「ワインディング エリート」
二代目となるZRX1200R/SのZR1200A/B型。
このモデル何が恐ろしいって一見すると排気量しか変わっていないように見えて実は大きく変わっている事。
ナンバリングにもなっている通りボアを3mm、ストローク1.4mm拡大され1164ccとなっているわけですが、これほぼ作り直したエンジン。
元々GPZ900Rにルーツがあるエンジンだったため、1100までは想定していたものの流石に1200まで上げるのは無理だった。
そこでスリーブ(シリンダーの内張りみたいなもの)を取っ払ってメッキシリンダー化。それに伴いクランクケースに至るまで色々と手を加えたので実は先代とあまり互換性が無い。
フレームの方もヘッド周りの剛性を上げ、スイングアームも剛性を大幅に上げつつホイールベースを13mm延長すると共にピボット位置も5mm下げ。
足回りもリアショックの受け側を下げ180/55にワイド化し、フロントフォークのオフセットやセッティングを見直しなどなど。
「まさかそこまで変更されていたとは・・・」
と思った人が多いと思います。そう思うのも当たり前な話。見た目はほとんど変えていないんですから。
この二代目を託された企画の真田さんいわく
「先代を踏襲し正常進化」
というのがコンセプト。ザックリ言うとより懐の広いモデルにするためのモデルチェンジ。
そんな中でもパッと見で大きく変わったのが、丸目のIIに変わって登場したZRX1200S/ZR1200B型。
丸目同様に国内では1000台弱しか売れなかった様なので知らない人も多いかと。
まあこれは日本向けというより当たり前の様に何泊もするツーリングをする欧州向けに造られた意味合いが強いモデルですしね。
その際にビキニカウルのRはどうしても不向きな所があり、もっと長距離ツーリングに使えるようにしてほしいという強い要望があったから造られたモデルなのがこのS型。サスペンションのセッティングも変えてあります。
更にマイナーなのがZRX1200/ZR1200C型というモデル。
1200にも丸目モデルあったんですね。欧州のみで販売されていたようです。
一方でこのモデルからアメリカにも輸出されるようになったんですが向こうはRモデルだけ。
元ネタである伝説のローソンはアメリカだから当然か。
ちなみにローソンレプリカも古い歴史なので少しだけ解説すると1981年に北米カワサキの要望によりAMAで勝つためにベースマシンとしてZ1000Jを造ったのが始まり。
それをベースにカスタマイズしたのが初のライムグリーンZことKZ1000J改で、このモデルでAMAチャンピオンに輝いたのがエディー・ローソンという方。
この快挙を記念して出されたのがローソンのJ改レプリカであるR型ことKZ1000RとKZ1100Rになります。
これがローソンレプリカの始まりなんですが、意外なことに当時の車体設計を担当していた山崎さんいわく社内でローソンレプリカといえばR型ではなくS型の方だったそう。
S型というのはこのKZ1000SというモデルでAMA連覇を狙って補強を始めとしたフルチューニングが予め施された今で言うホモロゲーションモデル。製造はレギュレーションで定められた規約の最低台数である30台のみ。
つまりホモロゲ(S型)の方をローソンレプリカと呼んでいて、ローソンレプリカ(R型)をローソンレプリカと呼んでいたわけじゃなかった・・・頭がこんがらがる。
ただZRXも正確に言うとR1のレプリカというよりこのS1のレプリカと言ったほうが正しいかと思います。
写真では分かりにくいんですが採用前提で開発されたトラス構造パイプスイングアームやエキセントリック式チェーンアジャスターはS型のものですしね。
社内の人間にとってはSの方がローソンレプリカだったという驚愕の事実だったんですが、もう一つ驚きなのが
「ローソンレプリカがこれほどの人気ブランドになるとは誰も思っていなかった」
という事。
当時はZ人気に陰りが見え始めていた頃だったのに加え、少し経つとGPZ(第二世代Z)への世代交代に成功していたから。
更にその後もZZRやZX-9Rなどカワサキのフラッグシップがどんどん出た。
・・・にも関わらずローソンレプリカの人気はカワサキの意向に反するように一向に衰えなかったんです。
でもだからこそこうやって再び日の目を見る事が出来た。元祖ローソンモデルに携わられてた山崎さんもこう仰られていました。
「ローソンレプリカはZやGPZとは全く違う。ユーザーの皆さんが育ててくれた幸運なブランドですね。」
※2004年:給排気の見直しとピボット位置の調整
主要諸元
全長/幅/高 |
2120/780/1150mm [2120/780/1230mm] |
シート高 |
790mm |
車軸距離 |
1465mm |
車体重量 |
223kg(乾) [227kg(乾)] |
燃料消費率 |
25.5km/L ※定地走行テスト値 |
燃料容量 |
18.0L |
エンジン |
水冷4サイクルDOHC4気筒 |
総排気量 |
1164cc |
最高出力 |
100ps/8000rpm |
最高トルク |
10.4kg-m/6000rpm |
変速機 |
常時噛合式5速リターン |
タイヤサイズ |
前120/70ZR17(58W) 後180/55ZR17(73W) |
バッテリー |
FTZ14-BS {TYX14-BS1※04以降} |
プラグ |
CR9EK または U27ETR |
推奨オイル |
カワサキ純正オイルR4/S4 または MA適合品SAE10W-40 |
オイル容量 |
全容量3.5L 交換時2.7L フィルター交換時3.0L |
スプロケ |
前17|後42 |
チェーン |
サイズ530|リンク110 |
車体価格 |
960,000円(税別) [990,000円(税別)] ※[]内はZRX1200S(ZR1200B) |
系譜図