「True Adventure」
実に15年ぶりの復活となったアフリカツインのCRF1000L/SD04型。
最大の特徴は52°Vツイン742ccから270°クランク並列二気筒998ccのエンジンになっていること。
これは車体のコンパクト化とマスの集中化を図る狙いがあり、これのおかげでリッターとは思えないほどコンパクトになっています。
もちろん最低地上高を考慮したドライサンプな上に、二軸一次バランサーが付いているので疲労に直結する振動はほぼありません。
そんなCRF1000Lで面白い試みなのがDCTを採用したグレードがあること。
「アドベンチャーでDCTって・・・」
と思った方も多いかと思います。
悪路になるとどうやっても滑るから意図的に引っ張って地面を掻いたり、半クラやギアチェンを使うシーンも多々あるわけですからね。
これについてはホンダも最初はお試し程度の半信半疑でテストしたんですが、やってみると意外と良い事がわかったから採用する事になりました。
クラッチレスは良く捉えるとエンジンストールの恐れが無いわけです。
つまりどんなに神経を使う道でもアクセルワークに集中出来る。このメリットが想像よりも大きかった。
ベースとなっているのはVFR-Xの物ですが、もちろんそのままではなくオン/オフどちらも熟せるアフリカツインに合わせてチューニングされた物です。
それに加えアフリカツインは”G(グラベル)モード”というシステムがあります。
DCTは実質ATなので、ギアチェンやアクセルのON/OFF時にはギクシャクしないように半クラ制御が入ります。
この半クラ制御がアクセルで物言わせて走る場合が多い未舗装路では違和感として現れる場合がある。
といってもコンマ何秒の世界なんですが、このGモードはそのコンマ何秒の半クラ状態を更に縮める為の制御。よりアクセルワークをダイレクトに地面に伝える為のモードというわけ。
もちろんギアチェンを自動にしないMTモード、引っ張るSモードLv1~3、自動のDモードなど自分でチョイス出来るようにもなっています。
それに走行モードとABSのON/OFFとTCSのモードを組み合わせると・・・
全部で80通りの走行モードが・・・ホンダのDCTアドベンチャーへの本気度が見て取れますね。
もちろん従来どおりのMTモデルもあります。
開発責任者の飯塚さんのニュアンスから察するにDCTモデルは本気アタックするような人に向けた機能ではなく、気軽に楽しめるようにした初~中級者向けの機能。
「そんなの要らない」
って上級者の方はMTモデルをどうぞという話。
さて、そもそも何故いまになってアフリカツインが復活したのかというと
・アフリカツインの再販を望む声が多かった
・欧州を中心にアドベンチャーブームが再燃した
・ホンダがダカールラリーに再参戦した
などなど様々な理由がありますが、恐らく一番大きいのはマーケットからの要望と思います。
ちなみに現在はパリダカではなくダカールラリー。
これは治安や政治的な問題で舞台が南米になったから。ちなみにレギュレーションは二気筒450ccまでとなってます。
話を戻すと、アフリカツインはアドベンチャーの中でもかなりオフロード寄りな造り。
分かりやすい所で言えばクラストップの21インチFホイールや、クラストップの45mmフロントフォークなど。
明らかにオマケではなく”本気で”オフを走れる様に造ってある。
メディア向けの試乗会でもわざわざモトクロスコースを用意して走らせてる事を見ても明らか。
その意気込みというか思い切りの良さが伝わったのか、このCRF1000Lは発売一週間で年間販売目標の1000台を超えてしまうほどの人気となりました。
MTとDCTの割合は半々で購入層は40~50代がメインとのこと。
やっぱりNXRや旧アフリカツインの世代に人気なんでしょうね。
翌2017年に排ガス規制に対応させ約3馬力アップし、2018年にはマイナーチェンジ。
・電子制御スロットル
・オートウィンカーキャンセラー
・急ブレーキを後続に知らせるエマージェンシーブレーキランプ
・HSTC(電子制御)の設定幅向上
・リチウムイオンイオンバッテリー
・グリップヒーターとACC電源の標準装備
・上下対応クイックシフター※OP
などのマイナーチェンジが実施され、それと同時に
・大型ワイドスクリーン
・24Lのシームレスビッグタンク
・ステンレス専用キャリア
・フロントガード
・フロントユーティリティポケット
・ストローク量を増やした専用サス
が備えられたCRF1000L AS(Adventure Sports)というグレードが追加。
専用サスペンションの関係でただでさえ常人には厳しい足つきだったのに、更にシート高が60mm上がるというガチンコ仕様なんですが流石にそこら辺はホンダも考慮しており、ASモデルにはサスストロークを縮めてシート高を60mmつまりノーマルと同じシート高にしたLD(Low Down)モデルが用意されました。
こちらが非常に人気だったみたいですね。
最後に・・・
アフリカツインは非常に高い評価と人気を獲得しています。
その理由は
『NXR~アフリカツインというブランド』
『ダカールラリーからのフィードバック』
といった事もあるでしょうが、一番の理由は車体設計を担当された山倉(写真中央)さんにあると思います。
山倉さんは子供の頃にパリダカを見てラリーに目覚め、そして砂漠の女王NXRの快進撃に感動し、旧アフリカツインを購入し、ホンダに入社することを決意された方。
そして希望通りホンダに入社してからも
「アフリカツインの設計がしたい。現代技術のアフリカツイン造りたい。」
と、ずーっと言い続けていた。
もうアフリカツインを造るためだけにホンダに入社した様な方で、念願のアフリカツイン復活プロジェクトがスタートした瞬間からヤル気が炎に。
自身が担当する事となった車体設計はもちろん、エンジンも妥協したくないとHRCでMotoGPにも携わっていたスペシャリストの飯田さんを呼び寄せ、デザイナーの小松さんにはアフリカツインらしさを力説。
そしてオフに明るくないメンバーと意思疎通するために、自己所有の旧アフリカツインを持ち出し社内のエンデューロ大会に出場。
その活動を始めたおかげでメンバー全員がアフリカツインがどういうバイクなのか、アフリカツインの魅力が何なのか、エンデューロが如何に楽しいかを共有することが出来た。
それどころか山倉さんの熱にやられてアフリカツインを自費で購入するメンバーが6人も出る始末。
誰よりもアフリカツインに思い入れがある山倉さん、そしてその思いを共有したメンバーによって開発されたCRF1000L Africa Twin。
アフリカツイン愛溢れる人達が造ったら、そりゃ良いアフリカツインが出来るわって話。
※2019年:ETC2.0を標準装備化
主要諸元
全長/幅/高 |
2335/930/1475mm {2330/930/1475mm} |
シート高 |
870~850mm |
車軸距離 |
1505mm |
車体重量 |
232kg(装) [242kg] {230/240kg(装)} |
燃料消費率 |
21.6km/L {21.1km/L} ※WMTCモード値 |
燃料容量 |
18L |
エンジン |
水冷4サイクルOHC二気筒 |
総排気量 |
998cc |
最高出力 |
92ps/7500rpm {95ps/7500rpm} |
最高トルク |
9.7kg-m/6000rpm {10.1kg-m/6000rpm} |
変速機 |
常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ |
前90/90R21(54H) 後150/70R18(70H) |
バッテリー |
YTZ14S |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
SILMAR8A9S |
推奨オイル |
Honda純正ウルトラG1(10W-30) |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量4.9L 交換時3.9L フィルター交換時4.1L [全容量5.2L 交換時4.2L(フィルター交換時) 交換時4.2L(クラッチ交換時)] |
スプロケ |
前16|後42 |
チェーン |
サイズ525|リンク124 |
車体価格 |
1,250,000円(税別) [1,350,000円(税別)] ※[]内はDCTモデル ※{}内は2019年モデル ※ASは+10kg |
系譜図