A)
Bandit1250/S2007年
Bandit1250/S/F
(GW72A)
Bandit1250後期2015年
Bandit1250/S/F
(GW72A後期)

GSF1200/S(GV75A/GV75B)-since 1995-

1995年式GSF1200

「SPORT EVOLUZIONISMO」

スズキが出したビッグネイキッド第一弾であるGSF1200のGV75A型とハーフカウルモデルのGV75B型。

GSF1200ハーフカウルバージョン

これを出した理由は1990年の750自主規制撤廃、そして1995年の大型二輪制定などで1970年代以来となるビッグネイキッドブームが到来したから。

数々のモデルが登場し人気を博していた中で、最後発となったスズキが出したビッグネイキッドの答えは非常にスズキらしいものでした。

まず何を隠そう伝統の油冷エンジン。

gsf1200カタログ写真

GSX-R1100の物をベースにボアを1mm拡大することで1156ccとし、カム周りはGSX1100Gの物を搭載。

キャブレターもGSX-R1100から少し絞った物に変えられ中低速重視に。

ここでちょっと補足しておくとGSX1100GというのはこのGSF1200が出る少し前に出された何故かシャフトドライブのビッグネイキッド。

GSX1100G

欧州向けでしたが一応日本にも入ってきています。

ちなみに知らない人は知らないけど、知っている人はよく知っているバイクです・・・というのも実はこのGSX1100Gなんと矢沢永吉さんが実際に所持したバイク。

話を戻しますが、GSF1200が実にスズキらしいといえる部分は車体にもあります。

明らかにヨーロッパのセンスを強く取り入れてる独創的なダブルクレードルフレームと薄いタンクが特徴的ですが、このボディは先に出ていた弟である600と共有しているもの。

GSF1200S

つまりこのGSF1200はミドルかと思うほどコンパクトなんです。

そしてもう一つ重要というか凄いのが1435mmという驚異的なショートホイールベースであること。これはライバルより100mm以上短く400cc並、ちょうどGSR400と同じ長さ。

GSF1200リア

それに加えて中低速重視で

『9.8kg-m/4000rpm』

を叩き出す油冷エンジン・・・そりゃもう簡単にひっくり返る。

なんでこんな極端な事をしたのかというと、企画の西本さんいわく開発チームがGSF1200では

GSF1200黒

「ネイキッドじゃなくてスポーツカーを造ろう」

という目標があったから。

ミソなのはレプリカではなくスポーツカー。

スズキGSF1200

つまり公道でその性能を楽しめるバイクを目指した結果。

この極端なショートホイールベースとコンパクトボディ、だけどキツくないポジションという組み合わせはそのためなんです。

GSF1200サイド

ちなみに車体設計の松本さんが言うに、開発段階ではキャンバー角(フロントフォーク角)はもう少し立てていて更に過激になる予定だった。

しかし先に出ていた600が欧州で

「過激すぎて危ない」

という声が多く寄せられた事で1200では1°寝かせられ26°になったんだそう。

※バイカーズステーション1994-8 インタビューより

主要諸元
全長/幅/高 2105/785/1095mm
シート高 835mm
車軸距離 1435mm
車体重量 208kg(乾)
燃料消費率 27.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 19.0L
エンジン 油冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1156cc
最高出力 97ps/8500rpm
最高トルク 9.8kg-m/4000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前120/70-17(58W)
後180/55-17(73W)
バッテリー FTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
JR8B
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.6L
交換時3.3L
フィルター交換時3.5L
スプロケ 前15|後45
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格 798,000円(税別)
系譜図
GSF12001995年
GSF1200/S
(GV75A/B)
イナズマ12001998年
INAZUMA1200
(GV76A)
Bandit1200/S2000年
Bandit1200
(GV77A)
2006Bandit1200/S2006年
Bandit1200/S
(GV79A)
Bandit1250/S2007年
Bandit1250/S/F
(GW72A)
Bandit1250後期2015年
Bandit1250/S/F
(GW72A後期)

ZX-10R/RR(ZX1002L/N)-since 2021-

2021年型ZX-10R

「FACE YOURSELF」

数えること八代目となった2021年からのZX-10RのZX1002L型。

まず変更点をあげると

・最大出力回転数-300rpm(ZX-10RRは+500rpm)
・フロントフォークのオフセットを変更
・スイングアーム長を延長しピボットを1mm下げ
・上記に伴いホイールベースを10mm延長
・BFFのセッティングを変更
・ギア比の変更
・ポジションの変更
・ウイングレット内蔵カウル
・LEDヘッドライト&ウィンカー
・スマホ連動フルカラー液晶メーター
・クルーズコントロールシステム
・新型オイルクーラーにより冷却性強化
・サイレンサーを若干大型化
・車重+1kg
・カワサキケア+(メンテパック)

・KCMF:カワサキコーナリングマネジメントファンクション
(トラコン、ABS、ローンチ、エンブレ制御のリアルタイム調整)

・インテグレーテッドライディングモード
(トラコンとパワーモードの包括セレクト機能:スポーツ/ロード/レイン/ユーザー)

などとなっています。

2021年型ZX-10Rサイド

実は今回のモデルチェンジは先代と重ねてみると分かりやすいのですが、構造的にはホイールベースやフォークオフセットが変わっている程度で、エンジンやフレームは基本的に先代からのキャリーオーバーとなっており最大出力も203馬力のまま。

先代との比較

これ何故かと言うとZX-10Rは存在意義であるSBK(市販車ベースレース)とそのライダーであるジョナサン・レイが関係しています。

ZX-10RはSBKにおいて

『驚異の六連覇(2015~2020)』

を達成し、向かうところ敵なし状態だったんですが、その立役者である王者ジョナサン・レイ(写真に写っている方)が

ジョナサン・レイとZX-10R

「ZX-10Rは良く出来ているから変えなくていいよ」

と言ったことが要因で、だから大きく変えなかったという話。

結局カワサキ(Kawasaki Racing Team)とジョナサン・レイが強いのはこういう信頼関係があるからで

「自分を尊重してくれるカワサキは素晴らしく、自分でも人生で最高の選択だと思っている。」

と言って複数年契約を結ぶだけでなく、鈴鹿8耐にも嫌な顔ひとつせず引き受け26年ぶりの優勝に貢献。

それに応えるようにカワサキも

「レイが変えなくていいと言ったので変えません(販促放棄)」

というまさに相思相愛といえる関係。

そりゃ六連覇しても不思議じゃないねって話ですが、正確に言うとレイの為に用意されたのは世界限定500台のZX-10RR/ZX1002N型の方になります。

ZX-10RR/ZX1002N

・チタンコンロッド
・専用軽量ピストン
・DLCピストンピン
・専用カムシャフト
・専用バルブスプリング
・マルケジーニ鍛造ホイール
・サスの伸側をトラック寄りに変更
・レース用メッシュブレーキホース
・スパコルSP
・シングルシートカウル

などなどが奢られた299万円(ノーマルから+90万円)の世界限定500台のモデル。

RR専用部品

正確に言うとこっちがレースのベースとなるモデルで、今回のモデルチェンジで更にピーク回転数を上げる改良が行われました。

なんでそれが大事なのかというと、この市販車レースというのはいろいろな制約があるんですが、その中でも近年新たに設けられ大きな波紋を呼んだのが2019年から新たに定められた

「リミッタ作動回転数+3%か最大出力発生回転数+1100rpm」

というエンジン回転数の上限ルール。

これはマシンの均一化を図るためなんですが、逆にいえば市販車で高めておけばレースでも高い回転数まで使うことが出来るわけで、そのために作られたのがZX-10RRというわけ。

象徴的なのが昨今のスペシャルモデルでは当たり前のように使われるようになったチタンコンロッドで、鉄に対しおおよそ半分の重さにできる。

なんでそれが重要なのか簡単に説明すると、上下運動によりそのまま上下に向かおうとする慣性力によってコンロッドには引っ張られたり押されたりする力が働く。

すると付け根ともいえる大端孔が変形(クローズイン現象)してしまい、レスポンスの悪化やフリクションロスの増大。そして最後には焼付きを起こしてしまう。

クローズイン現象

だから往復部分であるコンロッドを軽くして少しでもその力を弱めようとして使われるようになったのが軽さを取ったチタンなんですね。

だからZX-10RRもノーマルで見るとZX-10Rとほぼ変わらないように見えますが・・・レースキットを入れるとご覧のようにガラッと変わる。

エンジンパフォーマンス

ちなみに効果絶大なことからレースにおいて市販車からの交換も禁止されたので標準装備となったわけですが、加えて言うと税別299万円という価格も実はレースが関係しています。

2020年から日本で始まったST1000(改造範囲が狭い市販SSレース)のベース車両の条件として

『税別300万円以下』

というものが定められたのでZX-10RRはこのレースにも参戦するために300万円を切る価格になっているというわけ。

だからこのRRモデルは、そういう限られた用途に使う人によってはお買い得なモデルになるわけです。ただ逆に一般人にノーマルで+100万円の違いを実感できるかと言えば恐らく・・・という事で10RR/N型の話はこれで終わって10R/L型に戻ります。

サイドビュー

中身がほぼ変えられなかったおかげというと少し語弊がありますが、その代わりにお金を掛けられたのが主に外装部分。

一つは待っていた人も多いであろう液晶メーターの採用。

フルカラーデジタルメーター

タイムに寄与しないということからJ/K型から10年間ほぼ変わらなかったメーターが遂にTFTカラー液晶へ変更されました。

そしてもう一つが今回のモデルチェンジの目玉であろう外装の大幅な刷新。シリーズ顔というかH2と同系のリバーマーク付き逆スラントノーズになり、さらに超速度域でフロント接地感を増すウイングレットを新たに装備しました。

2021年型ZX-10Rの顔

少し面白いのがライバルの追っかけはしないが信条のカワサキらしく、一般的な外付けではなく内蔵型で控えめにアッパーカウルに近い部分に設けられています。

これ何故こうなったのかというと、デザインと空力のバランスを考えた結果こういう形になったとの事。

LEDヘッドライト

「これがデザイン考慮した顔なのか」

と疑問に思われている方が居るかも知れないです・・・が、少し待たれよ。

まずもってスーパースポーツモデルをこんなローアングルで覗く事はなく、実際はライトの存在がかなり消えるので印象がかなり違う。

ただこれは昨今の逆スラントLEDヘッドライトモデルでは結構使われている手法なので取り立てて書く事ではないかと。ZX-10Rの顔が他と違うのはここから。

face yourself

このL/N型はライトが若干奥まった場所にあり、上下には飛び出たスポイラーが付いているんですが、バンクさせるほどコレが立って際立って存在感を増してくる。切り裂くという表現が本当にピッタリで、しかもウイングレットも内蔵だからそれが隠れてしまう事もない。

何が言いたいのかっていうと、このL/N型の顔はフルバンクが凄く映える。もっと言うとクリッピングポイントから抜けるまでのカメラ写りが最高にキマってる。

フルバンク時

「SBK王者らしいオーバーテイク映えデザインになっている」

という話。

主要諸元
全長/幅/高 2085/750/1185mm
シート高 835mm
車軸距離 1450mm
車体重量 207kg(装)
燃料消費率 16.5km/L
※WMTCモード値
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 998cc
最高出力 203ps/13200rpm
[204ps/14000rpm]
最高トルク 11.7kg-m/11400rpm
[11.4kg-m/11700rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/55ZR17(75W)
バッテリー YTZ10S
プラグ SILMAR9B9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量4.0L
交換時2.9L
フィルター交換時3.4L
スプロケ 前17|後41
チェーン サイズ525|リンク116
車体価格 2,090,000円(税別)
[2,990,000円(税別)]
※[]内はZX-10RR/ZX1002N
系譜図
GPZ750R1986年
GPX750R
(ZX750F)
ZXR7501989年
ZXR750
(ZX750H/J/L)
1996ZX-9R1994年
ZX-9R
(ZX900B)
1998ZX-9R1998年
ZX-9R
(ZX900C/D)
2000ZX-9R

2000年
ZX-9R
(ZX900E)

2002ZX-9R2002年
ZX-9R
(ZX900F)
2004ZX-10R2004年
ZX-10R
(ZX1000C)
2006ZX-10R2006年
ZX-10R
(ZX1000D)
2008ZX-10R2008年
ZX-10R
(ZX1000E)
2010ZX-10R2010年
ZX-10R
(ZX1000F)
2011ZX-10R2011年
ZX-10R
(ZX1000J/K)
2016ZX-10R2016年
ZX-10R/RR/SE
(ZX1000R/S/Z/C)
2019ZX-10R2019年
ZX-10R/RR/SE
(ZX1002E/G/H)
2021ZX-10R2021年
ZX-10R/RR
(ZX1002L/N/)

【関連車種】
CBR1000RRの系譜YZF-R1の系譜GSX-R1000の系譜SuperBikeの系譜

ZX-10R/RR/SE(ZX1002E/G/H)-since 2019-

2019年型ZX-10R

「CHAMPIONSHIP-PROVEN POWER」

再びフルモデルチェンジされた2019年式ZX-10R。バリエーションは先代に引き続き3バージョンです。

2019年式ZX-10R

標準モデルのZX-10R/ZX1002E型。

馬力が203馬力にまで上がってRRとSEのみだったシフトアップダウン両対応のクイックシフターを標準装備。

KRTカラーを標準モデルに用意している辺りカワサキの良心を感じますね。

2019年式ZX-10RR

コチラはレース用のホモロゲモデルとなるZX-10RR/ZX1002G型。

マルケジーニホイールとチタンコンロッドを採用し+1馬力の204馬力でシリアル付き限定500台。

ちなみに先代の時に書きそびれたんですが、何故マルケジーニかというとレースでホイール交換が禁止されたから。

2019年式ZX-10R SE

最後はマルケジーニホイールと電子制御サスペンションのZX-10R SE/ZX1002H型。

今回は新たに自己修復能力を持つ塗装であるハイリーデュラブルペイントを採用。線キズや擦りキズ程度なら一週間程度で自己修復してしまう凄い塗装。

ちなみにE-G-HとF型が飛んでるのですが恐らくレースベース車両かと。

まあそんな事よりも何が変わったのかって話ですが、馬力とトルクが上がっていることからも分かる通りバルブ駆動を直打式からロッカーアーム(フィンガーフォロワー)式に変更した事が一番の変更点。

フィンガーフォロワー

これの狙いは色々あるんですが公式アナウンスによると

「バルブを軽くするため」

にあります。

というのも従来のカムがバルブを直接叩く直打式だとタペット(リフト)といって土台が必要になる。

直打式のタペット

そしてその土台もバルブにくっついて上下に動くので質量が、要するに重くなるわけです。

対してフィンガーフォロワー式というのはザックリいうとタペットをバルブから切り離してシリンダー側に持たせることでバルブの重さを軽くしている。

フィンガーフォロワーの仕組み

カワサキが言うには20%ほど軽くなったそうです。

なんでバルブを軽くする必要があるかというと、軽くすればバルブサージングを始めとしたバルブ(スプリング)がカムの速さについて行けず異常を起こす問題が起きにくくなるから。

結果として回転数を上げることが出来るわけでこれにより最大出力の回転数が500rpm上がっています。

エンジンパフォーマンス

これには他にも色々とメリットがあるんですが、中でも大きいのがカムだけでなくこのフィンガーフォロワーのレバー比によってバルブの開閉を大きく手助けできる事があります。

バルブというのは”大きく深く長く”開けた方が良いんだけどバルブを押すカムというのは回って押すものなので限度がある。

例えば直打式で大きく深く開けようとすると極端な話こんなカムになる。

カムプロフィールの問題

しかしこうするとバルブの動きも必然的に大きく急激な物になってしまうのでバルブへの負担が増し、カムからバルブが離れてしまうリフトや勢いよく閉じた反動で再び開いてしまうバウンスといった問題が起こってしまう。

しかも直打式だと背が高くなったカムを受ける為にタペットも比例して大きく(広く)しないといけないので、それだけ重量やスペースやフリクションロスが増えてしまうわけですね。

そこでカムだけではなくフィンガーフォロワーによるレバー比も利用、文字通りカムをフォローしてもらって開閉をすることでバルブへの負担を大きくすること無く大きく深く長いバルブ駆動にすることが出来た。

カムの干渉

カワサキ曰くこれは中速トルクの改善と、レース用のハイカム(尖ったカム)を入れるとヘッドが干渉してしまう事を解消するための狙いが大きんだとか。

先代までは干渉する部分を削って無理やり入れていたんだそう。

ちなみに

「じゃあどうして今まで採用されなかったのか」

というと摩耗する問題があったから。

カムの摩耗

嫌らしいくらい摩耗しそうな感じが見て分かると思います。

ましてとんでもない回転数になるSSだと相当過酷なものになる。

これが可能となったのはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)といって早い話が炭素コーティングが現実的なコストとなり可能になったから。

ダイヤモンドライクカーボン

このフィンガーフォロワー式を採用しているバイクはほぼ例外なくこのコーティングがされています。

さて・・・ZX-10Rは市販車最高峰レースSBKで速すぎる事から設けられたレブリミットのハンデを物ともせず2018年も世界チャンピオンになりました。

ジョナサン・レイ

これで

『メーカー&マシン&マニュファクチャラー』

の三冠を四連覇という偉業を達成。

それでも手を緩めることなくエンジンヘッドを丸ごと新設計し速さに磨きをかけたモデルチェンジとなったわけです。

サイドビュー

ただ正直に言うと今回の変更箇所であるフィンガーフォロワーというのはトンデモな改良というわけではありません。

これを採用しているSSは既に結構あり、アピールポイントとしては少し弱い。

じゃあこの2019年型ZX-10Rのアピールポイントが何かと言えば

『全く変わらなかったデザイン』

です。

2019年モデル

2019年型はクランクケースカバーがブラックになり、エンジンヘッドカバーが赤くなったくらいしか見た目の違いはありません。

そのためオートポリスで行われた新型発表会でも

「せめてメーターとハロゲンライトくらい変えろ」

という厳しい意見が海外メディアから相次ぎました。

2019年型ZX-10Rエンジン

この意見はごもっともで、せっかく新設計エンジンにしたんだから合わせてLEDヘッドライトや新形状のカウルにした方が新型アピールになり売れる・・・なのにそれをしなかった。

要するにこの2019年型ZX-10Rには

「変えるためのモデルチェンジ」

という商業的な要素が一切入っていないんです。

カワサキレーシングチーム

「勝つためのモデルチェンジ」

という先代から続く『志』を曲げずに貫き通した簡単には出来ない本当にスーパースポーツらしいピュアなモデルチェンジ。

2019年型ZX-10R

全く変わらなかったデザインこそがそれを証明する一番のアピールポイントであり、この2019年型ZX-10Rの魅力なんです。

主要諸元
全長/幅/高 2085/740/1145mm
シート高 835mm
車軸距離 1440mm
車体重量 206kg(装)
燃料消費率 16.8km/L
※WMTCモード値
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 998cc
最高出力 203ps/13500rpm
[204ps/13500rpm]
最高トルク 11.6kg-m/11500rpm
[11.7kg-m/11500rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/55ZR17(75W)
バッテリー YTZ10S
プラグ SILMAR9B9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.7L
交換時2.9L
フィルター交換時3.3L
スプロケ 前17|後39
チェーン サイズ525|リンク114
車体価格 1,910,000円(税別)
[2,710,000円(税別)]
{2,460,000円(税別)}
※[]内はRR(ZX1002G)
※{}内はSE(ZX1002H)
主要諸元
系譜図
GPZ750R1986年
GPX750R
(ZX750F)
ZXR7501989年
ZXR750
(ZX750H/J/L)
1996ZX-9R1994年
ZX-9R
(ZX900B)
1998ZX-9R1998年
ZX-9R
(ZX900C/D)
2000ZX-9R

2000年
ZX-9R
(ZX900E)

2002ZX-9R2002年
ZX-9R
(ZX900F)
2004ZX-10R2004年
ZX-10R
(ZX1000C)
2006ZX-10R2006年
ZX-10R
(ZX1000D)
2008ZX-10R2008年
ZX-10R
(ZX1000E)
2010ZX-10R2010年
ZX-10R
(ZX1000F)
2011ZX-10R2011年
ZX-10R
(ZX1000J/K)
2016ZX-10R2016年
ZX-10R/RR/SE
(ZX1000R/S/Z/C)
2019ZX-10R2019年
ZX-10R/RR/SE
(ZX1002E/G/H)
2021ZX-10R2021年
ZX-10R/RR
(ZX1002L/N/)

ZX-10R/RR/SE(ZX1000R/S/Z/C)-since 2016-

新型10R

「GET CLOSER」

5年ぶりのフルモデルチェンジとなったS型と、ABSレスのレースベースR型。

ブイブイ言わせていたSBKのレギュレーションが

「ライド・バイ・ワイヤ(完全電スロ)の標準装備」

に変更された事を機にモデルチェンジとなったわけです。

ZX1000R

目立つ変更点はトラコンやウィリーコントロールなどBOSCHとの共同開発IMU。

更にBrembo製マスターシリンダーにモノブロックキャリパーM50、シフトアップ用のクイックシフター。

そして

「他社の10年先を行くサスペンション」

と太鼓判を押すSHOWAとの共同開発により誕生したバランスフリーフロントフォーク(以下BFF)です。

バランスフリーフロントフォーク

仕組みが分からずとも、ただならぬ雰囲気を持っているのを感じるのではないんでしょうか。

これだけ買おうと思ったら100万円近くします。

ちなみにリアサスも同様にバランスフリーなわけですが・・・じゃあ

「バランスフリーって何がフリーなの」

と思っている人も多いと思います。

SHOWAの説明ではこうなっています。

ショーワバランスフリー

なるほど・・・全然分かりませんね。

もっとシンプルかつ大胆に割愛して説明します。

まず大前提としてダンパーには抵抗のためにオイルが入っています。矢印がオイルの流れだと思って下さい。

バランスフリー仕組み

この抵抗が無いとスプリングがずっと上下に動くことになり収束しません。

いつまでもフワフワするサスがヘタってるとか抜けてるとか言われるのは、このオイルによる働きが上手くいってないからですね。

バランスフリー

そしてこれがバランスフリー。何やら複雑になってますね。

通常サスが沈み込むとCOMP室(受け側)が高圧になり、TEN室(与える側)は低圧になります。

BF仕組み

こうなる事に問題はないんですが、問題はこの後の戻る時にあります。

想像がつくと思いますが、戻る時の勢いは押す時よりも強力で勢いよく戻ります。

そうすると勢い余って戻り過ぎてしまい、若干バウンドのような挙動が出てしまう。これを”サスの遊び”と言うそうです。

そこでもう一度バランスフリーを見てみましょう。

バランスフリー

バランスフリーは伸縮によって圧が掛かって通り抜けるオイルを単に逃すのではなく、反対側の後ろへ戻してるわけです。

こうすることで伸側と縮側の圧を平衡に保つ事ができ、サスの遊びが無くなるというわけ。

BFF

平衡(バランス)を保つ(フリー)からバランスフリーサスです。

さて・・・カワサキは2013年にWSBチャンピオンに輝いた後も、手を抜くことなく2015年から2017年まで三連覇を達成。

ワールドチャンピオン

その結果、あまりにも強すぎるとしてレギュレーションが改定されました。

2017年まで15200rpmだった四気筒の回転数上限が14700rpmまでに下げられたんですが、カワサキは強すぎるので更に-600rpmというハンデが課せられました。

2017年に登場したZX-10RR(ZX1000Z)は、これらレースに対応の為に新たに出されたホモロゲーションモデルです。

ZX-10RR

簡単に言うと公式チューニングが施された特別エンジンを積んだ一人乗り専用モデルで、マルケジーニホイールまで装備。

2,532,600円で限定500台でワークスも2018年からはこのZX-10RRベースなんですが、恐ろしいことに今(※2018年R2時点)のところはハンデを物ともせずポイントリーダーに立っています。

このままだと途中から更に-250rpmのハンデが加わります。

ジョナサン・レイ

ちなみに三連覇を果たしたのはジョナサン・レイという方なんですが、なんと2018年の鈴鹿8耐にTEAM GREEN(実質ワークス)での参戦が決定。

前人未到の四連覇を目論むヤマハ(ヤマハファクトリーレーシング)と、それを阻止せんと重い腰を上げたホンダ(HRC)のワークス対決かと思いきや、カワサキもスーパーバイク世界チャンピオンをぶつけてZXR-7以来となる優勝を目指すという・・・もうこれは見るしか無いですね。

話をZX-10Rに戻します。

2018年にはRRとはまた違うZX-10R SE/ZX1002Cという2,856,600円もするSPモデルも登場。

ZX-10R SE

これはシフトアップダウン両対応のクイックシフターとマルケジーニに加えSHOWAの電子制御サス(EERA)を装備したモデル。

電子制御バランスフリーサスペンションというだけでも十二分に凄いんですが、この電子制御が凄い点は2つあります。

一つはIMUによる予測型ではなく、センサー内蔵でストローク量を実際に監視している実測型だということ。

そしてもう一つは制御がサーボモーターではなく、2倍の速さで制御出来るソレノイドバルブ制御だということ。

ZX-10RのEERA

つまり正真正銘の、私達が思う理想の電子制御サスペンションに最も近いモデルだという事。

そしてそんなサスを付けた第一号がこのZX-10R SEなんです。

ZX-10RSE壁紙

KAWASAKIとSHOWAって本当にベストパートナーなんでしょう・・・SHOWAってHONDAのグループ会社なんですけどね。

最後に・・・

ZX1000Sボディ

このR/S型を先代からのマイナーチェンジ程度に考えている人が多いんじゃないかと思います。

2018ZX-10R

そう思われてしまう最大の理由は見た目が大きく変わっていないからでしょう・・・でもそれは違いますよ。

プロジェクトリーダーの松田さんがこう仰ってました。

前後

「トラックで良いバイクというのは、ストリートでも良いバイクであると考えています。

だから”トラック最速”をコンセプトにラップタイム短縮に繋がる所『エンジン・電子制御・サス・ブレーキ』に予算を全て投じました。」

RIDEOLOGY

「デザインが変わってないのはデザインに予算を割かなかったからです。」

売るためのモデルチェンジではなく、改良するためのモデルチェンジ。重工らしい渋さですね。

主要諸元
全長/幅/高 2090/740/1145mm
シート高 835mm
車軸距離 1440mm
車体重量 206kg(装)
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 998cc
最高出力 200ps/13000rpm
最高トルク 11.6kg-m/11500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/55ZR17(75W)
バッテリー YTZ10S
プラグ SILMAR9B9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.7L
交換時2.9L
フィルター交換時3.3L
スプロケ 前17|後39
チェーン サイズ525|リンク114※16年モデル
[サイズ525|リンク112]※17年モデル
車体価格 2,045,000円(税別)
※スペックはマレーシア仕様
系譜図
GPZ750R1986年
GPX750R
(ZX750F)
ZXR7501989年
ZXR750
(ZX750H/J/L)
1996ZX-9R1994年
ZX-9R
(ZX900B)
1998ZX-9R1998年
ZX-9R
(ZX900C/D)
2000ZX-9R

2000年
ZX-9R
(ZX900E)

2002ZX-9R2002年
ZX-9R
(ZX900F)
2004ZX-10R2004年
ZX-10R
(ZX1000C)
2006ZX-10R2006年
ZX-10R
(ZX1000D)
2008ZX-10R2008年
ZX-10R
(ZX1000E)
2010ZX-10R2010年
ZX-10R
(ZX1000F)
2011ZX-10R2011年
ZX-10R
(ZX1000J/K)
2016ZX-10R2016年
ZX-10R/RR/SE
(ZX1000R/S/Z/C)
2019ZX-10R2019年
ZX-10R/RR/SE
(ZX1002E/G/H)
2021ZX-10R2021年
ZX-10R/RR
(ZX1002L/N/)

ZX-10R(ZX1000J/K)-since 2011-

2011年型ZX-10R

「Explore The Limit、限界への探求」

カワサキ曰く、先代までの多岐に渡る改良は全部マイナーチェンジで、これが10Rとしては初めてのフルモデルチェンジなんだそう。

まあ確かに先代F型とこのJ/K型の変化に比べれば、これまでの変更は些細と言えなくもない話。

というのもこのモデルで造りが180度変わりました。

先代との比較

従来のメインシャフトを押し下げたエンジンをバックボーンから吊り下げる様な形だった独自レイアウト(写真左)を止め、メインシャフトを押し上げた三軸レイアウトをツインスパーで挟むレイアウト(写真右)になったから。

要するにSSとしては非常にオーソドックスな形になったわけです。

Engine

このおかげで先代まで続いた牙というか棘が嘘のように乗りやすいSSになりました。

ただし、じゃあ無個性になっちゃったのかというとそうでもなく、相変わらずカワサキらしい独自色というか挑戦している箇所があります。

それはクラストップの200馬力でも、ビッグピストンフォークでも、カワサキ自慢のトラコンでもありません。

ホリゾンタルバックリンクリアサスペンション

ホリゾンタル・バックリンク・リアサスペンション(Horizontal Back-link Rear Suspension)です。

長い名前ですが、要するにサスペンションを水平にしたもの。

これですね・・・実はサスとしてはあんまり良くない。

なんでもここまで寝かせてしまうと、極限状態ではトラクション感が薄れてしまうんだとか。

「じゃあなんで採用したの」

って話ですよね。

2011ZX1000J

これを採用した理由の一つはマスの集中化。

ホリゾンタル・バックリンク・リアサスペンションはリンクも上に付いているから下が大きく空く。

そこに大容量の触媒入りの膨張室、俗にいう弁当箱を置くことが出来る。

キャタライザー

これは重く中心から離れているサイレンサーを少しでも軽く、そして少しでも短くしてマスに近づけるため。

ZX-10Rのマフラーが小さいのは、このホリゾンタル・バックリンク・リアサスペンションによる弁当箱スペースの大幅確保にあるんです。

2013ZX-10R

非常に熱くなる弁当箱と離すことでリアサスを熱から守ることにも繋がり、熱ダレを防ぐメリットもあります。

ただ、一番の狙いはそれじゃない。

一番の狙いはリアサスを受け止めるアッパークロスの位置です。

アッパークロスはサスペンションからの荷重で折れたり曲がったりしないよう強くある必要がある。

アッパークロス

だから上の写真の様にメインフレームの左右に橋を架けるようになっているのが普通。

そしてこれは視点を変えるとフレームの補剛(剛性アップ)にも繋がっているわけですが、そこで問題となるのがコーナリングに大事なフレームの”しなり”です。

ZX1000JKカタログ写真

リアのスイングアームからの力はピボット(スイングアームとメインフレームの付け根)まで伝わって来る。

この時、従来の起きているリンクサスだとアッパークロス、つまり補剛部がピボットの直ぐ上にある為に簡単にはしなってくれない。

アッパークロスとピボットの位置

対してホリゾンタル・バックリンク・リアサスペンションなら、アッパークロスをピボットから離れた位置に持ってこれるからピボット部の剛性を不用意に上げる事なく柔軟に”しならせる事”ができる。

2012ZX-10R

地面を舐めるようにしなってくれるから安心してアクセルを開けられる。

多少の事は受けて止めてくれるから大きく開けていける。

このJ/K型が持っている懐の広さ、そしてオリジナリティはここにあるわけです。

オーリンズ共同開発ステアリングダンパー

更に2013年にはオーリンズのステアリングダンパーのアップグレードが行われました。

一見普通に見えるけど実はカワサキがオーリンズと共同開発の電子制御式なステダン。

そして忘れちゃいけないのは2013年にカワサキとしては初となるSBKワールドチャンピオンに輝いたということ。

サイクス10R

ZX-10Rのコンセプトであった

「サーキット性能No1」

を5代目にして遂に証明したわけです。

主要諸元
全長/幅/高 2110/710/1135mm
シート高 815mm
車軸距離 1415mm
車体重量 198kg(装)
[201kg(装) ]
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 998cc
最高出力 151ps/10000rpm
{200ps/13000rpm}
最高トルク 10.8kg-m/10000rpm
{11.7kg-m/11500rpm}
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/55ZR17(75W)
バッテリー YTZ7S
[YTZ10S]
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.7L
交換時2.9L
フィルター交換時3.3L
スプロケ 前17|後39
チェーン サイズ525|リンク112
車体価格 1,520,000円(税別)
[1,648,572円(税別)]
※スペックはマレーシア仕様
※[]内はABSモデル(ZX1000K)
※{}内はEU仕様
系譜図
GPZ750R1986年
GPX750R
(ZX750F)
ZXR7501989年
ZXR750
(ZX750H/J/L)
1996ZX-9R1994年
ZX-9R
(ZX900B)
1998ZX-9R1998年
ZX-9R
(ZX900C/D)
2000ZX-9R

2000年
ZX-9R
(ZX900E)

2002ZX-9R2002年
ZX-9R
(ZX900F)
2004ZX-10R2004年
ZX-10R
(ZX1000C)
2006ZX-10R2006年
ZX-10R
(ZX1000D)
2008ZX-10R2008年
ZX-10R
(ZX1000E)
2010ZX-10R2010年
ZX-10R
(ZX1000F)
2011ZX-10R2011年
ZX-10R
(ZX1000J/K)
2016ZX-10R2016年
ZX-10R/RR/SE
(ZX1000R/S/Z/C)
2019ZX-10R2019年
ZX-10R/RR/SE
(ZX1002E/G/H)
2021ZX-10R2021年
ZX-10R/RR
(ZX1002L/N/)

ZX-10R(ZX1000F)-since 2010-

10年式ZX-10R

「ニューステージへ」

ほぼ一年限りとなるZX-10R史上もっともレアなF型。

内容はマイナーチェンジに近く、見た目の内容としてはアッパーカウルが目尻に溝が入ったワンピースになり、インナーカウルを装着。

08-10比較

左がE型で右がF型。

さらにマフラー・ハンドル・ステップ、そしてシフト周りの改良が入っています。

先代でも言った通りE/F型はプロダクションタイヤ前提開発という割り切り、上級者の為のSSという立場だったからお世辞にも巷で人気とは言えなかった。

ZX1000Fパンフレット写真

でもその分、トラックユース重視の人達、要するに上級者には本当に評判が良かったです。

それは単に性能が良いから、速いからではありません。

じゃあどういう事かというと、MotoGPマシンZX-RRのエンジンを担当し、後のZX-10Rプロジェクトリーダーでもある松田さんが分かりやすく言い表していました。

ZX1000Fの顔

「F型は刀の切っ先が自分の方にも向いている諸刃の剣」

とても優れているけど、扱いを間違えると自分に返ってくる。

『予断を許さない真剣な楽しさが味わえるSS』

というわけです。

主要諸元
全長/幅/高 2110/710/1135mm
シート高 830mm
車軸距離 1415mm
車体重量 208kg(装)
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 998cc
最高出力 162ps/10000rpm
最高トルク 11.5kg-m/8700rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/55ZR17(75W)
バッテリー YT12B-BS
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量4.0L
交換時3.2L
フィルター交換時3.7L
スプロケ 前17|後41
チェーン サイズ525|リンク108
車体価格 1,360,000円(税別)
※スペックはマレーシア仕様
系譜図
GPZ750R1986年
GPX750R
(ZX750F)
ZXR7501989年
ZXR750
(ZX750H/J/L)
1996ZX-9R1994年
ZX-9R
(ZX900B)
1998ZX-9R1998年
ZX-9R
(ZX900C/D)
2000ZX-9R

2000年
ZX-9R
(ZX900E)

2002ZX-9R2002年
ZX-9R
(ZX900F)
2004ZX-10R2004年
ZX-10R
(ZX1000C)
2006ZX-10R2006年
ZX-10R
(ZX1000D)
2008ZX-10R2008年
ZX-10R
(ZX1000E)
2010ZX-10R2010年
ZX-10R
(ZX1000F)
2011ZX-10R2011年
ZX-10R
(ZX1000J/K)
2016ZX-10R2016年
ZX-10R/RR/SE
(ZX1000R/S/Z/C)
2019ZX-10R2019年
ZX-10R/RR/SE
(ZX1002E/G/H)
2021ZX-10R2021年
ZX-10R/RR
(ZX1002L/N/)

ZX-10R(ZX1000E)-since 2008-

08年式

「究極のスーパースポーツ」

これまたガラッと雰囲気が変わった三代目ZX-10RのE型。

前モデルまでの丸みを帯びたデザインから一転し角々したものへ変わりました。

2008ZX-10R

なんでも自前の設備で空力学を突き詰めたところ、前面投影面積を減らすこの角ばったデザインの方が有利なんだとか。

ちなみにそれに一役買ってるのが変なところに付いてるウィンカーなんですが、このASSY(一式)をミラー屋に造らせるかウィンカー屋に造らせるかでモメたんだとか。

そして何よりセンターアップも始めたと思ったらあっさり止めたわけです・・・が、まあこれにも先代に引き続き切実な理由があるんですよ。

2008ZX-10Rカタログ写真

先代D型でカワサキはユーザーに歩み寄りました。

とっても素直になったわけですが・・・

「カワサキのSSは上級者向け」

というイメージというか先入観を払拭するには至らなかった。

zx1000e

「じゃあもういいよ」

と言ったかは定かじゃないけど、そうなったと思わせるのが

「プロダクションタイヤ前提の開発」

という、いくらSSといえどやり過ぎなほど割り切ったというか開き直った開発。

08ZX-10Rネイキッド

それが分かりやすく出ているのがダイヤモンドコーティングされたフロントフォークを始めとしたサスペンション。

日常使いを全く考えていない外車かと思うほど高荷重前提で、とてつもなく硬い。

08ZX10R

エンジンもデュアルFI化で馬力が更に13馬力も向上しているんですが、あくまでも高回転での出力向上がメインで低回転は潔いほど捨てています。

他にもスイングアームをプレス成型ビームによる新設計にして剛性を18%もアップしてガッチガチ。

もう本当にトラックユース、またはキッチリ走れる人の事しか考えていない。

08ZX10R_JSB1000

「乗れるもんなら乗ってみろ」

という初代へ原点回帰というより、初代を更に研ぎ澄ませたようなスーパースポーツ。

主要諸元
全長/幅/高 2110/710/1135mm
シート高 830mm
車軸距離 1415mm
車体重量 179kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 998cc
最高出力 162ps/10000rpm
最高トルク 11.5kg-m/8700rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/55ZR17(75W)
バッテリー YT12B-BS
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量4.0L
交換時3.2L
フィルター交換時3.7L
スプロケ 前17|後41
チェーン サイズ525|リンク108
車体価格 1,320,000円(税別)
※スペックはマレーシア仕様
系譜図
GPZ750R1986年
GPX750R
(ZX750F)
ZXR7501989年
ZXR750
(ZX750H/J/L)
1996ZX-9R1994年
ZX-9R
(ZX900B)
1998ZX-9R1998年
ZX-9R
(ZX900C/D)
2000ZX-9R

2000年
ZX-9R
(ZX900E)

2002ZX-9R2002年
ZX-9R
(ZX900F)
2004ZX-10R2004年
ZX-10R
(ZX1000C)
2006ZX-10R2006年
ZX-10R
(ZX1000D)
2008ZX-10R2008年
ZX-10R
(ZX1000E)
2010ZX-10R2010年
ZX-10R
(ZX1000F)
2011ZX-10R2011年
ZX-10R
(ZX1000J/K)
2016ZX-10R2016年
ZX-10R/RR/SE
(ZX1000R/S/Z/C)
2019ZX-10R2019年
ZX-10R/RR/SE
(ZX1002E/G/H)
2021ZX-10R2021年
ZX-10R/RR
(ZX1002L/N/)