ZX-12R(ZX1200A/B)-since 2000-

ZX-12R

「新世代フラッグシップ」

いろんな意味で有名なZX-12R。そのせいか今となっては中古が高止まりでプレミア化しています。

いわゆる変態バイク的な扱いをされる車種な為かネタばかりが先行して真面目に書かれてる所が少ないのでここでは真面目に紹介したいと思います。

ZX-12Rカタログ

まず細かいことを言うとZX-12RはZZR1100の後継ではありません。しかし一方で後のZZR1400やZX-14Rの礎となったモデルでもあります・・・ややこしいですね。

礎になったと言われる最大の理由はエンジンの横ではなく上を通る量産車で初となるバックボーン型モノコックフレームの始まりがここだから。

ZX-12Rフレーム

これはスケールアップによって肥大化する車体幅を抑えるため。

一般的なツインスパーフレームはエンジンの横を通す必要性がある為、どうしても幅が大きくなってしまうで上を通そうというのがバックボーン。

フレームにエアクリーナーやバッテリーボックスなどフレーム以外の役割も請け負わせて一石二鳥によるというのがモノコック。

合わせてバックボーン型モノコックフレームというわけ。

カワサキはもともとレーサーの方ではこのバックボーンモノコックフレームを開発しレースに参戦していました。

KR500

1982年のWGPレーサーKR500これが元ネタ・・・かと思いきや違う。

ZX-12Rのフレームは車体設計の古橋さんが10年以上を掛けて練っていた一から考えられた構想なんです。

GPZ900R外装のモノコック、ZX-9R外装のモノコックなどを造り

モノコックフレーム

「モノコックにすればこれだけスリムに出来る」

と社内で何度も熱くプレゼンした結果、遂にZX-12Rで採用される事になったという経緯があります。

ただ試作機が出来た時はあまりにも見慣れない形だった為に誰も乗りたがらず、結局テスト走行は古橋さん本人がやる羽目になったんだそう。

そしてそんな個性的なフレームに負けず劣らず凄いのが完全新設計のエンジン。

ZX-12Rエンジン

剛性メンバー(フレーム)の一部として個性的なフレームに合わせて造られた新設計のもの。

ZX-12R銀

B/S比も83.0mm×55.4mmとかなりのビッグボア型で低速トルクが1200ccと思えないほどなく、このクラスにも関わらずかなりブンブン回して走らせるタイプ。

ZX1200Aカタログ

狙いはもちろんGPZ900Rの頃からよりもずっと前、Z1の頃からこだわってきた

『世界最速』

を成し遂げるため。

そのためにこんな極端なボアストローク比のエンジンになっているんですが、ここで終わらないのがZX-12Rの凄い所。

独自の車体設計に加えて航空部門の技術者を招致し、エアロダイナミクスも徹底したんです。

ZX-12Rエンジン

どストレートに来ている吸気口や弾丸のようなミラー、そしてサイドカウルに設けられたウィングなどが正にその証。

MotoGP系で話題になっているウィングをカワサキはこの段階でやっていたわけです。

とにかく何もかも新しい技術が詰め込まれたZX-12R。

完全新設計にも関わらず排気量は抑え気味に1199ccという排気量を選んだのは間違いなく技術力を示すためでしょうね。

ZX-12Rエアフロー

しかし・・・当時はそれほど暖かく迎え入れられる事はありませんでした。生産終了した今のほうが騒がれてるんじゃないかと思うほど。

その理由の一つに”扱いにくい”というイメージが先行した事があります。

「ZX-12Rは曲がらない」

「最高速だけを取ったバイク」

とか言われるのを聞いたことがあると思います。

ZX-12R広告

何故こういう印象を与えてしまったのかというと想定域が高すぎたから。

例えばバイクはフレームが捩れる事で初めて綺麗に曲がれるわけなんですが、その捩れるポイントがこのZX-12Rは圧倒的に高い。

それに加え200/50のタイヤなども加わって曲がらない寝ないバイクという印象が立ってしまった。

これはカワサキらしい伝統のハンドリングともいえ旧来のカワサキを知るオーナー達にとっては

「簡単には曲がってくれない感が面白い」

と好評だったんですけどね。

ただパタンパタンと簡単に寝るSSがトレンドだった当時はそれを認めてくれる人があまり居なかった。

2002年にはそれらネガな部分を潰した後期(通称B型)が登場。

ZX-12R後期

140箇所以上にも及ぶ改良によって若干フレンドリーに変更。

見た目の方もライト形状の変更に加え、ただの筒だったラムエアダクトをカウル形状に合わせた物になりました。

ZX-12R後期サイド

さらにフロントフォークとブレーキがZX-10Rと同じラジアルマウント式に変更・・・多分モデルチェンジでの一番の恩恵はこれかと。

怒涛の加速と直進安定性で

「ZX-12Rは危ない」

とかネタで言われたりするんですが、そのネタの中にもは制動力の無さも関係してたり・・・まあこの頃のクラスはみんなブレーキに様々な悩みを抱えてたのでZX-12Rに限った話でもないですけどね。

今にして思えばSSとメガスポーツその両方を足して2で割った様なバイクでした。

主要諸元
全長/幅/高 2080/725/1185mm
[2085/740/1200mm]
シート高 810mm
[820mm]
車軸距離 1440mm
[1450mm]
車体重量 210kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 20.0L
[19.0L]
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1199cc
最高出力 178ps/10500rpm
[178ps/9500rpm]
最高トルク 13.8kg-m/7500rpm
[13.7kg-m/7500rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後200/50ZR17(75W)
バッテリー YTX14-BS
プラグ CR9EKPA
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.6L
交換時2.5L
フィルター交換時2.8L
スプロケ 前18|後46
チェーン サイズ530|リンク116
車体価格 [1,250,000円(税別)]
※A型はUS仕様
※[]内B型はマレーシア仕様
系譜図
gpz900r 1984年
GPZ900R
(ZX900A)
gpz1000rx 1986年
GPZ1000RX
(ZX1000A)
zx-10 1988年
ZX-10
(ZX1000B)
zzr1100 1990年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100C)
zzr1100 1993年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100D)
ZX-12R 2000年
ZX-12R
(ZX1200A/B)
zzr1200 2002年
ZZR1200
(ZX1200C)
zzr1400 2006年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400A/B)
1400GTR ZG1400A 2008年
1400GTR
CONCOURS14
(ZG1400A/B)
zx-14 2008年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400C/D)
ZG1400C/E 2010年
1400GTR ABS
CONCOURS14
(ZG1400C/D/E)
ZX-14R 2012年
ZX-14R
(ZX1400E)

ZZ-R1100(ZX1000D)-since1993-

ZX1100D

「A Legend in Its Time」

四年目にして早々とモデルチェンジとなったZZR1100後期型の通称D型。

目立った変更としては

・フレーム改良
・ローター径アップ
・リアタイヤ180/55化
・ラムエアダクトのデュアル化
・デザインのブラッシュアップ
・細部の不具合潰し

【1995年モデル】

・騒音規制対応マフラー
・スプロケ丁数の変更
・サスペンションの変更
・キャブレターの変更
・ミッションの改良

【1998年モデル】

・触媒入りマフラー

【2001年モデル】

・メーターが320km/hから280km/hに

などなど改良は多岐にわたっています。

ZZR1100カタログ

ところでZZRというと上の写真を見てもらうと分かる通り

「ZZR」「ZZ-R」

と2パターンの書き方があるんですが、実はこれどちらも正解。仕様地や年度によってバラバラなんです。

ただ2000年ごろから”ZZR”で統一するようにしたよう。だからZZR1100はZZ-Rでもいいんでしょうけどね。

あと発音の方ですが

「ゼットゼットアール」「ズィーズィーアール」

と色んな呼ばれ方をされていますが、カワサキの開発者はズィーズィーアールと言っていたのでズィーズィーアールと読むほうが混乱が少ないかと思います。

ZX1100D4

さてZZR1100は日本のみならず世界的に認められていたんですが、じゃあなんでZZRはそんなに評価されたのか当時を知らない方も多いと思うので少しお話を。

ZZR1100はどうしても

「最高速が凄かったバイク」

という紹介やイメージが先行してしまうんですが、人気となった秘訣は実はそこじゃないんです。

zz-r1100d

人気となった理由はスラントノーズやウイングのようなテールカウルなどエアロダイナミクスを更に進化させた他にない空気を醸し出しているカウルデザインだったのも勿論あるんですが、一番は

「圧倒的なパワーなのに軽快感があったから」

なんですね。

ZZR1100D透視図

これは当時としてはコンパクトに纏めた車体と前後17インチによるもので、ZZRがすごく評価されのは実はこのハンドリングなんです。

でもこれ偶然じゃないんですよ。これこそが開発陣がZZR1100開発で非常に大事にしたこと。

何故ならZZR1100は

『カワサキが考えるスーパースポーツ』

というのがコンセプトだったから。

直線番長だけではなくツーリングでも、街乗りでも、峠でも、サーキットでも、どんなシチュエーションでも敵なしといえるバイクこそがスーパースポーツという考え。

ZZR1100カタログ

だからこそハンドリングに凄くこだわったんです。

これはデザイン担当の青木さんを始めZZRに関わった人みんなが口を酸っぱくして何度も言ってる大事なこと。

そのコンセプトをまざまざと示したのがこのD型。

多くの改良をしたにも関わらずC型から馬力は1馬力も上がっていないんです。理由はもちろんトップスピードだけがコンセプトじゃないから。

ZZR1100カタログ

元祖最高速バイクというイメージが先行しがちですが正しくは

『カワサキ流スーパースポーツ』

というのがZZR1100のコンセプトであり、絶賛された部分でもありました。

主要諸元
全長/幅/高 2165/730/1205mm
シート高 780mm
車軸距離 1480mm
車体重量 233kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 24.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1052cc
最高出力 147ps/10500rpm
最高トルク 11.2kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTX14-BS
プラグ CR9E
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量4.0L
交換時3.2L
フィルター交換時3.5L
スプロケ 前17|後44
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格
系譜図
gpz900r 1984年
GPZ900R
(ZX900A)
gpz1000rx 1986年
GPZ1000RX
(ZX1000A)
zx-10 1988年
ZX-10
(ZX1000B)
zzr1100 1990年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100C)
zzr1100 1993年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100D)
ZX-12R 2000年
ZX-12R
(ZX1200A/B)
zzr1200 2002年
ZZR1200
(ZX1200C)
zzr1400 2006年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400A/B)
1400GTR ZG1400A 2008年
1400GTR
CONCOURS14
(ZG1400A/B)
zx-14 2008年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400C/D)
ZG1400C/E 2010年
1400GTR ABS
CONCOURS14
(ZG1400C/D/E)
ZX-14R 2012年
ZX-14R
(ZX1400E)

ZZ-R1100(ZX1000C) -since1990-

ZZR1100 ZX1100C

「世界一の動力性能」

リッターオーバー車の方向性を決定付けたといえるZZR1100の前期C型。ちなみに北米ではZX-11という車名だった事からイレブンという愛称で呼ばれたりもしています。

ZX-11

先代ZX-10をベースにボアを2mm拡大しつつシリンダー傾斜角を2°増、更にピストンやコンロッドも新設計で高回転寄りにして1052cc/147馬力というクラストップの147馬力をマーク。

ストック状態で280km/hまで達する性能で時速300km/hが見えてきたと話題になりました。

※一部雑誌では300km/h超えをマーク

ZZR1100は頭一つ抜きん出ていた速さを持っていたわけですが、この理由の一つはこれ。

F40

0-1000で20秒台を記録し当時世界最速と言われていたフェラーリのF40。

これをベンチマークにし、超える事がZZR1100の目標だった。そのために専用のカウンターまで用意。

最終的に完成したZZR1100は0-1000を18.9秒と19秒台どころか18秒台に。※KBM1999/7より

ZZR1100 C型

ここまでの速さを身につけられた秘訣は、タンクが盛り上がっているにも関わらずガソリン容量が先代から1L減ってる事から見ても分かるように大容量のエアクリーナーボックスなのが一つ。

そしてもう一つがそれに合わせて備え付けられた特徴的なラムエアダクト。

1990ZX11000C

走行風をダイレクトにエアクリーナーに取り入れる事で空気を加圧するセルフターボの様な仕組みで、初出はZXR250なんですが世間が大々的に認知するようになったのはこのZZR1100から。それほどZZR1100のインパクトは強かった。

・・・ただし今でこそ名車として有名なZZR1100ですが、モーターショーでは同時発表されたゼファーに話題を全て持って行かれ影に隠れていました。

1989東京モーターショーZZR

カワサキ自身も国内では750自主規制もあって売れないと考えていたのかアピールしなかった事もあるかと。

じゃあどうやって人気が広まったいったのかというと雑誌などのインプレッション。それまでとは一線を画する速さを持っていることがテストや最高速アタックで白日の下に晒される事になったんです。

ZX-11C

この事で初めてとんでもない性能のバイクだということが多くの人に認知さるれとジワジワと人気が出始め、限定解除や逆輸入という当時としては非常に高いハードルがあったにも関わらず大人気モデルに。一時は弾不足で高騰すら招きました。

※国内登録台数(RIDERSCLUB98/12)

90年1,992台
91年2,626台
92年2,169台
93年623台

1990ZX11000C

ZZR1100はカワサキがGPZ1000RX、ZX-10と止めずに拘り続けた姿勢が報われたモデルであると同時に

「リッターオーバーの方向性を決定づけた」

ともいえるパイオニアの様なモデルでした。

主要諸元
全長/幅/高 2165/720/1210mm
シート高 780mm
車軸距離 1480mm
車体重量 228kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 21.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1052cc
最高出力 147ps/10500rpm
最高トルク 11.2kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70VR17(58V)
後170/60VR17(72V)
バッテリー YB14L-A2
プラグ CR9E
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量4.0L
交換時3.2L
フィルター交換時3.5L
スプロケ 前17|後45
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格
系譜図
gpz900r 1984年
GPZ900R
(ZX900A)
gpz1000rx 1986年
GPZ1000RX
(ZX1000A)
zx-10 1988年
ZX-10
(ZX1000B)
zzr1100 1990年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100C)
zzr1100 1993年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100D)
ZX-12R 2000年
ZX-12R
(ZX1200A/B)
zzr1200 2002年
ZZR1200
(ZX1200C)
zzr1400 2006年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400A/B)
1400GTR ZG1400A 2008年
1400GTR
CONCOURS14
(ZG1400A/B)
zx-14 2008年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400C/D)
ZG1400C/E 2010年
1400GTR ABS
CONCOURS14
(ZG1400C/D/E)
ZX-14R 2012年
ZX-14R
(ZX1400E)

ZX-10(ZX1000B)-since1988-

ZX-10

「INTRODUCING A NEW BALANCE OF POWER」

二年でフルモデルチェンジされた後継となるZX-10。

フレームがアルミツインスパーのe-BOXフレームとなり、エンジンもヘッドとピストンの見直しで16kgもの軽量化&12psアップで再び世界最速に。

ホイールも不評だった前後16インチというクラスにあるまじき小径から主流だった17/18インチへと変更。

ZX-10ボディ

ZX-10の狙いはズバリこのラジアルタイヤにしたかったのが最大の狙い。

このおかげでゼロヨン10.5秒、最高速度270km/hと文句なしの性能になりましが・・・が、残念ながら最速バイクの割にはあまり話題にはならなかった。

ニンジャZX-10

ZX-10が売れなかったとされる理由は、デザインがモッサリだとして評判があまり良くなかったGPZ1000RXからほとんど変えなかったから。

中身を凄く進化させたのに外見はほぼそのままっていう。

何故カウルデザインを大きく変えなかったのかというと、車体担当の藤井さんいわく

ZX1000B

「これはモデルチェンジではなくGPZ1000RXのエボリューションモデルだから」

との事。

要するに変えるために変えるのではなく、積み上げていく安心感を第一に考えた変更ということ。

同じものを何十年も売る重工業らしい考えですね。

主要諸元
全長/幅/高 2170/715/1240mm
シート高 790mm
車軸距離 1490mm
車体重量 222kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 22.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 997cc
最高出力 137ps/10000rpm
最高トルク 10.5kg-m/9000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70VR17
後160/60VR18
バッテリー YB14L-A2
プラグ CR9E
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量4.0L
スプロケ 前17|後45
チェーン サイズ532|リンク110
車体価格
系譜図
gpz900r 1984年
GPZ900R
(ZX900A)
gpz1000rx 1986年
GPZ1000RX
(ZX1000A)
zx-10 1988年
ZX-10
(ZX1000B)
zzr1100 1990年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100C)
zzr1100 1993年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100D)
ZX-12R 2000年
ZX-12R
(ZX1200A/B)
zzr1200 2002年
ZZR1200
(ZX1200C)
zzr1400 2006年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400A/B)
1400GTR ZG1400A 2008年
1400GTR
CONCOURS14
(ZG1400A/B)
zx-14 2008年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400C/D)
ZG1400C/E 2010年
1400GTR ABS
CONCOURS14
(ZG1400C/D/E)
ZX-14R 2012年
ZX-14R
(ZX1400E)

GPZ1000RX(ZX1000A)-since1986-

GPZ1000RX

「パフォーマンス・キング」

GPZ900Rからわずか二年で登場したGPZ1000RX(北米名NINJA1000R)。

GPZ900Rを超えるマシンとして997ccまで排気量を上げ、当時としては珍しい空力に優れるミラーと一体型ウィンカーを付けているのが特徴。

前後16インチながらフレームはダイヤモンドではなくオーソドックスなダブルクレードル。

ZX1000A

商品企画の吉田さん曰く

「GPZ900Rでは飽き足らない人向けのハイパフォーマンスモデル」

GPZ900Rが次世代のZなら、GPZ1000RXはZを超える新しいバイクというのがコンセプトでした。

GPZ1000RX壁紙

ちなみにGPZ1000RXはGPZ900Rが発売されると同時に開発がスタートしたバイクで最初はGPXで出す予定でした。しかしGPZ900Rがヒットを飛ばし始めたこともあり、GPZというネームを継続採用する事に決定した背景があります。

GPZ1000RXテクニカルイラストレーション

でもいま振り返ってみるとGPZと名前がつくバイク全体で見ると不人気に終わったバイクが多いんですよね。成功したのはGPZ900RとGPZ400Rくらい。

ちなみにそんなハイパフォーマンス路線だったGPZ1000RXのエンジンが如何に凄かったかを示す一台のバイクがあります。

ランボルギーニのバイク

このバイクかの有名なあのランボルギーニがGPZ1000RXのエンジンを使って造ったバイク。

つまりGPZ1000RXはイタリアのランボルギーニすら認めたというわけ。

主要諸元
全長/幅/高 2230/725/1215mm
シート高 805mm
車軸距離 1505mm
車体重量 238kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 21.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 997cc
最高出力 125ps/9500rpm
最高トルク 10.1kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/80-V16(V270)
後150/80-V16(V270)
バッテリー YB14L-A2
プラグ DR8ES
または
X27ESR-U
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量4.0L
交換時3.5L
フィルター交換時4.0L
スプロケ 前15|後40
チェーン サイズ632|リンク94
車体価格
系譜図
gpz900r 1984年
GPZ900R
(ZX900A)
gpz1000rx 1986年
GPZ1000RX
(ZX1000A)
zx-10 1988年
ZX-10
(ZX1000B)
zzr1100 1990年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100C)
zzr1100 1993年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100D)
ZX-12R 2000年
ZX-12R
(ZX1200A/B)
zzr1200 2002年
ZZR1200
(ZX1200C)
zzr1400 2006年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400A/B)
1400GTR ZG1400A 2008年
1400GTR
CONCOURS14
(ZG1400A/B)
zx-14 2008年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400C/D)
ZG1400C/E 2010年
1400GTR ABS
CONCOURS14
(ZG1400C/D/E)
ZX-14R 2012年
ZX-14R
(ZX1400E)

GPZ900R(ZX900A)-since1984-

GPZ900R

「新世代スーパースポーツ Ninja」

元祖ニンジャでお馴染みGPZ900R/ZX900A。

Ninjaと名付けられたキッカケは米カワサキの提案によるもので向こうではNinja900という愛称でした。

Ninja900カタログ

ネーミングの経緯については

『Ninja』と名乗るようになった理由|バイク豆知識

をどうぞ。

そんなGPZ900Rですがコンセプトは『次世代のZ』というもの。

・高出力、コンパクト、軽量で圧倒的な走行性能を発揮すること

・事業性目標(採算性)を厳守すること

これらの目標を掲げ開発が始まったわけですが、そんな開発におけるメンバーのポリシーの一つが

「迷ったら新しい技術を取る」

というもので意欲の塊の様な設計だったことから開発期間も実に5年と通常の倍以上を掛けて造られました。

それが如実に表れているのがフロント16インチやバックボーンフレームもそうですが何よりも水冷エンジン。

GPZ900Rエンジン

水冷化だけでなくカムチェーンがセンターではなくサイドに来ているサイドカムチェーンレイアウトに。

これ今でこそ珍しくもなんともないんですが当時はF1くらいで参考になるようなデータがなく設計に相当な苦労されたそう。

「どうしてサイドカムチェーンが良いのか」

と言うと、吸気の流れがセンターカムチェーン(トンネル)に邪魔されずストレートになることで流速が増す事と、壁と軸受を実質的に一つ減らせる事からエンジンのコンパクト軽量化に繋がるわけです。

GPZ900Rチラシ

まさに

「高出力を得るための新しい要素」

という事を表している部分。

苦労して造られた時代先取りエンジンだっただけありZRX1200DAEGまで長く使われる事になったんですが、実は最初は水冷直四ではありませんでした。

検討段階ではV型を始めとしたありとあらゆるエンジンが検討され、その中で有力候補として開発されたのは空冷2バルブ直列六気筒エンジン。

直列六気筒GPZ900R

Z1300のノウハウを活かしたモデルで完成の域にまで来ていたものの

・コストの兼ね合い

・コンパクトに出来ない

・紳士過ぎる(振動がない)

などの理由でお蔵入りとなり空冷四気筒で再開発される事に。

そしてそこから更に

「空冷よりも水冷の方がパワーを出せる」

という再三に渡るやり直しの末この形になった背景があります。

もしも直列六気筒エンジンになっていたらどうなっていたんでしょうね・・・設計していた山田さんもアレも良かったと悔やまれていました。

でももしもそのままスムーズに進んでいたらこんなカウル付きのデザインにはならなかったでしょうね。

ニンジャ900

ちなみにその直列六気筒も900ccで、最後に形となったこのGPZ900Rの水冷直列四気筒も908cc。

既に時代は空冷イレブン時代と言われリッターオーバーが当たり前だった時代で、カワサキ自身もGPz1100というバイクを出して対抗していたにも関わらず900という何故か寸足らずの排気量。

この『9』という数字は最初から決められた事で、理由はパワーウェイトレシオのバランスなどもありますがプロジェクトリーダーの稲村さんいわく

「Z1(900Super4)からの縁起物だから」

という理由もあったそう。※RIDE70にて

しかし何度も言いますが当時は既にリッターオーバーの時代だったので市場では最初は総スカン。正直カワサキも焦った事と思います。

そんな状況を好転させたのが有名ですがトムクルーズ主演の映画トップガン。

トップガンGPZ900R

ですが・・・実はカワサキはブランドイメージを損なう恐れがあるとしてタイアップの許可を出さなかったそう。

だからロゴやエンブレムが外されシールがベタベタと貼られていたわけですが、最大の特徴であるカワサキ初の特徴的なカウルなどはほぼそのままだったからGPZ900Rだと丸わかりで

「あのバイク格好いい」

と世界中で話題となり、映画を見た後バイク屋に駆け込む人が大量に出た。

この結果GPZ900Rは世界中に認知される事となったわけですが、これはあくまでも大ヒットとなるキッカケです。

GPZ900Rライムグリーン

映画によって初めて寸足らずというだけで見向きもされなかった状況から、多くの人にビッグバイクとして見てもらえる様になった。

そしたら115馬力で最高速247km/hという世界最速はもちろんの事、ダイヤモンドフレームやフロント16インチが織りなすコーナリング性の素晴らしさなどトータル性能の高さに舌を巻くジャーナリストやライダーで溢れかえり、また口コミでも凄いバイクだと広まったことで大ヒットとなったわけです。

戦闘機とGPZ900R

もちろん性能に負けないほどのインパクトを持った戦闘機がイメージのデザインも人気の理由。

特にこのデザインへの評価は高く、車体設計だった藤井さんが人気に応えようと改良点を聞き込みに出たら何処に聞いても

「見た目だけは絶対に変えないでくれ」

と念を押される始末。

KAWASAKIGPZ900R

そんなもんだから

85年後期型:ヘッド改良

88年型:ディスクローター、カムテンショナー

89年型:キャブヒーター(英のみ)

90年型:AVDS廃止、ブレーキキャリパー、F17インチ化

91年型:国内仕様の販売開始

93年型:キャブヒーター(国内仕様)

99年型:前後サス、6ポットキャリパー、ラジアルタイヤ

02年型:KCA(エアインジェクション)

03年型:ファイナルエディション

と長きに渡り数々の改良が加えられたものの見た目は最後まで変わらず。

GPZ900Rファイナル

それでも人気は一向に衰えることはなく、終わってみれば約20年に渡って計80,000台生産という異例のロングセラーを記録。

GPZ900Rは『新世代Z』であると同時に『元祖Ninja』でもある保守と革新その両方を成し遂げた20世紀を代表する名車でした。

主要諸元
全長/幅/高 2200/750/1215mm
A4~:2200/750/1215mm
A7~:2220/730/1220mm
A11~:2220/740/1220mm
シート高 790mm
車軸距離 1495mm
A7~:1500mm
[1500mm]
車体重量 228kg(乾)
A7~:234kg(乾)
[234kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 22.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 908cc
最高出力 115ps/9500rpm
A7~:108ps/9500rpm
[86ps/9000rpm]
最高トルク 8.7kg-m/8500rpm
A7~:8.5kg-m/8500rpm
[7.3kg-m/6500rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ

前120/80V16|後130/80V18
A7~:前120/70V17|後150/70V18
[前120/70R17(58H)|後150/70-18(70H)]

バッテリー YB14L-A2
プラグ DR9EA
[DR8ES
または
X27ESR-U]
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量4.0L
交換時2.7L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前17|後49
[前17|後47]
チェーン サイズ525|リンク110
車体価格 ※[]内は国内仕様
系譜図
gpz900r 1984年
GPZ900R
(ZX900A)
gpz1000rx 1986年
GPZ1000RX
(ZX1000A)
zx-10 1988年
ZX-10
(ZX1000B)
zzr1100 1990年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100C)
zzr1100 1993年
ZZR1100/ZX-11
(ZX1100D)
ZX-12R 2000年
ZX-12R
(ZX1200A/B)
zzr1200 2002年
ZZR1200
(ZX1200C)
zzr1400 2006年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400A/B)
1400GTR ZG1400A 2008年
1400GTR
CONCOURS14
(ZG1400A/B)
zx-14 2008年
ZZR1400/ZX-14
(ZX1400C/D)
ZG1400C/E 2010年
1400GTR ABS
CONCOURS14
(ZG1400C/D/E)
ZX-14R 2012年
ZX-14R
(ZX1400E)

ZX-6R(ZX636G) -since 2019-

ZX636G

「FOR THE FEARLESS」

排ガス規制で生産終了かと思いきやフルモデルチェンジで対応した2019年からのZX636G型。

最初に主な変更点を上げると

・ドライブスプロケを1丁下げ低速寄りに

・クイックシフター(UPのみ)

・サイレンサーの外見を変更

・足つきとフィット感を高めたシート

・LEDヘッドライト

・アクセサリー電源

・ETC2.0装備

などなど、変更点を見ても分かる通り先代にも増してストリートを考慮したモデルに。

LEDヘッドライト

・スリッパークラッチ

・トラクションコントロール

・アンチブレーキロック

・ビッグピストンフォーク

・出力モード切替

といったミドルSSとしては一線級の装備が付いていた先代の時点で『1,301,400円(税込)』とかなりお買い得だったのに、このモデルでは更に上記の変更が加わったにも関わらず『1,328,400円(税込)』とコストパフォーマンスが更に向上。

カワサキ2019ZX-6R

「どうしてこんなにお買い得なのか」

と思われる方も多いと思いますが、それは正直に言うと先々代であるR型から基本設計は変わっていないからです。

モデルチェンジ内容は基本的にデザイン面やアクセサリー系がほぼ全て。

ZX-6Rセンター

これはミドルスーパースポーツ需要が無くなってしまった事が原因でトドのつまり開発費を掛けられない(回収できない)事が背景にあるわけです・・・が、ZX-6Rにとっては災い転じて福と成すいうか怪我の功名といえなくもない話。

何故ならこのおかげでZX-6Rはカワサキらしい独特な造りのまま存続出来ているから。

2019zx-6r 696

恐らく10Rの方でも話しましたが現代のスーパースポーツというのはスイングアームを長く取りつつ剛性を稼ぐために

『クランク・メイン・カウンター』

というエンジンの主要三軸を三角形の様に(メインシャフトを押し上げる)レイアウトにしてエンジンの前後長を短くするのが定説となっています。

そんな中でカワサキだけは

「他所の真似事なんてしない」

といって直角三角形の様な縦長エンジンに覆いかぶさる様なフレームという何とも珍しいレイアウトに。

ZX-6Rのエンジンレイアウト

このクラッチケースが一段落ちてる独特なレイアウトによってカワサキのSSは

「独特なハンドリングだ」

と言われ、それは時として扱いにくいという評価もされた。

しかし何代にも渡って改良を重ねてきた事で、今では独特なハンドリングはそのままに非常に高い評価を獲得している。

ZX-6Rのディメンション

つまりこのZX-6Rの形というのはカワサキらしい反骨心の現れといいますか、10年以上続くカワサキスーパースポーツの伝統工芸品みたいな物なんです。

さて・・・重ねて言いますがミドルスーパースポーツというカテゴリがほぼ終焉状態となり、実際この6RもミドルSSと言いつつ排気量はちょっとオーバーしてる636cc。

ZX-6Rロゴ

とにかくサーキットで速く走れればよかった時代が終わりを迎えた事で、ZX-6Rも方向性を少し変えてこうなった。

もちろんだからといって

「6Rはサーキットでは駄目なのか」

というともちろんそんなわけもなく、相変わらず大得意な方。

2019年型ZX-6R壁紙

つまりこのZX-6R/ZX636Gは一言で言うと

「間違いのないミドルSS」

と言えるでしょう。

これはコストパフォーマンスだけ見ての話ではありません。

というのもSSというのは(主観ですが)バイクの中でも最も乗られなくなるジャンルのバイクです。

それがどうしてかといえばSSというのは公道用途では恩恵よりも弊害を受ける機会が多いから。要するに楽しめるシチュエーションよりも我慢を強いられるシチュエーションが多いから歳月とともに乗るのが億劫になってくる。

ZX-6R取り回し

そんな中でこのZX-6Rが間違いのないSSと言える様になったのは、その我慢を排他しようとした意図が読み取れるから。

確かにポジションはSSだからツラいけど、SSの中ではまだマシな方でシート高も830mmと現実的な方。

シートもハングオンだけでなく足つきを考えて前方が非常に絞り込まれているし、サスペンションも柔らかめに設定されてる。

2019年型カワサキZX-6R

トップスピードを切り捨てたスプロケのショート化も美味しい回転数をより気軽に味わえる様にした配慮だし、明るいLEDヘッドライトやETC2.0&アクセサリー電源は非常にありがたいもの。

昨今のスーパースポーツでは当たり前だったステアリングダンパーも低中速では邪魔するだけだから付けてない。

そして決定的なのがこれ。

メーター

警告灯のみだったガソリン残量がメーター表示されるようになったんです。

これが肝です・・・要するに

「スーパースポーツだから仕方ない」

という要素を本来のスーパースポーツの魅力を損なわない範囲で潰してる。

つまり『スーパースポーツそのもの』を売りにしているのではなく『スーパースポーツを楽しむこと』を売りにしているわけです。

ZX-6Rカタログ写真

それは結果として

「長く付き合えるスーパースポーツ」

と言えるからZX-6R/ZX636Gは間違いないって話。

主要諸元
全長/幅/高 2025/710/1100mm
シート高 830mm
車軸距離 1400mm
車体重量 197kg(装)
燃料消費率 18.3km/L
※WMTCモード値
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 636cc
最高出力 126ps/13500rpm
最高トルク 7.1kg-m/11000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTX9-BS
プラグ CR9E/CR9EK
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.6L
交換時2.8L
フィルター交換時3.1L
スプロケ 前15|後43
チェーン サイズ520|リンク112
車体価格 1,230,000円(税別)
系譜図
ZX600F1995年
ZX-6R
(ZX600F)
ZX600G1998年
ZX-6R
(ZX600G)
ZX600J2000年
ZX-6R
(ZX600J/636A)
ZX636B2003年
ZX-6R
(ZX636B/600K)
ZX636C2005年
ZX-6R
(ZX636C/600N)
ZX600P2007年
ZX-6R
(ZX600P)
ZX600R2009年
ZX-6R
(ZX600R)
ZX600E/F2013年
ZX-6R
(ZX636E/F)
ZX600G2019年
ZX-6R
(ZX636G)

【関連車種】
CBR600RRの系譜YZF-R6の系譜GSX-R750の系譜DAYTONA675の系譜

ZX-6R(ZX636E/F) -since 2013-

新型ZX-6R

「Invincible Everywhere」

四年目にして遂にモデルチェンジをし何とまたもや636ccになって返ってきたZX636E/F型。

E型はABSレスでF型はABS有りモデルですが正規販売されたのはF型のみ。

「また排気量オーバーしてるじゃん」

って話ですが、レース向けには先代Rモデルを併売する形で対応しています。

2013年型ZX-6R

非常に完成度が高かったPモデルを更に改良したモデルという事なのでもうコレはコレで完成形なんでしょうね。

さてじゃあ636モデルはどうなっているのかというと、まず何より見た目が最新のNinjaシリーズに沿った端正な顔つきになりました。

30周年カラー

更にキャスター角を見直し、出力モード切り替えやトラクションコントロールなどの電子制御と、最新のSS要素を装備。

先代の時点でBPFなどが付いていた事を考えると、これで税込み130万円前後というのはかなりのバーゲンプライスかと。

しかしこのモデルで何を置いてでも取り上げないといけないのがやっぱり636ccになったこと。

ZX636EFエンジン

ミソなのは先代のエンジンをベースにストローク量を2.6mm伸ばして636ccにした事です。

ボアではなくストロークを伸ばした形なので当然ながら全域でトルクアップ。

トルクカーブ

「2モデル展開は向こうの人が嫌う」

という話をP型したんですが、その向こうでも600SSが下火となり売れなくなりました。

昨今の600SS生産終了ラッシュも、そして再び636化してきたものそれが大きな理由。

ZX636広告写真

そもそも何故そんなに636化に執着するのかって話ですが、歴代6Rプロジェクトリーダーの岡部さんがこんな事を言っていました。

「限られた排気量のミドルでトルクが余ることはない」

と・・・そして

「ちゃんと加速する事が大事」

とも。

結局その考えを最も強く反映した形がクラスオーバーとなる636なわけで、復活したこのモデルでもストロークを伸ばしつつ圧縮比は敢えて落とすという”本当に必要なトルク”を稼ぐ変更をした。

ZX-6R KRT

「どんな時でもちゃんと加速する為に」

です。

600じゃないから卑怯だと、ミドルスーパースポーツじゃないと言われる事もあります。でもそれで良い。

だってこのZX636E/F型はスーパースポーツである事よりも、下も上も使えるミドルとして高い評価と歴史を持つ『ZX-6Rである事』を取ったわけですから。

kawasaki ZX-6R

『INVINCIBLE EVERYWHERE(何処でも無敵)』

という言葉の意味はソコにあるわけです。

主要諸元
全長/幅/高 2085/705/1115mm
シート高 830mm
車軸距離 1395mm
車体重量 194kg(装)
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 636cc
最高出力 129ps/13000rpm
最高トルク 7.2kg-m/11500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTX9-BS
プラグ CR9E
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.6L
交換時2.8L
フィルター交換時3.1L
スプロケ 前16|後43
チェーン サイズ520|リンク112
車体価格 1,246,000円(税込)
系譜図
ZX600F1995年
ZX-6R
(ZX600F)
ZX600G1998年
ZX-6R
(ZX600G)
ZX600J2000年
ZX-6R
(ZX600J/636A)
ZX636B2003年
ZX-6R
(ZX636B/600K)
ZX636C2005年
ZX-6R
(ZX636C/600N)
ZX600P2007年
ZX-6R
(ZX600P)
ZX600R2009年
ZX-6R
(ZX600R)
ZX600E/F2013年
ZX-6R
(ZX636E/F)
ZX600G2019年
ZX-6R
(ZX636G)

ZX-6R(ZX600R) -since 2009-

2009ZX-6R

「TOP OF THE CIRCUIT」

例年通り2年でモデルチェンジしたZX-6R/ZX600R型。

基本構成は先代のキャリーオーバーなものの、センターアップマフラーを止めた事から見ても分かる通り徹底したマスの集中化と軽量化で、装備重量191kgと先代から約10kgも軽量化が行われました。

ZX600R

ただ体感はそれ以上の物があります。

というのもこのモデルで行われた徹底的なマスの集中化に一役買ってるのが今では当たり前となっている『通称:弁当箱』とよく言われているサブチャンバー。

これはものすごく簡単に言うと、その名の通り第二のマフラーで触媒による排ガスのクリーン化と消音の効果があります。

これまではサイレンサーが全てを担っていたり、エキパイの集合部に触媒を詰めたりしていたんだけど、その両方を兼ねる物を腹下に置いたわけです。

ZX600Rカットモデル

何故こうしたのかというともちろんマスの集中化。

消音効果を上げる場合、部屋(膨張室)をとっても大きくしないといけない。大きくするという事は即ち重くなるということ。これは触媒を入れる事も同様。

だから一つで片付けるのではなく二分して一つを重心に近いセンターに置き、負担が減ったもう一つも小さくショート化して可能な限り車体に寄せてあるというわけです。

もう一つ上げておきたいのが市販車初となるSHOWA製BPF(ビッグピストンフォーク)です。

ビッグピストンフォーク

BPFというのは従来型よりもピストン径を大きく取れる様にしてあるサス。

ピストンが大きくなるということは受圧面積が増えるということなので、それだけ減衰力が稼げるというわけ。

簡単に言うと軽負荷でもヒョコヒョコせず粘りのあるストロークをするようになった物で、悪い意見を聞いたことがないと言えるほど優れたもの。

2010zx-6r

ちょっと小言。

これを機にZX-6Rについての先入観を捨ててほしいと思っています。

ZX-6Rは販売台数の速報でランクインしてるのを一回も見ない事から言っても日本ではあまり人気が無い。

デザインが欧州向けである事や、そもそも日本ではミドル需要が無いこともありますが、諸刃SSことZX-10Rという尖りすぎて玄人向けというイメージが定着した兄のせいもあるかと。

2011ZX-10R/ZX-6R

だからソックリな弟も同じ様な気難しいイメージを持たれてしまったのではないかと・・・全然違うんですけどね。

フレームの形やウィンカー位置などを見比べて貰えば分かる通り、色々と捻くれている兄と違って弟は改良を積み重ねてきた歴史も人気もそして評価も高いSSなんですよ

1995年から続く高い評価と歴史が何よりの証拠です。

主要諸元
全長/幅/高 2090/710/1115mm
シート高 815mm
車軸距離 1400mm
車体重量 191kg(装)
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 599cc
最高出力 119ps/12500rpm
最高トルク 6.8kg-m/11800rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTX9-BS
プラグ CR9E
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.6L
交換時2.8L
フィルター交換時3.1L
スプロケ 前16|後43
チェーン サイズ520|リンク112
車体価格 1,155,000円(税込)
系譜図
ZX600F1995年
ZX-6R
(ZX600F)
ZX600G1998年
ZX-6R
(ZX600G)
ZX600J2000年
ZX-6R
(ZX600J/636A)
ZX636B2003年
ZX-6R
(ZX636B/600K)
ZX636C2005年
ZX-6R
(ZX636C/600N)
ZX600P2007年
ZX-6R
(ZX600P)
ZX600R2009年
ZX-6R
(ZX600R)
ZX600E/F2013年
ZX-6R
(ZX636E/F)
ZX600G2019年
ZX-6R
(ZX636G)

ZX-6R(ZX600P) -since 2007-

2007ZX-6R

「RとRRの融合」

三代目となるZX-6R/600P型。

このモデルで事件が起きました・・・いや顔の話じゃないですよ。

ZX600Pセンター

確かにインパクトがあるというか可愛らしい顔と特徴的なマフラーですが。

ちなみにこのマフラーの形、薄くて容量が少なくパワーが稼げないと問題になったのですが

「この薄さが大事なんだ」

としてデザイナーが断固として譲らず、エンジン設計側が折れる形で採用された拘りのマフラーだったりします。

2007ZX-6Rマフラー

が、それより事件なのが+37ccのモデルが無くなった事です。

セールストーク的には

「600ccの円熟化が進み、600ccでも低速の問題が解決出来たため一本に絞った」

という話でしたが、実情としてはミドルの主戦場である欧州において600cc一本に絞ってほしいという意見が多かったのが主な理由。

ZX600Pcutmodel

信じられない話ですが向こうの人は公道で使いつつナンバーを付けたままレースでも使うのは珍しくないらしく、公道用636とレース用600を分けられるとそういう使い方が出来ないからだそう。

ZX-6R/ZX600P

そのためこのP型からはRRのSP(レーサー)をベースにする事になったわけですが一悶着ありました。

先代の不満点を聞き込みに回ったところ

「タイヤの減りが早い」

という声が多かった。

これはフレーム剛性が高すぎた事が原因で、その反省から最適な剛性のフレームを新設計することに。

そして形になった新作フレームをテストライダーが乗ったところ

「どうしたいのか、方向性が分からない・・・」

というZX-6R史上最低の評価を食らう事に。

これが何故か調べた所、剛性には問題が無かったものの過程の捻れ方に原因があると分かり形状や材質だけでなく溶接箇所や溶接ビードの一つに至るまで細かく見直し。

造って走っては見直して、造って走っては見直してという

『数値として表れない部分の改良』

に主軸を置いて改良する日々。

そうして完成したフレームは最低評価だったのが嘘のように非常に完成度が高いものに。

ZX600R

その改良の痕跡として分かりやすく現れているのがメインフレーム中央の溶接痕。

普通ここは直角に入っているんですがこのP型はもの凄く角度が付けられてる。

このフレームを担当した井高さんも

「理想的なフレームが出来た」

と自画自賛。

またこのモデルを含む歴代ZX-6Rのプロジェクトリーダーである岡部さんも傑作と言うほど本当によく出来たフレームで、その証拠にZX-6Rはこれ以降メインフレームに大きな変更は行われていません。

ZX600Pface

可愛い顔からは想像がつかないほど出来る子だったP型のお話でした。

主要諸元
全長/幅/高 2105/720/1125mm
シート高 820mm
車軸距離 1405mm
車体重量 167kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 599cc
最高出力 109ps/12000rpm
最高トルク 6.5kg-m/12000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTX9-BS
プラグ CR9E
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.8L
交換時2.9L
フィルター交換時3.2L
スプロケ 前16|後43
チェーン サイズ520|リンク112
車体価格 1,092,000円(税込)
系譜図
ZX600F1995年
ZX-6R
(ZX600F)
ZX600G1998年
ZX-6R
(ZX600G)
ZX600J2000年
ZX-6R
(ZX600J/636A)
ZX636B2003年
ZX-6R
(ZX636B/600K)
ZX636C2005年
ZX-6R
(ZX636C/600N)
ZX600P2007年
ZX-6R
(ZX600P)
ZX600R2009年
ZX-6R
(ZX600R)
ZX600E/F2013年
ZX-6R
(ZX636E/F)
ZX600G2019年
ZX-6R
(ZX636G)