999series -since 2003-

999

デザインが大変貌した999シリーズ。

もはや伝統と化していた916系から全く別物に変わったため様々な波紋を呼びました。

ピエール・テルブランチ

デザインを担当されたのはカジバではなくドゥカティに所属していた南アフリカ出身のピエール・テルブランチさん。

実はこの少し前にドゥカティはカジバから離れ、テキサスパシフィック(元TPGキャピタル)という投資ファンドが親会社となっています。

2003年ドゥカティ

916やモンスターの大ヒットでイケイケだったドゥカティが高く売れるとして、経営が苦しくなっていたカジバが売りに出した形。

そんな916をデザインしたタンブリーニ公認デザイナーであるテルブランチ作999ですが、両持ちスイングアームや縦目二眼などを見ても分かるよう明らかに916の流れを否定するようなデザイン。

999プロトタイプ

最初は片持で話が進んでいたんですが、部品点数の削減などの問題もあり両持ちに変更された経緯があります。

まあこれも流れを断ち切る狙いが少なからず影響しているんでしょうね。

これが出た時はそりゃもう称賛否両論雨あられでした・・・というか、どちらかと言うと否定的な意見が多かったです。

999

売れ行きも乏しく値下げまでされる始末。

もう世界中のあちこちで批判されたんですが、個人的にはちょっと可哀想だなと思います。

ドゥカティ999

人気が無いだけだったら残念だったねで済むんですが、この999はスーパーバイクの存在意義であるSBKにおいて三度もの優勝を飾っている。

要するにスーパーバイクの名に恥じぬ速さと結果を残しているんです。

999のシャーシ

市販のストリート版も改良を重ね続けてきた先代998がベースなので性能の評判も悪くない。2005以降のモデルではスイングアーム補強や新設計のチタンバルブエンジンやらの改良まで入りました。

名実ともにスーパーバイクの名に恥じぬマシンだった999。

にも関わらず人気が出なかった・・・何故なら

999s

「916っぽくないから」

結局皆が求めているのは916であってスーパーバイクではないって事ですね。

間違ってもドゥカティ自体が999を失敗作だと思ってるわけじゃないですよ。それに999はそれまでスーパーバイクに興味を示さなかった人が振り向いた怪我の功名の様な部分もあるわけで。

999カタログ写真

ただ改めて振り返ってみるとレース結果と人気にズレが生じ始めたのはこの頃からだったのかも。

エンジン:水冷4サイクルDOHC L型二気筒
排気量:999cc
最高出力:124ps/9500rpm
最大トルク:10.4kg-m/8000rpm
車体重量:199kg(乾)
※スペックはEU仕様の無印

種類一覧
ドゥカティ851シリーズ1988年
851 SERIES
ドゥカティ888シリーズ1991年
888 SERIES
ドゥカティ916シリーズ1993年
916 SERIES
ドゥカティ996シリーズ1999年
996 SERIES
ドゥカティ998シリーズ2002年
998 SERIES
ドゥカティ999シリーズ2003年
999 SERIES
ドゥカティ1098シリーズ2007年
1098 SERIES
ドゥカティ1198シリーズ2009年
1198 SERIES
1199パニガーレ2012年
1199Panigale
1299パニガーレ2015年
1299Panigale
パニガーレV42018年
Panigale V4

998series -since 2002-

998

先に紹介した996Rのフィードバックである998シリーズ。

大台の100mmボアとなったテスタストレッタエンジンの始まりであり、916系として最後のスーパーバイクになります。

998

テスタ(頭)+ストレッタ(狭い)=テスタストレッタ。

頭というのはヘッドのことで、バルブ核を狭くし燃焼室をコンパクト化した事が語源です。

998はマトリックスに登場したので覚えている人も多いのではないかと。

ちなみにそのマトリックスエディションも登場しました。

998マトリックス

実はこれ限定モデルとはまた違った意味で非常にレア。というのもこれは二人乗り仕様だから。

元々ドゥカティは一人乗り用の”モノポスト”と二人乗れる”ビポスト”があるんですが、日本に入ってくるモデルは基本的にモノポストだけだった。

998リア

ただこのマトリックスエディションは映画のシーンで二人乗りしている事からもビポストだけ。だから日本に入ってきたのもビポストだけ。

数少ない二人乗り仕様スーパーバイクなわけです。

2002年ドゥカティ

ちなみにRモデルは通例通り排気量が999ccまで上げられた別エンジンの豪華モデル。

最初にも言った通り998は916系の最後になるんだけど、次が一年ほどで登場したためモデルライフは意外にも短いものでした。

998ファイナルエディション

そのためか、今でも高値安定だったりします。

エンジン:水冷4サイクルDOHC L型二気筒
排気量:998cc
最高出力:
123ps/9500rpm
最大トルク:
9.8kg-m/8000rpm
車体重量:198kg(乾)
※スペックはEU仕様の無印

種類一覧
ドゥカティ851シリーズ1988年
851 SERIES
ドゥカティ888シリーズ1991年
888 SERIES
ドゥカティ916シリーズ1993年
916 SERIES
ドゥカティ996シリーズ1999年
996 SERIES
ドゥカティ998シリーズ2002年
998 SERIES
ドゥカティ999シリーズ2003年
999 SERIES
ドゥカティ1098シリーズ2007年
1098 SERIES
ドゥカティ1198シリーズ2009年
1198 SERIES
1199パニガーレ2012年
1199Panigale
1299パニガーレ2015年
1299Panigale
パニガーレV42018年
Panigale V4

996series -since 1999-

ドゥカティ996

ホモロゲと同じ996ccが標準となったのは1999年の事。

「851SPが888になって916CORSAが996で・・・」

と混乱している人もいると思うので説明するとドゥカティのスーパーバイクシリーズというのは

STRADAや無印:公道向けモデル

S:ハイパフォーマンスモデル

SP/SPS:先行ホモロゲモデル

大体がこんな感じで松竹梅展開といえばそうなんだけど、ホモロゲは公道走行をあまり鑑みていないレースのためのモデルだから一概に松とは言えなかったり。

996CORSA

ちなみにCORSAっていうモデルがあるんですが、それはDUCATI CORSAというワークスが手がけたモデルの事です。

なぜグレードで排気量が違うのに同じナンバリングだったりするのかというとホモロゲ取得やセールスアピールの都合。

996イエロー

しかしレースで培ったものは必ずフィードバックするのがドゥカティ。

先行モデルのワークスチューンで培ったノウハウをSTRADA/無印へ下ろす事で(排気量が合わせられる事で)ナンバリングが新しくなるというわけ。

1999年SBKチャンピオン

無印モデル発売

豪華なホモロゲも発売

レースで活躍

無印モデルへフィードバック

以下繰り返し

つまりこの996で言えば、これは916CORSA(996cc)で培った技術がフィードバックされたマシンという事。

996

見た目こそ916とさほど変わらないものの、デュアルインジェクターやエンジンまわりの補強など大きく改良。

ちなみに二年目からブレンボがマルケジーニを買収したことでマルケホイールとなり、先代ではSPSだけだったチタンコンロッドを竹モデルであるSから装備。

ホモロゲのSPSは更にオーリンズ倒立サスを装備。

996R テスタストレッタ

そしてSPSの後釜として2001年に登場した996Rは

『テスタストレッタ』

という元フェラーリのエンジニアであるジュリアーノ氏が造った新エンジンを搭載。

996カタログ写真

これで一度は奪われたSBKチャンピオンの地位を見事に奪還しました。

秘訣はトリプルインジェクター・・・ってそんなの市販車じゃない。

エンジン:水冷4サイクルDOHC L型二気筒
排気量:996cc
最高出力:112ps/8500rpm
最大トルク:9.5kg-m/8000rpm
車体重量:198kg(乾)
※スペックはEU仕様のMonoposto

種類一覧
ドゥカティ851シリーズ1988年
851 SERIES
ドゥカティ888シリーズ1991年
888 SERIES
ドゥカティ916シリーズ1993年
916 SERIES
ドゥカティ996シリーズ1999年
996 SERIES
ドゥカティ998シリーズ2002年
998 SERIES
ドゥカティ999シリーズ2003年
999 SERIES
ドゥカティ1098シリーズ2007年
1098 SERIES
ドゥカティ1198シリーズ2009年
1198 SERIES
1199パニガーレ2012年
1199Panigale
1299パニガーレ2015年
1299Panigale
パニガーレV42018年
Panigale V4

916series -since 1994-

916

歴史上もっとも美しいバイクとして今でも名前があげられる916シリーズ。

ナンバリングの通りエンジンのストロークを2mm伸ばし916ccとなりました。

鬼才マッシモ・タンブリーニの代表作として有名ですね。

マッシモ・タンブリーニ

ちなみにタンブリーニはCRC(Centro Ricerche Cagiva)というカジバ子会社のボス。

だからもしドゥカティがカジバに買収されていなかったら誕生していないバイクだったりします。パゾを作ったのもここ。

C593

設計において参考にしたのがC593というカジバが誇るGP500マシン。

だから最初はトラスフレームではなくアルミツインチューブも検討されたんだそう。でもやっぱりトラスフレームの方が合っているという事でトラスフレームに。

とはいえクロームモリブデン鋼管を使った完全新設計なもので、916は見た目でも分かるよう非常にスリムになりました。フレーム重量も僅か8kgという軽さ。

カジバC593

そんな916でもう一つ欠かせないのが片持スイングアームとセンターアップマフラー。

今でこそスーパーバイクのアイデンティティの一つですが、当時はホンダ車みたいだと言われました。

実際センターアップマフラーや片持ちスイングアームはNRに影響を受けたとタンブリーニ自身も明言しています。

もちろんただ真似たかっただけではなく、耐久レースにおけるタイヤ交換の優位性も採用の理由。それに一応パテントには触れない形なんだとか。

916サイド

ちなみにそんなスイングアームを造ったのはブレンボ。

なんでも安定供給してくれる会社がブレンボしかなかったからだそう。ブレーキももちろんホイールもブレンボのブレンボ尽くしっていう。

916sps

916といえば何よりもその洗礼されたデザインが有名ですが

「開発に四年以上、のべ4,000時間を掛けた」

とタンブリーニが言うだけあり性能面でも非常に評価が高く、主戦場であるSBKでも圧倒的な速さでデビューイヤーで優勝。

DUCATI 916

まさに非の打ち所がないスーパーバイクとして絶大な人気を誇り、ドゥカティ(カジバ)の業績をV字回復させる事になりました。

グレードは公道向けSTRADA、オーリンズなどを装備したチューニングモデルのSP、955ccにまでスケールアップしたレーシングのCORSA(二年目からは996cc)の三種類。

更に二人乗りのBIPOST、そしてSENNAモデル。

これはカジバショップを経営していてプライベートでもドゥカティが大好きだったセナが注文した事が始まり。

不運なことにその直後にセナは事故で亡くなってしまうのですが、友人だったカスティリオーニ(MV AGSTA創業メンバー)がセナモデルとして市販しようと企画。

916SENNA1

中身は実質SPで赤ホイールなのが特徴。

好評だったためか97年にはシルバーボディのSENNA2も登場。

916SENNA2

そして98年にはブラックボディのSENNA3が発売されました。

916SENNA3

特に初期カラーであるグレー/レッドホイールはセナカラーとして多くの人に定着し、その後も数々のモデルで登場することに。

ちなみにセナモデルの売上はセナの死後に設立されたセナ財団(ストリートチルドレン救済団体)に寄付される様になっています。

最後に・・・爆発的な人気となった916ですが最初の頃は日本にほとんど入ってきませんでした。

よりにもよって916発表と同時にボローニャの塗装工場が火事で全焼してしまったからです。

ドゥカティ916

だから916の最初期のモデルはボローニャではなくカジバのバレーゼという小さな工場でカジバのバイクと一緒に造ることに。

その関係でその頃に造られた916はスクリーンにカジバの象さんが刻印されており、そして肝心の塗装は外注でドゥカティレッドじゃなかったりします。

916ヘッドライト

ただ幸か不幸かヘッドライトが日本の保安基準を満たしていない事が発売後に判明したため国内にはほぼ入ってきていない模様。

※916の簡易版モデルチェンジ歴

【1995年モデル】

二人乗り用のBipostoが登場。

リアサスをオーリンズにしたSPが登場。

【1996年モデル】

ブレーキとクラッチにアジャスターが付きSTRADAの名を削除。

【1997年モデル】

エアクリーナーボックスを始めとした細部の見直し。

SPをベースに996cc化とチタンコンロッドを採用した916SPS(ホモロゲ)が登場。

【1998年モデル】

クラッチホースを始めとした細部の見直し。

エンジン:水冷4サイクルDOHC L型二気筒
排気量:916cc
最高出力:114ps/9000rpm
最大トルク:9.0kg-m/7000rpm
車体重量:195kg(乾)
※スペックはEU仕様STRADA

種類一覧
ドゥカティ851シリーズ1988年
851 SERIES
ドゥカティ888シリーズ1991年
888 SERIES
ドゥカティ916シリーズ1993年
916 SERIES
ドゥカティ996シリーズ1999年
996 SERIES
ドゥカティ998シリーズ2002年
998 SERIES
ドゥカティ999シリーズ2003年
999 SERIES
ドゥカティ1098シリーズ2007年
1098 SERIES
ドゥカティ1198シリーズ2009年
1198 SERIES
1199パニガーレ2012年
1199Panigale
1299パニガーレ2015年
1299Panigale
パニガーレV42018年
Panigale V4

888series -since 1993-

888

レースベースであるSPモデルのみだった888ccが公道モデル(STRADA)にも降りてきたのが1993年の事。

排気量だけでなく各部もレースで培われた改良が施されている851系の最終型。

ちなみに851系(特にこの888)は本土イタリアにおいてVFR750R/RC30と双璧を成すレジェンドバイクです。

それが何故かといえば、AMA(アメリカのレース)はもちろん、本命だったスーパーバイク世界選手権において前人未到の三連覇(90~92)を成し遂げたから。

888ストラーダ

ここで少しまた話がそれてしまうんですが、ドゥカティは851が出た1985年にカジバに買収されハスクバーナ共々カジバ傘下になりました。

カジバグループ

原因はもちろん経営がよろしくなかったから。これが何故かと言うと実は日本メーカーの影響。

日本メーカーが

『安くて速くて壊れないバイク』

を下は50から上はリッター超えまでフルラインナップした事でシェアがどんどん奪われていったんです。

このためイタリアは70年代後半に380cc以上の輸入を禁止する保護貿易政策を取った歴史があります。それでもイタリアのバイクメーカーはバタバタと倒れて行きました。

当時のドゥカティ本社

そんな中でドゥカティがどうして生き残る事が出来たのかというと

「レースで活躍したから」

です。

レースで活躍した事でセールスが大きく伸びる事となり、後にカジバ傘下になったとはいえ生き残る事が出来た。

ドゥカティがレースに血眼になるのは、レースが好きだからというより、それが生き残る道だと分かっているからなんですね。

※888の簡易版モデルチェンジ歴

【1993年モデル】

SPが7馬力アップしフロントフォークをSHOWAに。

エンジン:水冷4サイクルDOHC L型二気筒
排気量:888cc
最高出力:
104ps/9000rpm
最大トルク:
8.0kg-m/7000rpm
車体重量:210kg(乾)
※スペックはEU仕様のSTRADA

種類一覧
ドゥカティ851シリーズ1988年
851 SERIES
ドゥカティ888シリーズ1991年
888 SERIES
ドゥカティ916シリーズ1993年
916 SERIES
ドゥカティ996シリーズ1999年
996 SERIES
ドゥカティ998シリーズ2002年
998 SERIES
ドゥカティ999シリーズ2003年
999 SERIES
ドゥカティ1098シリーズ2007年
1098 SERIES
ドゥカティ1198シリーズ2009年
1198 SERIES
1199パニガーレ2012年
1199Panigale
1299パニガーレ2015年
1299Panigale
パニガーレV42018年
Panigale V4

851series -since 1987-

851

「最高の90°Vツインを造れ」

これがスーパーバイクシリーズの始まり・・・ですが、その前に851に至るまでの経緯をざっくり紹介しようと思います。

元々ドゥカティというのは1922年にボローニャにいたアドリアーノ、ブルーノ、マルチェロの三兄弟が創設したのが始まりです。

創業者

最初はラジオのコンデンサーを造っていた会社から始まり、第二次世界大戦中はカメラなどまで手がける電機メーカーに。

1953年まで

そして戦後からは自転車向けエンジンを造るようになったんですが、それが人気を呼びバイク事業が大幅に拡大したことで分社化。

クッチョロ

そこから完成車を造るようになったわけですが、天才エンジニアが入社した事でドゥカティは大きく飛躍することとなります。ファビオ タリオーニ

『ファビオ・タリオーニ』

ベベルギア、そして市販車として初めてデスモドロミックを採用するなどの手腕を発揮し、ドゥカティは一躍レース常勝メーカーになりました。

ちなみにフェラーリの創始者であるエンツォ・フェラーリとは創業前からの友人。ドゥカティとフェラーリの関係はこの頃からのものなんですね。

そんなドゥカティですが

『ドカといえばデスモドロミックLツイン』

というイメージを持たれている方が多いと思います。

じゃあこの系譜というか流れがいつから出来たのかというと、Lツインが始まったのは1970年に出たドゥカティ初の大型でもある750GTというモデル。

750GT

ベベルギア駆動が特徴的で、第一世代もしくはベベル世代と言われています。

更にそこからレースで培ったデスモドロミックを投入したのが1974年の750SS DESMOというモデル。

750SS

これが今も続くデスモドロミックLツインの始まりです。

ちなみにこれの発展形である900SSベースのNCR900TT1でマン島TT優勝を飾り、その記念として出されたのが900MHR。

900MHR

MHRというのはライダーだったマイク・ヘイルウッドのレプリカという意味。

あまりの人気っぷりから常駐ラインナップとなったベベルデスモ世代を代表する名車です。

ここで少しデスモドロミックについて簡単に説明すると、デスモドロミックというのはエンジン(燃焼室)の蓋であるバルブ開閉機構の事。

通常の4stエンジンはオニギリの様なカムが回ってバルブを押して開き、縮んだスプリングの戻る力で閉じるポペットバルブ式になっています。

バルブスプリング

対してデスモドロミック式は開くのも閉じるのもカム。カムの力で押し開いて、カムの力で持ち上げて閉じる。

デスモドロミック

これによるメリットはバネに起因するバルブサージングといった問題が起きず回転数を上げられる事。

バルブサージングというのは先に挙げたポペットバルブ式のバネがカムの動きについて行けなくなってしまうこと。

ちょっと乱暴に分かりやすく例えると、最近のドアはドアクローザーがあるので勝手に閉まるじゃないですか。

ドアクローザー

でもそのかわりこれがあるせいで速く閉めるのは難しい。

戻る力を強くすればいいと思いますが、そうすると今度は押す際に凄く力がいるので大きな疲労(損失)に繋がる。

デスモドロミックエンジン

「だったらクローザに頼らず自分で開閉すれば速くて確実だ」

ってのがデスモドロミック。

じゃあなんでドゥカティしかデスモドロミックを採用していないのかというと、カム構造が複雑化してコストが増す事とバルブクリアランスがシビアで定期的な調整が必要になるから。

このためドゥカティは定期的なバルブクリアランス調整が必要になります。15,000km前後※車種による

コグドベルト

ドゥカティはその後、1979年にベベルギアよりもコンパクト&軽量なコグドベルト(歯付ベルト)方式のエンジンを開発。

パンタ(PANTAH)と銘打たれ、長く愛された有名なエンジンです。

500SL

これがそのエンジンを初めて採用した500SLというバイク。

言い忘れていましたがドゥカティは500SSからずっとレースをしています。

TT2

これはそのパンタエンジンベースのレーサーTT2。欧州のレースにおいて敵なしでした。

そしてドゥカティは

『レースマシンを市販車として出す』

という正にレーサーレプリカの様な姿勢を守り続けています。

750F1

それはもちろんTT2でも例外ではなく、市販車として1985年に登場したのがこの750F1というバイク。

パンタレーサーレプリカであり、F1という名前が付いている通り市販車レースTT-F1を強く意識したモデルでした・・・が、実は750F1は別のレースでも大活躍。

それはBOTT(バトルオブザツイン)と呼ばれるアメリカの二気筒レース。ここにドゥカティワークスが750F1を引き下げて登場し、圧倒的な速さでタイトルを総ナメ。

TT2

ちなみにこの事に我慢ならなかったハーレーオーナー達が動き、誕生する事となったのがビューエルです。

そこらへんはビューエルの系譜でどうぞ。

ドゥカティ748IE

これはその750F1ベースの世界耐久選手権TT-F1レースマシン748IE。

そしてそして・・・1988年、ここでやっと登場するのがスーパーバイクの始まりである748IEの市販車版851です。

ドゥカティ851

だいぶ引っ張ってしまって申し訳ないです。

748IEと同じ水冷4バルブLツインエンジンである”デスモクアドロ”を積んでいる正にレーサーレプリカ・・・でも向こうでは”レーサーレプリカ”って言葉(定義)は無いんだそう。面白いですね。

851の内部

デスモドロミック+クアドロ(4=4バルブ)=デスモクアドロ。

そんな851ですが

「公道で乗れちゃうレーサー」

として非常に高い人気を呼びました。

ちなみに系譜のタイトルである”スーパーバイク”という名前は皆さんご存知SBK(TT-F1の後釜)から来ています。

Superbike851

この851が造られたのは、そのスーパーバイクが始まるという情報を睨んでという狙いもありました。

ドゥカティとスーパーバイクレースの切っても切り離せない関係はここから始まる事となります。

ちなみにドゥカティのことさらスーパーバイクシリーズは毎年のように年次改良やSPモデルが登場するので区切り方が難しいのですが、ここではナンバリングで区切っています。

※851の簡易版モデルチェンジ歴

【1989年モデル】

圧縮比を高め105馬力になりFIをデュアルからシングル化。

ホイールを前後16から17インチ化など車体も大幅に見直し。

SP1とボアを2mm拡大し888ccとしたCORSA(公道走行不可)を販売。

【1990年モデル】

89年SPと同じ給排気のチューニングが入り、FIが再びデュアル化。

オイルクーラーが追加され、一人乗りから二人乗りへ。

SPモデルは一人乗りのままでアルミシートフレームになり、前後オーリンズを装備。

【1991年モデル】

サスペンションが前後マルゾッキから前ショーワ、後オーリンズに変更された他、細部の熟成を図ったモデル。

SPモデルも細部の熟成とミラーを変更。

【1992年モデル】

給排気系が見直された851の最終モデル。

888コルサ(レーサー)のパーツを奢った888SPSを販売。

エンジン:水冷4サイクルDOHC L型二気筒
排気量:851cc
最高出力:93ps/9600rpm
最大トルク:7.2kg-m/7000rpm
車体重量:199kg(乾)
※スペックは初年度のストラーダ(公道の意味)

種類一覧
ドゥカティ851シリーズ1988年
851 SERIES
ドゥカティ888シリーズ1991年
888 SERIES
ドゥカティ916シリーズ1993年
916 SERIES
ドゥカティ996シリーズ1999年
996 SERIES
ドゥカティ998シリーズ2002年
998 SERIES
ドゥカティ999シリーズ2003年
999 SERIES
ドゥカティ1098シリーズ2007年
1098 SERIES
ドゥカティ1198シリーズ2009年
1198 SERIES
1199パニガーレ2012年
1199Panigale
1299パニガーレ2015年
1299Panigale
パニガーレV42018年
Panigale V4

S1000RR (0E21) -since 2019-

2019S1000RR

「THE SUPERBIKE OF SUPERLATIVES.」

LEDヘッドライトになってまさかの左右対称顔になった2019年登場の第五世代S1000RR/0E01型。

ドイツらしく11年目にして初めてのフルモデルチェンジという長い期間が空いただけの事はあり

・可変バルブ付き新型エンジン
・新設計フレックスフレーム
・アッパーリンク式サス
・キャスター角を0.5°アップ
・新型6軸IMU
・8馬力アップ
・11kgの軽量化
・6.5インチTFTカラー液晶
・LEDヘッドライト
・可変ピボット(モタスポグレードのみ)
・Mパッケージの設定(モタスポグレードのみ)

などなどほぼ全部変わっています。

2019S1000RR赤

最初にややこしいパッケージングについて説明すると、日本国内向けはカラーリング(グレード)によって必須パッケージが設けられています。

ノーマルグレードのパッケージングはこう。

2019S1000RR

6軸IMUによる電子制御やグリップヒーターやETCそれにパッセンジャーキットが付いた67,000円パッケージモデルが日本では標準グレードという立ち位置。

そこにリチウムバッテリーとM鍛造ホイールも付いて1.6kg軽くなった222,000円パッケージ。

M鍛造ホイール

更に電子制御サスペンションとクルコンまで付けた336,000円パッケージ。

という松竹梅みたいな感じ。

もう一つのトリコロールカラーはモータースポーツグレードといって、こっちはまた別の必須パッケージが用意されている。

2019S1000RR

カーボンホイールや滑りにくい加工が施されたMシートなどが付いた67,000円のMパッケージが標準。

それに電子制御サスペンションとクルーズコントロールを加えた181,000円の上位パッケージが別に用意されている形。

ちなみにホイールやシートなどは後から単品で買うことも可能ですが凄く高いです。

カーボンホイール

例えばこのモタスポグレードに付く正真正銘フルカーボンのホイールは後から買おうとするとこれだけで100万円もする。

それらを考慮するとモタスポグレードのMパッケージが超お買い得に思える・・・まんまとマーケティングにハマっているような気もしますが。

それで今回のモデルチェンジの狙いについてですが、プロダクトマネージャーであるセップメヒラーさんの各種コメントから察するに大きく分け二つ。

セップメヒラーさん

一つは11kgも軽くなっている事からも分かる通り軽量化。

そしてもう一つが

「もっと使いやすくする」

という事。

これについて具体的に話すとまずはフレーム。

フレーム

『フレックスフレーム』

ただでさえリッターSSとは思えない細さだったフレームなんですが、そこから更に30mmも細くした上に1.3kgもの軽くなってるんですが注目してほしいのはメインフレームの中間地点が捻れている事。

フレックスフレーム

これがフレックスという名を現す部分で、フロントとボトム(ピボット)はエンジンをガッチリ固定し剛性メンバーとして積極的に利用しつつ、ライダーにもっとも近い中間部を車体中心部に近づけ積極的に捻れる様にする事とでフレームの状態を分かりやすく伝えるようにしている。

そしてもう一つ特徴的なのがリアサスペンション。

フルフロータープロキネマティクス

『フルフローター・プロ・キネマティクス』

スズキが70年代のモトクロス車に取り入れていたフルフローターと同じようなもので、分かりやすく言うとダンパーを上から押してストロークする形になっているマルチリンクサス。

・上方向への反力がフレーム(支点)に集中する

・エンジンから離せてるので熱ダレを防げる

・ライダーの真下にダンパーが垂直に来る

などの効果というか狙いがある。

要する後輪からの反力(踏ん張ってる感)を積極的にメインフレームへ伝えることでリアの動きを分かりやすくしている。スイングアームで完結させてメインフレームに自由度を持たせたユニットプロリンクと真逆の思想ですね。

テールランプ

ところでテールランプが無いぞ・・・と思ったらウィンカーと兼用なんだそうです。

フェンダー外せばリア周りはサーキット対応完了っていうオシャレなだけでなく超合理的デザインである意味これも使いやすさ抜群。

あともう一つ紹介したいのが恐らく皆が一番気にしてるであろう

S1000RRのシフトカム

『Shift-Cam』

という可変バルブ機構。

四輪に詳しい方はBMWの可変バルブといえばバルブトロニックを思い出すかも知れませんが少し違って、ソレノイドピンをカムシャフトに予め彫られている溝に沿わせシャフト自体をスライドさせる事で可変させるカム切替式タイプ。

シフトカムのメカニズム

構造的にはアウディが採用しているAVSとほぼ同じ。

ちなみにベンツやVWでも採用されているドイツを代表する可変バルブシステムだったりします。

アウディの可変バルブ

そしてこれの狙いなんですが可変バルブというと

「更にハイパワーに」

と思いがちなんですがそうではなく低中速の底上げが主な目的。グラフを見れば一目瞭然かと思います。

シフトカム

どうして可変バルブにすると中低速がアップするのかGSX-R1000の方でも説明をサボっていたのでこの際に話すと、超高回転で弾けるパワーを出す必要があるスーパースポーツは吸気や排気を一つ一つを区切ってやっていては間に合わない問題に直面する。

これは空気にも質量がある(すぐに来ない)からで、そのためにそういうタイプのエンジンは

・バルブ開口面積(バルブの開く大きさ)

・オーバーラップ量(吸排気の両バルブが開いてる時間)

をその他のタイプよりも多く取って流れ作業みたいな事をしている。

オーバーラップ

しかしこれには問題があって、高回転でグングン吸えるようなバルブ設定にすると

・吸気が弱い低回転時では流速が出ずガソリンと空気が綺麗に混ざらず不安定燃焼

・スロットルバルブが閉じているため吸気管の負圧に吸い寄せられ逆流

・排気バルブも開いているから排気に釣られて排出

などの問題が出る。当然ながらそれが起こるとバワーダウンになる。

オーバーラップによる充填損失

だから低回転時の吸気バルブというのは高回転時とは逆に小さく、そして少しだけ開く方がパワーを稼げる。

口を大きく開いて軽く息を吸うのと、口を窄めて軽く息を吸った場合、どちらが勢いよく吸えるかやってみると分かるかと思います。

カムによる違い

「じゃあどっちも付けて回転数で切り替えればいいじゃん」

というのがカム切替式の可変バルブであり、S1000RR/0E01型で押し上げられた中低速というわけ。

シフトカム

何故スーパースポーツにおいてピークパワーに関係のない低中速の底上げをしたのかといえば、これもフレームと同じで乗りやすくするため。

「乗りやすさこそ高タイムに繋がる」

という思想を元にS1000RR/0E01は開発されてたからこうなった。急激なトルク変動は乗り辛さ(扱い辛さ)に直結しますからね。

中低速の改善

だからS1000RR/0E21は208馬力とパワーアップしてるんですが、多くの人はそれ以上のパワーアップを感じるかと。

余談ですがこの可変バルブは排ガス規制を睨んでの事でもあると思います。バルブタイミングがあっていないとHCなどがモリモリ出るので。

しかしながら元々S1000RRはGSX-R1000を手本にしたと公言しているだけあり色々と被る印象がありますね。ちなみに某GSX-R1000開発者はS1000RRが出た時は相当悔しかったと漏らしていました。

「本来ならば自分たちが先に出すべきモデルだった」

とかなんとか。

S1000RR wallpaper

よせばいいの最後にまた余計な事を言いますが、相変わらず日本車とモロかぶりな構成でカムチェーンに難がある(コールドスタート時にガラガラいうオーナーは要注意)にも関わらずSS不況など何処吹く風なS1000RR。

タイヤメーカーを始めとした部品屋も広告塔にS1000RRを重用してて、いつの間にか直4スーパースポーツの筆頭みたいになった上に今回の乗りやすさを向上という日本車みたいな改良。

「どれだけジャパニーズSSキラーになれば気が済むんだ」

っていうただの嫉妬なんですが、今回はさらに逆撫でするようなこんな禁じ手までしてきた。

Mパッケージ

分かりますかね・・・これ。

Mシート

ただでさえブランドあるのに四輪ブランドを重ね掛けするのは反則だと思います。

主要諸元
全長/幅/高 2073/848/1151mm
シート高 824mm
車軸距離 1441mm
車体重量 197kg(装)
[193.5kg(装)]
燃料消費率 15.62km/L
燃料容量 16.5L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 999cc
最高出力 207ps/13500rpm
最高トルク 11.5kg-m/10500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17
後190/55ZR17
[後200/55ZR17]
バッテリー AGMバッテリー
[リチウムイオンバッテリー]
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR9FI-10G
推奨オイル BMW Motorrad ADVANTEC Ultimate
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
フィルター交換時4.5L
スプロケ 前17|リア45
チェーン サイズ525|リンク120
車体価格 2,313,000円(税込)~
※[]内はMパッケージ
系譜図
S1000RR

2009年
S1000RR
(0507)

S1000RR

2012年
S1000RR/HP4
(0524/0D01)

2015S1000RR

2015年
S1000RR
(0D10)

2017S1000RR

2017年
1000RR/HP4Race
(0D50/0E31)

2019S1000RR

2019年
S1000RR
(0E21)

S1000RR/HP4Race (0D50/0E31) -since 2017-

2017年式S1000RR

「An icon among superbike.」

四代目となるS1000RR/0D50型。

主な変更点はキャタライザー(触媒)の増強に加え、マフラーの見直しなど排ガス規制への対応が主な変更でカタログスペックに変更はなし。

0D50

分かりやすい見分け方としては、サイドリフレクターが標準装備になっている事や、触媒増築によるアンダーカウル後方のカットなど。

更にこのモデルで『HP4 RACER/0E31』が限定750台で発売。

HP4レーサー

外装、ホイール、各部ステー、そしてメインフレームまでカーボンなモデル。

これのおかげで車重は146kg(乾)という圧倒的な軽さを誇り、エンジンも圧縮比が上げられており215馬力を発揮する上に、足回りも最上級のオーリンズなどを装備。

HP4カーボン

お値段1000万円です。

ちなみにレーサーとありますがこれはレースベースではなくレーサーパフォーマンスを楽しむモデル。

えーっと、書くことが無いので凄く主観的な小言を書きます。

S1000RRはSSの中でもダントツで嫌われてるSSじゃないかなと思います。

2018年式S1000RR

理由は色々あります。

何度も言いますがS1000RRはまんま日本のSSでBMWらしさといえばアシンメトリーな顔くらい。

そしてS1000RRの存在意義であったSBKでも

『Aprilia/RSV4』

『Ducati/SUPERBIKE』

『KAWASAKI/ZX-10R』

の前には太刀打ち出来ずワークス撤退というカッコ悪い結果に終わりました。

ただし、ここで終われば

2018年式ブラック

「BMWといえどSBKは厳しかったネ」

という同情にも近い形で終わると思うんですが・・・このS1000RR、初代の二年間だけで2万台を超える大ヒット。

その人気は今も衰えること無く、SBK王者にも輝いた事があるRSV4やZX-10Rより売れています。歴史と伝統が詰まったドゥカティのスーパーバイクに負けずとも劣らない程売れてる。

これは日本も例外ではありません・・・S1000RRって国産SSより売れてるんですよ。

基本的にモデルチェンジした初年度だけ申し訳程度にランクインする国産SSと違い、S1000RRは年間500台前後と決して多くはないものの毎年コンスタントに売れてる。

200万円を超える人気も下火なクラスでS1000RRが何故これほど一人勝ちの様な人気なのかと言えば・・・

BMW

「BMWだから」

でしょう。それしか考えられない。

「直四は全部一緒」

という認識が日本を含め世界共通であります。

「そんな事はないよ」

って思ってる人、じゃあ日本の直四SSそれぞれの特徴を言えますか。

速さより楽しさなCBR1000RR。

MotoGP直系クロスプレーンなYZF-R1。

ロングストロークと可変バルブなGSX-R1000。

SBK王者なZX-10R。

四者の違いをハッキリと説明できる人がどれくらい居るのか分かりませんが、説明できたとしてじゃあこれが差別化に繋がるのかって言ったら弱いですよね。

しかもそれに加え日本のSSもS1000RRという黒船来航に危機感を覚え、膨大な開発費を掛けて黒船にも負けない装備と価格のSSなりました。

これで対抗できる・・・と本来なら言えるハズなんだけど、これは結局

「ますますどれも一緒」

な状況になってしまったわけで、どれも一緒なら

「BMWのにする」

となるわけですよ。

2018年式S1000RR壁紙

嫌われる理由はここにあるかと思います。

もし仮に同じこと日本メーカーがしたら、もしもアフリカツインやスーパーテネレやVストロムが歴史ある名車R1200GSに対抗して水平対向エンジンやテレレバーにしたらどう思いますか。

Rシリーズ

「プライドは無いのか」

と思うでしょ。

でもS1000RRはそれが許されてる。許されてるどころが大歓迎されてる。

2018S1000RRセンター

これが何故かといえばBMWだから。

S1000RRは正に

「ジャパニーズスーパースポーツキラー」

と呼べるバイクじゃないかと思います。

本来の意義であったSBKにワークス参戦しておきながら結果を残せず、アジア重視というカッコ悪い撤退をしても一番人気。

もうこうなってくると

「SBKって何の為にあるの」

っていう話でもある。

マン島TTやスーパーストック、国別レースで勝ってると言う人も居るでしょうが、それは別にS1000RRに限った話ではないです。

2017年式S1000RRカタログ写真

でもこの嫌われる要素ってとっても大事で、日本メーカーが持ちたくてもなかなか持てない物。

何故なら嫌われるっていうのは結局のところ嫉妬なわけで、それはつまり所有感を満たしてくれるオーナーにとって何よりも大事な要素だから。

トドのつまりS1000RRが嫌われるのは

「最もミーハーなSSだから」

というわけなんですが、そもそも持て余すのが基本なSSはミーハーの典型なのでS1000RRが売れるのも至極当然な話なんですよね。

誰だって嫉妬するより嫉妬されたいですもの。

主要諸元
全長/幅/高 2050/826/1140mm
[2070/770/1193mm]
シート高 816~846mm
車軸距離 1438mm
[1440mm]
車体重量 208kg(装)
<210kg(装)>
[171kg(装)]
燃料消費率
燃料容量 17.5L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 999cc
最高出力 199ps/13500rpm
[215ps/13900rpm]
最高トルク 11.5kg-m/10500rpm
[12.2kg-m/10000rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17
後190/55ZR17
[後200/60ZR17]
バッテリー AGMバッテリー
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR9D-J
推奨オイル BMW Motorrad ADVANTEC Ultimate
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
フィルター交換時3.5L
スプロケ 前17|リア45
チェーン サイズ525|リンク120
車体価格 2,190,000円(税込)
[10,000,000円(税込)]
※<>内はDDC有
※[]内はHP4Racer/0E31
系譜図
S1000RR

2009年
S1000RR
(0507)

S1000RR

2012年
S1000RR/HP4
(0524/0D01)

2015S1000RR

2015年
S1000RR
(0D10)

2017S1000RR

2017年
1000RR/HP4Race
(0D50/0E31)

2019S1000RR

2019年
S1000RR
(0E21)

S1000RR (0D10) -since 2015-

2015年式S1000RR

「YOUR MISSION TO RIDE」

三代目となるS1000RR/0D10型。

2015S1000RRフェイス

左右非対称だった顔が反転したような形になったわけですが、それよりも中身が大きく変わりました。

カムシャフトを始めとしたエンジンヘッド周りやエキゾースト周りなど吸気/排気系を大幅に見直し、先代のHP4に並ぶ199馬力に。

S1000RRフレーム

更にフレーム周りの剛性も見直され-2kgの軽量化。

そしてもう一つ大きいのがDDC(Dynamic Dumping Control)と呼ばれる電子制御サスペンションの採用です。

しかも面白いことにS1000RRの物は定番のオーリンズではなく、内製というかザックスとの共同開発したもの。

DDC

他にもシフトアップ/ダウン両対応のギアシフト・アシスタント・プロ(クイックシフター)も装備など先代のHP4にも劣らない装備となりました。

ちなみにシフトペダルは取り付け位置を変えるだけで逆シフトに出来るという嬉しい配慮。

シフトペダル

さりげない部分なんですが、S1000RRが凄い所ってこういう所なんですよね。

というのもS1000RRはWSBに勝つために開発されたわけなんですが、アジア市場の拡大に注力するという事で2013年をもってワークス撤退となりました。

2015S1000RRサイド

最初は黒船来航だと話題になったんですが、残念ながら年間チャンピオンを獲得する事は出来ず・・・というかオブラートに包まずストレートに言うと、ワークス参戦のわりには期待を大きく裏切る結果となりました。

ちなみにワークスチームを率いていたブッツオーニ総監督はその後ドゥカティに引き抜かれ、今ではドゥカティの副社長だったり。

2015S1000RRリア

じゃあS1000RRがダメだったのかと言うと決してそうでは無いです。

2010年のマン島TTにおいてサイドカーを除く5クラス全制覇したレジェンドであるハッチンソンを始め、国内外問わず多くの人がS1000RRを評価していました。途中で他のバイクを辞めてS1000RRに鞍替えした人までいた程です。

S1000RRの何がそんなに凄いのか、それはスーパーストックでの活躍からも分かるように

「ノーマルの時点で完成度が高い」

という事です。

主要諸元
全長/幅/高 2050/826/1138mm
シート高 815mm
車軸距離 1438mm
車体重量 204kg(装)
燃料消費率 17.5m/L
※定地走行テスト値
燃料容量 17.5L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 999cc
最高出力 199ps/13500rpm
最高トルク 11.5kg-m/10500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17
後190/55ZR17
バッテリー YTZ7S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR9D-J
推奨オイル BMW Motorrad ADVANTEC Ultimate
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
フィルター交換時3.5L
スプロケ 前17|リア45
チェーン サイズ525|リンク120
車体価格 2,190,000円(税込)
系譜図
S1000RR

2009年
S1000RR
(0507)

S1000RR

2012年
S1000RR/HP4
(0524/0D01)

2015S1000RR

2015年
S1000RR
(0D10)

2017S1000RR

2017年
1000RR/HP4Race
(0D50/0E31)

2019S1000RR

2019年
S1000RR
(0E21)

S1000RR/HP4 (0524/0D01) -since 2012-

2012S1000RR

「UNSTOPPABLE」

二代目にあたるS1000RR/0524型。

見た目こそあまり変わっていないもの、トラクションコントロール・ABS・走行モードなどの制御系、そして5000rpmからの出力特性が見直されトルクの谷の解消。

更にステムオフセットや前後サスペンション、そしてピボット等の足回りも見直され乗り味がマイルドに変更。

新旧比較

見た目の違いとして分かりやすいのはサイドカウルのシャークダクトの向きが反対になった事と、シートカウルがエアダクト付きの小ぶりな物になったこと。

そしてこの二代目からは新たにHP4/0D01型も販売。

HP4

HP4というのはハイパフォーマンス四気筒の事で、電子制御サスペンション(DDC)と200の極太タイヤ、更にカーボンカウル等で10kgもの軽減をしたモデル。

トラコンやABSといった電子制御もスリックモード(サーキットモード)に最適化されたものに変更されています。

HP4工場

メーカー希望小売価格は税込みで280万円。

このモデルの狙いはもちろんレースで勝つため。

HP4カタログ写真

BMWはスーパーストックでは圧倒的な速さを誇っていたものの、WSBのトップレースであるSBKでは今ひとつ戦績を残せなかった。

だからこのHP4を引き下げて取りに来たというわけ。

2014マン島TT優勝S1000RR

一方でマン島TTで75年ぶりの優勝した事が大きく話題となりました。

ちなみに75年前に優勝したのはこれ。

BMW RS500

BMW RS500という492ccの60馬力のバイク・・・当時はやっぱり水平対向だった。

ちなみに余談ですが、実はこのS1000RRを造るずっと前の1993年頃にBMWは水平対向のスーパースポーツを開発していました。

その名も『BMW R1』

R1プロトタイプ

アルミツインスパーフレームながら

・水平対向二気筒

・シャフトドライブ

・テレレバー

というBMW色が溢れているスーパースポーツ。

おまけにこの水平対向エンジンはドゥカティで有名なデスモドロミック機構を採用しています。

BMWアール1

それにより1000ccながら140馬力を発揮し、車重も乾燥重量で165kgと非常にパフォーマンスなモデルでした・・・が、やはりレースには向かないシャフトドライブや水平対向では無理があったのか四機作っただけで結局お蔵入りに。

主要諸元
全長/幅/高 2056/826/1138mm
シート高 820mm
車軸距離 1422mm
車体重量 204kg(装)
[206kg(装)]
{199kg(装)}
燃料消費率 17.5m/L
※定地走行テスト値
燃料容量 17.5L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 999cc
最高出力 156ps/10000rpm
<193ps/13000rpm>
最高トルク 11.2kg-m/10000rpm
<11.4kg-m/9750rpm>
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17
後190/55ZR17
{前120/70ZR17
後200/55ZR17}
バッテリー ETZ10-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR9D-J
推奨オイル Castrol Power 1 Racing SAE 5W-40, API SL /
JASO MA2
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
フィルター交換時3.5L
スプロケ 前17|リア45
チェーン サイズ525|リンク120
車体価格 {2,800,000円(税込)}
※<>内はEU仕様
※[]内はプレミアムライン
※{}内はHP4
系譜図
S1000RR

2009年
S1000RR
(0507)

S1000RR

2012年
S1000RR/HP4
(0524/0D01)

2015S1000RR

2015年
S1000RR
(0D10)

2017S1000RR

2017年
1000RR/HP4Race
(0D50/0E31)

2019S1000RR

2019年
S1000RR
(0E21)